財政-第18講 5.財政赤字と公債理論(3) 2008年6月10日 第2限 1 公債の制度 国債の種類 国債の発行 国債の償還 公債政策の推移① -第二次大戦後からバブル経済まで- 2 公債の制度 3 国債の種類 募集地-内国債(内債),外国債(外債) 償還期限-短期債,中期債,長期債,超長期債 財源調達-新規財源債,借換債 使途-建設国債,赤字国債※ 4 国債の発行 財政法(1947年3月31日法律第34号) 第四条 国の歳出は,公債又は借入金以外の歳入を 以て,その財源としなければならない。但し,公共 事業費,出資金及び貸付金の財源については,国会 の議決を経た金額の範囲内で,公債を発行し又は 借入金をなすことができる。 2 前項但書の規定により公債を発行し又は借入金 をなす場合においては,その償還の計画を国会に 提出しなければならない。 3 第一項に規定する公共事業費の範囲については, 毎会計年度,国会の議決を経なければならない。 5 財政法第4条の規定 (1)国債発行を原則的に禁止 (2)投資的経費(公共事業費など)の財源調達 →国債発行を認める (3)経常的経費(人件費など)の財源調達 →国債発行を認めない ⇔建設国債を発行してもなお歳入不足 ⇒「特例法」(単年度)を制定して発行 6 「投資的経費の財源調達→国債発行○」の根拠 投資的経費=資産を残す →現在世代に便益+将来世代に便益 →元利償還のための増税 「経常的経費の財源調達→国債発行×」の根拠 経常的経費=資産を残さない →現在世代に便益⇔将来世代に便益なし →元利償還のための増税 7 「投資的経費の財源調達→国債発行○」の根拠 →常に正当であるかどうかは疑問 公共事業費の範囲が曖昧? →国会の議決で範囲拡大が可能 建設国債と赤字国債の区別は形式的? →いずれも借金であることに変わりはない 8 国債の償還 建設国債 償還期限の到来時 →一部を償還,残りを借換債発行 ⇒60年償還ルール…資料18-1 ←投資的経費=資産を残す 赤字国債 償還期限の到来時 →全額を償還,借換債を発行しない ←経常的経費=資産を残さない 9 公債政策の推移 -第二次大戦後からバブル経済まで- 10 公債政策の推移 …資料18-2,資料18-3,資料18-4 1947年の財政法制定 戦時財政=国債大量発行による財政支出拡大 →戦時財政への反省 ⇒財政法の制定=国債の発行に厳しい制約 財政法制定~1965年度当初予算 高度経済成長(1950年代後半~60年代前半) →税収の大幅増 ⇒国債発行禁止規定(財政法第4条)の堅守 11 1965年度補正予算 1964年~65年の深刻な不況 →税収減 ⇒赤字国債の発行 1966年度当初予算~1975年度当初予算 景気対策 →公共事業費を中心に財政支出拡大 ⇒建設国債の発行 12 1975年度補正予算~ ①1975年以降の積極的な景気対策 →公共事業費を中心に財政支出拡大 ②1973年秋の第一次石油危機後の深刻な不況 →大幅な税収減 ⇒建設国債+赤字国債発行 13 1980年~財政政建路線 (1)1984年度赤字国債発行ゼロを目標 →財政支出削減=ゼロ・シーリング ⇔第二次石油危機後の世界的な景気停滞 →大幅な税収減 ⇒目標達成を断念 14 (2)1990年度赤字国債発行ゼロを目標 →さらなる財政支出削減 =①マイマス・シーリング ②三公社の民営化 +バブル経済につながる好景気 →(予想外の)大幅な税収増 ⇒目標達成(1990年度当初予算) cf. 1990年度-臨時特別国債発行 →湾岸戦争時の平和回復活動支援 15 第19講の予定 5.財政赤字と公債理論(4) 公債政策の推移② -バブル経済崩壊後から現在まで- 16 参考資料の出典等 資料18-1…財務省理財局[2008]『債務管理レポート2008』 http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/saimukanri/2008/saimu.pdf 資料18-2…財務省[2007]『日本の財政を考える(パンフレット)』 http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014.htm 資料18-3…財務省理財局[2008]『債務管理レポート2008』 http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/saimukanri/2008/saimu.pdf 資料18-4…財務省[2008]『財政関係諸資料』 http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/siryou/sy2003f.pdf 17
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