社会保障論講義 2章「本当に重要なことだけを必要最 小限にまとめた社会保障入門」1節 学習院大学経済学部教授 鈴木 亘 1.社会保障制度の存在理由 • 「社会保障制度とは( )である」 • 本講義では、社会保障制度という言葉を、年 金、医療保険、介護保険という「( )」に 限定して使用。 • 社会保障制度といえば「( )」が合言 葉。 • 現代社会で起きる様々なリスクから国民を 守って、最悪の事態に国民が陥ることを防ぐ 役割を果たす。 • 医療保険は、国民が病気になった場合に、 ( )の出費がかさんで生活水準が極度 に下がることを防ぐために存在 • 介護保険は家族の中に( )が発生し、家 族および要介護者が悲惨な状況に陥ることを 回避するために存在 • 年金は、どうでしょうか。予想外に( )を してしまって、生活費が枯渇してしまい、やは り、老後に悲惨な生活状態に陥ることを防ぐ ために存在 • 結局、「セーフティーネット」の本質は、 ( )という言葉もあるように、( )である • 「保険」なので、結果的に、給付を受ける人と 受けない人が出るが、そこに( )という問 題は存在しない • 不公平が無いというのは、あくまで ( )人々の間での話。異なるリス クの人々には異なる保険料を設定しないと不 公平。 • 保険は( )にかけられるものであ る • 「社会保障制度は『保険』だからこそ、若い人 がお年寄りを支える必要がある」とか、「『社会 保険』なので( )があるのは当然」と いった主張は、「保険の原則」を無視した間違 い。 • 現実の公的医療保険で、現役世代の保険料 が高く、高齢者の保険料が低くなっているの は、保険の原則から言うと不公平。若いうち から老後の保険料を払うために貯蓄を積み立 てておくべきで、高齢者になって医療費が増 えることは予期できることなので、予期できる ことには「保険」は成立しない。 • 保険の原則からいえって、( )も正当 化されない。保険は( )で賄うのが基本。 国庫負担や公費負担といった補助金がなけ れば運営できないということはあり得ない。 図表 2-1 「保険の 5 つの原則」 ① 保険の掛け金は掛け捨てである。事後的に保険を使った人も使わない人も、 事前的には、両者ともリスクに備えられたので、そこに損得は存在しない。 ② 保険は加入者の間で「公平」でなければならない(公平でなければ保険が 成立しない)。 ③ 保険は、同質のリスクを抱える集団の間にかけられる必要がある(異なる リスクを持つ人には、異なる保険料を設定する必要がある)。 ④ 事前的な所得再分配は、 「世代内」であれ、 「世代間」であれ、正当化され ない。 ⑤ 保険の運営は保険料で行なうべきであり、その運営に公費を投入すること は正当化されない • 政府が社会保障を運営する理由その1「逆選 択」 • 社会保障制度を政府が運営する理由はどこ にあるのか。 • 「年金、社会保障の専門家」は、「現役から高 齢者への強制的『( )』を行なう必 要があるから」と考えている人が多い。 • 高所得の人々から低所得の人々への 「( )」を強制的に行うためと考え ている「年金、社会保障の専門家」も多い • いずれも全くの間違い。 • 社会保障制度を政府が運営する理由は、 「( )よりも政府の方がうまく運営できる から」に他ならない。「うまく」というのは、効率 的、パレート改善であるということ。逆に、民間 の方が政府よりもうまく運営できるのであれば、 「民間にできることは( )に任せるべき」 • しかしながら、社会保障の場合、民間でうまく 運営出来ない理由が2つある。 • 一つは、民間保険には「( )」と呼ばれる 現象があるから。 • 逆選択とは、「保険に加入する個人と保険を 運営する保険会社の間に、リスクに関する 『( )』がある場合に、保険にリス クの高い人ばかりが残り、リスクの低い人々 が保険から脱退してしまい、十分な保険商品 が提供されないこと」 • 民間医療保険の例。個人年金の例。 • 政府が強制することによって、一定範囲で、リ スクの高い人、低い人の両者の状態が改善 する。 • 一点注意が必要なのは、「( )」のように誰 の目にも明らかなものは、「非対称情報」では ないこと。 • 時折、「逆選択のために、年齢が高い人ばか りが医療保険に入り、若い人が加入しないと いう現象が起きるため、政府が運営する必要 がある」というような言い方は、間違い。 • 逆選択も、世代間所得移転の根拠には成り 得ない。 • 政府が社会保障を運営する理由その2「モラ ルハザード」 • 政府が社会保障制度を運営するもう一つの 理由は、( )への「( )」が 生じること。 • 若い人々にとって、老後はまだかなり先のこと であり、ついつい今の生活を楽しむために、 老後の生活費を蓄えることを怠り勝ち。 • 経済学では、「時間的視野が短い」もしくは 「近視眼的」という言い方をする。 • 現代版のアリとキリギリスは、温情がある世 界。 • モラルハザードが起きないように、政府が、個 人に変わって「( )」を行なわせる公的年 金制度を運営する必要がある。 • 実は、逆選択やモラルハザードを防ぐには、 政府が自ら社会保障制度を運営する必要は 無い。( )のように、民間保険に「必 ず」加入しなければならないと法律を作るだけ でも、理論的には十分に対応可能。 • 政府の世代間所得再分配が正当化される特 殊ケース • 政府が強制的に世代間所得移転をした方が よい例外が2つだけ存在 • 一つは、人口が成長し続けている時 →次節 • 戦争や災害など「( )」歴史上の出来 事によって、ある世代の全員が損失を負うよ うな被害を受けた場合。 • 「予期できないリスク」に対する「世代間の『保 険』」として、世代間所得分配・賦課方式が正 当化される。 • 「世代内」所得再分配は、税制や福祉で対応すべき • 政府が行なうべき政策目標の一つには、所得再分配 があるが、年金、医療、介護などの「保険」を通じて 行わなければならない根拠は、何一つ存在しない。 • 世代内の所得再分配の手段としては、累進的な ( )・( )・( )といった税制や、生活 保護等の福祉という直接的手段が用意されており、 その方がはるかに効率的。 • 社会保障制度の負担である保険料は、基本的にそ の徴収ベースをフローの( )だけにおいているので、 高齢者に多い「フローの所得は小さいがストックであ る資産を多く持つ」という( )にも所得補助を 行ってしまう。 • 保険を通じた所得再分配という概念は、保険 原則とも相容れない。 • 保険料は、( )として価格設定されなけ れば、市場が機能しない。 • ( )にすべきと政府が考えるのであれば、 ( )や( )という形で、後から保険料支 払い分の減免を、低所得者に対して行なえば 良い。 • 政府の社会保障制度は『社会保険』だから、 所得再分配を行なうべきである」という主張は、 完全に「( )」に過ぎない。
© Copyright 2024 ExpyDoc