会社法概論 株式会社の基本構造 所有と経営の分離 株主代表訴訟制度の意義 1 株式会社の基本構造(1) 甲株式会社 ( 株 主 有 限 責 任 ) 出資 株式 株主が出資したお金 (資本)を管理運営して 営利事業を行い、利益を 株主に分配すること を目的 2 貸借対照表1(大区分) 負 債 (他人資本) 資 産 資 本 (自己資本: 剰余金を含 む) 資産:会社がもっているすべて のカネ、モノ、権利(総資産) 負債:会社が返済しなければ ならない借金、未払い金の額 (他人資本) 資本:株主の持分(正味の資 産:自己資本) 剰余金:設立以来の毎年のも うけの積み重ね(内部留保) 3 貸借対照表2(中区分) 流動負債 流動資産 固定負債 資本金 固定資産 法定準備金 剰余金 流動資産:1年以内に現金(預金) となる資産 固定資産:1年以上使われたり、 投資される資産 流動負債:1年以内に返済しなけ ればならない借金額 固定負債:1年以上かけて返済す る借金額 資本金:法律上の株主の出資額 (計算上の数値) 法定準備金:法律で積み立てを 強制される積立額 剰余金:毎年の儲けから蓄積して 4 きた会社の利益の合計額 貸借対照表4(小区分) 流動負債 流動資産 固定負債 資本金 資本準備金 固定資産 利益準備金 剰余金 法定準備金の内わけ 資本準備金:株主が出資した 金額のうち、法律で資本と定め られた金額を超える部分(払込 剰余金など) 利益準備金:会社の毎決算期 の利益のうち、会社に積み立 てることが法律上強制される 部分の額(資本準備金の額と 合計して資本の4分の1に達す るまで) 5 株式会社の基本構造(2) ① 株主自らが会社の経営には参加しない:株主総 会を構成→会社の基礎的事項を決定 ② 経営は専門家に任せる→取締役選任:取締役会 →3人以上 ③ 会社の代表機関が必要→代表取締役:取締役会 で選任 ④ 株主は自分たちのお金を預けているのでそれを 管理したい→監査役選任 6 株式会社の基本構造(3) 会社の 業務執 行の意 思決定 と監督 代表取締役 対外的に会社の業務を執 行し、会社を代表する 取締役の業務執 行を監査する 取締役会 監査役 株主総会 7 所有と経営の分離 会社の実質的所有者は出資者である総株主で ある。しかし、株主の多くは会社の経営に参加す る意思も能力もない:持株数に応じた議決権で支 配権能を留保 会社の経営は取締役会・代表取締役という経営 の専門家に委ねられる:会社との関係は委任 会社の所有者と会社財産を管理する経営者が分 離した状態が生じる→所有と経営の分離 所有者のために経営を監督する必要がある 8 株主代表訴訟制度の意義(1) A) 会社の経営陣が会社財産に損害を与えた場合、 会社は取締役らに対して損害賠償請求をする ことができる(266条)。 B) しかし、会社を代表して訴えを提起するのは代 表取締役とすると仲間意識から訴えを提起しな いか、馴れ合い訴訟になるおそれがある。 C) 会社と取締役の間の訴訟は監査役が会社を代 表することとした(275の4)。 D) しかし、監査役も身内なので訴えを提起しない おそれがある。 9 株主代表訴訟制度の意義(2) 経営陣 株主 責任追及できないか 表向き 従業員・管理職らを 処分するなど謝罪 内心では? 利益配当が もらえない。 株価が下が る。 誰からも責任 を問われない し、退職金も たっぷり 損害発生(株主 の財産減少) 10 株主代表訴訟の意義(3) 1. 6ヶ月前から会社の株主だった者は、会社に対し、 取締役の責任を追及する訴えの提起を請求でき る(267①) 2. 会社が1の請求を受けて60日以内に訴えを提起 しなければ、株主は自ら会社のために訴えを提 起できる(267③) 3. 株主は会社に代わって訴えを提起するだけで、 勝訴しても直接賠償金をもらえるわけではない: 勝訴した場合、弁護士費用等を一定範囲で会社 に請求できる(268ノ2Ⅰ) 11
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