機関リポジトリをめぐる状況 常磐大学人間科学部 栗山正光 2006年11月17日(金) 日本の機関リポジトリの今2006 @千葉大学 学術雑誌の危機 Serials crisis • “Philosophical Transactions of the Royal Society of London” (1665年創刊)以来、 学術雑誌は学術コミュニケーションの中心 – Peer review(査読)による品質保証 – オルデンバーグの長い影 • 1990年から2000年の間に科学、技術、医学 系(STM) 学術雑誌の価格は年10%以上の 割合で上昇 – 学術雑誌出版社の買収による統廃合も進む 電子ジャーナルの登場 • ADONIS(CD-ROMでの提供)(1989) • TULIP(The University Licensing Program) – Elsevier社とアメリカの数大学との共同実験(1993) • Red Sage (UCSF, Springer, AT&Tベル研)、 Muse(ジョンズ・ホプキンズ大)などの実験プロ ジェクト • WWWとPDFの普及に伴い急速に実用化、普及 • 雑誌の値下がりにはつながらず、むしろ特別な予 算措置が必要に e-プリント・アーカイブ • プレプリント – 学術雑誌に投稿した論文を査読終了前に配布するもの *ポストプリント=査読を通過した論文の最終形 • arXiv.org e-Print archive – 1991年Paul Ginspargが創設 – 現在、コーネル大が運営。日本にもミラーサーバ – 物理、数学、コンピュータ・サイエンス等の分野のプレプリ ントを蓄積 • 他にもCogPrints(認知科学)、RePEc(経済学)な ど オープン・アクセス • 1994年 Stevan Harnadが論文原稿のイン ターネット上での無料公開を主張 →Ginspargらと電子メールで議論 – Scholarly Journals at the Crossroads: A Subversive Proposal for Electronic Publishing • 2000年 PubMed Central, BioMed Central 設立 • 2001年 BOAI • 2003年 ベセズダ宣言、ベルリン宣言 オープン・アクセスへの二つの道 • セルフ・アーカイビング(グリーンの道) – 自分のWebサイト、専門領域のe-プリント・アー カイブ、機関リポジトリ等で無料公開すること – 90%以上の学術雑誌がセルフ・アーカイビング に青(グリーン)信号を出している cf. http://romeo.eprints.org/stats.php • オープン・アクセス誌(ゴールドの道) – 読者から購読料を取らず、著者が費用を支払う – Directory of Open Access Journals SPARC Scholarly Publishing and Academic Resources Coalition • 米研究図書館協会(ARL)を中心に1998年設立 • 高額商業誌に対抗する競合誌刊行 – Organic Lettersの成功 – しかし商業誌の価格は下がらない • 2002年、二つの文書を発表 – 機関リポジトリ擁護論:SPARC声明書(The Case for Institutional Repositories: A SPARC Position Paper) – 学術機関リポジトリ チェックリストおよびリソースガイド (Institutional Repository Checklist & Resource Guide ) e-プリント・アーカイブと機関リポジトリ • e-プリント・アーカイブは学問分野、主題領 域ごとに存在 • プレプリント交換の伝統がない分野では、 e-プリント・アーカイブも未発達 • 機関リポジトリは分野に関係なく自機関の 研究成果を収録→e-プリント・アーカイブと 機関リポジトリは相互補完関係 • ともに分散型学術出版システムの重要な 構成要素 まとめ • 学術雑誌の危機と電子ジャーナルの登場 • e-プリント・アーカイブとオープン・アクセス • グリーンの道(セルフ・アーカイビング)と ゴールドの道(オープン・アクセス誌) • 機関リポジトリはセルフ・アーカイビングの 場を提供 • e-プリント・アーカイブと機関リポジトリは分 散型学術出版システムの構成要素
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