特別推進研究申請 電磁プローブによるハイパー核の研究

特別推進研究申請
電磁プローブによるハイパー核の研究
平成12年5月17日(水)
東北大学大学院理学研究科
橋本 治
原子核物理とストレンジネス核物理
ストレンジネス核物理
奇妙さ量子数を持つハドロン多体系
Λ、Σ、Ξ...ハイペロンを含む
•ハドロン多体系の構造
•新しい励起相の出現
•バリオン(重粒子)間相互作用
•フレーバーSU(3)
•Multi Strangeness Matterへ
•中性子星のハイペロン混合層
•ストレンジレット等
Λハイパー核と分光研究の意義
•ハドロン多体系のユニークな構造を究明
•芯核励起、糊的役割、深部構造、等
•ΛN間相互作用の究明
•中心力、スピンに依存する相互作用
•バリオン間相互作用の統一的解明
励起状態の崩壊幅が狭い
高精度分光実験が可能
二つの有効な実験的アプローチ
•反応スペクトロスコピー
•ガンマ線スペクトロスコピー
ハイパー原子核の励起状態と崩壊様式
L
n or p
BL
p
Narrow widths
< a few 100 keV
陽子放出
p
207
L Tl
Likar,Rosina,Povh
Bando, Motoba, Yamamoto
Bp
Bn
n
g
208
弱い相互作用による崩壊
中間子崩壊
非中間子崩壊
L Pb
207
γ崩壊
L Pb
Λハイパー核分光のための主な反応
中性子 
陽子 →Λ
コメント
(p+,K+)
(p-,K0)
in-flight (K-,p-)
in-flight (K-,p0)
substitutional
stopped (K-,p-)
stopped (K-,p0)
large yield
(e,e’K0)
(e,e’K+)
virtual (g,K)
stretched, high spin
spin flip, unnatural parity
(p,pK0)
(p,pK+)
virtual (p,K)
(p,K+)
(p,K0)
very large momentum transfer
(K-,p-),(p+,K+), (e,e’K+)反応の比較
Relative Strength
12C(K-,p-)12C
L
FWHM 2MeV
q~100MeV/c  Dl=0
 substitutional states
DS=0
 J=0+
0+
1-
0
12
6
q~300MeV/c  Dl=1,2
 stretched states
DS=0
 J=1-,2+
12C(p+,K+)12C
L
FWHM 2MeV
2+
1-
6
0
12
12C(e,e’K+)12B
L
FWHM
0.6MeV
3++2+
1 +2
12-
0
3+
2+
12
6
Ex(MeV)
q~300MeV/c  Dl=1,2
 stretched states
DS=0,1
 J=2-,3+
電子線によるラムダハイパー核分光





ハイパー核分光の意義
ハイパー核分光は成り立つか
我々はハイパー核分光を確立した
なぜ電子線によるハイパー核分光か
何が必要か
電子線によるラムダハイパー核分光の特徴

高分解能

大強度、良質の電子ビーム(一次ビーム)


陽子をラムダ粒子に変換

中性数が多いラムダハイパー核



小さなビーム・エミッタンス
さらにEXOTICなハイパー核
荷電対称ハイパー核の研究
スピン反転振幅が大きい


スピンに依存する相互作用を解明
ハイパー核構造の研究に有効
Σハイパー核
S=ー2核
K原子
ストレンジネス核物理
弱崩壊
ハイペロン散乱
Lハイパー核研究
日本の理論家の大きな貢献
KEKPSが世界の実験をリード
★
(π、K)スペクトロスコピー
ラムダハイパー核分光を確立
KEK-PS SKSで成功
(p+,K+)反応
1.5- 2 MeV
特定領域「ストレンジネスを持つ原子核」で成功
★ ガンマ線スペクトロスコピー
SKS+Ge、ガンマ線放出状態に対して有効
超高分解能 <3keV
・ハイパー核構造
・ラムダ核子相互作用
・核内ハイペロン弱相互作用
★ Λハイパー核弱崩壊幅の測定
21世紀のハイパー核研究
電子線、光子ビームによるハイパー核生成
本
申
請
東北大理・ジェファーソン研究所共同研究進行中
科研費国際学術等、平成10年9月MOU締結、
国際ワークショップ99年12月
(1) 電磁相互作用によるΛハイパー核生成
(e,e‘K+)反応
高分解能高効率K中間子スペクトロメータ
300keV分解能ハイパ-核分光
(2) 実光子によるストレンジネス生成素過程の研究
中性K中間子測定に重点
(3) 新しいΛハイパー核弱崩壊過程の研究
中間子ビームによるハイパー核生成
JHF, BNL...
Geγ線スペクトロスコピー
超高分解能反応スペクトロスコ
ピー
精密弱崩壊実験
S=-2ハイパー核
ハイペロン散乱
2000.5
エネルギー分解能の重要性
3 MeV resolution spectrum at BNL AGS
<2 MeV resolution spectrum at KEK 12 GeV PS
Sub MeV
A few 100 keV
A comparison of the (p+,K+) reaction and the (e,e’K+) reactions
for the hypernuclear physics
SKS at KEK & HNSS at Jlab
(p+,K+)
SKS
Cross sections
to 12LCgr or 12LBgr
(mb/sr)
(e,e’K+)
HNSS
(e,e’K+)/(p+,K+)
RATIO
10
0.05
(g,K+)
5x10-3
Target thickness
(g/cm2)
1
0.01
10-2
Beam intensity
(particle/sec)
106
109-10
(virtual photon)
K+ momentum
(GeV/c)
0.72
1.2
K+ solid angle
coverage (%)
~ 60 %
(100 msr)
~ 15 %
(6 msr)
~ 0.4
(5 m)
~ 0.4
(8 m)
K+ survival rate(%)
(Flight path)
Overall
103-4
0.25
1
1.25 x 10-1~-2
軽いΛハイパー核のクラスター構造、荷電対称
4
4
LH, LHe
6
6
LHe, LLi
L 粒子
3
3
LH,( LHe)
陽子または中性子
7
7
7
LHe, LLi, LBe
9
LBe
アルファ粒子
肥山、上村
10
LBe,
10
LB,
13
LC
ハイパー核生成反応、世界の実験施設

π、K中間子ビーム



LEAR, SATUNE, COSY, …..
原子核ビーム


12 GeV PS
30 GeV AGS
陽子ビーム


KEK
BNL
BEVALAC(閉鎖), Dubna,AGS
電子及び光子ビーム





INS-Tokyo ES
JLAB
Spring 8
Sendai
MAINZ
1.3 GeV (1999閉鎖)
4 - 6 GeV
8 GeV(光子のみ)
1.2 GeV(光子のみ)
0.8 → 1.5 GeV(2003予定)
研究計画の要点
KEK-PSを主とするこれまでのΛハイパー核分光研究の実績をもとに
ストレンジネス核物理をさらに発展させるために提案
1.連続電子線ビーム
米国ジェファーソン国立研究所
(e,e’K+)反応により
• 軽いΛハイパー核の高分解能分光実験
• p殻より重いΛハイパー核の分光実験
• 重いΛハイパー核の弱崩壊過程の研究
最高分解能反応スペクトロスコピー
2.標識化光子ビーム
東北大学原子核理学研究施設
(g,K0)反応により
•原子核をターゲットとする準自由Λハイペロン生成
•重陽子をターゲットとするg+n→L+n反応の研究
電磁相互作用によるハイペロン生成素過程を究明
電子線による高分解能ラムダハイパー核分光






ジェファーソン研究所電子線加速器が世界唯一の実験施設
 大強度高質連続電子線ビームを安定に供給
2000年3-5月に世界初の(e,e‘K+)反応による1MeV以下のハイ
パー核分光実験に日米共同チームで成功
分解能は既存のK中間子スペクトロメータによって制約されている
Λハイパー核の検出効率もK中間子スペクトロメータの明るさが制約
分解能300keVかつ高効率のラムダハイパー核分光のために大立体角
高分解能K中間子スペクトロメータが必須
ストレンジネス核物理研究に画期的な貢献

高分解能、中性子過剰Λハイパー核
1.0 GeV/c
1.2 GeV/c
1.4 GeV/c
提案するハイパー核スペクトロメータ1
SOS Spectrometer
Resolution 5 x 10
Solid angle 9 msr
New QQD Spectrometer
-4
(Resolution 2 x 10
Solid angle 30 msr )
-4
TOF
K
+
Side View
CHAMBER
0
1m
Side View
+
K
Target
_
D
+
K
D
D
Q
Top View
_
D
D
Q
Q2 Q1
Splitter
Magnet
BEAM
Electron
Beam
(1.645 MeV/c)
Target
Focal Plane
( SSD + Hodoscope )
Beam Dump
ENGE Spectrometer
Resolution 2 x 10
-4
0
1m
提案するハイパー核スペクトロメータ2
To Beam Dump
Design performance of
the kaon spectrometer
configuration
maximum momentum
ENGE
Split-Pole
Spectrometer
dispersion
momentum resolution
New Kaon Spectrometer
solid angle
flight path length
1m
Splitter magnet
Target
angular acceptance
momentum acceptance
maximum dipole field
conductor
Beam
Q+Q+D
1.2 GeV/c
4.7 cm/%
2 10 -4(FWHM)
30 msr
8.2 m
4.3 degrees
10 %
1.6 T
normal
標識化実光子によるハイペロン生成素過程の研究
• これまでの研究
BONN SAPHIR 荷電K中間子測定を中心に電磁相互作用による
ハイペロン生成素過程を研究
INS-ES
標識化光子による原子核(12C)をターゲットとした
12C(g,K+)準自由反応の研究
• 本研究
• 荷電が関与しないハイペロン生成過程の実験的研究
• 電磁相互作用によるストレンジネス生成過程を明らかにする上で
重要な反応
• ジェファーソン研究所における(e,e’K+)反応によるハイパー核生成過程
を研究する上で必須
1.2 GeV 周回電子ビームからの標識化光子ビームを利用
Good Duty Factor
1999年 核理研グループ光子標識化に成功済
東北大学原子核理学施設に設置される中性K中間子スペクトロメータ
200MeV電子ビーム
from LINAC
第2実験室
固体重水素標的
中性K中間子スペクトロメータ
Sweep
Magnet
0.9-1.1GeV
ガンマ線
計測室へ
PMT用高圧電源
フロントエンド
エレクトロニクス
0
5m
ストレッチャーブースターリング
(電子を1.2GeVに加速、保持) 1.2GeV光子発生装置
これまでの経過
•1997-1998
•1997-1999
•1997年8月
•1998年1月
科研費国際学術研究(橋本ーHungerford教授)
学振日米共同研究(橋本ーHungerford教授)
SiΛハイパー核の分光実験提案採択(実験責任者:橋本)
国際ワークショップ(SENDAI98)開催(議長:橋本)
•Spectroscopy of Hypernuclei、8カ国80名参加
•1998年9月 東北大物理教室とJLABとの間にMOU締結
•1999年12月 Jlab sponsored workshop at Hampton Univ., VA
(議長:橋本、TANG教授)
•Strangeness nuclear physics with electromagnetic probes
•2000-2002 学振日米共同研究(田村-Tang教授)
•2000 5月 JLAB 所長Herman Grunder氏から橋本への手紙
•JLABにおけるハイパー核プログラムを支援
•1999年
旧原子核研究所電子シンクロトロンよりTAGXスペクトロメータを
中性K中間子スペクトロメータとして東北大学理学部に移管、
東北大学原子核理学研究施設に設置
申請する研究の意義
1.高分解能、高効率スペクトロメータの導入により、電磁相互作用による
Λハイパー核分光研究が初めて広く適応できるようになる。
2.その結果過去のΛハイパー核反応分光実験の分解能を大きく超えた質の
高いスペクトルが得られ、ハイパー核構造およびハイペロン核子間相互作用に
関する研究が画期的に進展する
3.特に、これまで研究することの出来なかった中性子数が多いハイパー核の生成が
可能となる。従来の実験で測定されている荷電対称なΛハイパー核との比較により
新しいハイパー核状態のあらたな研究の展開がはかられる。
4.スピン反転振幅が大きくスピン反転非反転状態を同時に励起する電磁相互作用の
特長を生かしスピンに依存する相互作用を究明できる。
5.中性子をターゲットとする中性K中間子測定実験により、
電磁相互作用によるハイペロン生成過程研究の鍵となるデータがえられる。
6.我が国のストレンジネス核物理におけるこれまでの主導的役割をさらに発展させる
とともに、21世紀のJHF、統合計画へ向けて国際共同研究が進展する。
電子線によるΛハイパー核分光の有効性
Relative Strength
q~100MeV/c  Dl=0
 substitutional states
DS=0
 J=0+
0+
12C(K-,p-)12C
L
FWHM 2MeV
1-
0
12
6
q~300MeV/c  Dl=1,2
 stretched states
DS=0
 J=1-,2+
12C(p+,K+)12C
L
2+
FWHM 2MeV
12+
6
0
12C(e,e’K+)12B
L
FWHM 0.6MeV
1-+21-
2-
0
6
Ex(MeV)
12
3++2+
3+
2+
12
q~300MeV/c  Dl=1,2
 stretched states
DS=0,1
 J=2-,3+
実施年次計画
平成12年度
スペクトロメータ設計
Q、D磁石鉄心製作
電子線による実験
(ジェファーソン研究
所)
(加藤、藤井)
TOF検出器
SSD検出器 (田村)
テストベンチ
平成13年度
Q,D磁石
コイル製作
ドリフトチェンバー
SSD読出
(橋本)
既存スペクトロメータによる1MeV以下の分光実験
p殻Λハイパー核、中重Λハイパー核分光
600keV分解能
重いΛハイパー核の核分裂予備実験
実験は米国ジェファーソン研究所で行われる。
検出器調整、磁石部品製作は国内で行われる。
平成14年度
平成15年度
架台製作
磁石部品組立
28Si,51V(e,e’K+)実験
300keV
新スペクトロメータ組立
新スペクトロメータ調整実験
12C(e,e’K+),7Li(e,e’K+)実験、
300keV目標
ハイパー核弱崩壊核分裂実験
磁気能率測定R&D実験
中性K中間子検出器整備
固体重水素ターゲット設計製作(高橋、他)
D(γ、K0)Λn予備実験
データ収集、解析
D(γ、K0)Λp本実験
データ収集、解析
解析、発表
電子線による実験
(ジェファーソン研究
所)
実施年次計画2
平成12年度
平成13年度
スペクトロメータ設計
Q、D磁石鉄心製作
Q,D磁石
コイル製作
(加藤、藤井)
TOF検出器
SSD検出器(田村)
テストベンチ
ドリフトチェン
バー
SSD読出
(橋本)
平成14年度
28Si,51V(e,e’K+)実験
新スペクトロメータ組立
300keV
新スペクトロメータ調整実験
12C(e,e’K+),7Li(e,e’K+)
実験、
300keV目標
解析、発表
ハイパー核弱崩壊核分裂実験
磁気能率測定R&D実験
中性K中間子検出器整備
固体重水素ターゲット設計製作(高橋、他)
D(γ、K0)Λn予備実験
データ収集、解析
平成16年度
架台製作
磁石部品組立
既存スペクトロメータによる1MeV以下の分光実験
p殻Λハイパー核、中重Λハイパー核分光
600keV分解能
重いΛハイパー核の核分裂予備実験
実験は米国ジェファーソン研究所で行われる。
検出器調整、磁石部品製作は国内で行われる。
平成15年度
D(γ、K0)Λp本実験
データ収集、解析
精密ラムダハイパー核分光
KEKーPSのSKS実験でラムダハイパー核分光を確立
分解能 1.5 ~ 2 MeV FWHM
反応スペクトロスコピー
直接ハイパー核状態を励起
高い励起状態にも有効
ガンマ線スペクトロスコピー
核子束縛状態に対して有効
Ge検出器
電子線によってsub-MeVさらに0.5MeV以下へ
2ー3keV