MAXI–すざく連携で明らかにな るX線連星パルサーの磁場強度 山本堂之 (日本大/理研) 2013 年3 月13 日 理研シンポジウム「コンパクト星連星の多様性と進化」@理研大河内ホール X線連星パルサー ○連星をなす中性子星のうち、X線のパルスを発するもの ○磁場が強いため降着物質が 直接落下できない 磁極からX線を放射 降着 ○降着円盤を形成し、 磁力線に沿って磁極に降着 磁力線 ○磁極がX線で輝く →磁極の見え隠れがパルス 磁極から放射されるX線のスペクトルから 中性子星の表面磁場強度を測定できる 電子サイクロトロン共鳴散乱を用いた 中性子星表面磁場の測定 励起準位 基底準位 降着円筒 放射エネルギー密度 ○強磁場中では電子の運動エネルギーは 量子化され、ランダウ準位をとる Santangelo+1999 基本波 第2, 3, 4 共鳴 10 中性子星表面 20 50 100 エネルギー (keV) サイクロトロン共鳴エネルギー Ea = 11.6 (B/1012 G) [keV] 400 8 幅広く分布 6 4 200 狭い範囲に集中 2 連星パルサー (個) 孤立系パルサー (個) X線連星パルサーの磁場強度分布 ○ぎんが衛星(6)、 BeppoSAX(2)、RXTE(3) な ど、 Mihara+1998, Coburn+2002,他 2008 年までに14 天体で測 定 Mihara1995, Makishima+1999 ○ B = (1–4)×1012 G に集中 8 10 12 14 16 磁場強度 [log B (G)] マグネター(AXP, SGR; ~10 天体) ○多くは定常的に明るい天体 ○ 磁場強度 B 〜 1013 G のX線連星パルサーは存在する? → Ea > 50 keV (B > 4×1012 G) のサイクロトロン共 鳴構造 (CRSF) の検出が難しい事による選択効果? (CRSF; Cyclotron Resonance Scattering Feauture) Be型X線連星パルサーを狙う! ○観測の対象になりにくい天 体に強磁場が存在? →突発的に増光する天体を狙う ○Ea > 50 keV のCRSF 検出 →すざく衛星HXDで解決 http://ipl.uv.es/bexrb2011/ 星周円盤 連星周期: 長 離心率:大 B型星 X線 アウトバースト 中性子星 MAXI とすざくで狙う! 全天X線監視装置MAXI 日本実験棟「きぼう」 船外プラットフォーム 進行方向 ○国際宇宙ステーション 日本実験棟「きぼう」 船外プラットフォーム搭載 ○「広く浅く」観測する全天 モニタ型の観測装置 すざく衛星 ○「狭く深く」観測する望遠鏡型衛星 ○広帯域X線スペクトル(0.2-600 keV) 高エネルギーX線に高い感度(HXD) Be型X線連星パルサーを狙う! ○観測の対象になりにくい天 体に強磁場が存在? →突発的に増光する天体を狙う ○Ea > 50 keV のCRSF 検出 →すざく衛星HXDで解決 http://ipl.uv.es/bexrb2011/ 星周円盤 連星周期: 長 離心率:大 B型星 X線 アウトバースト 中性子星 ○Be型X線連星パルサーのアウトバーストを 「MAXI で監視」増光したら「すざくで射止める」 MAXI–すざく 連携観測 since 2010(Suzaku AO-5) →Be型X線連星パルサー GX 304–1, GRO J1008–57 2 天体でCRSF を発見、磁場強度を決定 Be型X線連星パルサー GX 304–1 連星 : V* V850 Cen (B2Vne) 自転周期Pspin : 275 秒 Yamamoto+2011 連星周期Porb : 132.190±0.014 日 Yamamoto2013 離心率e : 0.453±0.02 Yamamoto2013 GX 304–1 ○観測の歴史 ・1967 年気球実験にて発見(McClintock+1971) ・1970 年代は明るかったが、1980 年の検出を最後に 長く 静穏期(X線が検出されない)に突入(Pietsch+1983) →近年詳しい観測がなされていない ・2008 年頃から活動再開のきざし(Manousakis+2008) ○MAXI では2009 年11 月 の初検出を皮切りに、 連星周期に対応したX線アウトバーストを連続して観測 GX 304–1 MAXI–すざく ToO 観測 132.19 日 @ 400 mCrab 1 2 3 4 X線強度 [Crab] X線強度 [cnts/cm-2/s-1] ○MAXI では3.5 年で9 回のアウトバーストを観測 5 6 7 8 9 3 7/28 9/6 ○MAXI–すざく ToO 観測 ・MAXI が検出した3 回目のアウトバースト(観測史上最大光度) ・すざく観測 : 2010/8/13@20 ksec GX 304–1 からの サイクロトロン共鳴構造発見 モデルからの残差 観測スペクトル強度 Yamamoto+2011 ○連続成分モデル : NPEX (Negative and Positive power-law times EXponential) Mihara1995, Makishima+1999 CRSF ! ? Negative 連続成分 深さD Positive 幅W 共鳴エネルギーEa ○吸収構造のモデル : CYAB(CYclotron ABsorption) Mihara1995, Makishima+1999 D Ea 〜 54 keVにCRSF を発見! 磁場強度 B = 4.7 ×1012 G 発見当時は最強磁場 Be型X線連星パルサーGRO J1008– 57 スペクトル型 : B0e 自転周期Pspin : 93.5 秒 Stollberg+1993 連星周期Porb : 249.46±0.1 日 Kuehnel+2012 Coe+2007 離心率e : 0.68±0.02 GRO J1008– 57 ○観測の歴史 ・1993 年にCGRO/BATSE が発見(Stollberg+1993) ・発見以降 BATSE, RXTE/ASM, Swift/BAT, MAXI 4種類 の ASMで21 回のアウトバーストを検出 (うち3 回はGiant Outburst) ○サイクロトロン共鳴構造の探査 Shrader+1999 ・OSSE とBATSE が88 keV にCRSF 共鳴構造を検出? →粗いデータのため確定とは言えず。 GRO J1008–57 MAXI–すざく ToO 観測 ○MAXI では3.5 年で5 回のアウトバーストを観測、 5 回目は不思議な挙動の後、Giant Outburst に発展 0.6 0.6 Suzaku Obs. @ 430 mCrab Flux [Crab] 0.4 0.2 0.3 0 56240 56250 56260 56270 55600 55800 56280 0.0 55000 55200 2009 Aug. 15 55400 MJD 56000 56200 56400 2013 Feb. 14 ○MAXI–すざく ToO 観測 ・Giant Outburst のほぼピークで観測に成功 ・すざく観測 : 2012/11/20@60 ksec モデルからの残差 観測スペクトル強度 GRO J1008–57 からの サイクロトロン共鳴構造発見 HXD-PIN HXD-GSO CRSF ○GX 304–1 と同様に NPEX モデルで連続成分 を フィッティング → ~ 80 keV に残差 ○CRSF 構造モデルを追加し NPEX×CYAB モデルで 再フィッティング Ea 〜 76 keVにCRSF を発見! 磁場強度 B = 6.6 ×1012 G X線パルサーの最強磁場! GX 304–1 GRO J1008–57 8 10 12 14 16 磁場強度 [log B (G)] 連星パルサー (個) 孤立系パルサー (個) X線連星パルサーの磁場強度分布 改訂版 ○すざくはGX 304–1, GRO J1008–57、強磁場の2 天体 ○2008 年以降のCRSF 発見 →5 天体 (Suzaku(2), RXTE(2), INTEGRAL(1)) Doroshenko+2010, DeCesar +2013 Tsygankov+2012 ○CRSF の発見はいずれも BeXB のアウトバースト時 の観測 MAXI–すざく連携観測で磁場強度分布を破る天体を発見 →X線連星パルサーの狭い分布は選択効果である X線連星パルサーの 磁場強度と離心率の相関 中性子星表面磁場強度 [×1012 G] ※離心率が既知のもののみplot 黒 : BeXB 赤: HMXB 緑 : LMXB GRO J1008–57 GX 304– 1 正の相関? ○Be型X線連星パルサー →長連星周期、離心率大 ○離心率大だと磁場強度も大? 離心率 まとめ ○MAXI で監視しすざくで射止めるMAXI–すざく連携観測か らGX 304–1(4.7×1012 G)とGRO J1008–57(6.6×1012 G)の 磁場強度を決定 → 従来の磁場強度分布を破る X線連星パルサー磁場強度の世界記録を更新 ○ 磁場強度B > 4×1012 G のX線連星パルサーは存在し、 B=(1-4)×1012G という分布は選択効果であると考えられる ○連星系の離心率と磁場強度には正の相関がある可能性 サイクロトロン共鳴散乱を用いた 中性子星表面磁場の測定 サイクロトロン振動数の式 ω c= B・e me ωc: 振動数 B: 磁場 e: 電荷 me: 電子質量 強磁場中では電子の運動エネルギー はランダウ準位(とびとびの値)をとる サイクロトロン共鳴エネルギー B Ea= hωc= 11.6 [keV] 12 10 [G] ( ) 吸 収 放 出 E2 X線 E1 X線 E0 電子の運動エネルギー準位 Ea: 共鳴エネルギー 18 1. 研究背景, 2.観測, 3.解析・結果, 4.議論, 5.まと め 3/37 中性子星パルサー磁場強度測定 -8 -10 -12 1014 G ○連星系パルサー マグネター Santangelo+1999 放射エネルギー密度 自転周期変化率P (log, s/s) ○孤立系パルサー 1012 G -14 -16 1010 G -18 -20 -3 108 G 電波パルサー -2 -1 0 1 2 Manchester+2005 自転周期Pspin (log s) 自転周期Pspin とその変化率P B = 3.2×1019 (Pspin[s] P[s])1/2 [G] 基本波準位間と同じ エネルギーを散乱 第2, 3, 4 共鳴 10 20 50 100 エネルギー (keV) 電子サイクロトロン共鳴構造 Ea = 11.6 (B/1012 G) [keV]
© Copyright 2024 ExpyDoc