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平成24 (2012)年度 綜合D講座
エンジニアのための文章講座
2012.6.25
講師:金沢賢
工学部 電気工学科卒業(1966/3月)
基本ソフトからAP開発まで(CADほか)幅広く経験
くじらい会:電気電子情報工学科同窓会
HP:http://www.geocities.jp/kuzirai2008/index.htm
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本日のレジメ
■エンジニアに求められるもの
・エンジニアリングとは世の中に役立つ製品を作る
こと。目的は、効率化、省力化、確実性、低価格
化、新機能、など
・エンジニアの役割は情報(アイデア)を製品として
具体化すること
・文章力とは、情報を効率的に相手に伝えるワザ
……エンジニアに強く求められる
■考えるためのアイデアを講義できるか
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エンジニアリングの世界
■技術革新のスピード・アップ
・クルマ …車輪は4つだが
・コンピュータ
…ディスク容量 MB→GBへ
■グローバル化の進展
・アジアの人材との協調
…中国、台湾、韓国、ベトナム、など
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エンジニアに求められる力
・普遍的な力/どこでも通用する力
・求められる力が高度化している
――求められるのは――
①英語力(目標はTOEIC)
②変化へ対応する力
仕事の進め方=世界標準
PDCA(Plan Do Check Analyze)
よく考えて仕事を進める。
カイゼン(改善)の重要性
③文章力:情報のスムーズな流れを実現する
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①英語力
企業が要求するもの
・サムスン:社員に求める……900点
・海外出張が頻繁にある ……860点
・商事会社
……750点
・全社員の目標
……550点
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……某巨大企業の社是
THINK
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Think……考えること
◆スムーズに相手に通じますか
◆ 誤解されませんか
◆創造力の発揮
◆想定外とならないように
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②よく考えて仕事を進める
基本はPDCA(Plan Do Check Analyze)
◆Plan:あらゆる可能性を考えて計画を練
る …福島原発の「工程表」のイメージ
◆Do:まよいなく実行する
◆Check:計画通りに進んでいるか結果を
チェックする。
◆Analyze:分析。計画が実現できない場
合は原因を分析して計画に反映する
→カイゼン(改善)のサイクルを回すこと
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③情報をスムーズに伝達する
文章力とは情報を伝達する力
・仕事を動かすこと=アクション志向だ
× 今日の天気予報について
○傘を用意して出かけること
・英語とか日本語に左右されず、どこでも通用するワザ
・情報は受け手によって判断される。
相手に理解されなければ意味をなさない。
相手のストライクゾーンに投げ込むこと
・正確に、要点を洩らさず、誤解されずに
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文書をめぐるトラブル
◆仕様書の記述があいまいのために誤解した
◆議事録をめぐって顧客と水掛け論を繰り返した
◆発注書の記述漏れで外注先からクレーム
◆何回も仕様変更を繰り返して大赤字
◆マニュアルの不備でシステムが立ち上がらない
◆こんな仕様だったとは!思いもよらなかった
◆誤送信メールでお客様に大目玉
◆障害回復手順が運用マニュアルに書いてない
◆メールのやりとりが過激になり顧客関係が悪化
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情報から仕事へ
◆情報とは仕事を動かすための判断材料
◆仕事とは情報に基づいて行動し、ある機
能を実現すること
◆エンジニアの文書とは
・読んだ人に誤りなく行動してもらう
・事実と意見を選び抜いて明快に記述する
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ヒトは情報を処理する
◆文章を書くのは情報伝達行動
……梅棹忠夫
◆ヒトの情報処理のメカニズムをベースに
すれば 基本技術を抽出できる
生命40億年の歴史が
練り上げた情報処理
のメカニズム
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最初の印象で決まる
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全体の様子で決まる
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目的:仕事を動かす
◆文書(情報)によって、人=相手(読み手)を動か
して、正しく間違いのない仕事をしてもらう
→仕事を動かす
<ことば>
・人を動かし、組織を動かし、社会を動かそうと思
うなら、いい文章が書けなければならない
…達意の文章 (立花隆)
・「通じる」ことが大切 (野口悠紀雄)
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基本原則:情報の正確な伝達
冒頭案内:はじめに案内図を示す
重点先行:最初の3行で勝負する
三等分割:分ければ分かる
短文連結:ショートパスでつなぐ
主題再現:もう一度ダメを押す
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(1)冒頭案内
……はじめに案内図/要約を示す
◆読み手とその理解力のレベルを明確に把握す
る。ストライクゾーンを合わせる
◆文書の目的と、伝えるべき内容=仕事を明らか
にする …これから話すことを言う
◆まず要約・全体像などを明らかにして、大から小
への流れをつくる
◆簡単な文書では冒頭案内と重点先行の役割が
重なる →冒頭結論
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まず全体の様子を伝える
読み手が第一に必
要とするものを
要約が求められる。
大→小へ
タイトルが重要な役
割を持つ
例:本書は日本の高速道路の渋滞状況を調査し対策
を提案しています
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(2)重点先行
……大事なことを真っ先に書く。最初の3行
で勝負する
◆重要とは相手(読み手)にとって重要なこと
→重要度は相手によって判断される
◆結論・問題点・主要課題・中心文(トピック
センテンス)など
◆メールの場合:件名が先行部分に相当す
る役割をはたす
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最初の3行で勝負する
案内文などの例:大事なことを真っ先に
・会場はJR秋葉原駅の北口から徒歩3分です
・終了時にはデータベースの回復処理を行うこ
と
……最初にやるべきことを述べ、その後で理由
を述べる
◆タイトル/件名を活用しよう。件名に要約を書く
などの方策を。ダラダラメールは最悪
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(3)三等分割
……分ければ分かる。ブロックで分割しよう
◆マジック・ナンバー3を意識して活用
ヒトの認識メカニズムから合理的・効果的
◆個々のグループには異物を混入させない
◆段落を活用し論理的なまとまりを作る
一つの段落はひとつの考えを表す
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“分かる”とは
分=八+刀
→ 八 ふたつにわける
→ 刀 かたな
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“分ける”こと
分割、分析、分解、分類、
分担、分別、配分、……
→ ・グループを編成する
・違いをはっきりさせる
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マジックナンバー3
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ヒトの認識・理解のメカニズムにとって
なじみが良い数字→”分かりやすさ”につながる
・空間的認識 ――X・Y・Z軸の3次元空間
大・中・小
上・中・下
・時間的認識 ――過去・現在・未来
・論理的認識 ――三段論法
例:問題点は3つあります……①、②、③、……
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例:ソフト生産性の着眼点
3つの視点 S 標準化
A 自動化/ツールの活用
P 人間力/マン・パワー
S
A
P
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(4)短文連結
……ショートパスで確実につなぐ
◆一つの文は長くても50字
◆主語と述語を近づける
◆構造を単純にする
単文が基本。複文を避ける
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長くても50字
◆文の長さは、一息にすっと読める長さ
――短期記憶に収まりきること
◆ひとつのセンテンスは
長くても50字をメドにする
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短文で構成する
例:
13年前までのベル研究所は100万人の従業員
を抱えて米国の通信事業を独占していたAT&
Tの研究部門だった。
→①13年前までベル研はAT&Tの研究部門だっ
た。
②AT&Tには100万人の従業員がいた。
③米国の通信事業を独占していた。
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(5)主題再現
重要なテーマは繰り返す
……時間を置いてくり返す。見直しをくり返す
◆時間・距離を置いて
主題で本論をはさんでくり返す
何回も見直しして書き直す
◆別の表現でくり返す
腕くらいの長さ→3フィートとか
◆もう一度ダメを押す
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大事なテーマをくり返す
最後に言われたことをよく覚えている
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見直しをくり返す
書きっぱなしは「悪文」→見直しが必須
パソコンで見直し・書き直しが容易になった
◆時間を置いて
◆第三者によるチェック
◆チェックリストを用意する
見直しとは
PDCAサイクルの「カイゼン」のこと
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見直しの威力
エンジニアの世界では
「間違いは一度見直せば1/100に減る、
二度見直せば、1/10000に減る」
と言われている。
畑村洋太郎
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参考書:『理科系の作文技術』
木下是雄著、中公新書
→ 卒論を書く前に一度は読んでほしい
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池上彰:わかりやすく<伝える>技術
<わかりやすさ>3つのルール
① 聞き手に「地図」を
② 内容の「見える化」
③ 話の「柱と枝」作り
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もういちど
5つの基本原則
①冒頭案内……まず案内図を出す
②重点先行……最初の3行で勝負する
③三等分割……分ければ分かる
④短文連結……とにかく短い文だ
⑤主題再現……もう一度ダメを押す
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