ISO 9001:2000規格 要求事項の解説 IRCA QMS 審査員 中山 金男 1 解説のポイント・項目 ISO 9001:2000の総括的事項 ISO 9001:2000の要求事項概論 各要求事項の解説と品質マニュアルの記述事例 口語訳の紹介(製造業・建設業・サービス業) JAB Workshop(規格の意図・解釈、審査の指針) ISO 9001と14001の統合システム 審査費用を掛けない「自己宣言」 2 ISO 9001の総括的事項 品質マネジメントシステムの8原則 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ 顧客重視 リーダーシップ 人々の参画 プロセスアプローチ マネジメントへのシステムアプローチ 継続的改善 意志決定への事実に基づくアプローチ 供給者との互恵関係 3 ① 顧客重視 会社は、その顧客に依存しており、その為に、現在及び将来の顧客ニーズを理解し、 顧客要求事項を満たし、顧客の期待を超えるように、努力すべきである。 製品、引渡し、価格、ディペンダビリティ等についてのあらゆる 方面の顧客のニーズと期待を理解する。 顧客とその他の関係者のニーズのバランスが取れたアプローチを 実行する。 これらのニーズと期待について社内での周知をはかる。 顧客満足を測定し、その結果に対応する。 顧客との関係を管理する。 3.5.3 ディペンダビリティ(dependability) アベイラビリティ及びその要因、すなわち信頼性、保全性及び保全支援の 能力を記述するために用いる用語の総称。 dependability=信頼性 「正しく信頼のおける仕事(サービス)の実行に関する品質(Quality)」のこと。 availability=有効性 「ある時点で機能を維持している確率」とか「ある期間中に機能を維持する割合」 4 ② リーダーシップ リーダーは、会社の目的及び方向を一致させる。リーダーは、社員が会社の目標を 達成することに十分参画できる内部環境を創りだし、維持すべきである。 先見的な行動を取り、模範を示す。 外部環境の変化を理解し、それに対応する。 顧客、オーナー、社員、協力会社、地域及び社会一般を含む全ての 関係者のニーズを考慮に入れる。 会社の将来についての明確な見通しを確立する。 社内の全ての階層において、共有される価値と倫理的規範を確立する。 信頼を築き、懸念を取り除く。 社員に、必要な資源及び行動責任と説明責任に基づいて行動する為の 自由を与える。 社員の貢献を促し、励まし、認知する。 オープンで誠実なコミュニケーションを促進する。 社員を教育、訓練、指導する。 やりがいのある目的及び目標を設定する。 それらの目的及び目標を達成する為の戦略を実行する。 5 ③ 人々の参画 すべての階層の人々は会社にとって根本的要素であり、その全面的な参画に よって会社の便益のためにその能力を活用することが可能となる。 社員が、会社を担う者としての自覚と問題解決の責任を受け入れる。 社員が、改善のための機会を積極的に探求する。 社員が、能力、知識及び経験向上のための機会を積極的に探求する。 社員が、チームやグループ内で自由に知識や経験を共有する。 社員が、顧客のための価値の創造に焦点を当てる。 社員が、会社の目的を追求するために革新的、創造的になる。 社員が、顧客、地域、及び社会一般に対し、会社を代表していると いうより強い意識を持つ。 社員が、仕事による満足感を得る。 社員が、会社に対する帰属意識と誇りを持つ。 6 ④ プロセスアプローチ 活動及び関連する資源がひとつのプロセスとして運営管理(マネジメント)されるとき、 望まれる結果がより効率よく達成される。 望まれる結果を達成するためのプロセスを明確にする。 プロセスのインプットとアウトプットを特定、測定する。 プロセスのインターフェイスと、会社の機能を結びつける。 潜在するリスクと、顧客、協力会社、及びプロセスに関わるその他の 関係者へのプロセスが与える影響の結果を評価する。 プロセスを管理するための明確な責任、権限、責務を確立する。 プロセスの内部的及び外部的顧客、協力会社、及びその他の 関係者を明確にする。 プロセスを設計する際、プロセスステップ、活動、フロー、管理方法、 訓練の必要性、設備、方法、情報、資材、及び望ましい結果を得る ためのその他の資源を考慮に入れる。 7 ⑤ マネジメントへのシステムアプローチ 相互の関連するプロセスを一つのシステムとして、明確にし、理解し、 運営管理する事が会社の目標を効果的で効率よく達成する事に寄与する。 ある目的に影響するプロセスの開発を特定することにより システムを明確にする。 最も効果的に目的を達成するためのシステムを構築する。 システムのプロセス間の相互依存性を理解する。 測定と評価を通し、システムを継続的に改善する。 活動開始前に、資源的な制約を明確にする。 8 ⑥ 継続的改善 会社の総合的パフォーマンスの継続的改善を会社の永遠の目標とすべきである。 製品、プロセス、及びシステムの継続的改善を、社内の個々の 目標とする。 斬新的な改善とリスク分析をしながら、基本的な改善概念を 理解する。 改善が可能な領域を特定するため、規定の卓越性の基準に 照らして定期的な評価を実施する。 全プロセスの効率及び有効性を継続的に改善する。 予防を基本とする活動を促進する。 継続的改善の方法について、社内の全ての人員に適切な教育及び 訓練を供給する。その内容の例はQCサークル、TPM、改善提案等 改善を促進する方法及び目標を確立する。 改善を認識する。 9 ⑦ 意志決定への事実に基づくアプローチ 効果的な意志決定は、データ及び情報の分析に基づいている。 測定を行い、目的に関連したデータ及び情報を収集する。 データ及び情報が十分で正確で、信頼でき、確実に利用出来る 様にする。 データ及び情報を妥当な方法で分析する。 適切な統計的手法の価値を理解する。 経験と洞察のバランスのとれた論理的分析の結果に基づく 意志決定及び行動をとる。 10 ⑧ 供給者(協力会社)との互恵関係 会社及び協力会社は独立しており、両者の互恵関係は両者の価値創造能力を 高める。 主要な協力会社の特定及び選択をする。 短期的な便益と会社及び社会一般のための長期的考察の バランスのとれた協力会社との関係を確立する。 明確でオープンなコミュニケーションを築く。 製品とプロセスの共同開発及び改善に着手する。 協力会社との共同作業により顧客ニーズの明確な理解を得る。 情報及び将来の計画を共有する。 協力会社の改善及び達成を認識する。 11 改定後の規格構成及び定義 ISO 9000←ISO 8402:1994+ISO 9000-1:1994 品質マネジメントシステムの基本を説明し、又、品質マネジメントシステムの用語を 規定している。 ISO 9001 ← ISO 9001:1994+ISO 9002:1994 +ISO 9003:1994 会社が顧客要求事項及び適用される規制要求事項を満たした製品を提供できる 能力を持つ事を実証する事が必要な場合、並びに顧客満足の向上を目指す場合の、 品質マネジメントシステムに関する要求事項を規定している。 ISO 9004 ← ISO 9004:1994 品質マネジメントシステムの有効性及び効率の双方を考慮した指針を提供している。 この規格の目的は、会社のパフォーマンスの改善、並びに顧客及びその他の 利害関係者の満足である。 12 品質マネジメントシステムへの改定 Quality Management(品質マネジメント) Quality Policy(品質方針),Quality Objective(品質目 標) 品質マネジメントの実施 Quality Planning(品質計画) Quality Control(品質管理) Quality Assurance(品質保証) Quality Improvement(品質改善) 13 プロセスアプローチを採用して実質「4大項目に集 約」 5章 6章 7章 8章 経営者の責任 資源の運用管理 製品実現 測定、分析及び改善 (Action, Plan プロセス) (Plan, Do プロセス) (Do, Check プロセス) (Check, Action プロセス) 用語の定義 Sub-contractor 下請負契約者 Supplier 供給者 - Supplier 供給者 - Customer 顧 客 1994年版 - Organization 組 織 Customer 顧 客 2000年版 14 2000年版改訂版への移行処置 2000.12.15 2001.12.14 2002.12.14 2003.12.14 2000年版制定 共存期間 1994年版廃止 「品質マニュアル」の書き換え これまでの「品質マニュアル」では、改定規格への対応は不十分と 判断される為、「品質マネジメントシステムを見直した結果(5.4.2 項)」として、「品質マニュアル」は、新規制定をする事がベストであ る。(1994年版廃止は、2000年版認証後)審査側は、「品質マニュ アル」を基に審査を計画し、チェックポイントを洗い出し、現地審査 に おいても、重要な指針として、活用している。 15 ISO 9001:2000の要求事項概論 16 口語訳の紹介(製造業・建設業・サービス 業) ISO 9001は英語、翻訳し作成された工業規格であるJIS Q 9001は 日本語であるが、規格書の宿命である解釈の難しさに誰もが悪戦苦闘して いる。従って、様々な解説書が発行されている現状において月刊誌 「アイソス」に掲載された「口語訳 ISO 9001:2000 宇野 通 編」が、 ISO初心者・経営者によく分かるので、紹介します。 口語訳 ISO 9001:2000…一般・製造業主体 http://www.est.hi-ho.ne.jp/atk-uno/page004.html 建設編(2003年1月23日公開) http://www.est.hi-ho.ne.jp/atk-uno/page023.html サービス業編(2003年4月29日公開) http://www.est.hi-ho.ne.jp/atk-uno/page032.html 但し、規格書と比較し理解しないと「火傷」の恐れ有り 17 JAB Workshop(規格の意図・解釈・審査の指針) JAB ISO 9001 Workshop「まとめ」公表について 2003年4月1日 財団法人 日本適合性認定協会 2002年、JABは「JAB ISO 9001 Workshop」を開催しました。 Workshopで議論された内容について、以下の趣旨のもとに公表いたします。 公表の背景と趣旨: ISO 9001:2000での審査にて、規格の解釈、運用において数々の疑問、懸念が発せられて います。審査における機関毎のバラツキをなくすることを目的に、審査登録を行う各審査 登録機関、そして審査員となるための研修を行う審査員研修機関から、その機関内に展開 できる専門家に集まっていただき、Workshopを開催し、議論を重ねました。 この Workshopで議論された内容を広く世の中に公表し、関係各位の意見をいただくことで、 更に良いものにしていくことを目的とします。 公表内容について: ・この内容は、Workshopにおいて用いたスライドをベースに、その場での論議内容、 更に必要と判断した事項等を入れた上で、規格の意図、解釈、また審査の方法、 判断についてまとめたものです。 ・議論の中で、結論には至らなかった項目もありましたが、ここにはほぼ合意が 得られた項目を掲載しました。 JAB Workshopを入手するには、下記にアタック http://www.jab.or.jp/gm_news/news_qs/nws-qs-topix-20030416-2.pdf 18 ISO 9001と14001の統合システム ISO9001(QMS)とISO14001(EMS)の共通点と相違点 *共通点 ① マネジメントシステムを規定したもの ② 方針を定め、目標を設定して、目標達成の為に努力する ③ 継続的改善を実施する ④ PDCAの改善サイクルを回す *相違点 ① QMSは顧客、EMSは社会全体が会社と関わるもの ② QMSはDo,Checkを重視、EMSはPlanに力点がある ③ 法規制の遵守で、EMSは環境法規の遵守を強く要求する 統合システム導入の目的と達成目標 ① ② ③ ④ 品質・環境の目標管理を同時に行う 種々のリスク管理を同じ仕組みで行う 全社員にとって見えやすい管理の仕組みをつくる システム・文書・事務局・内部監査・マネジメントレビューの一元化 19 ISO 9001と14001の統合システム 統合システムの運用と今後の動き ① 統合審査 ISO 9001(QMS)と14001(EMS)を一緒に審査 (審査費用の軽減が図れる) ② 統合認証 QMS又はEMSを世界中・日本中の自社全体(本社・工場・ 営業所等)が統一システムで運用し、一枚の認証書で登録 ③ 統合マネジメントシステム 品質(QMS)・環境(EMS)・労働安全衛生(OHS&MS)の マネジメントシステム(MS)を取り込んで統合マネジメント システム(GMS)をTC176委員会で検討 ④ 情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の登場と 人事・財務管理マネジメントシステムの検討 20 ISO 9001と14001の統合システム 統合(経営)マネジメントマニュアル(GMM)のモデル G M M QMS EMS OHS&MS ISMS ISO ISO OHSAS 9001 14001 ISMS 18001 財務 ・人事 21 ISO 9001と14001の統合システム マネジメントシステム構築のステップ ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ 現状のシステム文書・帳票の洗い出しと整理 部門・機能別の業務フローチャート作成 関連部門とインプット・アウトプットの突き合わせ・調整 調整後のフローチャートによる、実務の検証 検証結果を基に最終フローチャートの作成 プロセスとマネジメントシステムのマトリックス作成 マネジメントシステム要求事項に対する欠落プロセス追加 マネジメントシステムマニュアル「ドラフト」の作成 マニュアルに基づく模擬内部監査の実施 不適合事項の是正 マニュアルの初版作成 マニュアルに基づく正式内部監査の実施 ⑩~⑫の繰り返しによる要求事項への適合とシステム構築 22 審査費用を掛けない「自己宣 言」 ISO 認証取得目的の2極分化 *顧客の要求・入札点数を稼ぐ為のパスポート *会社の体質を強化し、社会の信用を得て、生き残る ISO 導入に踏み切れない要因 *ISOについて理解する事が難しく、機会もない *ISOを導入するメリット・必要性がわからない *社内に導入する人材を確保する余裕がない *コンサルタントを雇うと、多大な費用がかかる *認証審査を受ける費用がかかる…一声 100万円 いずれにしても、人と金が掛かりすぎる…経営に余裕 の有る会社だけが、導入できますます格差がでる。 23 審査費用を掛けない「自己宣言」 自己宣言の実例…ISO WORLDの取り組み http://www.ecology.or.jp/isoworld/iso14000/iso14000.htm ISO WORLD…辻井浩一氏が主催する「ISOの最大のHP」 *無償模擬審査のご案内…やる気のある中小企業を支援 *無償模擬審査の適合証明書を発行…自己宣言の根拠 *模擬審査は、審査機関の認証審査と同じ手順で高レベル *費用は、通信費・交通費・宿泊費等の実際にかかった経費 *模擬審査受付条件…経営者の決意が固く、自己宣言への 取り組みが熱心かつ真摯なものであること。 模擬審査のもう一つの活用方法 *認証登録をする場合、通常「予備審査」を受けてから システムの不具合を是正し、「本審査」に望むが 予備審査のかわりにこの模擬審査を活用することが出来る 24
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