現代日本語

高级日语Ⅰ
第10课
屋根の上のサワン
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井伏 鱒二
小説家。(1898-1993)広島県
生れ。本名、満寿二。中学時代
は画家を志したが、長兄のすす
めで志望を文学に変え、1917
(大正6)年早大予科に進み、仏
文科中退。
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1929年、「山椒魚」を『文芸都市』誌に、「屋根の上
のサワン」を『文学』に発表し、文壇に登場。
翌年には創作集《夜ふけと梅の花》を刊行。ユーモ
アとペーソスを含んだ独特の作風で作家としての
地位を確立した。 1938年「ジョン万次郎漂流記」
で直木賞を、1950年「本日休診」他により読売文
学賞を、1966年には「黒い雨」で野間文芸賞を受
けるなど、受賞多数。1966年、文化勲章受賞。
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ジョン万次郎は、江戸時代末期から明治にかけての人物。
1827年、半農半漁の家の次男に生まれた。万次郎が8歳の頃
に死去した父や、病弱な母と兄に代わって幼い頃から働き、家
族を養った。寺子屋に通う余裕が無かったため、読み書きも殆
ど出来なかった。1841年、手伝いで漁に出て嵐に遭い、漁師
仲間4人と共に遭難、5日半の漂流後奇跡的に伊豆諸島の無
人島に漂着し143日間生活した。そこでアメリカの捕鯨船ジョン
・ハウランド号に仲間と共に救助される。日本はその頃鎖国し
ていたため、漂流者のうち年配の者達はハワイで降ろされる
が、船長のホイットフィールドに頭の良さを気に入られた万次
郎は本人の希望からそのまま一緒に航海に出る。生まれて初
めて世界地図を目にし、世界における日本の小ささに驚いた。
この時、船名にちなみジョン・マンの愛称をアメリカ人からつけ
られた。
同年、アメリカ本土に渡った万次郎は、ホイットフィール
ド船長の養子となって一緒に暮らし、英語・数学・測量・
航海術・造船技術などを学ぶ。彼は寝る間を惜しんで熱
心に勉強し、首席となった。民主主義や男女平等など、
日本人には新鮮な概念に触れる一方、人種差別も経験
した。
帰郷後、教育者としての道を選んだ。 1898年、72歳で
死去。
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『黒い雨』は、1989年5月13日より公開された
原子爆弾(原爆)の恐怖と悲劇を描いた日本
映画である。1965年に出版された井伏鱒二
の小説『黒い雨』の映画化。公開翌年の第13
回日本アカデミー賞で最優秀作品賞をはじめ
数々の部門で受賞した。
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第一部分
時期:春
場所:①沼池の岸
傷ついた雁を見つけた
②私の部屋
雁を治療する
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おそらく気まぐれな狩猟家か悪戯好きな鉄砲うち
かが狙い撃ちにしたものに違いありません。私は
沼池の岸で一羽の雁が苦しんでいるのを見つけま
した。雁はその左の翼を自らの血潮でうるおし、満
足な右の翼だけむなしく羽ばたきさせて、水草の密
生した湿地で悲鳴をあげていたのです。
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気まぐれ
きまった考えがなく、思いつきでものごとをしたり、気が(天気などが)
変わりやすかったりすること。
[1] 気まぐれな(人、性格、行動、旅行、散歩)
[2] 気まぐれな(天気、天候、空)
[3] 気まぐれの(優しさ、親切、うそ)
[4] 気まぐれに(行動する、来る、歩く、訪ねる、叱る、しゃべる、作る、買
う、料理する、書き綴る)
[5] 気まぐれを(とがめる、指摘する、叱る、起こす、後悔する)
[6](一時の、ほんの、単なる、その場の)気まぐれ
・気まぐれな夫には耐えられない
・気まぐれな天気を女心にたとえる
・気まぐれの優しさにだまされる
・気まぐれにふと途中の駅で降りてみた
・あいつの気まぐれには愛想が尽きた
・一時の気まぐれでも親切はうれしい
・退屈しのぎの気まぐれで絵を描く
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私は足音を忍ばせながら傷ついた雁にちかづい
て、それを両手に拾い上げました。そこで、この一
羽の渡り鳥の羽毛や体の温みは私の両手に伝わ
り、この鳥の意外に重たい目方は、その時の私の
思い屈した心を慰めてくれました。私はどうしてもこ
の鳥を丈夫にしてやろうと決心して、そして部屋の
雨戸を閉め切って、五燭の電灯の下でこの鳥のお
傷の治癒にとりかかったのでありました。
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治癒が終わってからも、私は傷口の出血が止
まるまで彼を縛ったままにしておきました。さも
なければ彼は部屋の中を暴れ回って、傷口に
塵が入る恐れがあったからです。
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
さもなければ

<接続詞>そのようでなかったら、次に述べる事態が成立するという意味
を表すものである。「そうでなければ」のやや古い言い方。「さもないと」は類
似語。

医師から禁煙の指示がでているのなら、それを守るべき
だよ。さもなければ病状は又悪くなる恐れがある
天皇には、一般国民に与えられる法律上の保護と全く
同じ保護のみが与えられる。さもなければ、国民は法の
下に平等である、との基本理念に背くことになる。

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•
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でもって (連語)
格助詞「で」に「もって」が付いたもの。格助詞「で」を強め
た言い方。
火事でもって家屋敷をすっかり失ってしまった。
今では飛行機でもってヨーロッパでもアフリカでも簡単に
行くことができる。
非常に大きな駅前広場の施設をこれだけの地域の人た
ちだけでもって負担をするということはいかがなものかと
いうことが第一点です。
~でいる
名詞や形容動詞の語幹について、その状態が続い
ているという意味を表す。
あの子ったら、本当に困ったもんだ。あんなに先生に言
われても平気でいる。
ずっと独身でいてもかまわないが、ただこの一人暮らし
の寂しさを何とかしないと、親は心配するだろう。
いつまでも元気でいてほしい。
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くったく(屈託)
〈名・自動サ変〉何かを気にして、心が晴れないこと。
立てて嚙みくだいてのみこみ、手のひらのしずくをぺろりとな
めた。健康で、大らかで、くったくのない態度であった。
そんな田圃から蛙の鳴き声が聞こえていた。くったくなく鳴い
ているかの蛙の声は、働いて疲れ切った私の心とは、雲泥
の差があるように思えた。
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私は真夜中ごろになって目がさめました。けた
たましい雁の鳴き声によってお目を覚ましたので
す。隣の部屋で傷ついた雁は甲高く且つ短く三度
ほど鳴きました。足音を忍ばせて襖の隙間からの
ぞいて見ると、雁は脚や翼を縛られたまま、五燭
の電灯の方に首を差し伸べて、もう一度鳴いてみ
たいような様子をしていました。おそらくこの負傷
した渡り鳥は、電灯の明かりを夜更けの月と見違
えたのでしょう。
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•
•
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「けたたましい」と「甲高い」
声や音が高いという意味で二語共通している。が、「け
たたましい」は声が高いだけでなく、それが非常に切迫
して騒々しく、一種の切迫感がこめられて大きい声を言
う。聞く者が驚かされるという意味合いを持っている。物
の音にも使える。
それに対して「甲高い」は人間や動物の生来の声の調
子が高くて鋭いという意味で使われる。
夕暮れ時買物客で賑わう商店街を救急車が(けたたましい )
サイレンを鳴らして突走っていった。
先隣の部屋の前を通ると、中から( 甲高い )女性の話声が
聞こえた。いつもひっそりと一人暮らしをしている老人の
家に、いったい誰が来ているのだろうと思った。
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他に、「声高だ」という類語がある。これは人の声
に限って用い、激しかったり、興奮したりして、大
声を高く張り上げる場合に用いる。また抽象的な
声を表す用法もある。
高い崖の上に、3、4人の人影が現れ、私にはほと
んど分からない方言で声高に話し合っていた。
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どうやら
1、どうも
2、どうにか。やっと。
もう一つ私にとっての驚きは、あの本のようなメッセイジがどうやら今ま
で一度も日本からアメリカに向かって発せられたことがなかったという
事実です。
『それでも「No」と言える日本 ーー日米間の根本問題』
石原 慎太郎
「受験用単・熟語帳」というのはどうやら、長年教育英語業界で、誰が
決めたということでもないのに既に決まったこととして、皆に愛用されて
いる。
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もぐる 【潜る】
(1)水中や、物の下や穴の中にすっかりはいりこむ。
(2)姿を隠して、ひそかに事をはこぶ。
地下に潜って反政府運動を続ける
(水、水中、海、海底、プールの底、布団、ベッド、こたつ、机の
下、車の下、床下、地下、穴、土の中、雪…)に潜る
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・海女が水に潜って真珠貝を取る
・ダイビングで沖縄の海に潜る
・潜水艦が海底に潜り再び浮上する
・プールの底に潜って落とした鍵を捜す
・布団に潜ったまま起きて来ない
・カエルは土の中に潜って冬眠する
・靴が柔らかい雪に潜って歩きにくい
・こたつに潜って冬の日を過ごす
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和室で使用される日本独特の
暖房用具。熱源をやぐらで囲
い、蒲団をかけて暖をとるもの
。熱源は炭火・たどんなどであ
ったが、近年は大半が電気を
使用し、赤外線や遠赤外線を
照射する電気ごたつもある。熱
源の炉は床をきって炉を設け
た掘りごたつと、やぐらの底に
板を張って火入れを置く置き
ごたつがあり、電気ではやぐら
の天板の下面に電熱器などを
取り付けた置きごたつが多い。
◎冬の季語。
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ひそむ【潜む】
 (1)人に見られないようにかくれる。
 「ものかげに潜む」



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(2)内にこもって、外にあらわれないでいる。
心に潜む決意
[類]潜在(せんざい)する



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犯人は、駐車場の扉を乗り越え、さらにはフェンス
も乗り越え、洞窟にひそんでいる。
つまり、こうした初期の研究によれば、文化は人間
の心の奥底にひそむモチベーションにさほど大きな
影響を及ぼさないと考えられていたのです。
原作は行政書士の事務所を舞台に、日常生活の
裏側にひそむさまざまな落とし穴とトラブル回避の
ノウハウを、リアルな筆致で見せていくヒット作だ。
その夜は、サワンがいつもとり更に甲高く鳴きました。殆ど号泣に近
かったくらいです。けれど私は、彼が屋根に登った時にかぎって私
のいいつけを守らないことを知っていたので、外に出てみようとはし
ませんでした。机の前に坐ってみたり、早く彼の鳴き声が止んでくれ
ればいいと願ったり、明日からは彼の羽根を切らないことにして出
発の自由を与えてやらなくてはなるまいなどと考えたりしていたので
す。そうして私は寝床に入ってからも、譬えば物凄い風雨の音を聞
くまいとする幼児が眠る時のように、蒲団を額のところまでかぶって
眠ろうと努力しました。それ故サワンの号泣は最早きこえなくなりま
したが、サワンが屋根の頂上に立って空を仰いで鳴いている姿は、
私の心のなかから消え去りはしなかったのです。そこで私の想像の
なかに現れたサワンも甲高く鳴き叫んで、実際に私を困らせてしま
ったのであります。
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私は決心しました。明日の朝になったらサワンの翼に羽根の早く生じる薬品を塗ってやろう。
新鮮な羽根は、彼の好みのままの空高くへ彼を飛翔させるでしょう。万一にも私に古風な趣
味があるならば、彼の脚にブリキぎれの指輪をはめてやってもいい。そのブリキぎれには「
サワンよ、月明の空を、高く楽しく飛べよ」という文字を小刀で刻りつけてもいい。
翌日、私はサワンの姿が見えないのに気がつきました。
「サワン、出て来い!」
私は狼狽しました。廊下の下にも屋根の上にも、どこにもいないのです。そしてトタンの廂の
上には、一本の胸毛が、明らかにサワンの胸毛であったのですが、トタンの継目にささって
朝の微风にそよいでいます。私は急いで沼池へも行ってみました。
そこにもサワンがいないらしい気配でした。岸に生えている背の高い草は、その茎の尖端に
すでに穂状花序の実をつけて、私の肩や帽子に、綿毛の種子が散りそそいだのであります
。
「サワン、サワンはいないか。いるならば、出て来てくれ!どうか頼む、出て来い!」
水底には植物の朽ちた薬が沈んでいて、サワンは決してここにもいないことが判明しました。
おそらく彼は、彼の僚友達の翼に抱えられて、彼の季節むきの旅行に出て行ってしまったの
でありましょう。
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作品の構造
起・承・転・結
起: 雁と出会って、看病してやった。(第1部分)
承: サワンとの付き合い (第2部分)
夏:サワンが親しく付き合ってくれた。
秋:僚友たちの鳴き声に引かれサワンに、「私」の不満を招いた。
転: サワンは月の明るい夜に屋根に登って鳴く習慣を覚えた。
(第3部分)
結: サワンに自由を与えてやる前に、別れを告げずに「私」独りを残して、
サワンは飛び去ったのだ。(第4部分)
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内容の確認




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傷ついたサワンを拾い上げた時、その感触は主人公に
どんな気持ちを起こさせたか。
なぜサワンの感触に主人公は「慰め」られたか。
雁に対する主人公の愛着が増す証拠となる出来事は何
か。
「私は寝間着の~あぶっていました」から、主人公のど
のような生活が伺えるか。



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サワンはなぜ「できる限り大きな声で鳴いていた」か。
「このときのサワンの有様」を示す「老人の哲学者」とい
う比喩は主人公の置かれた状況と重ね合わせること
ができる。その状況について説明しなさい。
サワンが逃げることを「薄情」とする主人公は、サワン
をどのような境遇に置きたかったのか。
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
裏に潜んだ作者の思いをつかもう

歴史的背景

「屋根の上のサワン」から読み取った井伏鱒二の心情




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1.同样的东西,使用方法不同,有时使用寿命就会很长。
所以这不是质量问题,而是使用方法不当。(~ようによって
は; 使用寿命长:長持ちする)
同じものでも使いようによっては、長持ちする。だから、これは
品質の問題ではなく、使い方が悪いのだ。
2.我把每天必须要干的事全记在本子上,否则就有可能忘
记。真是人老不中用了。(さもなければ; 人老不中用:年
は争えない)
私は毎日やらなければならないことは全部メモしておく。さも
なければ忘れてしまう。本当に年は争えないものだ。

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

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3.医生把最有效果的新药也用上了,可是仍然没有收
到预期的效果,很遗憾。(~でもって;最有效果:最も効
果が期待できる)
最も効果が期待できると思われる新薬でもって治療に
当たったが、いい結果は見られなくて残念だ。
4.我觉得你和他之间还有很大的差距,所以现在你
不要去找他的喳儿,还是维持原状为好。(~でいる;找
他的喳儿:こっちから仕掛ける)
あなたと彼とにはまだかなりの差があると思う。だから、
今はこっちから仕掛けたりせず、そのままでいるほうが
いい。

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
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5.我也知道这药很苦,但若不用自己的舌头舔一下,你
就不知道这药苦到什么程度。(てからでなくては~ない)
この薬が苦いとは知っているが、しかし、一度自分の舌で
舐めてからでなくては、この薬の苦さはわからない。
6.虽然由于战争的原因国名经济一败涂地,但是好歹他
们还是在困境中完成了这项计划。(どうやら;一败涂地
:極端にだめになる)
戦争で国民経済は極端にだめになっているにもかかわら
ず、彼らは困難の中でどうやらこの計画を完成させた。

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
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7.如此温暖的地方有时竟然还会下雪。这岂不挺奇怪的吗
(時としては)
こんな温かい地にも時としては雪が降ることさえある。おかし
くないだろうか。
8.那时候一旦小说到手就得以1天500页的速度把它读完
,否则下次小说就轮不到自己了。(数字+も+の+名词;
轮不到自己:回してくれない)
この頃は、小説はめったに手に入らないので、いったん入る
と一日に500ページもの速度で読んでしまわないと、次の本
は回してくれないことになっていたのだ。
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9.你们要是没做太不讲道理的事,他是绝对不会向上司反映的。
一定是你们做了什么过分的事了吧。(よほど;太不讲道理的事:
理不尽なこと)
よほど理不尽なことをしない限り、彼は上司に訴えるようなことは決
してしないと思う。君たちはきっと何かひどいことをやったのだろう。
10.虽说是小孩子,可只要意见正确,还是应该认真听一听的。
如果大人能倾听他们的意见,他们会受到很大的鼓舞的。(耳を
傾ける;受鼓舞:励みになる)
子供といえども、意見が正しければ、やはりまじめに耳を傾けるべ
きだ。大人が彼らの意見に耳を傾けることは、彼らにとって大きな励
みになるから。
読解
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