z 0

吸収測定
一本の量子細線の光吸収を測れるか?
透過レーザ光
太さ:1 mm
太さ:10 nm
試料が小さくて通常の方法では測定できない
一本の量子細線の光吸収測定アイディア
光と細線の相互作用する距離を増やしてやる
励起レーザ
長さ ~mm
微小体積
均一性
複雑な構造
低温測定
レーザー光
~mm 光導波路
~nm 半導体細線
本研究の目的
• 顕微PL測定を用いてT-型量子細線レーザの発光特性を明らかにす
る。
→顕微イメージ測定により導波路からの発光・発振の
空間パターンを調べ、その起源となる量子構造を特定す
る。
• 光導波路を用いた透過測定を行い、量子細線の吸収の絶対値を明
らかにする。
→量子細線1本の励起子吸収を測定する。
→室温における励起子吸収を測定する。
T-型量子細線構造
6 nm GaAs
arm 井戸
T-細線
14 x 6 nm
1990年に作製
1993年にレーザ発振
14 nm
7% AlGaAs
stem 井戸
へき開再成長
[110]
[001]
GaAs
substrate
(001) MBE 成長
stem 井戸
o
600 C
In situ
へき開
(110) MBE 再成長
arm 井戸
o
490 C
by L. N. Pfeiffer et al., APL 56, 1679 (1990).
成長中断アニーリング 490℃ Growth 510-600℃ Anneal
1原子レヴェルで平坦な界面
10 mm 以上
(By Yoshita et al. JJAP 2001)
ドーピングなし
5 K で発振(金蒸着)
実験方法
発振スペクトルの励起強度依存性(20T-細線、5 K)
強励起時には3つの発振が起こっている。
3 mW
Yasushi Takahashi et al. APL (2003)
顕微透過測定による単一量子細線の
吸収スペクトル
E-field
Yasushi Takahashi et al. APL (2005)
10 mm spot
ピーク値=80
cm-1 -1
a/G=80/0.00046
積分強度=212
=170000 cm-1 cm meV
exp(-aL)=0.018
半値幅=1.6 meV
B. Hakki and T. Paoli J. Appl. Phys. 46, 1299 (1974)
数値計算
Loudon、小川が行った最も単純な方法で吸収スペクトルを求めてみる。
電子・正孔の包絡線関数に対するシュレディンガー方程式
電子正孔の相対運動を1次元のみと近似する。
f(z) : 電子正孔の包絡線関数
z : 電子正孔の相対座標
z0 : カットオフ長
連続状態
束縛状態
z0 は束縛エネルギーが13 meV となる値 z0 / aB =0.347 を用いた。
数値計算による量子細線の吸収スペクトル
バンド端に1次元状態密度のピーク構造は見られない。
1次元の特徴として、励起励起子の吸収が小さくなる。
励起子とバンド間吸収の強度比は実験値から大きくずれてない。
強度比:9.0
室温までの吸収スペクトル測定
単一細線レーザ → 20周期量子細線レーザ
光閉じ込め率9.3 倍になる
結合効率0.4に増える
3.6 meV
Yasushi Takahashi et al. APL (2005)
20吸収spe
まとめ
顕微透過分光測定系を開発して、T-型量子細線レーザの光特性を研究した。
顕微PL・イメージ測定によりT-細線、stem 井戸、arm 井戸からの3つの
発振を同定した。T-細線からの発振モードは良好な円形だった。
顕微透過測定により量子細線の吸収スペクトルを測定した。
量子細線1本の励起子吸収は、5 K において80 cm-1 となり、導波路500 mm
で透過率2 % 以下だった。励起子積分強度は理論の値と良く一致していた。
またカットオフ長を取り入れた吸収スペクトル計算を行い、バンド端近傍の
特徴が実験結果と一致することを確認した。
20周期量子細線レーザを用いて初めて量子細線の室温励起子吸収を
観測した。強い吸収、狭い半値幅と応用上有利な特性が明らかとなった。
今後の展望
ポンププローブ測定により量子細線における利得生成過程のキャリア
状態変化の考察、利得係数の絶対値の決定、キャリア応答時間の決
定等、多くの重要な物性が明らかにできるはずである。
細線の数を減らしたレーザ試料の共振器端面にARコートを行うのが
利得測定には有利である。
フェムト秒レーザのブロードな光を使えば、簡易に吸収測定ができる
可能性がある。光ファイバーを利用すること等、より一層の顕微透過
測定の改良が可能である。