講義資料 for students

環境化学特論
福岡工業大学大学院
桑原 順子
化学物質の概念
1-1 化学物質と製品
科学的には、
化学物質はあらゆる物質の構成成分であるため、すべての「製品」は化学物質で構成さ
れている。
例えば・・・ 「自動車」
塗料
鉄
ガラス
プラスチック
・水
ゴム
・有機溶剤
・樹脂類(塗膜を形成)
・顔料樹脂
・消泡剤 など・・
化学物質とは元素(単体)および化合物(2種類または2個以上の元素から構
成されている物質)を指す
生物も含め世の中の「もの」は化学物質およびその混合物からできている
元素は、現在118種類が知られている。元素は陽子、電子、中性子で構成されている。
日本では化学物質は現在。約3万物質が生産・使用されている。
化合物・混合物
米
化合物
化合物
元素・単体
素粒子
澱粉
アミロース
炭素
陽子
蛋白
アミロペクチン
水素
電子
脂肪
酸素
中性子
・
・
・
・
窒素
すなわち製品は
「ある目的のために化学物質の化学的、物理的性質を利用して組み立てられたものであ
り、各種の化学物質で構成されている」と言える。
すべての「製品」は化学物質で構成されているが、構成成分の多くは、使用時に暴露する
可能性は少ない。
また、正しい使い方を守れば「製品」は生活を便利で快適なものにする。
ただし
「化学物質管理」が必要
化学物質のリスクを適切に管理し、(リスクを)削減するとともに、リスクコミュニ
ケーションにより関係者の理解を進める必要がある。
・人間が作ったもの だけではなく
・自然のもの
世の中のもの全てが化学物質である
化学物質の有害性を知る
化学物質は、強さに違いがあるにしても、害になる性質(有害性や毒性という)を持っている。
たとえば、健康を保つのに欠かせない塩・・・
良い性質
→
害になる性質 →
汗の原料になり熱中症の予防となる。
取りすぎると高血圧を起こす。
さまざまな有害性・毒性
その有害性が出てくるまでの時間
体内に入るとすぐ影響がでる毒性 → 急性毒性
何年も取り続けると出てくる毒性 → 慢性毒性
どのような害が起こるのか
皮膚がただれる → 腐食性
アレルギーが出る → 感作性
ガンになる → 発がん性
あかちゃんに影響が出る → 催奇形性
どんなものに対して出るのか
人の健康に害を与える → 人健康影響
環境中の動物や植物に影響が出る → 環境影響
例:エタノール
急性毒性: 一度に大量に飲むと、急性アルコール中毒になる。
慢性毒性: 毎日飲みすぎると、肝臓に害が出る。
暴露 と 暴露量
化学物質の進入経路
(独) 製品評価技術基盤機構
リスク管理
害が出ないようにするために
化学物質の悪い影響を抑えるために・・・
○食事や空気など環境中の濃度を低くし、人の暴露量を無毒性量より十分低い値に
しなければならない。
毒性の高い化学物質→法律で環境中の基準値や、工場から排出しても良い値が決
められている。
しかし、化学物質は世界中に十数万種類あり、そのすべてに規制する値を作ることは
不可能。
★そこで、工場等で化学物質を使用する時には、工場などから
出た化学物質が環境や周辺の私たちに影響を与えないか評価
しながら、管理していく必要がある。
化学物質審査規制法(化審法)とは
環境汚染を引き起こすおそれのある物質を指定している
日本での化学物質管理の基本法
【経緯】
PCBによる深刻な環境汚染*を教訓に1973年10月制定、1974年4月施行
PCB(ポリ塩化ビフェニル)とは
209種類の異性体
無色透明
耐熱性・絶縁性
電気機器用絶縁油
塗料
印刷インキ
PCDFs
ポリ塩化ジベンゾフラン
化学物質が難分解性、生物濃縮性、ヒトや生物への毒性を有するか否かについて、
製造前あるいは輸入前に審査することを義務付けている。
環境を守る法体系
化学物質に関する法律
化学物質審査規制法
(化審法)
1973年制定 新たに製造・輸入される化学物
質の難分解性、生物濃縮性(蓄積性)、ヒトや
動植物への有害性を事前審査し、該当する
物質の製造・輸入及び使用を規制する。
化学物質排出管理促進法
(PRTR法)
1999年制定 有害な化学物質の環境への排
出量を把握して、自主管理対策を促進し、化
学物質による環境汚染を未然に防ぐ為の法。
毒物および劇物取締法
1950年制定 医薬品などを除く有害物質を保
健衛生の観点から取り締まる法。登録された
人のみが製造・販売などを行える。
ダイオキシン類対策特別措置法
1999年制定 ダイオキシン類の耐容一日摂
取量および環境基準を設定し、大気、水への
排出規制、汚染土壌の対策を定めた法。
PCB処理特別措置法
2001年制定 PCBを含有する廃棄物を確実・
適正に処理するためPCB保管事業者は都道
府県に届け出後、2016年7月15日までに処
分する義務
毒性の分類
① 影響が発現するまでの時間的長さによる分類
急性毒性
ある物質に暴露された時、おおむね数日以内に発症ある
いは死に至る毒性。
神経毒性、生化学的
毒性など
慢性毒性
ある物質に暴露されたとき、おおむね数ヶ月以上経過して
から発症あるいは死に至る毒性。
発ガン性、催奇形性、
免疫毒性など
亜急性毒性
急性と慢性の間の時期に発症あるいは死に至る毒性
② 試験法による分類
神経毒性
組織病理学的毒性
生化学的毒性
発ガン性
変異原性
遺伝毒性
細胞毒性
催奇形性
免疫毒性
毒性を表す指標
指標
内容
LD50 (半数致死量)
実験生物の50%を死亡させる量
LC50 (半数致死濃度)
実験生物の50%を死亡させる濃度
LDLO(最小影響量)
実験生物に中毒症状を起こさせる最小量
LCLO(最小影響濃度)
実験生物に中毒症状を起こさせる最小濃度
NOAEL(無毒性量)
実験生物に毒性が現れない最大量
ADI(一日許容摂取量)
実験生物に影響が現れない最大摂取量(/day)
TDI(許容一日摂取量)
同上