提案書

よい経営のための処方箋その2
成功する経営承継
(後継者に贈る「転ばぬ先の杖」)
株式会社価創研 代表取締役
鈴木 茂和
(中小企業診断士)
Cell:090-3422-0179
じゆうじんの経営放談 http://www.zujin50.jp/
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創業と守成、いずれが難き?
「帝王の業、草創と守成といずれが難き」
これは『貞観政要』※に出てくる有名な一節です。
※中国史上名君の誉れ高い唐の太宗・李世民とその側近の政治問答集。
北条政子や徳川家康も愛読したと言われる帝王学のバイブル。
一般には、「守成」の方が難しいと解釈する向きが多いのですが、
実は、太宗ははっきりとは結論付けていません。
言っていることは、「草創」のときは過ぎ、「守成」になった、
つまり「局面」が変わったといっているのです。
「創業」と「守成」では、その「局面」の違いから、求められる
能力や体制、リーダーシップのあり方などが変化するのです。
P.1
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後継者に求められる役割とは?
役割の違いに気づくことは、先代からの呪縛を逃れる術にもなります。
先代と同じ経営スタイル、経営手法を踏襲する必要はありませんし、
そもそも無理なことです。
立派に事業を承継された後継者には、いくつか共通項があります。
それは次の3つの役割を果たして来られたということです。
1.企業の存続 → 絶対に会社を潰さない
2.人心の承継 → 社員の心をつかむ
3.経営革新
→ 新しいビジネスモデルを考える
P.2
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役割その1:企業の存続
承継した会社をつぶさない、ということは当然のことです。
ではどうすれば、それが可能になるのでしょうか?
逆説的な言い方になりますが、「企業は簡単につぶれるものだ」と
自覚することが第一歩です。特に中小企業の経営の不安定さを
よく理解することが大切です。
自社の弱点をよく把握し、それを本当の弱みにしないことが大切です。
つまり弱点をさらけ出すスキを作らないことです。
キーワードは「緊張感」。これを失うと、この弱点が命取りになります。
P.3
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どうすれば緊張感を失わないか
ある三代目社長は次のように言っています。
「会社には変えてはいけないもの(創業者精神)と、
それを守るために変えなければいけないものがある。」
まさしく「不易」と「流行」です。
創業者精神は通常、「経営理念」や「社是」に表されて
いることが多いものです。言うなれば、「不易」です。
創業者精神を守るために変えていくもの、それは時代に
合ったビジネスモデルであり組織やルール、
つまり「流行」です。
常に緊張感を失わないためにも、創業者精神に立ち返ること、
「不易」と「流行」を見極めることが大切です。
P.4
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役割その2:人心の承継
社員の多くは、先代に採用され、先代に仕えてきた人達です。
その視線の先には、先代の姿があります。
このような状況の中で、いきなりリーダーシップを発揮するのは
どだい無理な話です。では、どうすればよいのでしょうか。
次の中村邦夫氏※の話が参考になります。 ※パナソニック株式会社代表取締役会長
「創業者(松下幸之助)は、「情」と「理」の双方を駆使できる。しかし
自分は「理」しかない。そうでなければ社員が納得しない。」※
※2006年9月24日のサンデープロジェクトというTV番組で、
田原総一郎氏との対談の中で語った言葉。
後継者が心がけるべきは、まずは
「理」の経営と言えそうです。
P.5
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「理」の経営とは
代替わりに際して、社員が一番心配することは、これから会社は
どちらの方向に進もうとしているのか、です。
社長が交代したら、経営方針が変わるのではないか・・・
自分たちの待遇にも何か影響が出るのではないか・・・
そもそもこの人で大丈夫だろうか・・・
社員は様々な不安を感じるものです。
後継者は、これから会社の進むべき方向を、全社員に向かって
自分の言葉で分かりやすく説明してやる必要があります。
次頁の「理」で語る経営フローを参考にしてください。
Mission(使命・経営理念)とVision(経営ビジョン)の概略を
提示し、あとは、(次世代)社員に考えさせるのもよいでしょう。
P.6
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「理」で語る経営フロー
Mission
(使命・経営理念)
Vision
(経営ビジョン)
Strategy
(経営戦略)
Plan
(行動計画)
誰(顧客・社員・地域社会・株主)の
ために何を実現するのか。
どういう組織でありたいのか。
Mission実現のための将来の
あるべき姿を具体的に描く。
いかにしたらVisionを達成しうるかを
シナリオとして表明する
Strategyを実行していくための具体的
スケジュール(アクションプラン)を策定
する。
Credo(信条)
Principle(規律・行動指針)
Missionを遵守するための
社員の行動規範
Missionはその企業の存在意義を
表すものと言えます。「経営理念」と
いう形でまとめられます。
Missionから導かれた将来のある時
点での理想の姿がVisionです。
現状とVisionの間にはギャップが
あるわけですが、これを埋めていく
方策がStrategyです。
縦に貫かれた矢印は、上下間で矛盾
がないことを表しています。
Budget
(予算)
Planを予算として具体的に明示する
。
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P.7
役割その3:経営革新
事業承継は、経営革新の絶好のタイミングです。
経営革新をうまく行うことが、経営承継を成功させるコツなのです。
これまでのビジネスモデルの成功が、これからも通用するとは
限りません。市場・顧客の動きをよく観察して、新機軸を打ち立てる
ことも後継者の大切な役割のひとつです。
例)新商品開発、新市場開拓、新事業創出、海外展開、M&A、
SCMの再構築、IT化の推進、社内制度の改定、etc.
経営革新を成功させることで、経営者としての
存在感を示し、社員の視線を先代から自分の方へ
向けさせましょう。
P.8
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「経営承継」を成功させるために(まとめ)
後継者の3つの役割
①企業の存続
常に緊張感をもって、創業者精神に立ち返りながら、
「不易」と「流行」を見極める
②人心の承継
「理」の経営を自らの言葉で語り、社員の心をつかむ
③経営革新
新しいビジネスモデル構築で存在感を示す
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
P.9
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