動物のことば

み
へび
巳(蛇)にまつわる昔話
動物の言葉(セルビア)
むかしむかし、あるところに、とても正直で
働き者のヒツジ飼いがいました。
ある日の事、ヒツジ飼いがいつもの様にヒ
ツジの世話をしていると、森の方からシュ
ウーシュウーと不思議な音が聞こえて来まし
た。
「おや? 何だろう?」
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動物の言葉(セルビア)
ヒツジ飼いが音のする方へ行ってみると木
が燃えていて、一匹のヘビが煙(けむり)にま
かれて苦しんでいます。
このままでは、ヘビは焼け死んでしまうで
しょう。
ヘビはヒツジ飼いを見ると、苦しそうに叫び
ました。
「ヒツジ飼いさん。助けてください!」
「よし、待っていろ!」
ヒツジ飼いがヘビに長いつえを差し出すと、
ヘビはつえを伝ってヒツジ飼いの腕(うで)に
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はいあがって来ました。
動物の言葉(セルビア)
そしてヘビはヒツジ飼いの首に、しっかりと
巻き付いたのです。
ヒツジ飼いはまっ青になって、ヘビを振り放
そうともがきました。
「こら! 助けてやったのを忘れたのか!」
「大丈夫。怖がらないでください。わたしはヘ
ビ王の息子です。父のご殿(てん)まで、わた
しを連れて行ってください」
そこでヒツジ飼いはヘビを首に巻き付けた
まま、ヘビの言う方へ歩き出しました。
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動物の言葉(セルビア)
ヒツジ飼いは長い間歩き続けて、やっとヘ
ビのご殿の門までたどりつきました。
ヘビのご殿の門は、たくさんの生きたヘビ
をあんで作ってありました。
ヘビの王子がピューッと口笛(くちびえ)を吹
くと、門はサッと開きます。
ヘビの王子は、ヒツジ飼いに言いました。
「これから、父のところへ行きましょう。父は
きっと、お礼に金や銀や宝石をあげようと言
うでしょう。でも、そんな物をもらってはいけ
ません。その代わりに、
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動物の言葉(セルビア)
『動物の言葉がわかるようにしてください』と、
頼むのです。初めは嫌がるでしょうが、どう
してもと言えば望みをかなえてくれます」
さて、ヒツジ飼いとヘビの王子がご殿ヘ
入って行くと、ヘビの王は涙を流して喜びま
した。
「息子や。良く帰ってきたな。森で火事があっ
たと聞いて心配していたぞ」
「はい。その火事にあって焼け死にそうだっ
たところを、この方に助けていただ
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動物の言葉(セルビア)
いたのです」
それを聞いたヘビの王は、ヒツジ飼いに向
き直って言いました。
「人間よ。息子を助けてくれてありがとう。お
礼を差し上げたいが、何が望みだね」
するとヒツジ飼いは、ヘビの王子に言われ
た通りに言いました。
「はい、動物の言葉がわかる様にしてくださ
い」
「いや、それだけは、やめたほうがよい。動
物の言葉がわかる様になっても、もし、
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動物の言葉(セルビア)
あなたがその秘密を誰かに話せば、あなた
はたちまち死ぬ事になるのですよ。望みなら、
何か他の物をあげましょう」
「そうですか。どうしてもいけないとおっしゃる
のなら、動物の言葉はあきらめましょう。金
も銀も宝石も、他の物は何もいりません。そ
れでは、ごきげんよう」
そう言って、ヒツジ飼いは帰ろうとしました。
ヘビの王は、ヒツジ飼いを引きとめました。
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動物の言葉(セルビア)
「お待ちなさい。あなたがそれほどまでに望
むのなら、あなたの望みをかなえてあげま
しょう。それでは、口を開きなさい」
ヒツジ飼いが口を開けると、ヘビの王はそ
の中につばをはきました。
それから今度は、自分の口の中につばを
はく様にとヒツジ飼いに言いました。
これを三回繰り返すと、ヘビ王は言いまし
た。
「さあ、これであなたは、動物の言葉がわか
ります。しかし、命が大切なら、ど
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動物の言葉(セルビア)
んなことがあってもこの秘密を人に話しては
いけません。くれぐれも、気をつけるのです
よ」
「はい。ありがとうございます」
ヒツジ飼いはヘビの王と王子に別れを告
げると、ヒツジの待っている牧場へ帰りまし
た。
間もなく二羽のカラスが飛んできて、そば
の木にとまるとこんな事を話し出しました。
「知っているかい? あの黒ヒツジが寝
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ているところの事」
「ああ、黒ヒツジの寝ている下に、金貨や銀
貨や宝物が埋まっているんだろう」
「そうそう。あたしらにはお金なんて何の価値
もないけど、人間がこれを知ったら大喜びす
るだろうね」
これを聞いたヒツジ飼いは、すぐに主人に
言いました。
「もしかするとこの下には、宝物があるかもし
れませんよ」
そして二人が地面を掘(ほ)ってみると、何と
荷馬車(にばしゃ)にいっぱいの宝物
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動物の言葉(セルビア)
が出てきたのです。
するとヒツジ飼いの主人は、ヒツジ飼いに
にっこり微笑(ほほえ)んで言いました。
「わたしはもう年だから、お金なんて必要な
い。でも、お前の人生はこれからだ。これで
家を建てて結婚して、幸せに暮らしなさい」
こうしてヒツジ飼いは全ての宝物をもらって、
家を建てて結婚しました。
そして今度は人をやとって、たくさんのヒツ
ジやウシやブタの番をさせました。
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ある日の事、お金持ちになったヒツジ飼い
が奥さんに言いました。
「明日はわたしがお金持ちになった記念日
だ。働いているヒツジ飼いたちにごちそうをし
てやろう。だから酒や食べ物を、たっぷり用
意しておくれ」
次の日、お金持ちになったヒツジ飼いは、
奥さんと一緒にヒツジ飼いたちの小屋をたず
ねました。
そして山の様なごちそうを並べると、こう言
いました。
「みんな、今日は食べて、飲んで、歌っ
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ておくれ。今夜はわたしがヒツジの番をする
から、安心して楽しむといい」
そしてお金持ちになったヒツジ飼いは、久
しぶりに牧場へ行きました。
さて、やがて真夜中になるとオオカミたち
がやって来て、ヒツジの番をしている若いイ
ヌに向かって話しかけました。
「おい、いつもの様にヒツジをもらうよ。もちろ
ん、あんたにも肉をわけてやるからな」
すると、若いイヌたちは尻尾(しっぽ)を
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動物の言葉(セルビア)
振って答えました。
「ああ、いいとも。おいしそうなやつをたのむ
よ」
ところが、それを聞いた歯が二本しか残っ
ていない年寄りのイヌが、若いイヌとオオカ
ミにワンワンとほえました。
「なんて奴(やつ)らだ!いいか、わしに歯が
一本でも残っているうちは、ご主人さまのヒ
ツジに指一本さわらせんぞ!」
動物の言葉のわかるお金持ちのヒツジ飼
いは、この話を全(すべ)て聞いていました。
夜が明けると、お金持ちのヒツ
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ジ飼いはやとっているヒツジ飼いたちに、
「あの年寄りのイヌは、大事にしてやりなさい。
しかし若いイヌには、おしおきをしなさい」
と、言って、奥さんと二人でウマに乗って家
に帰りました。
お金持ちのヒツジ飼いがオスウマに乗り、
奥さんがメスウマに乗ってるのですが、どう
した事かメスウマは遅れます。それを知った
オスウマが、メスウマをせきたてました。
「どうした。もう少し早く歩けないのか
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動物の言葉(セルビア)
い?」
するとメスウマは、こう答えました。
「だって、あなたは一人乗せているだけです
けど、わたしは二人乗せているんですもの。
奥さんと、奥さんのお腹の中の赤ちゃんをね。
おまけにわたしのお腹にも、あたしたちの赤
ちゃんがいるのよ」
ウマの話を聞いたお金持ちのヒツジ飼い
は、うれしくなって笑い出しました。
それを見て、奥さんが不思議に思いました。
「何がそんなに、おかしいんですか?」
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動物の言葉(セルビア)
「いや別に、ちょっと笑っただけだよ」
「いいえ、何か訳(わけ)があったんでしょう。
その訳を教えてください」
「本当に、何でもないよ」
お金持ちのヒツジ飼いは言いましたが、奥
さんは承知(しょうち)しません。
奥さんは家へ帰っても、しつこく訳を聞きた
がりました。
そこでお金持ちは、
「わたしにはある秘密があって、もしお前に
訳を話せば、その場でわたしの命はなくなっ
てしまうんだよ」
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動物の言葉(セルビア)
と、言い聞かせました。
すると奥さんはあきらめるどころか、ますま
す話してくれとお金持ちをせめたてました。
そこでお金持ちのヒツジ飼いは覚悟(かく
ご)を決めて、自分が死んだら入れてもらう
かんおけを作らせました。
そしてかんおけが出来上がると、家の前へ
置かせて言いました。 「それでは、かんおけ
に入ってから話してやろう。何しろ言ったとた
んに、わたしは死んでしまうのだから」
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動物の言葉(セルビア)
するとその時、二本しか歯のないイヌが息
をきらせてかけつけてきました。
そしてお金持ちのヒツジ飼いのまくらもとに
座って、悲しそうになきました。
お金持ちはそれを見て、イヌにパンをやる
様に言いつけました。
けれどもイヌは、パンには目もくれません。
そこへオンドリがやって来て、パンをせっせ
と突き始めました。
「この恥知らずめ! ご主人が死ぬっていう
時に、パンなんか突いて」
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動物の言葉(セルビア)
イヌがオンドリをしかりつけると、オンドリは
すまして答えました。
「はん。死にたい人は、死ねばいいのさ。
バカバカしい。奥さんのわがままの為(ため)
に、死ぬなんて」
それを聞いたお金持は、かんおけから起き
上がって言いました。
「全く、その通りだ」
そしてわがままな奥さんを、ピシャリピシャ
リと叩(たた)きました。
それからは奥さんはすっかりおとなしくなっ
て、笑った訳を二度と聞こうとは
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動物の言葉(セルビア)
しなかったということです。
おしまい
福娘童話集許可転載<http://hukumusume.com/douwa/>
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