粘膜内胃癌における活性型誘導シチジン脱アミノ酵素発現と背景粘膜、癌形質発現の解析 九州大学第二病理学教室において1999年から2007年まで病理診断を行った粘膜内胃癌の方を対象としました 【はじめに】 人口10万対 胃腺癌は日本人に多い悪性腫瘍であり、悪性腫瘍による死亡原因の 第2位となっています(図1)。 その胃癌の原因のひとつとしてピロリ菌が周知されていますが、その発癌 経路は未だ不明な部分が残っています。 今回、着目する活性型誘導シチジン脱アミノ酸酵素(以下AID)は本来、 活性型B細胞にのみ発現し、生体の免疫防御に関与しています(図2)。 しかし近年、AIDタンパクが炎症をともなった肝臓や胆嚢に発現することが 報告され、その異所性に発現したAIDタンパクが遺伝子変異、さらには 癌を発生させる可能性が指摘されました。 胃に関してもピロリ菌を感染させた胃上皮細胞にAIDタンパクが発現する 図1.平成18年度人口動態統計 ことが報告されています(Matumoto Y et al, Nature Med 2007)。 【研究内容】 当九州大学第二病理において1999年から2007年までに病理診断された 胃癌の方を対象に切除された胃癌の病変を使って、AIDを同定する染色を行い、 AIDタンパクの発現頻度を測定します(図3)。 この染色の結果と患者さんの背景を比較し、AIDが果たして 図2.AIDの構造 (Matsui T. Germinal center B-cell-associated DNA hypomethylation at transcriptional regulatory regions of the AID gene. 2008) 胃癌においてどういった機能を持つのか、考察します。 【患者さんの個人情報の管理について】 本研究の実施過程及びその結果の公表(学会や論文等)の際には、患者さん を特定できる情報は一切含まれません。 もし対象者となることを希望されない方は、下記連絡先までご連絡下さい。 【研究期間】 承認日から平成23年3月31日 【医学上の貢献】 この研究により胃癌におけるAID発現異常と 臨床病理学的因子との関連が示唆されれば、 新しい発癌機序などが明らかとなり、医学上の 貢献はあるものと考えます。 【研究機関・組織】 九州大学大学院 形態機能病理(第二病理) 准教授 小田 義直 臨床助教 平橋 美奈子 大学院生 後藤 綾子 連絡先:〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1 Tel 092-642-5466 (担当者:後藤 綾子) 図3.上) 胃腺癌 下) 同部位でのAIDタンパクの染色 茶色く染まっている部分にAIDタンパク質が見られる。
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