沿岸における密漁対策と津波等の (地域沿岸情報システムに関する調査研究の概要) 緊急通報システムの実用化について 平成16年5月27日 第15回ITRC研究会 東北総合通信局企画調整課 調査研究の目的と目標 目的 沿岸漁場における漁業秩序の維持と漁業振興を目的に、高級漁業資源を 狙う密漁対策と沿岸における津波等の災害防止に利用できる総合的な無 線システムの検討を行うとともに、実用化に向けた課題等を整理する。 目標 1 沿岸漁場の資源を狙う密漁を低価格かつ効率的に監視できるシステ ムを検討する。 2 沿岸における津波警報等の緊急・一斉通報システムなど沿岸の防災 に資する総合的な情報システムを検討する。 3 最適と判断した地域沿岸情報システムを沿岸漁場を有するモデル地 域へ試験的に構築し、システムの技術的検証を行う。 4 地域沿岸情報システムの実用化に向けた課題を整理・分析し、提言 をまとめる。 調査研究の必要性① 密漁による被害が深刻 ・手口が組織的かつ悪質・巧妙 密漁被害が大きい 主な海洋資源 ・被害額は岩手県田老漁協で1年で4,000 万円(推定) 既存の無線システムにおいての密漁対策 あわび ・監視レーダー等を活用 「価格的、性能的に魅 力のあるシステムはな いか・・・」 厳しい漁業業界を反 映した要望 しかし「監視レーダ」だけでは不足」、「組合 所属船と密漁船の識別が難しい」の声も・・・ 漁業関係者の悩み 漁業資源管理(密漁対策)に有効な 新たな無線システムへの期待 うに 調査研究の必要性② 地震発生! 津波の恐れ 津波警報 沿岸無線の設置率が低く 確実かつ迅速に伝えられ ない。 役場 ? ? ? 課題 1 あわびやうにを採捕する船舶は船外機 が多く沿岸無線の設置率が低く緊急情 報の伝達方法がない。 2 遊覧船への緊急情報の伝達方法がな い。 三陸沿岸の漁場が抱える課題 岩手県におけるあわびの放流数、生産量及び回収率 単位:トン 課題 1 岩手県は生産量日本一である岩手県 では毎年800万個以上の人工種苗(しゅ びょう)が岩手県沿岸に放流されており、 その生産量は増加傾向にあるが放流貝 の回収率は10%程度と低く密漁の被害 も影響していると思われる。 2 あわびは海のダイヤと呼ばれ、市場 において高価で取引されるために組織 的かつ悪質な密漁が横行している。岩 手県においては、あわびを採捕(さいほ) できる期間や殻の大きさなどの規制を 設け資源保護を行っているが、密漁者 はこれらの規制に関わりなく潜水器を 用して手当たり次第に採捕している。 単位:万個 800 生 産 量 1,000 900 700 放 流 数 800 600 700 生産量(トン) 放流数(万個) 500 600 400 500 400 300 300 200 100 0 1998 1999 2000 単位:% 回 30 収 率 200 20 100 10 0 1997 回収率(%) 既存の漁場監視用システムの問題点 既存のシステム 監視レー レーダー指示器 ダー レーダー空中線 レーダーとサーチライトに搭載した赤 外線カメラ・CCDカメラを連動させ、航行 する船舶の位置、船影(大きさ)、航跡 を捉えるものが先進的なシステムである。 無線回線若しくは 専用線 問題点 監視センター あわび漁場 1 漁協組合所属船と密漁船の識別が できない。 僚船 僚船 僚船 不明船舶 2 いつ来るか判らない密漁船の監視 かつ夜間が中心となる密漁監視は人 的負担が大きい。 3 機能を高めるシステムの構築に必 要な経費が高額にならざるを得ない。 最適なシステムに求められる機能 岩手県田老漁業協同組合員アンケート調査等の分析から、沿岸漁場監視(密漁 対策)及び緊急時における通報のシステムに求められる機能は次のとおり。 求められる機能 1 最適な沿岸漁場監視(密漁対策)システム (1) 漁場を航行する船舶を捕捉し、組合所属船か不審船の識別 (2) 密漁監視体制を効率かつ軽減できる (3) 取締機関等の事務所及び船舶へ不審船位置情報の伝送 2 緊急通報システム (1) 津波発生等における警報の緊急一斉通報 (2) 船舶故障等の緊急時における緊急通報と船舶位置確認 沿岸漁場監視システムイメージ 不審(密漁)船追跡システムイメージ Aレーダー 監視エリア センターからの不審船位置情報を捉えた監視船A のレーダーシステムは、不審船がレーダーエリア の外へ出てセンターからのデータが途絶えても追 Aレーダー空中線 跡を可能とする。 Aレーダー指示機 監視船Bのレーダー システムは監視船A からの不審船位置 情報データから追跡 を可能とする。 監視セン ター Aレーダー監視 エリア外へ移 動 不審船 監視船B 不審船 Bレーダー指示機 Bレーダー空中線 監視船運用室 沿岸用 VHF/HF無線装置 監視船A Bレーダー 監視エリア レーダー装置 監視船用 レーダー統合 レーダー 表示装置 N-STAR インター 通信装置 フェース 津波警報伝達システムイメージ 地震発生!! 津波の恐れ 津波警報 (無線・携帯電 話) 画面 ● 海に出て いる住民 の船舶 へ確実に 津波警 報が伝 達される ■ ■ ■ 避難状況の確認が 可能となる 遊覧船へも確実に津 波警報が伝達される 沿岸船舶の緊急確認システムイメージ 画面 故障・ 転落等 により 漂流 ● ■ ■ ○○丸 漂流 中 ■ △△丸座礁 異常事態の速やかな 発見により、状況確認 や救助が迅速に行える 座礁 地域沿岸情報システムの構成図 システム構築に求められる技術的課題 技術的課題 1 レーダーデータの合成技術(複数レーダーの連係) 2 沿岸船舶からの船舶位置情報とレーダーデータの合成表示 3 漁協組合所属船と不審(密漁)船の識別表示 4 警戒区域内へ不審(密漁)船侵入時の警報 5 取締機関事務所及び取締船等への不審(密漁)船位置情報の伝達 6 監視センターから沿岸船舶への緊急一斉通報 7 沿岸船舶から監視センターへの緊急通報 技術的課題の解決① レーダ空中線 (送受信機含む) レーダ画像 走査変換処理 画像系 合成 画像作成 重畳処理 目標検出 追尾処理 追尾系 合成 電子海図 発生 レーダ空中線 (送受信機含む) レーダ画像 走査変換処理 レーダーデータの合成技術 表示画面 複数のレーダーデータの合成は 画像表示系と目標検出追尾処理系 の2系統を系統別に合成し画像作 成重畳処理を行う。 複数レーダー合成方式例 目標検出 追尾処理 複数レーダ合成方式例 1 レーダー合成における 重心検出方式のズレ レーダ空中線2 で見たエコー の重心点 レーダ空中線2 で見たエコー レーダ空中線1 で見たエコー の重心点 レーダ空中線1 で見たエコー レーダー位置から物標の見方が異なる誤差の解決 レーダーの検出には重心検出する方式がとられており、各レー ダーからの見え方が異なり、左図のように重心位置が微妙にずれ る。 こうしたズレは、ATA(自動物標追跡)機能から得られるデー タから物標の位置予測処理を行うことにより解決。 2 検出された物標データ取得時間の非同期生から生ず る誤差の解決 レーダー空中線の回転周期は約3秒であり、レーダー間における 物標検出更新の絶対時間は最大で3秒ずれる可能性がある。 この絶対時間のズレは、合成処理を行うタイミングにおいて物標の 進路及び速力データから内部処理的に物標位置を予測移動させる ことにより対処。 技術的課題の解決② 船舶位置情報とレーダー データの合成表示技術 1 船舶から送信されてくるID・位置情報とレーダー データから得られる時間と位置情報のズレは船舶 の識別に影響することから適切な合成表示を行う。 データの適切な合成表示技術 船舶位置情報とレーダーデータを取得した正確な位 置と時間、いわゆる絶対位置と絶対時間を取得する必 要があり、それぞれのシステムにGPS機能を利用し、絶 対位置と絶対時間を整合させることにより改善。 2 表示される レーダ映像 方位方向の分解能 (例:0.8°) レーダーデータの絶対位置の取得技術 レーダーから取得される物標データの精度はレー ダーの方位分解能と距離分解能により得られ、使用し たレーダーの方位分解能は0.8度(1Kmの場合14m)、距 離分解能は30mである。 レーダーデータの絶対位置は、方位分解能と距離分解 能によりメッシュ単位で捉え、その中心を物標データ として捉える 3 物標 (例えばブイの様な ピンポイントの目標) 絶対時間の整合技術 船舶側のGPSで捉えた絶対時間を優先データとして レーダーデーの整合を図る。これにより、気象条件 等によりレーダーデータのロストへの対処が図られ る。 距離方向の分解能 (例:30m) レーダ空中線 位置 レーダーの方位分解 能と距離分解能 レーダーの方位分解 能と距離分解能によ りメッシュ単位に データを取得 システムの検証結果① 1 2つのレーダー情報の合成処理・表示 分割されたエリア間を移動する際のデータのハンドオーバー(引継 ぎ)は確実・円滑に行われ、分割境界線上を物標が通過する際の画像の 乱れも無視できる程度であり、実用上は問題なし 。 2 レーダー情報と船舶位置・ID情報の合成・表示 レーダー映像に重畳した物標シンボル及び船名・速度ベクトルの合成 表示を円滑に実行。船舶の詳細情報表示や速度ベクトル表示も非常に実 用的。AIS/GPS携帯電話ともに問題なし。AIS/GPS位置情 報のみによるシンボル表示も確認。レーダー不感地帯での組合所属船の 安全管理面でも有効。 3 レーダー情報と船舶位置・ID情報の時間的整合、同期表示 レーダー情報とID情報の時間軸上での照合判別・合成処理によるシ ンボル表示、エラーの自動補正等の機能を確認。実用上の課題や問題等 は特になし 4 不審船の識別、捕捉 警戒区域の設定、不審船の識別・表示、侵入/滞留アラーム鳴動、自 動通報、警戒区域外追尾に係る全ての機能について所期の動作を確認。 滞留警報後の自動通報までのタイムラグ(1分半程度)については必要 に応じて改善検討要。自動通報装置側の改良等で対処可能か。 システムの検証結果② 5 不審船の位置情報通報(陸→船) AIS/GPS携帯電ともに問題なし。船→船間の通報にも応用可能。 これにより、通報を受けた船舶による迅速な二次追跡が可能 6 データ中継回線の品質 IEEE802.11g、11bとも所要品質基準をクリア。11gで実用化が適当。 明神崎→真崎→山王閣の中継ロスも実用レベルでは問題なし。 7 災害情報伝達(陸→船) AIS/GPS携帯電話ともに良好に通信。実用に問題なし。伝達事 項のパターン化とこれによる簡便な入力方法の検討要 8 緊急通報(船→陸) AIS/GPS携帯電話ともに良好に通信。実用に問題なし。通報内 容のパターン化とこれによる簡便な入力方法の検討要
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