第6回 表現の自由の限界

ジャーナリズム論
第6回 表現の自由の限界
担当:野原仁
表現の自由の制限
倫理or法解釈?
個人レベルorマスメディアレベ
ル?
公益性or私益性?
公人or私人?
制限についての基本理念
他人の人権を侵害しない
デマ・中傷などは許さない
権力者に対する正当な批判は制限す
べきではない
自分に関係する情報について知るこ
とを基本的には制限するべきではな
い
倫理or法
倫理の面から見てダメだと思
われることが法律では認めら
れていたり、逆に倫理の面で
当然と思われることが法律で
は禁止されていたりすること
がたくさんあるのだ!
具体的には…①
「中国人は日本人よりバカだ」「韓
国人は日本人より不潔だ」(もちろ
んそんなことはない!)=差別的表
現
倫理の面からは許されない
現在の日本の法律では禁止されてい
ない
世界的には、「人種差別撤廃条約」
でこのような差別的表現の禁止を求
具体的には…②
たとえば、料亭の中で政治家が銀行
からワイロをもらっているところを
報道目的で隠し撮りすることは?
倫理的には判断がムズカシイが、ほ
かに方法がなければ許される
法律では、プライバシーの侵害や肖
像権の侵害で認められない可能性が
高い
法律による制限
名誉毀損
プライバシーの侵害
ウソ
治安の破壊
わいせつ表現
その他
倫理の面から見た制限
ウソやデマを言わない(例外はある)
自分ではどうしようもないこと(たと
えば顔や民族)について攻撃しない
他人がイヤな気持ちになることを言っ
たり、やったりしない(例外はある)
他人のプライバシーを侵害しない(例
外はある)
などなど
なぜか?
人間のいのちは大切である
自分だけでなく、他人も尊重する
自分のしたいことが他人に迷惑をか
ける場合には、できるだけ迷惑にな
らないように気をつけると同時に、
相手に納得してもらうようにつとめ
る
→これまでの人類の歴史の中で作られ
てきた約束事だから(反対であれば
論理的に反論する必要)
法律による表現の自由の制限
憲法21条には違反してい
ない
しかし、制限にあたっては
慎重かつ厳格でなければな
らない
個人orマスメディアorインターネット
 情報がやりとりされるメディア
と状況のちがいで、表現の制限
内容が異なるケースもある
 基本的には、情報の広がる範囲
が広くなるほど、また個人や社
会に与える影響が大きくなるほ
ど、表現内容の制限=求められ
る倫理のレベルも厳しくなる
たとえばSEX表現
① 個人でビデオなどを見る場合
② インターネットで公開する場合
③ 地上波のテレビで放送する場合
→それぞれ個別に是非を考えるべき
→③は情報の広がる範囲と影響力の
大きさが最も高いので、制限も厳し
くなる
制限の基準;公益性or私益性
情報の公益性=ある情報が自分以外
の人々の役に立つこと
より多くの人に対して、その人たち
の生命や生活を守るために必要な情
報(=公益性の大きい情報)は、基
本的に表現内容を制限すべきではな
い
自己の欲求の満足のためだけに役に
立つ情報は、他人の権利を侵害しな
い範囲内でのみ認められる
たとえば…
他人(社)への悪口・誹謗・中
傷=自己の欲求の満足のみを目
的とするが、他人(社)の名誉
などを傷つけるので、基本的に
は認められない。もちろん、論
理的な批判はあてはまらない
制限の基準;公人or私人
公人=社会の中で、他人の信託を受け
て他人に奉仕するために活動する人
私人=自分自身の目的のために活動す
る人
ほとんどの人間は、公人としての性質
と私人としての性質の両面をもってい
る
公人の部分に関する表現については、
私人の部分と比べて制限の範囲が狭く
なる
たとえば安倍首相…
公人としての活動=政治家としての
活動
私人としての活動=それ以外の活動
たとえば
「風呂に入ったときにどこから洗う
のか」
「愛人がいるのか」
「どこで誰とメシを食べたのか」
ここまでのまとめ
表現の自由にはさまざまな制限があ
る
表現の自由の制限は、さまざまな視
点から考える必要がある
ただし、基本的には「他者の人権の
尊重」や「権力者への正当な批判を
制限しない」などの考え方に立つべ
き