日語文法研究 (大学院) 2月26日(木)~ 担当 神作晋一 日本語教育 ここでは、「日本語教育(学)」「(日語 教學」)と日本語学との関わりについ てお話します。 荻野綱男編(2007)『現代日本 語学入門』 P.165~179 1 「外国語としての日本語」の教育 2 国内の日本語教育の特徴 3 学習者にとって日本語とはどのような 言語か 4 日本語教育から見た日本語の特徴 5 日本語の教え方 6 日本語教師養成と期待される能力 (三宅和子) 1 「外国語としての日本語」の教育 1-1 国語教育と日本語教育 1-2 日本語学習者の数と分布 1-3 日本語教育の対象と目標 日本語教育とは 「外国人を対象に日本語を教えること」 どのような人にどのような教育? 国内の外国人はほとんどがアジア圏 帰国子女も対象 「日本語教育」「国語教育」「外国語教育」 の違い 大東亜共栄圏 1-1 国語教育と日本語教育 国語教育 日本語を母語(第一言 語)である人への教育 日本語の基礎能力を 使って、新しい知識や 概念を学び、高い表現 力を目指す。 日本語教育 日本語を母語としない 人への教育 言語的な特徴の他、日 本語の社会・文化的な 特徴も学んでいく。 母語の特徴に左右され る。 ⇒母語の干渉 1-2 日本語学習者の数と分布 (海外):教育機関・日本語教師・学習者と も、年々増加している。 2003年時点で、127カ国、12,222機関、教 師数33,124人、学習者、2,356,745人 韓国・中国・オーストラリア…の順。 初等・中等教育(韓国・オーストラリア) 高等教育(中国など) 全体の6割がアジア 1-2 日本語学習者の数と分布 (日本国内) 増加の傾向 一般の団体(民間教育機関)が多い 学習者は、アジア地域の出身者が多い。 1-3 日本語教育の対象と目標 これまでは成人教育(大学などの留学生)が 中心。 定住する外国人の子弟に対する初中等教育 への広がり。 学習者の多様化 駐在外国人、中国帰国者(元 残留孤児)、日本 人帰国子女、インターナショナルスクール 1-3 日本語教育の対象と目標 学習目標の多様化 専門的な日本語 同じ留学生でも必要とする(要求される)日 本語に差がある。 理系では、英語で済む場合も 論文、ゼミでのやりとり、日常会話 1-3 日本語教育の対象と目標 就学生:大学進学の場合と仕事で必要な 場合 外国人配偶者:生活に密着した日本語 例:道の尋ね方、銀行、病院など 言語サービス 移民署 善化 居留証 外国人登録証 定住者の子弟:バイリンガル教育 ⇒ニーズneedsの多様化と教育の多様化 2 国内の日本語教育の特徴 2 国内の日本語教育の特徴 「外国語教育」のカリキュラム 「外国語としての日本語」(JFL=Japanese as a foreign language) こちらが多い 海外など日本語使用のない環境 「第二言語としての日本語」(JSL=Japanese as a second language) 学習には有利 日本で、コミュニケーションとしての手段 「国内の日本語教育」と「日本人 への英語教育」との比較 ①学習者の母語や社会的背景 は多様 学習者同士の異なりが大きい 母語、学習経験、年齢、職業、興味、能力、社 会・文化的背景 媒介語が使えない。 直接法、視覚的な教材、学習者の母語 「みんなの日本語」(中文) ②教室外での生活が学習に直結 教室の外は日本語 インタラクション(相互行為)interaction メディアなどで、生の日本語、社会の現状 を学ぶことができる。 ③コミュニケーション中心の学習 コミュニケーションができることや実際に使 えることを重視 「話す」「書く」 ④比較的少人数の教室 多くても20~30人、10人以下で行う場合も。 教師の細かい対応が要求される。 教師との密接な関係が築きやすい。 ⑤学習意欲、要求が高い 自身で生活費や学費を負担 目標が明確で、動機付け(モチベーション motivation)が高い。 教師や教材、環境に対しても要求が厳しい。 3 学習者にとって日本語はど のような言語か 3-1 日本語は難しいか 3-2 日本語の難しさ 3-1 日本語は難しいか 日本語は難しい? 文法体系が似ている(例:助詞がある)韓国 語・朝鮮語の母語話者(学習者)は習得が早 い。 中国語母語話者(中国・台湾)にとっては、漢 字の習得の負担が少ない。 3-2 日本語の難しさ 発音は(比較的)やさしい。 「書くこと」は難しい。 文字体系の複雑さ(漢字・かなカナ・ローマ字の使 用、複数の読みと同音異義語) 敬語 母音・子音が少ない 社会文化的・語用論的判断 音象徴語(オノマトペ、擬音語・擬態語) 4 日本語教育からみた日本語 の特徴 4-1 4-2 4-3 4-4 音声・音韻 文字・表記 文法 ことばの運用 4-1 音声・音韻 日本語の「音素」(音韻論) 母音:/i//e//a//o//u/の5音素 子音:/p//b//t//d//k//g//h //s//z//c//r//m//n/の13音 素 半母音:/j//w/ 宜義 yi 特殊音素:/N/(撥音「ん」)/Q/(促音 「っ」)/R/(長音) 4-1 音声・音韻 拗音ようおん 表1 日本語の音節構造 V=Vowel(母音) C=Consonant(子音) S=semi-vowel(半母音) 音 節 構 造 例 C+V(子音+母音) k+a か S+V(半母音+母音) j+a や V(母音) 直音ちょくおん 合拗音 a あ C+S+V(子音+半母音+母音) Kja きゃ 拗音 4-1 音声・音韻 特殊拍(促音、撥音、長音)、 拍の感覚(日本語のリズム)、 温泉おんせん アクセント、音象徴 4-1 音声・音韻 促音:「っ」 撥音:「ん」 「きって」[kitte](切手)と「きて」[kite](来て)、 「しって」[Shitte](知って)と「して」[Shite] 「案内あんない」[annai] [anai]と[an+nai] さんぽ[sampo]散歩、かんげい[kangei]、ん。 長音 「おばさん」と「おばあさん」 「びょういん」(病院)と「びよういん」(美容院) 4-1 音声・音韻 高低アクセントと強弱アクセント 複合語のアクセント 「にほん」(○●○;中高型アクセント) 「だいがく」(○●●●;平板型アクセント) 「にほんだいがく」 (○●●;●○○○) 音象徴(オノマトペ、擬音語。擬態語) 「コリコリ」と「カリカリ」、「キリキリ」と「ギリギリ」 4-2 文字・表記 複数の文字体系を使う 漢字の問題 悪魔ちゃん 亜駆 芝草宇宙 覚えにくさ、常用漢字(1945字)、音読みと訓読 み、同音異義語、送り仮名 ひらがな、カタカナの書き間違え 漢字・ひらがな・カタカナ・アルファベット 「ち」と「さ」、「シ」と「ツ」 外来音の表記 ボイス ヴォイス フォルダー 4-3 文法 日本語学習者にとっては、0からのスター ト 構造を理解し、使い方を学ぶ。 意識的に理解していく必要がある。 4-3 文法 SOV構造=主語(S)+目的語(O)+動詞(V) 〈日本語〉 私は S 朝ごはんを O たべました V SVO構造=主語(S)+動詞(V)+目的語(O) 〈英語〉 I ate breakfast S V O S=subject O=object V=verb 述語動詞 4-3 文法 〈日本語〉 私は 彼は 私は 彼は 彼を 愛しています。 私を 愛しています 愛しています、彼を。 愛しています、私を 〈中国語〉 語順が変化しても、助詞が同じ場合は意味が同じ 助詞はなく、語順が変わることにより意味が変化。 我 愛 他 他 愛 我 (私は 彼を 愛しています) (彼は 私を 愛しています) 4-3 文法 助詞の使い方 自動詞と他動詞 「開く」(自)と「開ける」(他) 授受表現(補助動詞を含む) 「は」と「が」、「に、で、を」「と、ば、たら、なら」 あげる(やる)、もらう、くれる、~て… コソアドの体系 4-3 文法 活用語(動詞)について 語幹と語尾 活用の種類 五段動詞(書く、読む) 第一活用形 一段動詞(見る、食べる) 第二活用形 不規則動詞(する、くる) 第三活用形 4-3 文法 動詞・助動詞 学校文法:食べ(動詞連用形)+た(助動詞) 日本語教育:「食べる」の〈タ形〉〈過去形〉 形容詞「赤い」:イ形容詞 形容動詞「静かな」:ナ形容詞 4-3 文法 テ形と音便形 イ音便、撥音便、促音便、(ウ音便) 「書いて」からのバリエーション 音便化の規則と種類(表2を参照) 4-3 文法 (表2 <テ形>を作る規則) ①五段動詞 動詞の語尾が「う、つ、る」で終わる場合 ⇒ 促音便 例:買う→買って、立つ→立って、折る→折って 動詞の語尾が「く、ぐ」で終わる場合 ⇒ イ音便 例:置く→置いて、泳ぐ→泳いで cf.行く→行って 4-3 文法 (表2 <テ形>を作る規則) ①五段動詞 動詞の語尾が「ぬ、む、ぶ」で終わる場合 ⇒ 撥音便 例:死ぬ→死んで、楽しむ→楽しんで、喜ぶ→喜 んで 動詞が「す」で終わるもの ⇒ 「す」を取り「し て」をつける 例:貸す→貸して、探す→さがして 4-3 文法 (表2 <テ形>を作る規則) ②一段動詞:語幹に「て」をつける 例:見る→見て、食べる→食べて ③不規則動詞: 例:来る→来て、する→して 4-4 ことばの運用 共感 文法や発音が良くても… ネウストプニー(1995)のコミュニケーション能力 言語能力 ① 社会言語能力 ② 社会文化能力 ③ ①⇒②⇒③の順ではなく、③のあとに①や②を獲 得すべき。 「コミュニケーション」× インターアクション○ 実質行動 言語行動 5 日本語の教え方 文型積み上げ方式 対訳 オーディオ・リンガル方式 コミュニカティブ・アプローチ 正確さを重視 コミュニケーションを重視 学習者主体の教授法 学習者支援:動機付け(モチベーション motivation) 6 日本語教師養成と期待され る能力 6-1 日本語教師養成機関 6-2 日本語教師の資質 6-1 日本語教師養成機関 日本語学校 大学・大学院 短期・長期 420時間のコース 日本語教育専攻、副専攻、研究 日本語教育能力試験 日本語教師検定 6-2 日本語教師の資質 門倉、筒井、三宅(2006) ①日本語を相対的にとらえられる ②異文化間のコミュニケーションにすぐれている ③学習者が分からないことを噛み砕いてわかる様 になるまで教えられる。 ④インタラクティブ(双方向的)なスタイルを持つ ⑤シュミレーション、プロジェクトワークなどを含む さまざまな教育方法に習熟している。 ⑥生活面の支援を含む全人間的教育をする。 6-2 日本語教師の資質 日本語教育の多様化 子弟の教育による国語教育との連携 日本人向けの初年時教育や言語表現教育(ア カデミックジャパニーズ) 集中講義(2学期) 滝沢直宏先生(名古屋大学) 3月13日(五)、16日(一)、17日(二) コーパス言語学 コンピュータ 小川直之先生(國學院大學) 3月23日(一)、24日(二)、26日(四)、27日(五) 民俗学
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