経営理念論第10回 トヨタ自動車とホンダ技研工業の 経営理念 トヨタ自動車株式会社 • トヨタウェイ2001 「暗黙知」としてトヨタの中に受け継がれている経営上の信念・ 価値観を誰の目にも見え、体系だって理解できるよう、整理・ 集約したもの。 2001年4月 トヨタ自動車株式会社 取締役社長 張富士夫 著者 梶原一明 ビジネス社発行「トヨタウェイ 進化する最強の経営術」 より抜粋 トヨタウェイ2001 Teamwork • 「上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実 を挙ぐべし。」(豊田綱領) • 「温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作 興すべし。」 (豊田綱領) • 各自の受持ち任務に満腔の誠を致せ、集ま りて偉大の力を生ず、連鎖も一環の集まりな り。」(豊田喜一郎) トヨタウェイ2001② Teamwork「人材を育成し、個の力を結集す る」 人材育成の重視 部下育成 上司は部下を、先任者は後任者を啓発育成する。その過程 で、部下、後任者から学び、相互に知識を交換、習得する。 ●「人材こそ経営の要であり、企業の盛衰をきめるのは人材で ある。」(豊田英二) トヨタウェイ2001③ リーダーシップ 部下には、課題と達成感と成長の機会を与える。 また、部下の業績を熟知し、部下のために為した事 の責任を取る度量を持つことが必要である。そのこ とが、部下をして責任感を抱かしめることになる。 ●「仮にひとつの決断をしても、経営トップは単に旗振 り役に過ぎない。その振った旗にみんながついてき てくれなかったらダメだ。」(豊田英二) トヨタウェイ2001④ 個人の人間性尊重と、チームの総合力発揮 個人の人間性尊重 個々人には、誰でも、課題を自律的に達成していく創造力が ある。メンバーの人間性(考える力や動機)を尊重し、これを 引き出すよう努める。 ●「人間の一生というのは何時間の集まりだから、一時間という 時間も一生、すなわち命だ。従業員は自分の一生のうちの 大切な時間を会社に提供してくれるわけだから、有効に使わ なければ、命を無駄遣いすることになる。」(豊田英二) トヨタウェイ2001⑤ Respect ●「障子を開けてみよ。外は広い」(豊田佐吉) フェア、聞く耳を持つ文化 何事にもフェアであり、人に対して公平かつ素直に接 する。誰の意見であろうと、筋の通った意見には、真 摯に耳を傾ける。 ●「従業員を欺いてはならない・」(豊田英二) トヨタウェイ2001⑥ Respect「他を尊重し、誠実に相互理解に努め、 お互いの責任を果たす。」 ステークホルダーの尊重 企業は、付加価値の提供により、お客様やその他のステークホ ルダーに満足いただき、そのお陰で対価(利益)を得て、存 続していることを自覚しなければいけない。 ●「いかなる大企業といえども、社会の好意ある支援がなけれ ば発展はおろか、存続すら危うくなる。」(豊田英二) トヨタウェイ2001⑦ Genchi Genbutsu 実践主義、達成指向 愚直、空理空論の排除 ●「出来ないと言う前にまずやってみろ。」(豊田佐吉) 一気呵成、スピード 決断がくだされれば、納期を遵守すべく、全員一丸となって、短 期集中で取組む ●「凡て事業は、やり掛かったら、一瀉(いっしゃ)千里にやるの が、却って経済的であります。」(豊田喜一郎) トヨタウェイ2001⑧ Genchi Genbutsu「現地現物で本質を見極 め、素早く合意、決断し、全力で実行する」 課題把握と真因追求 課題(目標と現状との乖離)を深く分析し、本質を見極め、真因 の追求を行う。 ●「先入観を持たず、白紙になって生産現場を観察せよ。対象 に対して5回の「なぜ」を繰り返せ。」(大野耐一) 事実の徹底確認、早期検討、 効果的合意形成 コンセンサス重視、目標の共有化、定量指向、プロセス重視 トヨタウェイ2001⑨ Kaizen • 「・・・一本のピンも其の働きは国家に繋がる。 各自の業務に無駄あるべからず。」(豊田喜 一郎) 後工程尊重、ジャストインタイム 全ての工程において、後工程をお客様とみなし、必要とされる 質・内容のモノ、サービスを、必要なタイミングで、必要なだ け提供する。 組織的学習の徹底 状況の共有化、失敗からの学習 トヨタウェイ2001⑩ Kaizen「常に進化、革新を追求し、絶え間なく 改善に取組む。」 改善、革新の追求 絶え間ない改善 一時の成功に安住せず、より高い挑戦目標を掲げ、絶え間無 い改善を実践する。そうすることにより、革新を呼び込む。 ●「我々は良いものを造っていこうということで、一日一日改良 している。」 創意くふう、ベンチマーキング、ブレークスルーの追及、タブー の排除、原価低減による利益追求、ムダ、ムラ、ムリの排除 トヨタウェイ2001⑪ Challenge 長期指向 先見性、長期的予見 複雑な事象を全体として解明し、足元の状況に左右されることなく、長期を 見通して本質的な動向を把握する。 ●「企業経営という観点からは『時代を読む』ことが大切だ。」(豊田英二) 現実を直視した長期計画 長期的成功を常に念頭に置きながら、現実に即応した対応を計画し、柔軟 なシナリオを策定し展開する。 ●「大胆な構想と着実な実行。」(豊田喜一郎) 熟慮と決断 実証重視、必要性の納得、リスクへの覚悟、重点指向、全体最適 トヨタウェイ2001⑫ Challenge「夢の実現に向けて、ビジョンを掲 げ、勇気と創造力をもって挑戦する。」 「モノづくり」を核とした付加価値の創造 ●「ソフトばかり作ってどうなる?製造業あってのソフトウェアな んだ。」(豊田英二) 夢への情熱、進取の気風 自己の夢の実現に向けて、情熱を失わず、喜びと創造力と勇 気をもって挑戦し続ける意欲が、価値創造の源泉である。 ●「3つのC:Creativity,Challenge and Courage」(豊田 章一郎) ホンダ技研工業株式会社 • 「ホンダイズム」という言葉がある。 • 創業者・本田宗一郎の精神を体現した言葉であり、其の根 底には、「会社は従業員を守るものだ」という思想が脈々と流 れている。 • 社内に整備された完璧な医療厚生制度、そして安易なリスト ラや不採算部門廃止の「荒療治」はなるべく避け、本業の増 収増益でいかなる不況時代も乗り越えてきた実力、 • それがまさに、ホンダイズムという思想が生んだ結果である。 赤塚行雄監修日本文芸社発行「本田宗一郎の実践創造術「勝つ組織」より 「負けない組織を作る!より抜粋 ホンダイズム① • 資産二百億円の男が感謝したことは「貧乏で 育ったこと」 • 貧乏な人間は頼るものがないんだ。だから独立精神が旺盛 になる。そこがいいんだ」 • 追い詰められると、やがて突拍子もない知恵が湧いて来て、 半ばやけくそで実行すると、思わぬ「結果」を呼び込む。 • 「ちょっとトイレを貸してくれますか」誰もがそう 言って入ってくる営業所を目指せ! • 誰もが気軽にトイレを借りに来れるように、全社員が入り口 の雰囲気には最新の注意を払うべし」 ホンダイズム② • 人生は短い。わずかな時間のエレベーターの中でも ムスッとして過ごしたらもったいないじゃないか! • 「人生は短い。ほんのつかの間でも、つまんない時間を過ごすのはもっ たいない」 • 場が一気に変わる。そして、各人がそれぞれの階で降りていきながら、 どこか温かいものを感じて職場についてゆくー • 倒産寸前の会社を残して一人旅立っても、日本の 工業生産を変えるほどの「土産」を持って帰る • マイナスネジは手作業装着、クロスネジなら機械で装着できるとヨーロッ パから持って帰った ホンダイズム③ • 何事も現場でものを考えるクセをつけろ! 身体に染み付いた実践心理術で難問も突破 • 「下手な考え、休むに似たり」「現場を見て、策を練ろう」 • 人が喜んで働かないのはなぜか? 社員が喜んで仕事をしないのは、なぜなのか • 「本当に自分がやりたいことを仕事にし、喜んで、誇りを持って働いてい ないからだ」 • 「仕事だからといってやってる労働は、何も生み出さない」 • 「ネジ一本、ビス一本、単に仕事をこなすつもりで締めていると緩みがで きるぞ・人様の安全を俺たちが担っているんだと思って、スパナを握って ろ」 ホンダイズム④ • 平社員の「意見」にも素直に耳を傾けよ • 大抜擢が会社や仕事の欠点を立て直す • 「手紙を読んだ。もう少し詳しく教えてくれよ」 • • 「わかった。お前の言う通りにやろう。お前の言う通りに、やれ」 「そうだ。お前の意見だからお前がやれ、お前が今日から責任者だ! • 「こういう人間は早くホンダを辞めるべきだ」 と言下に切って棄てた「こういう人間」とは? • 「自分主義」「自分本位」 • 「仕事は本来苦労して、犠牲の精神でやるもんじゃあないし、能率を考え ながらやるもんでもないんだ。だって、俺たちは遊んでる時が一番楽しく て能率的だろう? ホンダイズム⑤ • 宗一郎ほどの非合理的人間はいない!? • 人々に愛され続けたその「本当の理由」 • 「地震大国だから、いつ地震が来てもいいように外側には気をつけろ。窓 ガラスが落ちて通行人が怪我したら、すみませんじゃすまないぞ」 • 「人を動かさずに、製品を動かせ」 • 「最も非合理的な経営者」 • 「社員は地元のものを買い、地元にお金を落とせ」 • 「工場はだだっ広い。しかし、それが盲点になって、地域の防犯に影響が あっては申し訳ない。工場周辺は、どんなに人の通行量が少なくても、ガ ンガンに明るく照明をつけろよ。ガンガンに。いいな。車のヘッドライト消 しても、前がよく見えるようにしておけ」 ホンダイズム⑥ • 金の使い方で人はその人を判断する • 公私混同しないリーダーは皆に好かれる • 「俺は仕事に拘るからさ。もう技術の面では絶対に譲らない とこあるだろう?それで金にも拘って、駄々こねてたら誰も俺 なんか相手にしてくれないよ」 • 「何やってんだ!馬鹿野郎!」ストレートな物 言いがホンダの「伝統」 • 「本社にいると毛が抜ける。工場にいると胃が痛くなる」 ホンダイズム⑦ • 「ホラ吹き」トップと、上司の命令に平気で背く 社員がホンダ飛躍の足がかりを作った! • 社長が思いっきりホラを吹き、ナンバー二の藤沢がこれに輪 をかけた大ホラ吹き • “物忘れの天才”とも言われた宗一郎 自宅の場所も忘れて深夜の徘徊、その理由 は? ●「門柱の溶接部分を覚えてるなんて、いかにも、俺らしいだろ う」 ホンダイズム⑧ • 大地震でさえ、己のスプリングボードにしろ! • 経験を活かすも殺すも「受け取り方」次第! • 「転んでもただでは起きない」 • 「人は、大きな商品、仕事、人との出会いで、大飛躍するきっ かけを得る」 • 「車が簡単に燃えないようにするにはどうしたらいいか。木製 部分を金属などに変えられないか」 ホンダイズム⑨ • 何も知らないからこそ言えることがある 愛があるから不可能を可能にする男がいる • 「二サイクルのエンジンは馬力がないねえ。これじゃあいず れ売れなくなる。もっと売るには四サイクルと、倍にしてみて はどうだろう?うちらしい独自の技術で。すぐにできるだろ う? • バタバタは重いねえ。あれ、なんとか半分の重さにできない かな。みんな他社も真似してきて、うちもどっかで差別化図ら ないと、売れなくなってきたし。このままだとジリ貧だよ。いっ そ十四キロを七キロにしたら、どうか。売れるだろう?できな いかな」 • 「藤沢こそが、眠れる宗一郎の能力を引き出した」 ホンダイズム⑩ • 社長を辞任して、まず最初に行ったことはホ ンダの全社員と一人一人会って握手を交すこ と • 「働いてる手じゃないか。立派だよ。俺はこれが一番好きだよ、 こういう手が」 • 「手はねえ、好きだよ。働く人間の手は」 • 「だから、手が汚れてたり、痛んでるのは、働いてきた証拠な んだ。俺はそういう社員たちの手とじかに手を合わせて握手 したかったんだ」 おしまい
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