パノラマ動画像モデルによる 仮想空間表現システムの研究 工学研究科 電子情報エレクトロニクス講座 田渕 善久 画像工学分野 はじめに 従来の多くの仮想空間システム CG利用(現実感が低い) 実写利用(視点固定、静止環境) →臨場感の欠如 目的: 臨場感 手軽に利用可能 本研究はパノラマ動画像を利用する新しいVR (仮想現実空間表現)システムを提案 本研究の背景 ○ポリゴンベースVRシステム: 幾何情報保持。仮想空間内での自由度が高い 臨場感を増すには緻密な三次元モデリングとモーションキャプチャが必要 複雑な環境を描画するにはマシンパワーが必要。既存の環境構築に不向き ○イメージベースVRシステム: 実在する環境(実写)のパノラマ画像を利用 計算機パワーを要求しない現実感の高いシステムが実現可能。 視点の移動不可。静止環境のみ。 本研究では3Dモデリング、マシンパワーを必要とせず、 (撮影時)視点移 動可能な、臨場感のある環境を表現するシステムを提案 従来研究 QuickTimeVR 静止画パノラマ利用。 パノラマ作成には、一台のカメラを回転して撮影→縫い合わせる 動画パノラマのリアルタイム作成には不向き。(複数台のカメラ) 全方位視覚センサ(Hyper Omni Vision) 独自設計の二葉双曲面ミラーを使用 座標変換計算は、画像内に格子を設け格子点のみ計算 ハードウェアテクスチャマッピング (Indigo2MaximumImpact) を利用 本研究の構成要素 1)イメージベース法 2)テーブル参照(3Dハードウェアを使わない) 3)動画像利用 4)球面ミラー利用 (1)イメージベース法 球面パノラマ画像(緯度経度座標系)を入力とし て、ディスプレイ上に仮想カメラ画像を表示 パノラマ画像 パノラマ画像 ディスプレイ 変換画像 仮想カメラの視点 イメージベース法による描画例 (2)テーブル参照(3)動画形式 3Dハードウェアを利用しない 長所: 家庭用PCが利用可能 短所: 座標計算コスト大→ テーブル参照により計算コスト削減 ソフトウェアによる補間処理コスト大 Mpegなどの既存の動画圧縮フォーマットを利用 長所: 高速デコード、高圧縮な既存のライブラリが利用可能 短所: 無駄な転送領域が存在する。 座標変換式のテーブル化 カメラの向きに対する画面上の点と入力画像 の参照点を計算 カメラ向き(α、β)ディスプレイ座標(x,y) 球面座標(Θ、φ) 座標変換式 (Θ,Φ) 入力画像 カメラの向きと独立 1 x / y A tan 1 2 2 B tan ( y / x d ) Tbl1( x) Tbl 2( x, y ) β (x,y) ディスプレイ上の点からの対応点を求める →無駄な転送を避ける ディスプレイ (3)球面ミラー パノラマ動画像作成 1)2葉双曲面ミラー: 焦点を中心とする透視投影画像に容易に変換可能 2)複数台のカメラ画像: つなぎ合わせることで作成 3)球面ミラー: 光学特性が特殊。手軽に入手可能 球面レンズ 球面ミラー カメラを天井方向に向け、ミラーに 映り込む映像を撮影 カメラ 反射視線が一点に収束しない 球面ミラーの問題点 ミラー 撮影時視野 仮想カメラ視点 仮想カメラ視野 入力画像 撮影視点 撮影時と再生時で視線方向が異なる 仮想カメラの視線から入力画像への対応点を求めるのが困難 球面ミラーを利用するために 入力パノラマ画像は定点で観測されなくてはならない。 画素毎に距離情報が得られると 仮想空間内に単純な形状の壁を配置 擬似的に画素毎の距離情報を得る。 リサンプリングの回数が増すので、リアルタイム処理には向かない。 距離 ミラー 仮想カメラ 入力画像 壁 球面ミラーの利用手順 1)入力画像の各画素に対する視線ベクトルから球ミラーでの反射ベ クトルと与えた壁の交点を計算 2)仮想カメラの視線ベクトルと壁の交点を計算 3) 2)に対するピクセル値を1)の線形補間により計算 球面画像(緯度経度座標系)を作成 視界 システムの実装 前処理 球面ミラー利用 距離情報は単純な形状(直方体、円柱)を3D空間に配置し、 ミラーによる反 射視線との交点を利用。 動画圧縮は既存のフォーマットを利用(1/20~1/50程度) Bi-Linear補間実装 描画システム Windows上で動作。 DirectX、ActiveMovieライブラリを使用 マウスによる仮想カメラのパン、ズーム機能 256×256(24bitカラー)での描画 Windows標準のAVIファイルMpegを利用可能 Bi-Linear補間実装 システムデータフロー図 前処理部 実写ミラー画像 CG 距離情報 距離情報(部屋のサイズ カメラ位置) 補間処理 球面画像 動画圧縮 パノラマ動画ファイル パノラマ動画ファイル 描画部 描画部 パノラマ動画ファイル 動画展開 球面画像 マウス入力 座標変換 座標変換 テーブル 補間処理 描画処理 ディスプレイ 実験例1(CG) (動作環境 WindowsNT/PentiumII 450x2) 実験2(部屋) 距離情報 (部屋のサイズ カメラ位置) 2m 4m Top View 2m Side View 実験3 実写(自転車) 10m 10m Top View 2m 2m Side View 入力画像の問題点(1) 画面上方は解像度が低い (視野角/20Pixel) 入力画像の問題点(2) 動きが激しいとインターレースの影響で画面が荒れる。 NTSC動画取り込み DV機器(静止画取り込み) まとめ 実写パノラマ動画像を利用可能な手軽な仮想空間表現 システム プロトタイプを作成 CG及び実写を入力とする仮想空間を作成 今後の課題 現在のシステムでは解像度が不足 普及しつつあるDV動画取り込み機器を導入することで画質の 向上を目指す 一つの入力画像から多人数のユーザーが任意の方向を 観察可能なシステムである 監視カメラやTV会議システムへの適用
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