第417条

債 権 法 の 構 造 (不法行為法:条文別)
債権
第一章 総則
第二章 契約
第三章 事務管理
第四章 不当利得
第五章 不法行為
第709条
第710条
第711条
第712条
第713条
第714条
第715条
第716条
第717条
第718条
第719条
第720条
第721条
第722条
第723条
第724条
不法行為の要件と効果
非財産的損害の賠償
生命侵害に対する慰謝料
未成年者の責任能力
責任弁識能力を欠く者の責任
責任無能力者の監督者の責任
使用者の責任
注文者の責任
土地の工作物の占有者・所有者の責任
動物の占有者の責任
共同不法行為者の責任
正当防衛・緊急避難
損害賠償請求権における胎児の地位
損害賠償の方法、過失相殺
名誉毀損における特則
損害賠償請求権の消滅時効
第709条 不法行為の要件と効果
•
故意又は過失によって他人の権利又は法
律上保護される利益を侵害した者は、これに
よって生じた損害を賠償する責任を負う。
第710条 財産以外の損害の賠償
•
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した
場合又は他人の財産権を侵害した場合のい
ずれであるかを問わず、前条の規定により損
害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害
に対しても、その賠償をしなければならない。
第711条 近親者に対する損害の賠償
•
他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、
配偶者及び子に対しては、その財産権が侵
害されなかった場合においても、損害の賠償
をしなければならない。
第712条 未成年者の責任能力
•
未成年者は、他人に損害を加えた場合にお
いて、自己の行為の責任を弁識するに足りる
知能を備えていなかったときは、その行為に
ついて賠償の責任を負わない。
第713条 責任弁識能力を欠く者の責任
•
精神上の障害により自己の行為の責任を
弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損
害を加えた者は、その賠償の責任を負わな
い。ただし、故意又は過失によって一時的に
その状態を招いたときは、この限りでない。
第714条 責任無能力者の監督義務
者等の責任
• 1 前二条の規定により責任無能力者がその責任
を負わない場合において、その責任無能力者を監
督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者
が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただ
し、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又
はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであった
ときは、この限りでない。
• 2 監督義務者に代わって責任無能力者を監督す
る者も、前項の責任を負う。
第715条 使用者等の責任
• 1 ある事業のために他人を使用する者は、被用者
がその事業の執行について第三者に加えた損害を
賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選
任及びその事業の監督について相当の注意をした
とき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきで
あったときは、この限りでない。
• 2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の
責任を負う。
• 3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者
に対する求償権の行使を妨げない。
第716条 注文者の責任
•
注文者は、請負人がその仕事について第
三者に加えた損害を賠償する責任を負わな
い。ただし、注文又は指図についてその注文
者に過失があったときは、この限りでない。
第717条 土地の工作物等の占有者
及び所有者の責任
• 1 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があること
によって他人に損害を生じたときは、その工作物の
占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責
任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止する
のに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を
賠償しなければならない。
• 2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵が
ある場合について準用する。
• 3 前二項の場合において、損害の原因について他
にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有
者は、その者に対して求償権を行使することができ
る。
第718条 動物の占有者等の責任
• 1 動物の占有者は、その動物が他人に加え
た損害を賠償する責任を負う。ただし、動物
の種類及び性質に従い相当の注意をもって
その管理をしたときは、この限りでない。
• 2 占有者に代わって動物を管理する者も、
前項の責任を負う。
第719条 共同不法行為者の責任
• 1 数人が共同の不法行為によって他人に損
害を加えたときは、各自が連帯してその損害
を賠償する責任を負う。共同行為者のうちい
ずれの者がその損害を加えたかを知ることが
できないときも、同様とする。
• 2 行為者を教唆した者及び幇助した者は、
共同行為者とみなして、前項の規定を適用す
る。
第720条 正当防衛及び緊急避難
• 1 他人の不法行為に対し、自己又は第三者
の権利又は法律上保護される利益を防衛す
るため、やむを得ず加害行為をした者は、損
害賠償の責任を負わない。ただし、被害者か
ら不法行為をした者に対する損害賠償の請
求を妨げない。
• 2 前項の規定は、他人の物から生じた急迫
の危難を避けるためその物を損傷した場合
について準用する。
第721条 損害賠償請求権に関する胎
児の権利能力
•
胎児は、損害賠償の請求権については、既
に生まれたものとみなす。
第722条 損害賠償の方法及び過失相殺
• 1 第四百十七条の規定は、不法行為による
損害賠償について準用する。
• 2 被害者に過失があったときは、裁判所は、
これを考慮して、損害賠償の額を定めること
ができる。
– 第417条 損害賠償は、別段の意思表示がない
ときは、金銭をもってその額を定める。
第723条 名誉毀損における原状回復
•
他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判
所は、被害者の請求により、損害賠償に代え
て、又は損害賠償とともに、名誉を回復する
のに適当な処分を命ずることができる。
第724条 不法行為による損害賠償請求
権の期間の制限
•
不法行為による損害賠償の請求権は、被
害者又はその法定代理人が損害及び加害者
を知った時から三年間行使しないときは、時
効によって消滅する。不法行為の時から二十
年を経過したときも、同様とする。
第416条 損害賠償の範囲
• 1 債務の不履行に対する損害賠償の請求
は、これによって通常生ずべき損害の賠償を
させることをその目的とする。
• 2 特別の事情によって生じた損害であっても、
当事者がその事情を予見し、又は予見するこ
とができたときは、債権者は、その賠償を請
求することができる。
不法行為法の構造
★一般の不法行為(709条)
★特殊の不法行為
1.責任無能力者の監督者責任(714条)
2.使用者責任(715条1項)
3.土地の工作物の占有者と所有者責任(717条1
項)
4.動物の占有者の責任(718条1項)
5.共同不法行為者責任(719条)
不法行為の要件
第709条 ①「故意又は過失によって 」②「他人
の権利又は法律上保護される利益を侵害し
た 」③「者は」④「これによって生じた損害 」を
⑤「賠償する責任 」を負う 。
①加害者に故意又は過失があったこと。→故意又は過失
②被害者の権利が侵害されたこと。→権利侵害
③加害者に責任能力があること(712,713)→責任能力
④被害者に損害が発生し、加害者の加害行為との間に因果関係
が あること。→損害発生の因果関係
⑤被害者に生じた損害が、加害者に賠償させるのが妥当と認め
られる範囲に含まれていること。→賠償範囲の画定
学説の流れ
•
•
•
•
権利拡大説
権利侵害から違法性へ
相関関係説
過失一元説
不法行為責任の要件(1)
違法性の判断基準
• 違法性は客観的要件で、故意・過失は主観
的要件
• 相関関係説は、被害の態様と侵害行為の態
様を違法性の判断基準と考える。
不法行為責任の要件(2)
被害の種類
• 物権への侵害
– 所有物の使用・収益・処分を妨害する行為
– 他人の所有物を滅失・毀損させる行為
– 用益物権や無体財産権の侵害
• 債権への侵害
• 人格権的権利への侵害
– 人の生命・身体・自由・名誉を侵害する行為
不法行為責任の要件(3)
侵害行為の態様
•
•
•
1.刑罰法規違反 刑罰法規に違反する
行為による不法行為は、違法性が一般的に
強い。
2.取締法規違反 行政取締法規の中で、
個人の保護を目的とする法規に違反する法
律行為。
3.公序良俗違反 社会の秩序や風俗に
違反する不法行為
不法行為責任の要件(4)
違法性阻却事由
1.
2.
3.
4.
5.
正当防衛(720条1項)
緊急避難(720条2項)
自力救済
正当業務行為
被害者の承諾
不法行為責任の要件(5)
故意・過失
•
•
故意とは、結果発生に対する認識があること。
過失は結果発生に対する注意義務を怠ること。
具体的過失と抽象的過失
1. 具体的過失というのは具体的行為者の注意
能力を基準にする
2. 抽象的過失と言うのは、標準的な一般人が
ある種類の行為をするにあたって当然支払う
べき注意義務を基準にする
不法行為責任の要件(6)
責任能力
物事の基本的な理解力を欠く者を責任無能力
者とし、不法行為責任を負わさない。
2種類の責任無能力者(712,713条)
1. 未成年者の中で物事の基本的な理解力
を欠く者
2. 心身喪失者=物事の基本的な理解力を
欠く者
不法行為責任の要件(7)
因果関係
因果関係というのは原因・結果の関係
 事実的因果関係 ----- あれなければこれなし
 法的因果関係
 相当因果関係=通常損害+予見可能な特別
損害 --- 416条の類推適用
不法行為の効果(1)
• 損害賠償請求権が発生
1.金銭賠償 これが原則 722条1項
2.原状回復 723条(名誉毀損)
3.差止請求 学説・判例で確立
不法行為の効果(2)
損害賠償請求者
不法行為の直接の被害者が損害賠償請求者
 胎児
 法人
 間接被害者
1. 企業
•
•
反射損害
企業が被
害者の治療費を出した
ケースなど
真正企業損害 社員が
死亡したために売り上
げが減ったケースなど
2.被害者の近親者
•
•
扶養侵害による損害賠償
請求権の発生
被害者の父母・配偶者・子
供に慰謝料請求権発生
(711条)
不法行為の効果(3)
損害賠償額の算定
1. 財産的損害
2. 人身損害
①財産の積極的損害 治療費など
②財産の消極的損害 逸失利益
③精神的損害=慰謝料
逸失利益=死者の年収×働くことのできる年数-生活費-中間利息
不法行為の効果(4)
損害賠償額の調整
1. 損益相殺
 不法行為の被害者が、不法行為によって逆
に利益を受けた場合
2. 過失相殺(722条2項)
 被害者にも過失があるとき
不法行為の効果(5)
損害賠償請求権の性質
1. 譲渡可能性
 財産的損害の賠償請求権は譲渡可能。慰
謝料請求権などの精神的損害の場合は、
譲渡不可。
2. 時効(724条)
 消滅時効 3年
 除斥期間 20年
特殊の不法行為
• 一般の不法行為と特殊の不法行為
– 過失責任、無過失責任、中間責任
• 特殊の不法行為
– 使用者責任(715条) 中間責任
– 責任無能力者の監督義務者の責任(714条)
中間責
任
– 注文者の責任(716条) 中間責任
– 土地工作物責任(717条) 所有者は無過失責任
– 動物占有者の責任(718条) 中間責任
– 共同不法行為(714条)