待ったなしの 2000年問題 1999年10月27日 JACTIM貿易部会 会 津 泉 <[email protected]> アジアネットワーク研究所 「専門家」はいない • 昔から知られていた – でも、まさか2000年までシステムが使われるとは誰も 思わなかった • プログラムの年号処理だけではない – 埋め込みチップ・システムの問題 – 波及する社会システム全体の問題 • 自分で判断・行動が基本 Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 2 2000年問題: 現行システムの弱点 • 現システム内部の「時限爆弾」(「地雷」) • 「2000年バグ」と「2000年問題」は違う – 社会システムの問題へと拡大 – 大型コンピューター:理解は高い – 埋めこみチップ:理解は低い • 対応は時間切れ – 根幹(ライフライン)の停止(カナダ軍) – 生産・貿易ライン途絶(アーロン商務次官) Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 3 「2000年バグ」に固有の特性 • • • • • • • • • バグの完全除去は不可能 テストの完全実施は不可能 バックアップシステムにも同時影響 システム停止期間が長くなる 小規模障害が相互連鎖、拡大 ネットワーク経由で急拡大 全世界同時多発の可能性 同一の対策は輻輳効果 異なるシステム間の障害発生 Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 4 「2000年問題」の特性 • 発生は不可避:待ったなし、「神風」なし • システムの最弱部分が全体を決定 – 中小企業、途上国、遅れた省庁等 • 災害範囲の予測・限定は不可能 – 発生時期はほぼ明確、程度は不明 • 局地的障害から全地球麻痺まで • 短期より中長期の混乱?(2000年代問題) • 日本的言霊社会、「母親型」政府には不向き? Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 5 第三次産業革命=情報通信革命 コンピューターの進化 1) メインフレーム(MF) (1950-75) 2) PC、埋め込みチップ(1975-2000) 3) (C&C)2ネットワーク(CN)(2000-2025) 社会生活は コンピューターに 全面依存 とくに700億のチップ その上に 電子商取引と 電子政府がのる Oct. 27, 1999 CN 2 Y2K (C&C) N EC/PC PC MF MF 1950待ったなしの2000年問題 60 70 80 90 2000 10 20 30 6 すでに問題は起きている • 96年12月、アルミニウム精錬工場停止 – 閏年として認識せず、ニュージーランド • 98年頭に、受注データが消えた – 東芝:半導体のデータ • • • • • 金利・債券償還計算など 訴訟も始まっている シンガポールタクシー、スウェーデン空港… 99年8月22日 GPSに障害発生 問合せ殺到 1999.9.9には問題は発生せず(でも安心できない) Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 7 2000年1月1日だけが 問題ではない • クリティカル・デイト: 99年8月22日 GPS限界--カーナビ問題発生 2000年1月4日 第一営業日 2000年2月29日 400年に1回の閏年 2000年3月31日 1999年度末日 2025年 昭和歴通算100年 2038年1月19日 UNIX日付の最大値 2040年2月6日 MAC OS日付の最大値 • 以降、ずっと続く?? Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 8 埋め込みシステム • チップは推定250億~700億個 • うち5~7%に日付処理機能? – 海運業界は、20%以上? • 最低0.1%にバグ発生としても…12.5万 – 日本だけで同時に2000件のトラブル? • 日付メモリーでも、上位システムに故障が出る可 能性 連鎖反応へ Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 9 3つの次元での対応が必要 • 個人の生活 – 家族の安全 – 生活基盤の確保(最低限の備蓄など) • 職場・地域社会 – 経済活動の継続(自分の職場を確保) – 社会的職務の遂行(ライフライン維持など) – コミュニティでの協調(町内会・ボランティア) • 社会・国家・グローバルに – 横につながる活動(警鐘・国際協調活動) Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 10 システム対策 • 重要システムの抽出 • バグ修正作業(プログラム)、テストを • パソコンも(Windowsも)、サーバーも – BIOSがポイント • 主要データの保存、記録を • 埋め込みチップの特定 – 交換可能か? • 時間切れへの認識 – 危機管理計画の策定を – 前倒し発注・ストックも Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 11 インターネットは大丈夫か? • 政府の規制外=取残されていた(日米共) • 「業界」が未発達:対策も遅れ • 分散・協調ネットワークとしての取組み必要 – 2月17日 ワシントンで非公式会議 – 7月30日 ホワイトハウス・インターネットY2Kラウンドテーブル – 11月米国ロサンジェルス会議 – アジア各国ロードショー(9~11月) – 台北、ソウル、バンコク、北京、香港 – 日本インターネット協会でタスクフォース設置 • 新しいインフラとしての運用責任 Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 12 外部システムのチェックも • • • • 電源、水道、エレベーター、ビル管理 交通(信号、鉄道、航空、港湾…) 通信(電話、インターネット…) 原材料、外注部品などサプライチェーン – 納入業者に確認書請求 • 危機管理計画(コンティンジェンシー) – 業務の継続、外部からの防御を – 通産省(www.miti.go.jp)にガイドライン Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 13 識者の判断は二極化 • 大きな混乱はない – – – – – きっと対処されるはず うちは大丈夫 すべて自動化されてはいないから 通常災害程度は発生(Kケリー) 最悪の場合マニュアル処理(日銀金融研究所) – – – – – 修正の現場で困っている 電力・水道などインフラが麻痺する 家族共避難する 食料・水・燃料の備蓄が必要 パニックになる • 非常にまずいことになる Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 14 日本政府の対応 • クリントン大統領から小渕首相に強いプッシュ – – – – – 首相官邸 Y2Kページ www.kantei.go.jp/jp/pc2000 98年9月 内閣顧問会議設置 省庁連絡会議設置 99年4月 国民の身の回りの製品等の2000年問題への対応状況について 99年4月 総理APEC・Y2Kシンポジウムにメッセージ • 99年7月 危機管理体制強化 – 高度情報通信社会推進本部 顧問会議随時開催 • 99年10月 国民に備蓄などの対策呼びかけ Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 15 産業界の対応 • 金 融 取組は早い(日銀・全銀協・東証) • エネルギー(電力・石油・ガス) 出遅れ? • 情報通信 情報開示が遅い? – インターネット 盲点? • 製造業 サプライチェーン点検手薄 • 中小企業 遅れが目立つ • 自治体 きわめて遅い Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 16 欧米政府の対応 • カナダ政府:軍の配備計画まで – 99年は最優先で準備 • 米国政府:危機管理に重点 – 時間切れ認識 – 軍関連はすべて機密に – 途上国を心配 • 英国政府:食料備蓄を呼びかけ – 社会パニックも辞さず • 目立つアングロサクソン系 文化の違い? – オーストラリア、南アフリカ… Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 17 アジア各国政府の対応 • 進んでいるシンガポール – 豊富な実用情報 www.ncb.gov.sg/yr2000 • マレーシアも、認識は高い – 政府、最新情報:www.y2k.gov.my – 世銀から特別融資 – エネルギー通信マルチメディア省が担当 • 日本、韓国、香港、シンガポール • インド、北朝鮮 第3レベル! • モーリシャス政府、Webは充実… Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 第2レベル 18 マレーシア政府の対応 • 7月 12月31日〜1月2日 公休日とはせず • 8月 主要4部門(電力、通信・マルチメディア、石油・ガス、銀 行・保険・資本市場)は「進展」と発表 • 水供給、下水、輸送、医療、政府機関の5部門は「対応を進め ている」 • 9月 2000年問題「対策センター」設置 – 対策状況の調査と情報提供 – 緊急事態に準備 Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 19 分野別の対策状況 • 1999年6月末 「対策完了状況」 政府発表 – – – – – – – 金融・保険業界 95% 電 力 80〜100% 通信(TM) 80% 石油・ガス 95% 上下水道 100% (コンピューターなし) 政府機関 80〜100% 医 療 私立80% 国立60%以下 • 政府、対応遅れを指摘 Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 20 金融・証券 • 6月 金融機関に12月15日に残高通知書発行を指示 • 9月 中央銀行「2000年問題コマンドセンター」設置 Tel:03-293 2330 • 金融機関3団体「2000年問題対策完了」を発表 – 12月31日 金融機関間の取引は停止 – ATM 12月31日正午まで稼働 • 元旦は第一土曜日で休日 – 12月31日 KLSEとMESDAQ取引停止の可能性大 Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 21 航空会社 – 8月KLIAでテスト実施 • 「大きな問題は生じなかった」 – 9月 マレーシア航空 2000年問題対応「完全終了」と 発表 • 年末年始の運行停止? 9月末決定の予定 – 1月1日のキャンセルなし、予約受付中 – 対策費費1億4000万リンギ Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 22 電 力(テナガ) – 6月 電力供給対策完了 • 「いかなる問題も起きないだろう」 – 9月 2000年問題が危機対応訓練 • 元旦に1000メガワットの電力供給停止を想定 • 5分以内にシステム復活 – 対策費3千万リンギ Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 23 通 信 (テレコム・マレーシア) – – – – 1997年から取り組み開始 電話交換機600台、料金計算機などを更新 1999年5月段階 80%対応済み 対策費、1億3千万リンギ Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 24 われわれの対処方法 • 自分の責任で想定・対応するしかない – テストが重要 – 冷静な判断が必要 • パニック無用、楽観視も問題 – 家族、職場、地域の協力が不可欠 • 最終的にはシステム自体の取替え必要 Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 25 KL在住者の対策法 (1) • 銀 行 – 12月31日 臨時休業、1月1日〜2日は休日 – この期間の取引は避けるのが無難 – ATM 12月31日午前中稼動予定 • 早めに最低限必要な現金を引出す – 記録を自分で保管(12.15にステートメント) • 移 動(旅行・帰省) – 運航日 マレーシア航空の今後の発表を注目 – 年越しのフライトにはなるべく乗らない – 日本への帰省は早めの予約を Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 26 KL在住者の対策法 (2) • 日常生活(台風・地震と同等の対策を) – 断続的or 数日の断水・停電を想定 • • • • ミネラルウォーター・保存食 懐中電灯、電池対応ランタン プロパンガスの予備、カセットコンロ トイレットペーパー、ウエットティシュ – 常備薬 – 持病のある方、医療機関の対応を調査 Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 27 KL在住者の対策法 (3) • 職場 あらかじめ体制を確認 – 31日の出勤体制? – 給与の支給繰上げ? • • • • • パソコンなどの点検、データの保管 連絡網の点検(職場、家族) 電話、インターネットも「万一」不通に? ガソリンは満タンに、ポリタンク その他:心配なら携帯自家発電機、文庫本? Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 28 21世紀型新システム構築の 絶好機 • • • • • Y2Kフリーな社会システムへ 自律・分散・協調型ネットの推進 再構築:新型都市をめざして 新情報通信システム(IPネット)を基盤に 地域にボランタリーなコミュニティを (阪神大震災に学べ) Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 29 参考資料 • • • • • • • • 日本政府:www.kantei.or.jp マレーシア政府:www.y2k.gov.my 米国政府:www.y2k.gov 国際大学GLOCOM 日本Y2Kリンク http://www.glocom.ac.jp/proj/y2k/links/ 日経BP:http://biztech.nikkeibp.co.jp/biztech/it/y2k/ 世紀末の次元爆弾 文芸春秋 時限爆弾2000 ヨードン父子・プレンティスホール コンピューター西暦2000年問題の衝撃 – 足立晋・実業之日本社1996 www.y2kjapan.com Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 30 さいごに • 可能性=1%と、現実=100%は違う – 冷静な判断を – 冷静な準備を – 前例がない→前例になる Oct. 27, 1999 待ったなしの2000年問題 31
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