免疫遺伝学 京都大学医学研究科 附属ゲノム医学センター 統計遺伝学分野 山田 亮 遺伝子の役割 • 機能をコードする • コードに多様性がある – コードの多様性:多型 – 多型の要素:アレル • 遺伝子の多様性:ジェノタイプの多様性 • 機能の多様性:フェノタイプの多様性 免疫遺伝学 • 免疫系の遺伝子の特殊性 – 個々の遺伝子に関する特殊性 – 遺伝子の相互関係に関する特殊性 – 疾病との関連での特殊性 免疫系の遺伝子の特殊性 • 個々の遺伝子に関する特殊性 – アレルに関する特殊性 – アレルの機能に関する特殊性 – ディプロタイプの機能に関する特殊性 • 遺伝子の相互関係に関する特殊性 – 物理的近接関係と連鎖不平衡 – 連鎖不平衡の広がりの特殊性 – 特殊とは言えないが、機能パスウェイとしての関連が見いだされやすい • 疾病との関連での特殊性 – 全身の全臓器・全組織の病理と関連・炎症・免疫系以外の疾患との関連 • • • • 免疫系の役割は臓器横断的 免疫抑制・移植医療は臓器横断的 「炎症」の関与のクローズアップが数多くの「非炎症性」疾患で 薬物治療は多くの疾患でなされるが、薬物アレルギーと関連することで 個々の遺伝子に関する特殊性 • アレルに関する特殊性 • アレルの機能に関する特殊性 • ディプロタイプの機能に関する特殊性 アレルに関する特殊性 • BCR TCR – 配列多様性を作り出す仕組み • HLA – 高度な多アレル アレルの機能に関する多様性 • 多くの遺伝子ではアレルの機能が量的にとら えられると考えられている – 量的なとらえ方とは – 「正常な機能」 f=1 – 「少ない機能」 f<1 • 「無」機能:劣性遺伝形式 f=0 • 「比較的に少ない」機能 0<f<1 – 「多い機能」 f>1 • 「覆い隠さんばかりに多い」機能:優性遺伝形式 f=∞ • 「比較的に多い」機能 f>1 アレルの機能に関する多様性 • 多アレル性遺伝子 – 多軸性の評価 • あるアレルは、軸iでは高機能、軸jでは低機能 • あるアレルは、軸iでは低機能、軸jでは高機能 • たとえば、関節リウマチのリスクアレルとされる HLADRBのShared epitopeアレルは、特定のアミノ酸配 列を共有することで、特定の抗原に対する認識が高 いとされ、それが関節リウマチリスクを高めていると考 えられているが、特定の抗原に対する認識機能の軸 では、これらのHLADRBアレルは高機能でほかのアレ ルは低機能だが、別の抗原の認識機能を軸にすれば、 その高低関係は変わる ディプロタイプの機能に関する特殊性 • 多くの遺伝子ではアレルの機能が量的にとらえられると考 えられる場合 – ある機能性分子をコードしており、それが発現することで機能 が出るような場合 • アレルの違いが、産生分子の機能が低めにコード(アミノ酸置換を伴 うアレル変化)する場合 • アレルの違いが発現量に影響する場合 – AA、Aa、aaの機能は3つのディプロタイプについて大小関係に あることが多い • 2F>(F+f)>2f • 2F>(F+f)+δ>2f – 特殊な場合として超優性ということも考えられるが、分子機能 の発揮機構を考えると、そのようになることは考えにくい • (F+f)+δ>2F>2f ディプロタイプの機能に関する特殊性 • 多アレル性遺伝子の場合 – 異なる機能を有する2分子を発現するか、その片方 のみを発現するかの違い – 量的な違いよりも質的な違いとなる – 機能の評価は、アレルそのものの評価軸が複数ある のに対応して、ディプロタイプとしての機能も1つの軸 で測ることができない – このようなときには、片方のアレルの軸で見れば、2, 1,0、0,1,2だが、その両方を見ることという軸で 見れば、1,2,1となって、容易に超優性的な評価を される場合が出現する 遺伝子の相互関係に関する特殊性 • 物理的近接関係と連鎖不平衡 • 連鎖不平衡の広がりの特殊性 • 特殊とは言えないが、機能パスウェイとして の関連が見いだされやすい 物理的近接関係と連鎖不平衡 • 免疫系の遺伝子はゲノム上の近いところに存 在することが多い • ゲノム上の近いところに存在する遺伝子の多 型同士は連鎖不平衡という関係にある 連鎖不平衡の広がりの特殊性 • HLA分子がそろってコードされているHLA領域は、 さらに特殊で、連鎖不平衡の広がりが、極端に 広い • HLA領域の遺伝子多型同士の相互依存関係は、 単純に近接している以上に、強く、多いと言える • そのように連鎖不平衡が広いのは、HLA分子な らびに、その領域にある免疫系の遺伝子を含む 長大ハプロタイプの取り合わせに選択圧がか かってきたからであると考えられている 特殊とは言えないが、機能パスウェイ としての関連が見いだされやすい • 免疫系に限らず、さまざまな機能分子がパス ウェイと呼ばれる、関係を持って、いる • 免疫系でもそのパスウェイは、免疫学・分子生物 学の面から解明されているが、遺伝子多型と免 疫系疾患との関連の解明という面からも、その つながりが見えつつある • 遺伝子の関与の解明に、免疫学・分子生物学か らの機能関連の知見を活用し、また、その逆もな され、免疫システムの生理とその疾病における 役割やメカニズムの解明が進められている 疾病との関連での特殊性 • 全身の全臓器・全組織の病理と関連・炎症・ 免疫系以外の疾患との関連 – 免疫系の役割は臓器横断的 – 免疫抑制・移植医療は臓器横断的 – 「炎症」の関与のクローズアップが数多くの「非炎 症性」疾患で – 薬物治療は多くの疾患でなされるが、薬物アレル ギーと関連することで 免疫系の役割は臓器横断的 • 外部との戦い – 皮膚・粘膜(呼吸器・消化器・泌尿器) • 外来微生物 • 外来抗原 • 自己抗原認識 – 自己免疫疾患 – 対移植片・GVHD • 自己由来異常抗原認識 –癌 「炎症」の関与のクローズアップが数 多くの「非炎症性」疾患で • 炎症は、古典的には非炎症性疾患とみなさ れてきた、変性性疾患・循環性疾患等でもミ クロなレベルで関与されるとされ、そのことは、 遺伝子多型とのかかわりからも支持されてき ている 免疫抑制・移植医療は臓器横断的 • 免疫抑制剤の使用は広範囲 – さまざまな臓器で使われる • 移植も臓器を特定しない 薬物治療は多くの疾患でなされるが、 薬物アレルギーと関連することで • 薬物に対するアレルギー反応も免疫系遺伝 子多型との関連
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