ヒッグス粒子と超対称性の 発見が切り拓く21世紀の 素粒子物理学

新学術領域研究(研究領域提案型)申請課題
テラスケールの地平線を切り拓く
先端加速器による素粒子物理
LHCが7TeVでの
運転を開始した
直後のイベント
(2010年3月30日)
領域代表者
小林富雄
東京大学素粒子物理国際研究センター
東京大学理学系研究科
駒宮幸男、浅井祥仁
1
研究の目的
エネルギーフロンティア(最高エネルギー)での
素粒子研究を結集し、新たな研究領域を創成する。
・LHC実験によりテラスケール(TeVエネルギー領域)
でのヒッグス粒子や超対称性粒子などの発見を目指す
・LHCでの成果を次世代のエネルギーフロンティア物理
研究へつなげる
・テラスケール素粒子物理の成果を宇宙物理学などへ
展開する
今後5年間で、テラスケールでの発見ができるのはLHCだけである。
2
研究の
学術的意義
真空の構造
暗黒物質
時空の構造
余剰次元
前人未到のテラスケールでの
研究は、このような根本的
問題に挑むことを可能にする
3
LHC加速器とATLAS実験
LHC加速器
・ LHCはCERNで建設された14TeV の
陽子・陽子衝突型加速器(周長27km)
・ 超伝導磁石(8.3T dipole)を使用
・ 建設に14年
・ 2010年3月30日、7 TeVでのビーム衝突
実験開始
ATLAS実験
(これまでの最高エネルギーは米国Tevatronの2TeV)
4
ATLAS実験装置
(A Toroidal LHC Apparatus)
内部飛跡検出器
ミューオントリガー
検出器
超伝導ソレノイド磁石
・直径 22m、長さ 44m、重さ 7000t
・世界最大の超伝導トロイド磁石
・37ヵ国、2990名の研究者による国際共同実験
・日本グループ(15の大学・研究所、110名)は
ミューオントリガー検出器、内部飛跡検出器、
超伝導ソレノイド磁石など、主要部分を建設
5
ATLAS実験:日本の貢献
内部飛跡検出器(半導体検出器)
超伝導ソレノイド磁石
LHC Computing Grid
地域解析センター
ミューオントリガー検出器
LHC加速器建設でもビーム最終
収束超伝導四極磁石の建設に貢献
・14年にわたる建設とコミッショニングを経て、安定に運転されている
・これからの5年間はLHCでの発見が期待される重要な時期
→ 物理解析においても大きな貢献をしたい
6
ヒッグス粒子(質量の起源)
・ヒッグス粒子はゲージ対称性を自発的に破り、素粒子に質量を与える
・ヒッグス粒子は標準理論で唯一未発見の粒子
・これまでの実験から、ヒッグス粒子の質量は115~200 GeVの間にある
と予想されている
・ヒッグス粒子の存在は「真空」の概念を変える
H → gg + 2jets
2014年(本領域研究最終年度)までには
標準理論ヒッグス粒子の確実な発見(5s以上)が可能
7
超対称性粒子(SUSY)
・標準理論の粒子とスピンが
1/2だけ異なる粒子
・階層性問題の解決
・重力を含む力の統一にも必要
・力の大統一が実現
・暗黒物質の最有力候補
階層性問題や力の大統一、
暗黒物質に必要な超対称性は
テラスケールに存在
8
LHC実験によるSUSY探索
超対称性粒子イベントの
特徴は、見えない粒子
(暗黒物質)による
アンバランスさ
・LHCは、SUSYが存在すれば
暗黒物質ファクトリーとなる
・予想もされない新しい物理が
出る可能性もあり(エネルギー
フロンティア)、これらは
理論研究に方向性を与える
・最も重要な物理の成果が期待
されるのがこれからの5年間
9
領域の構成
LHCでの物理研究
理論研究
テラスケール物理
宇宙物理への展開
・LHCでの発見を
物理の原理に高める
・超伝導加速器や
最先端の検出器技術
を応用、発展
次世代エネルギーフロンティア
加速器実験に向けた基礎研究
10
次世代エネルギーフロンティア
加速器実験に向けた基礎研究
LHCでの発見を更に発展
→ SLHC, DLHC:より高いエネルギーで発見
→ Linear Collider (e+e-):
バックグラウンドの少ない環境で精密測定、発見
鍵となる技術の集中的な開発研究(例)
・新しい超伝導線材:NbTi → Nb3Al
臨界電流密度が高く、かつ機械ひずみ
にも強い(→ SLHC, DLHC)
・超伝導高周波加速空洞
高加速電場勾配の安定的な実現(→ LC)
11
重複応募の制限について
1)特別推進研究との重複応募
森俊則(東京大学素粒子物理国際研究センター):
計画研究B02「次世代加速器での物理研究及び技術開発」の研究分担者
↔ 特別推進研究「MEG実験‐レプトンフレーバーの破れから大統一理論へ」
の研究代表者
⇒ 森は研究分担者を辞退し、計画研究代表・駒宮と
連携研究者の大谷が替わって研究を行う
2)基盤研究(S)との重複応募
該当なし
12
まとめ
本領域研究は、ヒッグス粒子や超対称性など素粒子物理学の
根幹に関わる新粒子や新現象をLHC実験で確実に発見し、
それを次世代のエネルギーフロンティア実験へと導く。
テラスケールで発見される新しい
物理は、「物質」や「力」などの
研究ばかりでなく、その入れ物となる
「真空」や「時空」の研究へと発展し、
新しい自然観を創造する。
またそれらは素粒子物理学のみならず、
宇宙の進化の解明など、科学全般へ
計り知れない貢献をもたらす。
13
予備のスライド
14
研究組織
X01
A01
A02
B01
B02
C01
代表
小林(東大ICEPP)
浅井(東大理)
徳宿(KEK)
藏重(神戸大)
駒宮(東大理)
萩原(KEK)
研究分担者・連携研究者
は領域全体で36名
( 13の大学・研究所)
X01
総括班
(企画調整、広報・
アウトリーチ)
公募研究
15
経費について
国際共同実験ATLAS(約3000人のコラボレーション)内の日本グループ:
・110人が参加(国内の高エネルギー実験グループとしては最大)
・主要検出器提案・建設の実績が高く評価(LHC加速器建設へも貢献)
・国際データ解析網へも貢献
・物理解析の準備を主導的に行った
(ヒッグス粒子、超対称性などの主要な物理にフォーカス)
今後、諸外国の研究者と競争・協力して成果を上げるためには、
現地に研究者が長期滞在し、協力して研究を進めることが必須。
エネルギーフロンティア実験の旅費はこれまで主に科研費で賄ってきた。
・LEP-I, LEP-II(~平成10年度): 国際学術研究
・LEP-II(平成11年度~15年度): 特定領域研究(B)
・ATLAS(平成11年度~16年度): 特定領域研究(B)
・ATLAS & MEG(平成16年度~21年度): 特定領域研究
次世代エネルギーフロンティア実験へ向けての加速器・検出器の
開発研究や、テラスケール物理の理論研究を広範囲にわたって
行い、かつ国際的にもリーダーシップを発揮するためには、
多くの研究者を結集する必要がある。
16