あなたは誰とどこで暮らし終えますか? ~「限界集落」と「高齢者専用賃貸住宅」制度を考える~ 埼玉県立大学 保健医療福祉学部 社会福祉学科 菊池健夫 ・私たちの「終の棲家」 図表1 死亡場所の年次推移 89万人 62万人 自宅 医療機関 高齢者福祉施設 資料:厚生労働省「人口動態統計」 20 06 20 04 20 00 19 90 19 80 19 70 13万人 19 60 9.4万人 19 52 100 万 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 その他 1952年 病院 12 % 自宅 81 % 高齢者福祉施設 なし ↓ 2006年 病院 82 % 自宅 12 % 高齢者福祉施設 3 % ・「介護難民」 図表2 「療養病床」6割削減…医療制度改革 資料:読売新聞 2006年2月27日(web版) 2006年度 医療保険適用型 25 万床 介護保険適用型 13 万床 ↓ 2012年度 医療保険適用型 15 万床 介護保険適用型 全廃 老人保健施設 15~17 万床 ケアハウス、老人 ホーム、自宅 6~8 万床 ・「限界集落」 「65歳以上の高齢者が集落人口の半数を超え、 冠婚葬祭をはじめ田役、道役などの社会的 共同生活の維持が困難な状態に置かれてい る集落」 (大野晃・長野大学教授、『農業と経済』、200 5年3月号) ・「限界集落」の特徴 中山間地や離島に多い 過疎化や高齢化の進行に併行 ↓ 集落の自治、生活道路の管理、冠婚葬祭など、共同体 としての機能が急速に衰え、やがて消滅する 就学児童より下の世代が存在しない 独居老人やその予備軍のみが残っている 病身者も少なくない ↓ 共同体として生きてゆくためには「限界」である ・限界集落の増加 図表3 地域別限界自治体の将来予測 限界自治体数 2000年 2015年 2030年 市町村数 北海道 1 5 212 東北 6 13 510 関東 7 8 535 7 7 267 1 268 1 7 111 4 17 450 近畿 1 4 323 中国 12 28 318 四国 15 30 216 4 31 570 58 151 3780 北関東 南関東 北陸 中部 1 九州・沖縄 全国合計 1 資料:『農業と経済』、2005年5月号 村に人が住まない 山野が手入れされない =保水力の減少 ↓ 渇水や鉄砲水などの影響が 上流から下流へと拡大 河川の栄養分が失われ、漁 獲高が減少 ↓ 過疎地の限界集落は、都市 生活にも大きな影響 ・都市の中の「限界集落」 「限界集落」の定義 「65歳以上の高齢者が集落人口の半数を超え、冠婚葬祭をはじめ田役、道役 などの社会的共同生活の維持が困難な状態に置かれている集落」 ・・・ 「限界集合住宅」の定義(仮) 1.「65歳以上の高齢者が住戸人口の半数を超え、維持や管理などの社会的 “集合”生活の維持が困難な状態に置かれている集合住宅」 2.「空室が全住戸の半数を超え、維持や管理などの社会的"集合"生活の維 持が困難な状態に置かれている集合住宅」 ・都市の中の「限界集落」 図表4 「ゴーストマンション」の事例(群馬県内) Aマンション 30区画内16区画空室。91年分譲、高崎市郊外、地上3階地下3階、斜面 地下部分がすべて空室。(管理)業者倒産が原因。委託管理。 Bマンション 20区画内全戸空室。91年分譲、藤岡市未線引き地区、5階。開発業者が資 金繰り困難になり、一部下請けに押し付け、社宅として買収した企業も社員 に払い下げた結果、管理が崩壊した。共用部分の電気代未納で電力供給を 打ち切られ全戸空室化した。転売転貸ができず競売多発ながら不調続きで ある。 Fマンション 店舗、事務所、住宅の複合ビル、58区画。78年分譲、前橋市中心街、10 階。4階以上が住宅だが空室も多い。店舗事務所はすべて空室。委託管理、 競売事件多数。2005年に1戸5万円の競売予告があった。50万円で落札 した。 資料:松本恭治・高崎健康福祉大学教授、『都市問題』、2006年5月号 ・「限界集落」と「限界集合住宅」の共通点 ・「限界集落」 「~社会的共同生活の維持が困難な状態に置か れている集落」 … ・「限界集合住宅」 「~維持や管理などの社会的"集合"生活の維 持が困難な状態に置かれている集合住宅」 ↓ 社会的生活維持の崩壊が直接的要因 ・「高齢者専用賃貸住宅」 ・高齢者の入居を拒まない「高齢者円滑入居賃貸住宅」のうち、専ら高齢 者を賃借人とする賃貸住宅 ・「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(施行:平成13年8月5日) ・全国で約650カ所、1万5000戸が建設中。 ・経営母体は民間企業から社会福祉法人、NPO(非営利組織)など様々。 ・サービス内容も、単なる部屋貸しから、緊急通報で看護師や医師が24 時間駆けつける体制を敷くところまで ↑ ・介護や医療の保険サービスは内部化されず、居住者が必要に応じて 訪問介護、医療など外部からサービスを受ける ・サービスの条件は契約によって変化 ・「高齢者専用賃貸住宅」 対象 高齢者(60歳以上)単身 夫婦世帯等(入居に係る収入要件なし) 基準 戸数 5戸以上 規模 原則として25m2以上/戸 (居間、食堂等を共同して利用する場合には18m2以上) 構造 原則として耐火構造又は準耐火構造であること 高齢者の身体機能に対応した設計、設備であること 緊急時に対応したサービスを受けうること ・国の支援 厚生労働省 団地内やその周辺に訪問介護ステーション、 グループホーム、診療所などを新設する場合 交付金 国土交通省 団地内で土地を借りる介護事業者たちの賃 料の軽減策を導入 ・地域子育て支援拠点事業 ひろば型 常設のつどいの場を設け、地域の子育て支援機能の充実を図る取組を実施 公共施設空きスペース、商店街空き店舗、民家、マンション・アパートの一室等を活用 市民 センター型 地域の子育て支援情報の収集・提供に努め、子育て全般に関する専門的な支援を行 う拠点として機能すると共に、地域支援活動を実施 保育所、医療施設等で実施するほか、公共施設等で実施 保育士等2名以上 児童館型 民営の児童館内で一定時間、つどいの場を設け、子育て支援活動従事者による地域 の子育て支援のための取組を実施 児童館 市民+職員 ・「ひろば型」地域子育て支援拠点事業 実施形態 ①中・高校生や大学生等ボランティアの日常的な 受入・養成の実施 ②世代間や異年齢児童との交流の継続的な実施 ③父親サークルの育成など父親のグループづくり を促進する継続的な取組の実施 ④公民館、街区公園、プレーパーク等の子育て親 子が集まる場に、職員が定期的に出向き、必要 な支援や見守り等を行う取組の実施 ・高齢者の子育て(=「孫育て」)応援事業の場 登下校時に通学路に立ち子ども達を見守る 子どもの一時預かり 学校の延長ではない人間関係の構築 ↑↓ 世代間交流 目的をもって哲学を伝える場の提供 老いの受容 自宅で最期まで住み続けるために 1.住まいを所有しており、退去を求められないこと 2.家族が同居しているか、単身ならば老後資金にゆと りがあること 3.自分のスペースが確保され、比較的広い住居である こと 4.自立心が旺盛なこと 5.自己管理ができること 6.地域に親しい知人、親族がいること 7.身近にホームドクターがいること
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