第四回 現代の翻訳論

先週の質問
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韻を踏んだ歌詞の翻訳はどうするのですか。
通訳と翻訳の違いはなんですか。
翻訳と文法はあまり関係がないのですか。
翻訳を最終的にチェックするような団体はありま
すか。
翻訳の仕事だけで生計がたてられますか。
翻通訳について他にも誤った設問はありますか。
なぜ中国語を学ぼうと思ったのですか。
冗談はどうやって通訳しますか。
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手話は記号法間翻訳になりますか。
産業翻訳で最も需要の多い分野は何ですか。
絶対的な規範のない翻訳ではやはり経験から学
んでいくことが多いのでしょうか。
翻訳をするときに母語と第二言語のどちらで考
えているんでしょうか。
初めて知らない言語に出会った人や通訳を行っ
た人はどうやって理解できるようになったんで
しょうか。
どのように言語のニュアンスにしっくりくる表現を
見つけているんでしょうか。
翻訳の仕事
出版翻訳

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文芸、ノンフィクション、ビジネス

映像翻訳
時事翻訳
産業翻訳
特許翻訳

社内翻訳者とフリーランス



翻訳の仕事
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出版・映像

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産業・技術

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電気、電子、医療、バイオ、IT、経済、環境に需要大
特許

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志望者が多い割に市場が狭く参入困難
翻訳事務所専属などで収入安定をねらえる
ニュース・報道

テレビ局、新聞雑誌など日英に需要
翻訳者に向いている人
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日本語の文章力に優れ、文章を書くことが好き
家に一日中こもって仕事することが苦ではない
情報収集能力、調査能力がある
性格が緻密、几帳面で誤字や脱字がない
勝手な思いこみをせず徹底的に調べる
インターネット検索や文書作成支援ツールなど、
コンピュータを自在に使いこなせる
一日7,000字程度をコンスタントに翻訳できる
通訳の仕事
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会議通訳
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一般通訳

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時差通訳、生同通
インハウス通訳

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研修、アテンド、交渉、レセプション、見本市
放送通訳

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国際会議の同時通訳
派遣、正社員
通訳ガイド
詳しくは下記のサイトを参照してください。
通訳の仕事(1)
通訳の仕事(2)
会議通訳の仕事
最近の主な仕事(ご参考)
特許庁・日中韓特許庁長官会合
経済産業省・マルチメディアアート・シンポジウム
国土交通省・ITS(Intelligent Transport Systems)世界会議
北海道道路交通技術開発学会・寒冷地道路交通安全シンポジ
ウム
大連市政府・投資環境説明会
モトローラ研究所ラボツアー
日本青年会議所・日中若手経営者交流会議
モトローラ・移動体通信市場セミナー
特許庁・日中商標実務者会議
経済産業省デジタルコンテンツ協会・デジタルコンテンツグラン
プリ
外務省交流協会・台湾経済セミナー
松下電器・中国情報通信省大臣パナソニックセンター視察
通訳者に向いている人
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聞きやすい発声、発音で明確に話せる
耳で聞いた発言を頭の中で整理できる
重要な点とそうでない点を瞬時に弁別できる
調査力、情報収集能力がある
協調性がある
度胸がある
サービス精神に富んでいる
臨機応変に対応できる
食わず嫌いをしない
翻訳・通訳という仕事の意義
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母語の使用は擁護されるべき人権である
外国語の使用により、人は時として不利な
立場に追い込まれる
外国語の能力がいかに高くなろうとも母語
でなければ表現しきれないことがある
誰でも翻訳・通訳を通じて、自由に母語で
コミュニケーションする権利を行使できる
通訳者、翻訳者は言語権という人権を擁
護する役割と責任を有している
通訳翻訳論 第四回
http://www.geocities.jp/nagatasae/
2004tuuyaku.htm
現代の翻訳論とその課題
「翻訳学の方向性と構造」
劉宓慶『当代翻訳理論』1993年
翻 訳 理 論
翻
訳
教
育
法
研
究
翻
翻
訳
訳
文
文
体
体
論
論
翻
翻
訳
訳
基
論基
礎
礎
理
理
論
翻
翻
訳
訳
プ
プ
ロ
ロ
セ
セ
ス
ス
研
研
究
究
論翻
訳
方
法
翻訳通訳研究の関連学問領域
比較言語学
記号論、
認知言語学
談話分析
翻訳通訳研究
認知心理学
読みの研究
言語情報処理
哲学
思想
論理学
社会学
教育学
コミュニケーション論
翻訳における等価と効果
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語彙、文法のレベルで価値が完全に等しい訳出
を行うことはできるか。


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数式や化学元素記号などはもともと言い換えを必要
としない。
自然言語におけるテクストの形式的な等価は同じ文
法形態を持つ言語間でも不可能。
Traduttore, traditore



翻訳者は裏切り者
翻訳者は反逆者
訳者はやくざ
翻訳における等価と効果

「言語使用域」(Register)という概念
あるメッセージが発信者から受信者に正確に伝達さ
れるためには、その場に適した「言語使用域」が必要
SL(M1)の社会における位置
=>TL(M2)の社会における位置

場面とテクストの内容にふさわしい表現
●
翻訳の等価と効果
二葉亭四迷の翻訳
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I love you. → 「死んでもいいわ」
翻訳小説と役割語



日本語における役割語の使用とその効果
誰のセリフですか?
1.老博士
1.
2.
3.
4.
5.
「わしはとっくに知っておったんじゃ」
2.お嬢様
3.謎の中国人
「わたくしはとうに気づいておりましたわ」
4.外人
「わたし、それ、知ってたアルよ」
5.江戸っ子
「オウ、ソノコト、ワタシ、シッテマシタネ!」
「そんなこたぁ、こちとらぁ、とっくのとんまにご存じよ!」

春すぎて 夏来(き)にけらし 白妙(しろた
へ)の衣(ころも)ほすてふ 天(あま)の香
具山(かぐやま)

いつの間にか、春が過ぎて夏がやってきたようですね。
夏になると真っ白な衣を干すと言いますから、あの天
の香具山に(あの ように衣がひるがえっているので
すから)。
http://www.ogurasansou.co.jp/hyakunin/002.html

ゆれる せんたくもの お日さまの においが一杯。
深みどり色の 夏のはじめ。
松村よし子『新釈・平成イラスト版 恋の百人一首』(文化出版局)
翻訳の等価と効果
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伝達の目的、予測される結果などにより起点言
語から目標言語への対応が決定される
立
ち
入
り
禁
止
関
係
者
以
外
STAFF
ONLY
翻訳とコード制約
一義的に訳語が決まる語彙や表現
VS
様々な解釈を許容する語彙や表現
 科学技術用語、テクニカルタームなどは訳語へ
の置き換えを正確に行うこと
 文学、とくに詩歌では言語資源の活用度が大き
いため、様々な工夫が必要になる
 翻訳理論から言えば高度な技術翻訳は容易
 翻訳の実践から言えば必ずしもそうではない
翻訳通訳と言語コミュニケーション
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翻訳通訳にはかならず発信者・翻訳者・受信者
が存在する
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三者二言語モデル
翻訳通訳では三者が共有する知識が問題

言語の理解と産出を支える知識
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言語知識
世界知識
場の知識
専門知識
翻訳通訳はコミュニケーションの問題として捉え
ることができる
三者二言語モデルの図式
(Kirchhoff.1976)
多義的な文章の解釈および言い換え
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みんな欲しいシャネル




ここで問題です
学校がつぶれた。
会社がつぶれた。
犬小屋がつぶれた。


誰もが欲しがるシャネルの製品?
シャネルの製品なら何でも欲しい?
「つぶれた」をそれぞれ言い換えなさい。
茶色い目の大きな犬を飼っている宇宙人

8通りまたは9通りの解釈がしなさい