循環構造 民間部門の経済循環の流れ circular flow p 需要 支出 0 賃 金 w 0 ミクロ経済学(Ⅰ) 消費財市場 供給 収入 x ( 価 格市 がメ場 働カ くニ機 ズ構 ム ) 家 計 所得 供給 生産用役市場 企 業 費用 需要 労働供給H 財・サービスの流れ 貨幣の流れ 1 第5章 企業と費用 企業の 生産活動 労働,土地,機械 動力,原材料 製品・部品 利潤を最大化するよ うに行動をしている。 生産物 product 産出物 output 生産要素 factor of production 投入物 input 産出物の量 × 産出物の市場価格 = 総生産額 総生産額 労働 土地 原材料の費用 地代 賃金 ミクロ経済学(Ⅰ) 付加価値 利 潤 2 第5章 企業と費用 生産要素を投入して,財を生産するとき,生産要素 や財の価格を一定として,生産計画を立てる企業は, プライス・テイカーprice-taker(価格受容者)と呼ばれ る。 このような企業は,生産量が小さく,生産要素や財の 市場価格に影響を与えることができないのである。 以下,まずプライス・テイカーとしての企業のみを対 象とする。 ミクロ経済学(Ⅰ) 3 第5章 企業と費用 5.2 生産関数 ■ 生産関数の定式化 企業の生産要素の投入組合せと生産物の最大可能な生産量との関 係を表したものは,生産関数production functionと呼ぶ。 生産関数: y=f(x1, x2) 生産量yが,2つの投入物の量の組み 合わせ(x1,x2)に依存する。 y 数値例: 投入物1は資本とする。 投入物2は労働とする。 x2 労働 x2 3 3 3 7 7 7 資本 x1 生産量 y 2 1 5 2 7 2.5 2 2 5 3 7 4 x1 0 ミクロ経済学(Ⅰ) 4 第5章 企業と費用 5.2 生産関数 ■ 生産関数の定式化 企業の生産要素の投入組合せと生産物の最大可能な生産量との関 係を表したものは,生産関数production functionと呼ぶ。 生産関数: y=f(x1, x2) 生産量yが,2つの投入物の量の組み 合わせ(x1,x2)に依存する。 y 数値例: 投入物1は資本とする。 投入物2は労働とする。 x2 労働 x1 3 3 3 7 7 7 資本 x2 生産量 y 2 1 5 2 7 2.5 2 2 5 3 7 4 x1 0 ミクロ経済学(Ⅰ) 生産曲面 5 第5章 企業と費用 5.2 生産関数 生産曲面 等量曲線 x2 y4 y y4 y3 y2 y1 x2 x1 y3 y2 0 y1 x1 0 生産曲面を水平方向で切ると,曲面上に等高線の切口となる曲線が現れる。 この曲線上のすべての点は生産量yが等しくなる2種類の投入物の様々な組合 せを表している。これらの曲線を真上から観察すると,右図のような曲線になる。 ミクロ経済学(Ⅰ) これらの曲線は等生産量曲線(等量曲線equal product curve)である。 6 第5章 企業と費用 5.2 生産関数 ■ 限界生産と平均生産 Dy 生産関数 y = f(x1, x2) について, x2を一定として,x1だけが変化す る場合を考えよう。 生産者がx1の1単位を追加投 入することによる追加的産出量 を第1要素の限界生産物おしくは y 限界生産(限界生産力marginal productivity 略MP)と呼ぶ。 同様に, x1が一定で, x2の1単 位の追加による産出量の増分を 第2要素の限界生産である。 Dy Dy MP1 MP2 Dx1 Dx2 0 ミクロ経済学(Ⅰ) y Dx1 x2 x1 0 y=f(x1) Dy Dy/Dx1 Dx1 x1 x 1 +D x 1 x 7 第5章 企業と費用 5.2 生産関数 ■ 限界生産と平均生産 生産関数 y = f(x1, x2) について, x2を一定として,x1だけが変化す る場合を考えよう。 生産者がx1の1単位を追加投 入することによる追加的産出量 を第1要素の限界生産物おしくは y 限界生産(限界生産力marginal productivity 略MP)と呼ぶ。 同様に, x1が一定で, x2の1単 位の追加による産出量の増分を 第2要素の限界生産である。 Dy Dy MP1 MP2 Dx1 Dx2 0 ミクロ経済学(Ⅰ) y=f(x1) Dy Dy/Dx11 = MP1 dy/dx Dx1 x1 x1+Dx1 限界生産の 大きさを表す x 8 第5章 企業と費用 5.2 生産関数 ■ 限界生産と平均生産 その他の生産要素の投入量が一定 生産関数 y = f(x1, x2) について, で,ある生産要素の投入量のみが増 x2を一定として,x1だけが変化す 加すると,生産量yが増加するが,こ の生産要素の限界生産は逓減する。 る場合を考えよう。 生産者がx1の1単位を追加投 これは限界生産逓減の法則と呼ぶ。 入することによる追加的産出量 を第1要素の限界生産物おしくは y y=f(x1) 限界生産(限界生産力marginal productivity 略MP)と呼ぶ。 同様に, x1が一定で, x2の1単 位の追加による産出量の増分を dy/dx1 = MP1 限界生産の 第2要素の限界生産である。 大きさを表す Dy Dy MP1 MP2 Dx1 Dx2 x x 0 ミクロ経済学(Ⅰ) 1 9 第5章 企業と費用 5.2 生産関数 ■ 限界生産と平均生産 生産関数 y = f(x1, x2) について, 生産量yの第1要素の投入量x1に x2を一定として,x1だけが変化す 対する比を第1要素の平均生産(平 る場合を考えよう。 均生産力average productivity 略 AP)と呼ぶ。 生産者がx1の1単位を追加投 AP1=y/x1 AP2=y/x2 入することによる追加的産出量 を第1要素の限界生産物おしくは y y=f(x1) 限界生産(限界生産力marginal productivity 略MP)と呼ぶ。 同様に, x1が一定で, x2の1単 位の追加による産出量の増分を dy/dx1 = MP1 限界生産の 第2要素の限界生産である。 y/x1 = AP1 大きさを表す Dy Dy 平均生産の MP1 MP2 大きさを表す Dx1 Dx2 x x 0 ミクロ経済学(Ⅰ) 1 10 第5章 企業と費用 5.2 生産関数 ■ 限界生産と平均生産 生産関数 y = f(x1, x2) について, x2を一定として,x1だけが変化す る場合を考えよう。 生産者がx1の1単位を追加投 入することによる追加的産出量 を第1要素の限界生産物おしくは 限界生産(限界生産力marginal productivity 略MP)と呼ぶ。 同様に, x1が一定で, x2の1単 位の追加による産出量の増分を 第2要素の限界生産である。 Dy Dy MP1 MP2 Dx1 Dx2 ミクロ経済学(Ⅰ) 生産量yの第1要素の投入量x1に 対する比を第1要素の平均生産(平 均生産力average productivity 略 AP)と呼ぶ。 AP1=y/x1 AP2=y/x2 コブ=ダグラス型の生産関数 y=x10.5x20.5 x1の限界生産MP1=0.5x1- 0.5x20.5 x2の限界生産MP2=0.5x10.5x2- 0.5 x1の平均生産AP1=x1- 0.5x20.5 x2の平均生産AP2=x10.5x2- 0.5 11 第5章 企業と費用 5.3 等生産量曲線 生産曲面 等量曲線 x2 y4 y y4 y3 y2 y1 x2 x1 y3 y2 0 y1 x1 0 生産曲面を水平方向で切ると,曲面上に等高線の切口となる曲線が現れる。 この曲線上のすべての点は生産量yが等しくなる2種類の投入物の様々な組合 せを表している。これらの曲線を真上から観察すると,右図のような曲線になる。 ミクロ経済学(Ⅰ) これらの曲線は等生産量曲線(等量曲線equal product curve)である。 12 第5章 企業と費用 5.3 等生産量曲線 ■ 等量曲線の性質 ① 等量曲線は東北方高次である。 生産要素の投入量の増加に つれて,生産量も増加する x2 y" y ② 等量曲線は交わらない。 y' y" ③ 等量曲線は右下がりである。 y' y ④ 等量曲線は原点に凸である。 0 x1 限界生産逓減の法則 ミクロ経済学(Ⅰ) 13 第5章 企業と費用 5.3 等生産量曲線 ■ 技術的限界代替率 (x1,x2)が等生産量曲線に沿って変化することは,ある生産要素の減 少による生産力の低下を他の生産要素の増加によって補って,元と同 じ生産量を維持することができる。この生産要素x1の1単位の減少分と 必 要 な 要 素 x2 の 増 加 分 の 比 は 生 産 要 素 x1 の 技 術 的 限 界 代 替 率 (marginal rate of technical substitution 略RTS)と呼ぶ。 x2 y y' -Dx2/Dx1 A' Dx2 A -Dx1 0 ミクロ経済学(Ⅰ) y y' Dy x1 14 第5章 企業と費用 5.3 等生産量曲線 ■ 技術的限界代替率 (x1,x2)が等生産量曲線に沿って変化することは,ある生産要素の減 等生産量曲線が原点に凸ということは,生産要素をどちらかに偏って 少による生産力の低下を他の生産要素の増加によって補って,元と同 使用することより,共に使用する方が生産量が高くなることを意味する。 じ生産量を維持することができる。この生産要素x1の1単位の減少分と また,等生産量曲線に沿って右に移動すると,技術的限界代替率が減少 必 要 な 要 素 x2 の 増 加 分 の 比 は 生 産 要 素 x1 の 技 術 的 限 界 代 替 率 する。これは,技術的限界代替率逓減の法則と呼ばれる性質である。 (marginal rate of technical substitution 略RTS)と呼ぶ。 x2 y Dx2/2D x11 RTS1,2 --dx /dx 技術的限界代替率 の大きさを表す A' A y 0 ミクロ経済学(Ⅰ) x1 15 第5章 企業と費用 5.3 等生産量曲線 ■ 技術的限界代替率RTSと限界生産力MPの関係 RTSは,第1要素の量を1単位削減するときに,生産量を変えずに追 加できる第2要素の量である。(RTS=-Dx2/Dx1) MPは生産要素の量を1単位追加的に増加(削減)するときに,生産量 の増加(減少)量である。(MP1=Dy/Dx1, MP2=Dy/Dx2 ) x2 y y' -Dx2/Dx1 A' Dx2 A -Dx1 0 ミクロ経済学(Ⅰ) y ( x1 , x2 ) y Dx1の削減による生産量の減少量: y yDy=-MP1Dx1 dx1 dx2 dy 0 Dxx12の増加による生産量の増加量: x2 D dxy=MP y 2Dx1x2 MP1 2 dx1 y 1xD MP2 2Dx2 Dy=-MP 2 x1=MP -D第 x21/D x1=MP1/MP2 y 要素の限界生産 y' Dy RTS 第2要素の限界生産 x1 16 第5章 企業と費用 5.3 等生産量曲線 すべての生産要素の投入量を比例 的に増加するときに,もし産出量の増 加は,その比例より大きいならば,こ の現象を規模に関して収穫逓増 increasing returns to scaleという。 規模に関して収穫逓増 x2 3y 2y以上 3y以上 2y 3x2 y 2x2 x2 0 x1 2x1 3x1 x1 ny < F(nx1, nx2) 例: y=x1x2 ミクロ経済学(Ⅰ) 17 第5章 企業と費用 5.3 等生産量曲線 すべての生産要素の投入量を比例 的に増加するときに,もし産出量の増 加は,その比例より大きいならば,こ の現象を規模に関して収穫逓増 increasing returns to scaleという。 規模に関して収穫一定 x2 3y 2y 3x2 y もし産出量は,同比例で増加するな 2x2 らば,この現象を規模に関して収穫一 x 2 定constant returns to scaleという。 0 x1 2x1 3x1 x1 ny=F(nx1, nx2) 例: y=x11/2x21/2 ミクロ経済学(Ⅰ) 18 第5章 企業と費用 5.3 等生産量曲線 すべての生産要素の投入量を比例 的に増加するときに,もし産出量の増 加は,その比例より大きいならば,こ の現象を規模に関して収穫逓増 increasing returns to scaleという。 規模に関して収穫逓減 x2 3y 3y以下 2y 2y以下 3x2 y もし産出量は,同比例で増加するな 2x2 らば,この現象を規模に関して収穫一 x 2 定constant returns to scaleという。 もし産出量の増加は,その比例より 小さいならば,この現象を規模に関し て 収 穫 逓 減 decreasing returns to scaleという。 ミクロ経済学(Ⅰ) 0 x1 2x1 3x1 x1 ny > F(nx1, nx2) 例: y=x11/4x21/4 19 第5章 企業と費用 生産者行動理論と消費者行動理論における概念の対応 生産者理論 消費者理論 生産関数 y=y(x1, x2) 効用関数 U=U(x1, x2) 等生産量曲線 y(x1, x2)=一定 無差別曲線 U(x1, x2)=一定 技術的限界代替率 RTS 限界代替率 MRS 限界生産 MP 限界効用 MU RTS=MP1/MP2 MRS=MU1/MU2 RTS 逓減の法則 MRS 逓減の法則 平均生産 AP ミクロ経済学(Ⅰ) 20 第5章 企業と費用 5.4 費用関数 ■ 等費用曲線 等費用曲線: 生産に要する総費用が一定となる生産要素投入量の 組合せを意味する。 生産要素1の価格: w1 生産要素2の価格: w2 総生産費用: c x2 等費用線: w1x1+w2x2 = c 原点に近い等費用線ほど,総費用c c1/w2 c0/w2 は小さい。 0 ミクロ経済学(Ⅰ) 等費用線: w1x1+w2x2=c1 等費用線: w1x1+w2x2=c0 c0 < c1 w1/w2 c0/w1 c1/wx11 21 第5章 企業と費用 5.4 費用関数 ■ 企業の費用最小化問題 生産要素1の価格: w1 生産要素2の価格: w2 総生産費用: c 等費用線: w1x1+w2x2 = c 一定の生産量yを実現するのであ れば,最小費用で生産したほうが利 潤が高くなる。これは所謂企業の費 用最小化問題である。 一定の生産量yを生産するときに,費 用最小化の条件: 技術的限界代替率RTS= w1/w2 ミクロ経済学(Ⅰ) 等費用線: w1x1+w2x2=c1 x2 c1/w2 c0/w2 x2* 0 技術的限界代替率 RTS 等費用線: w1x1+w2x2=c0 y c0 < c1 B w1/w2 x1* y c0/w1 c1/wx11 22 第5章 企業と費用 5.4 費用関数 ■ 双対問題(家計の効用最大化行動との類似点) 一定の予算Mの下で,消費者の 効用最大化の条件: 限界代替率MRS= p1/p2 x2 予算線: p1x1+p2x2=M u 一定の生産量yを生産するときに, 企業の費用最小化の条件: 技術的限界代替率RTS= w1/w2 x2 技術的限界代替率 RTS 限界代替率 MRS B B 0 ミクロ経済学(Ⅰ) p1/p2 等費用線: w1x1+w2x2=c y u x1 0 w1/w2 y x1 23 第5章 企業と費用 5.4 費用関数 ■ 双対問題(家計の効用最大化行動との類似点) 一定の予算Mの下で,消費者の 効用最大化の条件: 限界代替率MRS= p1/p2 x2 予算線: p1x1+p2x2=M u 限界代替率 MRS B 一定の効用水準uを確保するの に,消費者の支出最小化の条件: 限界代替率MRS= p1/p2 x2 支出線: p1x1+p2x2=m u 限界代替率 MRS B u u p1/p2 0 0 x1 x1 効用最大化でアプローチしても,費用(支出)最小化でアプローチしても, p1/p2 ミクロ経済学(Ⅰ) 問題設定の解が同じになる。このようなことを双対問題と呼んでいる。 24 第5章 企業と費用 5.4 費用関数 ■ 費用関数の概念 費用関数:ある生産量とその生産量をもっとも効率よく生産する場 合に要する費用との関係を示す関数である。 5.5 費用曲線 ■ 生産量拡大の効果 生産量yの拡大につれて, 総費用cは増加する。 x2 c3 c2 c1 E3 E2 E1 0 ミクロ経済学(Ⅰ) y3 y2 y1 x1 25 第5章 企業と費用 5.6 短期と長期の費用曲線 ■ 短期と長期 長期の生産期間:すべての生産要素の投入量を自由に変えられ る期間,すべての投入物が可変である生産期間である。 短期の生産期間:少なくとも1つの投入物の量が固定的で,変える ことができなり生産期間である。この期間に,投入量が変えられな い生産要素を固定的生産要素あるいは固定的投入物と呼ぶ。 固定的 x2 生産要素 ■ 固定費用と可変費用 固定的生産要素の投入に必要とする 費用は固定費用である。 生産量に応じて投入量が適切に調整 可能な生産要素の投入に必要な費用 は可変費用である。 ミクロ経済学(Ⅰ) e1 E3 e1 E2 E1 0 y3 y2 y1 x1 可変的生産要素 26 5.6 短期と長期の費用曲線 ■ 短期の生産関数 y 生産関数: y = f(x1 , x2一定) D S字型の短期生産関数を考えよう。 C 生産関数: y f ( x1 , x2 ) 生産要素2(資本)の投入量が一定 である場合に,生産要素1(労働)の投 入量x1と産出量yとの関係について 0 ① x1↑ ⇒ y↑ 平均生産 ② x1がある投入量x1*より小さい時に, AP1 = y/x1 AP1 固定要素と組合わせて可変要素が有 MP1 効に活用され, x1を増やすと,yの増加 限界生産 量が増える。 MP1 = Δy/Δx1 ③ x1 がある投入量x1* を超える時に, 固定要素が不足で,可変要素が活用し にくくなり,x1を増やすと,yの増加量が 減少する。 0 ミクロ経済学(Ⅰ) B A x1 x1* 限界生産MP1 B x1* C 平均生産AP1 x1 27 5.6 短期と長期の費用曲線 y ■ 短期の生産関数 生産関数: y = f(x1 , x2一定) D S字型の短期生産関数を考えよう。 生産関数: y f ( x1 , x2 ) 可変要素の量が小さいときに限 界生産が増加したとしても,可変 要素の量が十分大きくなると,可 変要素の増加につれて,限界生 産は必ず逓減する。 このような限界生産の逓減のこ とを生産要素に関する収穫逓減 の法則 the law of diminishing returnsと呼ぶ。 他の生産要素に対し,一部の生 産要素のみを不比例的に増加す ることから生じてくる現象である。 ミクロ経済学(Ⅰ) C B A 0 AP1 MP1 0 x1 x1* 限界生産MP1 B x1* C 平均生産AP1 x1 28 第5章 企業と費用 5.6 短期と長期の費用曲線 ■ 短期の費用曲線 Short-run cost curve 産出量に応じて適宜調整できる生産要 素を可変要素variable factorと呼ぶ。そ れらを購入する費用は可変費用variable costである。 固定費用: FC w2 x2 b 可変費用: VC w1 x1 w1 g ( y ) 生産要素のなかに,産出量の大小にか 総費用TC: c( y ) かわりなく,その投入量を一定とみなされ る生産要素は固定要素fixed factorと呼 費用関数 cost function : ぶ。それらを購入する費用は固定費用 TC VC FC fixed costである。 ある産出量 y を生産するに必要なすべ ての費用を総費用total costと呼ぶ。 ミクロ経済学(Ⅰ) c( y) w1 g ( y) b 29 5.6 短期と長期の費用曲線 y 短期の生産関数: y = f(x1 , x2一定) D ■ 短期の費用曲線 Short-run cost curve 費用関数: C E TC VC FC B c( y) w1 g ( y) b A 逆S字型の 短期の費用曲線 0 c x1 VC d a b 0 ミクロ経済学(Ⅰ) b e c 可変費用 VC = w1g(y) 固定費用 y 0 x1 w1 30 5.6 短期と長期の費用曲線 総費用曲線 c ■ 短期の費用曲線 Short-run cost curve 費用関数: d TC VC FC a c( y) w1 g ( y) b 平均費用: AC=c(y)/y 平均費用average cost: 生産物1単位当たりに かかる総費用である。 b e c b 0 AC y a AC b e 0 ミクロ経済学(Ⅰ) c d y 31 5.6 短期と長期の費用曲線 総費用曲線 c ■ 短期の費用曲線 Short-run cost curve 費用関数: d TC VC FC a c( y) w1 g ( y) b 平均費用: AC=c(y)/y b 限界費用: MC=dc(y)/dy 0 b e c MC 限界費用marginal cost: 生産物を1単位追加的 に生産するときに,必要と なる総費用の増分である。 AC MC ミクロ経済学(Ⅰ) AC d a 0 y c b e y 32 5.6 短期と長期の費用曲線 総費用曲線 c d ■ 短期の費用曲線 Short-run cost curve 費用関数: c TC VC FC a c( y) w1 g ( y) b 平均費用: AC=c(y)/y 限界費用: MC=dc(y)/dy 平均可変費用: AVC=VC/y TC=VC+FC TC/y=VC/y+FC/y b e C 0 MC AC MC AVC y AC AVC c b AC=AVC+AFC e 平均費用=平均可変費用 +平均固定費用 ∴ AC > AVC ミクロ経済学(Ⅰ) 0 y 33 5.6 短期と長期の費用曲線 ■ 短期の費用曲線 平均費用: AC = c(y)/y = 162/y+ y2-16y+94 固定費用: FC=162 可変費用: VC=y3-16y2+94y 限界費用: MC = dc(y)/dy = 3y2-32y+94 費用関数: TC=162+ y3-16y2+94y 平均可変費用: AVC =VC/y =y2-16y+94 生産量 y 総費用 TC 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 162 241 294 327 346 357 366 379 402 441 502 591 714 877 1086 1347 ミクロ経済学(Ⅰ) 固定費用 b 162 162 162 162 162 162 162 162 162 162 162 162 162 162 162 162 可変費用 VC V 0 79 132 165 184 195 204 217 240 279 340 429 552 715 924 1185 平均費用 AC - 241.00 147.00 109.00 86.50 71.40 61.00 54.14 50.25 49.00 50.20 53.73 59.50 67.46 77.57 89.80 限界費用 MC 94 65 42 25 14 9 10 17 30 49 74 105 142 185 234 289 平均可変費用 AVC - 79 66 55 46 39 34 31 30 31 34 39 46 55 66 79 34 C 5.6 短期と長期の費用曲線 800 700 ■ 短期の費用曲線 600 固定費用: FC=162 可変費用: VC=y3-16y2+94y 費用関数: TC=162+ y3-16y2+94y 500 400 300 平均費用: AC = c(y)/y = 162/y+ y2-16y+94 限界費用: MC = dc(y)/dy = 3y2-32y+94 平均可変費用: AVC =VC/y =y2-16y+94 生産量 y 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 ミクロ経済学(Ⅰ) 平均費用 AC 86.50 71.40 61.00 54.14 50.25 49.00 50.20 53.73 59.50 67.46 77.57 89.80 限界費用 MC 14 9 10 17 30 49 74 105 142 185 234 289 平均可変費用 AVC 46 39 34 31 30 31 34 39 46 55 66 79 200 100 y 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 AC,MC 140 120 100 80 60 40 20 y 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 35 第5章 企業と費用 5.6 短期と長期の費用曲線 長期費用曲線 短期short-runには企業の固定資本 設備の規模が一定であるが,長期long- c runには企業の資本設備の規模も可変 であり,固定要素が存在せず,すべての 生産要素が可変である。 短期総費用曲線は固定費用の水準b の大きさによって異なる。固定費用水準 bを連続に変化していくと,それに対応す る短期費用曲線も連側的に変わっていく。 STC" STC' LTC R Q STC P 0 y y' y" y 長期的に,企業は生産量に応じて, 総費用を最小化するように固定費用水 長 期 費 用 曲 線 Long-run 準bを変えていく。長期の総費用は常に cost curveは各短期費用曲線 最適な固定費用水準bに対応されている。 の包絡線envelopeである。 ミクロ経済学(Ⅰ) 36 5.6 短期と長期の費用曲線 c STC" STC' LTC ■ 長期平均費用と長期限界費用 STC 各々の固定費用水準bに対応する平 均費用曲線は短期平均費用曲線SAC である。 A P 長期平均費用曲線LACは各短期平 均費用曲線SACの包絡線である。 0 y 長期限界費用曲線LMCは各短期限 c 界費用と交差する。 産出量はy'まで増加する場合に,固 定資本設備の拡張につれ長期平均費 用LACは低下する。この現象は「大規模 生産の利益」または「規模の経済」と呼 ぶ。 A点ではSACとLACが共に最小とな り,y'は生産の最適規模と呼ばれる。 0 ミクロ経済学(Ⅰ) LMC SAC" SMC" SAC SMC LAC SAC' SMC' N A M y y' y" y 37
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