情報科教育法 14章 情報社会に対する話題 2205/10/20 知識情報工学専攻 修士1年 033729 平野幸児 1 14章の内容 本章では、情報社会に関するいくつかの話題 を取り上げ、そのしくみと影響について考える。 1. ユニバーサルデザイン、バリアフリー、ディジ タルデバイド 2. 電子商取引 3. 知的財産権――著作権を中心に 4. 個人情報とプライバシー 2 ユニバーサルデザインとは? ユニバーサルデザインの定義: 年齢・国籍・性別・能力・身体的な特性等の違 いにかかわらず、出来うる限り最大限、すべて の人に利用可能であるように配慮しながら、 製品・建物・環境をデザインする思想 アメリカノースカロライナ州立大学のロン・メイ ス博士によって7つの原則が提唱される 3 ユニバーサルデザインの7つの原則 1. 2. 3. 4. 5. 誰にでも公平に利用できること(公平性) 使う上で自由度が高いこと(自由度) 使い方が簡単ですぐわかること(単純性) 必要な情報がすぐに理解できること(わかりやすさ) うっかりミスや危険につながらないデザインであるこ と(安全性) 6. 無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使用で きること(省体力) 7. アクセスしやすいスペースと大きさを確保すること(ス ペースの確保) 4 原則1:誰にでも公平に利用できること 定義:誰にでも利用できるように作られており、 かつ、容易に入手できること。 ガイドライン: 1a.誰もが同じ方法で使えるようにする:それが無理 なら別の方法でも仕方ないが、公平なものでなく てはならない。 1b.差別感や屈辱感が生じないようにする。 1c.誰もがプライバシーや安心感、安全性を得られる ようにする。 1d.使い手にとって魅力あるデザインにする。 5 原則2:使う上で自由度が高いこと 定義:使う人のさまざまな好みや能力に合うよ うに作られていること。 ガイドライン: 2a.使い方を選べるようにする。 2b.右利き、左利きどちらでも使えるようにする。 2c.正確な操作がしやすいようにする。 2d.使いやすいペースに合わせられるようにする。 6 原則3:使い方が簡単ですぐわかること 定義:使う人の経験や知識、言語能力、集中 力に関係なく、使い方がわかりやすく作られて いること。 ガイドライン: 3a.不必要に複雑にしない。 3b.直感的にすぐに使えるようにする。 3c.誰にでもわかる用語や言い回しにする。 3d.情報は重要度の高い順にまとめる。 3e.操作のためのガイダンスや操作確認を、効果的 に提供する。 7 原則4:必要な情報がすぐに理解できること 定義:使用状況や、使う人の視覚、聴覚などの感覚能 力に関係なく、必要な情報が効果的に伝わるように作ら れていること。 ガイドライン: 4a.大切な情報を十分に伝えられるように、絵や文字、手触 りなど異なった方法を併用する。 4b.大切な情報は、(例えば大きな文字で書くなど)できるだ け強調して読みやすくする。 4c.情報をできるだけ区別して説明しやすくする(やり方が 口頭で指示しやすくなるように)。 4d.視覚、聴覚などに障害のある人が利用しているさまざま なやり方や道具でも、情報がうまく伝わるようにする。 8 原則5:うっかりミスや危険につながらない デザインであること 定義: ついうっかりしたり、意図しない行動が、危険 や思わぬ結果につながらないように作られていること。 ガイドライン: 5a.危険やミスをできる限り防ぐ配慮をすること:頻繁に 使うものは最もアクセスしやすくし、危険なものはなくし たり、隔離したり、覆うなどする。 5b.危険なときやミスをしたときは警告を出す。 5c.間違っても安全なように配慮をする(フェイルセーフ)。 5d.注意が必要な操作を、意図せずにしてしまうことがな いように配慮する。 9 原則6:無理な姿勢をとることなく、少ない 力でも楽に使用できること 定義:効率よく、気持ちよく、疲れないで使える ようにすること。 ガイドライン: 6a.自然な姿勢のままで使えるようにする。 6b.あまり力を入れなくても使えるようにする。 6c.同じ動作を何度も繰り返すことを、できるだけ少 なくする。 6d.体に無理な負担が持続的にかかることを、でき るだけ少なくする。 10 原則7:アクセスしやすいスペースと大きさ を確保すること 定義:どんな体格や、姿勢、移動能力の人にも、アクセス しやすく、操作がしやすいスペースや大きさにすること。 ガイドライン: 7a.立っていても座っていても、重要なものは見えるよ うにする。 7b.立っていても座っていても、あらゆるものに楽に手 が届くようにする。 7c.さまざまな手や握りの大きさに対応する。 7d.補助具や介助者のためのスペースを十分に確保 する。 11 バリアフリーとは? バリアフリーの定義: 身体障害者や高齢者が生活を営むうえで支障 (バリア)がないように、商品を作ったり建物を設 計したりすること。また、そのように作られたもの。 平成7年(1995年)版「障害者白書」では、4つ のバリア(物理的バリア、制度のバリア、文化・情 報のバリア、意識のバリア)が定義されている。 12 ユニバーサルデザインとバリアフリーの違 い バリアフリー 障害者や高齢者など特定の人に対する、特別な 対策 すでにある障害(バリア)に対処する後付の方法 ユニバーサルデザイン 障害の有無・年齢・性別・国籍・人種等にかかわら ず多様な人々が対象 最初から障害が取り除かれているデザインを目指 す 13 どのような障害や格差があるか (1/2) 視覚障害 全盲、ものが歪んで見える 最初から視覚障害者のための計算機やwebペー ジを用意する 色覚異常 色のコントラストに配慮し、適切な色の組み合わせ で表示する → カラーバリアフリー 聴覚障害 音情報のみの表示は避け、重要な情報は反転した り色合いに変化をつけて視覚的な表示に配慮する 14 どのような障害や格差があるか (2/2) 言語障害 音声認識ソフトの時間切れまでの時間を長くする 上肢の運動障害 障害に応じて適切な入力機器を開発する → こころWeb*1 下肢の運動障害 スロープや車いす対応の机など 知的障害 *1:http://www.kokoroweb.org/index_device.html 15 ディジタルデバイドとは? IT用語辞典*2より 「パソコンやインターネットなどの情報技術(IT)を使 いこなせる者と使いこなせない者の間に生じる、待 遇や貧富、機会の格差。個人間の格差の他に、国 家間、地域間の格差を指す場合もある。」 2000年の九州・沖縄サミットで「グローバルな情報 社会に関する沖縄憲章」が採択され、デジタル・オ ポチュニティ(情報機会)社会の実現に向けたさまざ まな政策・活動がなされている → DO SITE*3 *2:http://e-words.jp/ *3:http://www.dosite.jp/ 16 電子商取引(E-commerce)とは? インターネットなどの情報通信ネットワークを 利用して行われるさまざまな商取引のこと インターネットが普及するにつれて急激に成 長し、決済・流通システムや決済データのセ キュリティ保護システムなど、技術的な問題も 解決しつつある データ漏洩やネット詐欺などの電子商取引な らではの問題もある 17 電子商取引の3つの形態 企業間電子商取引(B2B) 売り手と買い手がWebサイトなどを使ってオープ ンな取引を行なう電子市場 企業・消費者間電子商取引(B2C) インターネットショッピング オンライントレード 消費者間電子商取引(C2C) オンラインオークション 18 インターネットショッピング (1/2) 電子商取引の代表例 Webサイトを介して商品やデジタルコンテン ツの売買を行う 代表的なサイト:Amazon*4、楽天市場*5 おおまかな買い物の手順 1. 消費者がWebサイトで気に入った商品を発見 2. Webや電子メールで注文 3. 会計処理が行われ、商品が発注される *4:http://www.amazon.co.jp/ *5:http://www.rakuten.co.jp/ 19 インターネットショッピング (2/2) 消費者にとってのメリット 時間を気にせず買い物ができる 自宅にいながらにして買い物できる 入手しにくい品物が購入できる 消費者にとっての不安点 個人情報が漏洩しないか 情報通りに「モノ」と「金」が動くか 商品の品質が保証されているかどうか 20 電子商取引で扱われる商品 実体のないデータ 「着うた」などのデジタルコンテンツ チケット予約などのサービス 実体はあるが実体に意味がないもの 音楽CD 実体のあるもの 食品やパソコン、不動産など、普通の買い物と変 わらない 21 決済方法 クレジットカード・信用取引 デビットカード・銀行引き落とし 電子マネー ICカード(Suica、Felicaなど) 22 知的財産権 人間の知的な活動から生じる創造物に関する 権利を、知的財産権(知的所有権、無体財産 権)と呼ぶ。 知的財産権の例 特許権:自然法則を利用した、新しさ、進歩性のあ る発明に関する権利 商標権:自己の商品名やサービスに使用するマー クに関する権利 著作権 著作者人格権 23 著作権とは? 著作者が著作物を作成した場合に、その著作 物を直接かつ排他的に支配しうる権利 著作権:「著作者が著作物について排他的に 利用することができる財産的権利」 → 他人に譲渡することができる 著作者人格権:「著作者が著作物について有 する人格的な利益を保護する権利」 → 著作者に固有のもので譲渡不可 24 著作物 思想又は感情を創作的に表現したもので、文芸、 学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう 幼稚園児が描いた絵も著作物 単なるデータは著作物ではないが、創意工夫をこら して分かりやすくそのデータをまとめたデータベース は著作物 航空機や人工衛星が自動的に撮影した写真は、一 般に著作物とはいえない 工業製品そのものは著作物ではない プログラムやWebサイト、Eメールは著作物 25 著作者 著作物を創作した者 有名な作家だけでなく、著作物を創作すれば誰で も著作者 共同著作物については、共同で創作に寄与し た者全員がひとつの著作物の著作者となる 企業の業務として制作された場合、企業が著 作者になる 26 著作権の発生 著作物を創作した時点で、権利が発生する 特許権のように届け出る必要はない ベルヌ条約による保護(無方式主義) ベルヌ条約に加盟していない国もあるので、その 場合は万国著作権条約(方式主義)に基づく表示 が必要 → (c) 制作年,著作者氏名,All rights reserved. 保護期間は、著作者の死後50年 27 権利の内容 著作権 ・複製権 ・上演権 ・演奏権 ・上映権 ・公衆送 信権 ・口述権 ・展示権 ・頒布権 ・譲渡権 ・貸 与権 ・翻訳権 ・翻案権 ・二次的著作物利用権 著作者人格権 ・公表権 ・氏名表示権 ・同一性保持権 著作隣接権 実演家などに認められた諸権利 28 著作権行使が制限される場合 保存などで必要な場合、ときに著作権の行使 を制限することがある 私的使用のための複製 引用 教育目的での利用 …… それぞれ必要な条件を満たさなければならな い → 著作権情報センター*6 *6:http://www.cric.or.jp/qa/hajime/hajime7.html 29 個人情報 個人を特定するのにふさわしいさまざまな情報を「個人 情報」という ・氏名 ・性別 ・生年月日 ・住所 ・身元確認や資格 ・財務 情報 ・保険情報 ・社会的サービス情報 ・公的サービス情 報 ・不動産情報 ・娯楽情報 ・消費者情報 ・雇用情報 ・ 教育情報 ・法的情報 など 個人情報は、現在ではコンピュータデータベースの形 で記録されていることが多く、データがCDやDVDなど のメディアに容易にコピーできるため個人情報漏洩が 起こりやすい → 個人情報保護法 30 プライバシー 個人の私生活に関する事柄(私事)、およびそ れが他から隠されており干渉されない状態を 要求する権利 日本国憲法では、第13条*7によって保護されてい ると解されている 自己に関する情報の訂正、削除などを求める積極 的権利の側面も含まれるとする見解(自己情報コ ントロール権説)もある 報道の自由・表現の自由との微妙な問題 → 「石に泳ぐ魚」出版差止事件など *7:http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%FB%CB%A113%BE%F2 31 個人情報とデータマイニング 情報機器、データベースの発達によって、単 独では個人情報にならないさまざまなデータ を組み合わせて(データマイニング)、プライバ シーを侵害される場合がある 例*8 個人情報、プライバシーの範囲が変わってき ている *8:http://www.uidcenter.org/japanese/security.html 32
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