COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 スケジューリング最適化エンジン ― RCPSPによるアプローチ 野々部宏司 京都大学大学院情報学研究科 (茨木俊秀教授との共同研究) COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 はじめに APS (Advanced Planning and Scheduling) ‐ 生産計画(在庫計画)+スケジューリング ‐ 資材調達計画+資源負荷計画 ‐ 納期回答 ‐ … 〈スケジューリング・エンジンの重要性〉 ・問題を数学的に捉え(モデルの作成), ・最適化の手法を適用 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 本研究の目指すところ 実用性の高いスケジューリング・エンジンの開発 ・適用可能性(汎用性) ← 拡張RCPSPモデル ・高性能 ← メタヒューリスティクス RCPSPに 定式化 汎用モデル RCPSP RCPSP ソルバ スケジュール スケジューリング最適化エンジン COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 本研究の位置付け(1) 理論 ―――― 応用 ―――― 実用 Theory Application Practice ・モデルの作成 ‐ 避けては通れない(避けてはならない) ‐ 現状把握,問題整理・認識,目標設定 ‐ 抽象化と具体化(限定化)のバランス ・最適化 ≒ 制約充足・実現可能を目指す COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 本研究の位置付け(2) 生産計画 ――――― スケジューリング planning scheduling ・部品表・工程表は既知 ・「どの製品を,どれだけ,いつまでに生産するか」 を入力として (← 需要予測,受注,在庫,…), ・「各製品を,いつ生産するか」を決定 (→ 資材調達,生産スケジュール) ・有限負荷,現場レベルでの制約を考慮 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 本研究の位置付け(3) 秒・分 ― 時 ―― 日 ―― 週 ――― 月 ――― 年 最小単位時間 計画期間 ・問題規模: 数百個 ~ 数千個の作業(工程) ・計算時間: 数十秒 ~ 十数分 (~ 数十分) ・シミュレーションを行うだけではない COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 RCPSPモデル ~ 生産スケジューリングを例として~ COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 資源制約スケジューリング: RCPSP Resource Constrained Project Scheduling Problem 希少資源を必要とする作業に対し,資源配分, および各作業の処理時刻を決定する問題 モデル・・・ 抽象的,汎用的 資源: 機械,設備,装置,工具,人的資源,予算,… 作業: 資源を消費する活動; 仕事,工程,タスク,… 作業によって消費または生産される 原材料,部品,製品などは陽に扱われない COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 例:生産計画(1) 製品A 作業4 部品 B 10h/装置c, 作業員3人 作業1 材料D 処理時間/資源 2h/装置a, 作業員2人 部品 C 作業3 2h/装置b, 作業員3人 作業2 2h/装置c, 作業員2人 材料E COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 先行制約 ・作業 i が完了するまで作業 j を開始できない ・非巡回有向グラフで表現 (activity-on-node diagram, precedence diagram) 材料D 製品A 部品B 作業1 材料の 調達 作業4 作業2 材料E 作業3 部品C 製品A の出荷 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 RCPSP:再生型資源 ・再生型資源 (e.g., 設備,機械,工具,従業員,…) 各単位時間毎に利用可能量 ‐ 週末は従業員の数が少ない, ‐ 週末は機械を停止, ‐ 装置の利用可能日が限定, ‐ … 作 機業 械員 日 日 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 RCPSP:作業 ・作業 処理時間 (中断不可) 処理に必要な資源量 搬 送 車 装 作置 業 員 作業開始 作業開始 作業開始 ・作業間の先行関係 完了 完了 完了 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 現実とのギャップ ・代替設備,代替資源 ・切替コスト,段取り時間 ・同時開始,同時終了,最小・最大遅延時間 (時間制約) ・作業の分割,中断 ・ロットまとめ ・在庫 ・… 拡張RCPSPモデルで表現 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 RCPSP: 処理モード ・作業の処理方法(=処理時間,必要資源量) - 複数の選択肢・・・処理モード - e.g., 性能の異なる機械, 作業量(人×日)一定, 特急処理, … RCPSP: 各作業をいつ,どの処理モードで行うかを決定 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 RCPSP: 処理モードに関する制約 ・非再生型資源 (e.g., 原材料,予算,…) - スケジュール全体での利用可能量 - 作業による消費量は処理モードにのみ依存 → 処理モードに関する制約 ・従属処理モード - 再生型資源 r 上での直前作業に依存 → 切替コスト - 作業 i は作業 j と同一の処理モード - … COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 RCPSP: 直前先行制約(1) ・作業 i は作業 j に先行 ・再生型資源 r 上で定義 i,j ともに r を消費 作業 i 完了後,次に r を 消費する作業は j 作業 i 作業 j × × ○ ○ COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 RCPSP: 直前先行制約(2) ・段取り替え作業 - 本作業の直前に実行 - 従属処理モード制約と組合せ ・時間制約 - 同時開始 - オーバーラップ - 最大遅延時間 作業 i 作業 i オーバーラップ ダミー 作業 j 作業 i ダミー 作業 j 作業 j ダミー オーバーラップ COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 RCPSP: 直前先行制約(3) ・その他 - 作業 i, j 間に作業 k は処理不可, - … i ダミー 処理時間0 ×k ダミー j ・ダミー,i 間およびダミー,j 間は先行制約 ・ダミー,ダミー間は仮想資源 r 上の直前先行制約 ・作業 k も仮想資源 r を消費 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 RCPSP: 直前先行制約(4) ・処理モードとの組合せ - 直前先行制約:再生型資源 r 上で定義 - 先行,後続作業ともに r を消費するとき有効 → r を消費するか否かは処理モードにより定まる → 直前先行制約は処理モードに依存 e.g., - 作業 i は j, k, … のいずれかと同時に開始 - ロットまとめしたとき,それらは同時開始 - … COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 例:生産計画(2) 製品A 作業4 部品 B 10h/装置c, 作業員3人 作業1 材料D 処理時間/資源 2h/装置a, 作業員2人 部品 C 作業3 2h/装置b, 作業員3人 作業2 2h/装置c, 作業員2人 材料E COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 例:生産計画(2) 製品A ロットサイズ 1 作業4 部品 B 1 作業1 5 材料D 4 部品 B 2 2h 装置a 作業員2人 部品 C 部品 C 1 作業3 2.5h 装置c ×4 作業員3人 作業時間 一定 作業2 4 材料E 2h ×2 装置b 作業員3 人 1h ×2 装置c 作業員2 人 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 例:生産計画(2) 作業1-1 作業1-2 作業1-3 作業4 作業1-4 作業2-1 作業3-1 作業2-2 作業3-2 別ロットモード 処理時間:2h 装置b 同一ロットモード 処理時間:2h 作業3-1と同時開始 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 例:生産計画(3) ・在庫: 基本的に先行制約で処理 ・先行制約で処理できないケース: 製品A1 ロットサイズ 10 製品A2 10 部品B 30 作業A1 作業A2 作業B 20 部品 B 40 部品 B 1 ・製品A1,A2 をそれぞれ50個生産 原料 C COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 例:生産計画(3) 製品A1 ロットサイズ 10 製品A2 10 部品B 30 作業A1 作業A2 作業B 20 部品 B 40 部品 B 1 原料 C ・作業A1,A2 をそれぞれ5回処理 → 部品B: 全体で 300 必要 → 作業B: 10回処理 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 例:生産計画(3) 作業B-1 作業B-2 作業B-3 作業B-4 作業B-5 作業B-6 作業B-7 作業B-8 作業B-9 作業B-10 こ れ で よ い か ? 作業A1-1 作業A1-2 作業A1-3 作業A1-4 作業A1-5 作業A2-1 作業A2-2 作業A2-3 作業A2-4 作業A2-5 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 RCPSP: 蓄積型資源 ・原材料,部品,製品などを表現 ・作業により消費または生産される ・在庫量 0 在 庫 量 時間 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 例:生産計画(3) ・蓄積型資源: - 負の資源消費量を許す再生型資源 - 各作業は,処理開始または完了後も 資源を消費し続ける 資 源 量 時間 負の消費量 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 RCPSP: 評価基準 ・状況に応じて変化 → 柔軟な枠組みが必要 ・「最適化」よりはむしろ「制約充足」 ・制約違反度(ペナルティ)を最小化 - 再生型資源制約,先行制約, 直前先行制約は必ず満たすよう指定可能 ・ユーザ定義制約 処理モード,開始時刻,完了時刻に関する 線形不等式制約 e.g., 最大完了時刻最小化, 総納期遅れ和最小化, 非再生型資源制約,… COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 最適化の手法 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 代表的な解法 ・シミュレーション 山積み山崩し,優先規則法, フォワード,バックワードスケジューリング,… ・人工知能 制約伝播,遺伝アルゴリズム,… ・数理計画・OR 分枝限定法,整数計画法, ラグランジュ緩和,… ・メタヒューリスティクス ・… COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 メタヒューリスティクス ・基本的な発見的手法 (e.g., 欲張り法,局所探索法) を融合,拡張した手法の総称 - アニーリング法 - 遺伝アルゴリズム - タブー探索法 … 実現・実装の自由度大 → 問題の構造を巧く捉えることが重要 ・POP (Proximate Optimality Principle) ・集中化・多様化 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 アルゴリズムの概略 ・リストスケジューリング + バックトラック - 作業の順列(リスト)に従ってスケジュールを生成 - 各作業を,すべての制約を満たす最早開始時刻 に割付け(フォワード・スケジューリング) - 直前先行制約 ← 必要の応じてバックトラック ・最適なリストをタブー探索法で発見 - クリティカル・グラフに基づく近傍 - タブー期間(tabu tenure)の適応的制御 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 ベンチマーク: PSPLIB PSPLIB: Project Scheduling Problem LIBrary http://www.bwl.uni-kiel.de/Prod/psplib/ 先行制約,最大完了時刻最小化 #作業 #再生型 資源 #非再生型 資源 #処理 モード #最良解* j60.sm 60 4 0 1 2/480 j90.sm 90 4 0 1 12/480 j120.sm 120 4 0 1 75/600 j30.mm 30 2 2 3 126/550 *: 2001年12月現在の最良解を最初に発見 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 ベンチマーク: ProGen/Max ・http://www.wior.uni-karlsruhe.de/RCPSPmax/progenmax ・最小・最大遅延時間,最大完了時刻最小化 ・作業数 100,再生型資源数 5 ・実験結果 #最良解を更新 #最良解を発見 下界値からの平均 56問/1059問 704問/1059問 4.44 % 計算時間: 600秒(PentiumIII 1GHz)/問 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 適用例 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 中断を考慮した生産スケジューリング ・ジョブショップ型のスケジューリング問題 - 複数の工程を経て製品が生産 - 工程: (前半)手動処理 → (後半)自動処理 - 設備資源,作業員資源 ・休憩時間: 手動処理を中断(割り込み不可) 自動処理は続行 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 中断を考慮した生産スケジューリング(2) 作業の分割 手動処理 自動処理 ・(部分作業の継ぎ目に限り)作業の中断が可能 ・連続する部分作業間に直前先行制約 → 割り込みの禁止 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 作業場所を考慮した生産スケジューリング 部品 ・クレーンで搬入 作業 搬出 ・配置場所は固定 ・処理日数, 最早搬入日, 最遅搬出日: given 搬入日,搬入位置を決定 搬入 搬出 部品 i 144424443 li L COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 作業場所を考慮した生産スケジューリング (長さ)×(日数)の矩形を配置する問題 配 置 搬入 位 位置 yi 置 L 搬入日 xi 123 0 日程 li 部品 i 1442443 処理日数 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 作業場所を考慮した生産スケジューリング: 搬入日の決定 ・クレーン,従業員: 再生型資源 ・最早搬入日: 先行制約 (最小遅延時間指定) ・最遅搬出日: ソフト制約 違反度最小化 ・配置場所:再生型資源; 利用可能量 ρL (ρ: 0 ρ 1 の定数) -部品 i による消費量: li -ρ= 1: 配置可能となるための必要条件 -ρ< 1: 必要条件よりも強い ⇒ 次段階において配置し易い COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 作業場所を考慮した生産スケジューリング: 搬入位置の決定 ・配置位置 ⇔ RCPSPの時間軸 配置位置 0 yi L yi+li (適当な長さで離散化) ・部品の長さ ⇔ 処理時間 ・各日 ⇔ 再生型資源 日 ・最大完了時刻: L 以下 程 実行可能配置 xi 部 品 i COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 今後の展開 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 今後の展開 ・実用化 - スケジューリング・「エンジン」として開発 → ActiveXコンポーネント OptSeq (http://www.logopt.com/) - RCPSPへの帰着: ‘‘art’’ モデル化の指針 ・高速化・大規模問題対応 - 性能,汎用性とのトレードオフ - データ構造 COM・APS(先進的スケジューリング)研究部会 2001/12/21 今後の展開 ・モデルの拡張 - 非正規評価基準 ← 凸型コスト関数 - ロットサイズの決定 切替・段取り費用と在庫費用のトレードオフ → 問題を複雑・大規模化 問題範囲をどこまで拡大すべきか?
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