日本心理学会第68回大会ワークショップ (2004.9.13) 社会精神生理学への招待 ―ストレス・感情と社会的要因との関係― 話題提供者:長野祐一郎 (早稲田大学医療行動科学研究所) 山田クリス孝介 (日本大学理工学研究科) 手塚洋介 (同志社大学文学研究科) 井澤修平 (早稲田大学人間科学研究科・日本学術振興会特別研究員) 指定討論者:稲森義雄 (ノートルダム清心女子大学) 日本心理学会第68回大会ワークショップ (2004.9.13) 社会精神生理学への招待 ―ストレス・感情と社会的要因との関係― 本WSの趣旨 • 従来のストレス・感情に関する精神生理学研究の問題 提起 • “実生活 (real-life)”に即した社会的要因の導入 → 研究の生態学的妥当性の向上 The social psychophysiology of cardiovascular response: an introduction to the special issue. • Smith, T. W., & Gerin, W. 1998 Annals of Behavioral Medicine, 20, 243-246. 社会的要因を導入する背景 従来のストレス・感情の測定 • 古くから実験室では,ストレス・感情を測定する目的で 生理指標を採用 • 実験刺激に対する心身相関 • 一過性の変化と,心身の健康との関連 単独状況下での,課題遂行中の反応に焦点 (典型課題・・・暗算,冷水負荷,鏡映描写,映像,写真など) なぜ“社会的 (Social)”か • 従来の実験プロトコルに,文字通り,社会的要因を導 入し,実生活に即した実験状況を設定する • 現象としての社会・・・個人と環境との相互作用 社会的要因の実験室への導入 • 日常生活では,対人関係に起因した問題が心身の健 康に強く影響 (DeLongis et al., 1988) • 鏡映描写,冷水負荷,映像,写真など →日常的に経験する状況 (心理社会的ストレッサー/感情 喚起事態)を反映していない →実生活のストレス反応や感情を反映していない 実生活と乖離した課題では“自我関与”できる状況が設 定できず,標的とする反応を捉え切れていない可能性 社会的要因の実験室への導入 社会的要因を導入することで,より“自我関与”できる実験室 状況を作り上げることが可能となる.そのため,より妥当性 の高い状況で信頼性の高いデータを得ることができる(かも) 実験の生態学的妥当性の向上が期待できる 「末梢の生理的活動は社会的文脈の中でこそ適切に意味づけられる」 (畑山,2003) なぜ“社会的 (Social)“か • 従来の実験プロトコルに,文字通り,社会的要因を導 入することで,実生活に即した実験状況を設定する ↓ 生態学的妥当性の向上 • 現象としての社会・・・個人と環境との相互作用 個人と環境の相互作用-内的過程の検討 • 従来の研究の多くは,“A課題 vs B課題”のように,課 題の違いがもたらす反応 (S-R) に焦点 • 課題の性質が重要とされ,個人の内的過程の影響(S-OR)は考慮されず • 同一課題であっても,異なる反応が生じる可能性 e.g.) 特性的影響・・・性格,行動など 状況的影響・・・認知的評価,動機づけなど 個人と環境の相互作用-内的過程の検討 • 内的過程を考慮することで,同一状況下で生じる反応 の多様性を解釈しやすくなる • 実験結果の一般化を試みる際に,S-Rの観点に立ち, 課題の性質によって反応説明を行うことは非効率的 “どういう状況が”ではなく,“(状況を) どのように捉え るか”という視点を組み込む必要 なぜ“社会的 (Social)“か • 従来の実験プロトコルに,文字通り,社会的要因を導 入することで,実生活に即した実験状況を設定する ↓ 生態学的妥当性の向上 • 現象としての社会・・・個人と環境との相互作用 ↓ 同一状況であっても,個人によって反応は変わりうる 個人要因 (内的過程) を積極的に考慮するべき 社会的要因の導入のメリット • 生態学的妥当性の向上 • 近接領域の心理学の知見を採用して,多面的に問題 を捉えることができる 心身 医学 臨床 心理学 行動 医学 精神 生理学 人格 心理学 健康 社会 心理学 心理学 感情 認知 心理学 心理学 社会精神生理学 構成 • 「対人状況における心臓血管反応」 (長野) • 「心理的ストレスに対する心臓血管反応ー認知的評価の導入ー」 (山田) • 「感情の持続に及ぼす認知的評価の影響」 (手塚) • 「敵意性と心臓血管活動の関連」 (井澤)
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