SAX J1748.2−2808 からの 3 つの鉄輝線と593 秒周期の発見

SAX J1748.2−2808 からの
3 つの鉄輝線と593 秒周期の発見
信川 正順、小山 勝二、
松本 浩典、鶴 剛 (京大理)
X線衛星すざく
・イントロ SAX J1748.2—2808
・観測結果 鉄輝線/周期の発見
・議論
SAX J1748.2—2808の正体
・まとめ
序-1. SAX J1748.2-2808
• 銀河中心から東に1度離れた位置(いて座D領域)
すざく 6-7 keV image (鉄輝線バンド)
SAX J1748.2-2808
銀河中心
いて座A*
1°
• 2観測の視野内にある
• 2007/09、2008/03 各140ks
序-2. 過去の観測結果
– 強く吸収されたスペクトル (NH~1023cm-2)
– 鉄輝線の兆候(統計が悪い)
• XMMによる追観測 (30ks, Sidoli+06)
counts/s/keV
• Beppo-SAXによる発見 (Sidoli+01)
Beppo-SAX (Sidoli+01)
– ハードな連続成分 (G~1.4)
– 広がった鉄輝線 (E=6.4—6.8 keV, s~400eV)
2
5 (keV) 10
→ 銀河中心領域に位置するHMXB(大質量X線連星系)
※鉄輝線の広がりが大きすぎる
2x104 km s-1 もの速度分散に相当
パルス周期の未検出
→すざくによる合計280ksの観測
詳細な鉄輝線、周期解析
結果-1. すざくによるX線
イメージ
• 30″離れた位置に暗いX線天
体がある (S12, XMM-Newton)
2-7 keV image
S12
SAX J1748
cf. すざくの空間分解能~ 60″
以降の解析・議論ではS12
の寄与は無視する
60″
SAX J1748
S12
Counts
• フラックス比
SAX J1748 : S12 = 3 : 1
• S12を避けてスペクトル
を取得
→S12からの漏れ込み
SAX J1748の10%以下
0
50 arcsec
150
200
結果-2. スペクトルー詳細な鉄輝線
鉄輝線周辺のスペクトル(バックグラウンドはひいている)
1 輝線
Sidoli+06と同じモデル
XMM
すざく
6.6
エネルギー
中心値 (keV) (6.4-6.8)
6.68
(6.58-6.77)
幅 (eV)
430
(230-760)
290
(210-410)
等価幅 (eV)
400
(250-900)
650
(400-1000)
輝線構造にResidual
→1本ではなく複数の輝線
結果-2. スペクトルー詳細な鉄輝線
鉄輝線周辺のスペクトル(バックグラウンドはひいている)
プラズマ(kT~12keV)
+中性輝線
エネルギー
3 輝線
等価幅
6.40
(6.39-6.47)
中性鉄
140
(30-270)
6.68
(6.66-6.72)
He状 鉄
180
(30-350)
6.97
(6.94-7.46)
H状 鉄
130
(<270)
Residualが解消
c2: 26/21 → 16/21
結果-3. 時間変動
Power spectrum
すざく(2007年)
593秒
• 2000—2008年(すざく、XMM)の
データについて時間解析
→全てから周期変動(約593秒)
を検出
観測日
周期 (秒)
2000 / 09
XMM
593 ± 9
2003 / 03
XMM
593 ± 2
2005 / 02
XMM
594 ± 3
2007 / 09
すざく 593.1 ± 0.4
2008 / 03
すざく 592.8 ± 0.4
• 長期的な時間変動は見られず
Folded light curve
590
593
595 (秒)
議論. SAX J1748.2—2808の正体
• 593秒周期・・・コンパクト星の自転 (軌道周期>days)
– CV (白色矮星)・・・典型的
– HMXB(中性子星)・・・やや早い
• 鉄輝線 (中性+高階電離, 等価幅~100—200 eV)
– CV (IP型、強磁場)・・・一般的、等価幅も同じくらい
– HMXB・・・だいたい中性のみ
CV(IP型) HMXB
CV(IP型)の可能性が高い
自転周期
鉄輝線(3本)
• 距離
Sidoli+06: 銀河中心(~8.5 kpc, 吸収量が大きい)
典型的なCVのX線光度 = 1033-34 erg/s
→ d = 2—7 kpc 銀河中心よりも手前
(大きな吸収は放射体周囲の中性ガス)
○
○
△
×
まとめ
• SAX J1748.2-2808を長時間観測(280ks)
– 鉄輝線を3つ(中性+プラズマ)に分離
– 593秒の周期を発見
• HMXBよりもCV(IP型)の可能性が高い