連続暖房の実験条件

間欠暖房条件でのエネルギー消費と
温冷感に関する実験的研究
~冬期の住宅を想定した人工気候室内実験家屋における実験~
1993141 大石 健二
1993160 加藤 綾樹
1993440 森反 優貴
まず、はじめに・・・
連続暖房とは
スイッチをONにしたままで、常時運転すること
(室温等に時間的な変動を持たない)
間欠暖房とは
スイッチを必要な時だけON,OFFにして運転すること
(室温等に時間的変動を持つ)
研究背景と目的
暖房環境のエネルギー消費と温冷感に関する研究
過去の研究では・・・
ほとんどが、室温等に時間的な変化を持たない
連続暖房を対象としている
しかし!!!
寒冷地を除くほとんどの地域では冬期でも
間欠暖房が主である
実態に即した暖房環境の評価のためには
暖房開始時からの過渡期における
・快適性
・エネルギー消費
.….など
時間変化を
探る必要がある!
そこで!!!
本実験の目的
間欠暖房時の室内環境に関して
暖房開始時
終了時
●
エネルギー消費
●
室内温度分布
●
人体の温熱感覚(被験者実験)
時間変化
暖房方式でどう変化するかを
調べることを目的とした
実験の流れ
プレ実験
本実験
連続暖房実験を行い、それぞれの
暖房機器の目標となる快適な
設定温度を模索し決定した
連続暖房実験で求めたそれぞれの
暖房機器の快適な設定温度を
間欠暖房実験の立ち上げてからの
到達目標温度とした
実験施設
場所
(独立行政法人)建築研究所にある
人工気候室内 実大実験家屋
特徴
室内外温度差
気密性
機械換気量
自由に設定できる!
実験施設
床暖房:FH
パネルヒーター:PH
EH
エアコン:AC
4,500
SC
2,700
実験施設
1階平面図
T型熱電対
熱電対高さ設置位置
100
375
グローブ温度計
525
750
EH
525
被験者席
4,500
SC
525
375 750
測定室状況写真
525
2,700
100
単位[mm]
被験者の概要
被験者データ
年齢 身長 体重 体表面積
通常使用している
被験者 出生地
体質
[歳] [cm] [kg] [㎡]
暖房機器
エアコン
A 埼玉県 23 180 65 1.82 暑がりで寒がり
寒がり
エアコン
B 秋田県 22 175 53 1.63
こたつ
C 山口県 22 178 65 1.80 暑がりで寒がり
被験者の状態:椅座安静 (想定代謝量:1.0met)
測定内容
アンケート申告
●
皮膚表面温度
●
1分毎に測定した
アンケート申告の概要
アンケートの申告項目
温冷感
乾湿感
気流感
快適感
7段階
5段階
2段階
3段階
部位別16箇所についての申告も行なった
連続暖房実験:30分後に申告
間欠暖房実験:開始後1時間は5分毎
残りの1時間は15分毎に申告
皮膚表面温度
前頭
腹
前腕
手の甲
大腿
下腿
足の裏
足の甲
被験者の左側の部位を測定
サーマルマネキンの概要
状態: 椅座で被験者の隣に常に設置した
着衣: 被験者と同一とした
部位: 16部位に分割されている
体深部温度設定: 36.4℃
~役割~
○
室内環境が人体に与える影響を被験者の模擬として測定
○
個人差が出ないように客観的にデータを採取することができる
各実験ケースでの
●
皮膚表面温度変化
●
発熱量
1分毎に測定した
被験者とマネキンが着用した衣服一覧
上スウェット
下スウェット
Tシャツ
トランクス
靴下
スリッパ
長袖Tシャツ
clo値とは?
着衣熱抵抗
clo値が大きいほど熱抵抗は大きい
厚着ほどclo値は大きく、薄着ほど小さくなる
裸体の状態は0cloを表す
マネキンでの着衣熱抵抗の測定結果
1.09clo≒冬季の男性のスーツ姿
連続暖房の実験条件
実験
ケース
A1
A2
A3
A4
A5
A6
A7
A8
A9
暖房方式
エアコン
(AC)
実験条件
設定温度
パネルヒーター
(PH)
設定出力
床暖房
(FH)
流水温度
22℃
24℃
26℃
500W
600W
700W
50℃
55℃
60℃
温水流量
[m3/h]
―
1.6
被験者実験
一人30分間:3人で合計90分間
アンケート申告
測定終了後に記入
連続暖房の実験条件
実験
ケース
A1
A2
A3
A4
A5
A6
A7
A8
A9
暖房方式
エアコン
(AC)
実験条件
設定温度
パネルヒーター
(PH)
設定出力
床暖房
(FH)
流水温度
室外温度: 5.0℃
隣室温度:15℃以上
換気量: 40m3/h
22℃
24℃
26℃
500W
600W
700W
50℃
55℃
60℃
相対湿度:
温水流量
[m3/h]
―
1.6
40%
相当隙間面積: 2.0cm2/m2
次世代省エネ基準
断熱性能:
Ⅰ地域相当
予測平均温冷感申告
PMVとは?
(Predicted Mean Vote)
温熱6要素
快適と感じる範囲!
気温
湿度
風速
放射温度
代謝量
着衣量
PMV
+3
+2
+1
0
-1
-2
-3
温冷感
非常に暑い
暑い
やや暑い
どちらでもない
やや寒い
寒い
非常に寒い
予測不満足率
99%
75%
25%
5%
25%
75%
99%
申告値
PMV
快適性が高い!
3
2
1
0
-1
-2
-3
3
2
1
0
-1
-2
-3
●PMV
温冷感
△乾湿感
◇快適感
22℃
24℃ 26℃
26℃ 500W
500W 600W
600W 700W
700W 50℃
22℃ 24℃
50℃ 55℃
55℃ 60℃
60℃
FH
PH
AC
AC
PH
FH
図5 アンケート申告の結果およびPMV
申告値
PMV
選定条件
3
2
1
0
-1
-2
-3
3
2
1
0
-1
-2
-3
●PMV
温冷感
△乾湿感
◇快適感
22℃
24℃ 26℃
26℃ 500W
500W 600W
600W 700W
700W 50℃
22℃ 24℃
50℃ 55℃
55℃ 60℃
60℃
FH
PH
AC
AC
PH
FH
図5 アンケート申告の結果およびPMV
2500
PH
2000
高さ[mm]
FH
グローブ温度
拡大図
1500
AC
1000
AC
FH
500
PH
0
20
22
24
26
温度[℃]
28
30
32
各々24℃付近になった!
図6 連続暖房運転時の室内上下温度分布
FH
PH
消費された熱量
2880
1000
800
AC
2160
600
1440
約4分の1!
720
400
200
0
0
22℃
24℃
26℃
500W
600W
700W
50℃
55℃
選定条件
約200W
約600W
約800W
図7 投入熱量と消費電力
60℃
消費電力[W]
消費電力[W/h]
投入熱量[kJ/h]
投入熱量[kJ/h]
3600
約3分の1!
室内に投入された熱量
放射カメラを用いた人体表面温度計測
AC 24[℃]
指定範囲
最高温度
最低温度
平均温度
被験者顔
35.6
30.5
34.3
PH 600[W]
指定範囲
最高温度
最低温度
平均温度
被験者顔
35.9
30.7
34.4
FH 55[℃]
指定範囲
最高温度
最低温度
平均温度
被験者顔
35.7
31.8
34.5
指定範囲 被験者足甲 指定範囲 被験者足甲 指定範囲 被験者足甲
最高温度
31.9
最高温度
33.5
最高温度
34.5
最低温度
28.7
最低温度
30.4
最低温度
32.1
平均温度
30.5
平均温度
32.1
平均温度
33.7
連続暖房実験の結果
暖房機器 選定条件
PMV アンケート申告グローブ温度
AC 設定温度 24℃ 0.04
0.04
24.6
PH 設定出力 600W 0.19
0.00
24.3
FH
流水温度 55℃ 0.15
0.00
24.0
この結果を間欠暖房の実験条件に用いる!
間欠暖房実験の条件
実験
暖房方式
Case
実験条件
B1
AC
設定温度 24℃
B2
PH
設定出力 600W
B3
FH
流水温度 55℃
室外温度 [℃]
冬期の1日の変化を想定
八王子の1月の標準気象データ
間欠暖房実験の条件
設定外気温度
八王子の1月の標準気象データ
室内測定項目条件
連続暖房実験と同じ
10
8
温度[℃]
6
最低気温
4
-1.2℃
最高気温
8.2℃
2
0
-2
0:00
2:00
4:00
6:00
8:00 10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00 22:00
時間[t]
0:00
被験者の入室時間
起床後想定
7:00~ 9:00(2時間)
帰宅後想定
19:00~23:00(4時間)
10
起床後想定
8
帰宅後想定
帰宅後想定
温度[℃]
6
外気条件下で
15分間歩かせた
4
2
被験者 0
-2
0:00
サーマル
マネキン
被験者
2:00
4:00
サーマル
発熱発湿
サーマル
6:00 マネキン
8:00 10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00
模擬人体
マネキン
時間[t]
22:00
0:00
起床時
FH
AC
PH
グローブ温度[℃]
グローブ温度[℃]
26
24
22
20
18
16
14
12
AC
FH
消費電力[W]
3000
FH
2500
2000
1500
1000
温冷感申告値
3
2
1
0
-1
-2
-3
PH
PH
500
AC
0
0h
0:00
3
2
1
0
-1
-2
-3
帰宅時
AC:立ち上がりが早い!
AC
FH
PH
PH・FH:立ち上がりが遅い!
AC
PH
FH
被験者を退出させて
代わりに模擬人体を
入出させた。
3000
PH・FH:寒いので申告値も低い
FH
消費電力[W]
温冷感申告値
申告値にも影響!
26
24
22
20
18
16
14
12
1h
1:00
2h
2:00
2500
2000
1500
1000
500
0
0h
0:00
AC
PH
1:00
1h
経過時間[t]
2h
2:00
3h
3:00
4h
4:00
経過時間[t]
AC:開始時に消費熱量大きい!
図9 グローブ温度・温冷感・消費エネルギーの経時変化
2500
起床後
帰宅後
AC 0h
FH 0h
PH 0h
2000
PH 0h
AC 0h
高さ[mm]
FH 0h
1500
1000
500
0
10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30
温度[℃]
12
14
16
18
20
22
24
26
28
30
温度[℃]
図10 暖房機器別2時間毎の室内上下温度分布
2500
帰宅後
起床後
2000
AC 2h
AC 2h
PH 2h
高さ[mm]
PH 2h
1500
1000
FH 2h
FH 2h
500
0
10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30
温度[℃]
12
14
16
18
20
22
24
26
28
30
温度[℃]
図10 暖房機器別2時間毎の室内上下温度分布
2500
2000
起床後
帰宅後
FH・PH:室内空気
温度が均一!
高さ[mm]
PH 4h
4h
AC:足元は暖
まりにくい!
1500
AC 4h
1000
FH 4h
500
0
10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30
温度[℃]
12
14
16
18
20
22
24
26
28
30
温度[℃]
図10 暖房機器別2時間毎の室内上下温度分布
被験者:ACの足元寒い!
AC
マネキン
皮膚表面温度[℃]
36
34
32
30
28
AC FH
PH
26
24
0:00
0h
1h
1:00
経過時間[t]
2h
2:00
36
36
34
32
30
28
26
24
36
AC
34
32
30
28
FH
PH
26
24
0h
1h
0:00
1:00
AC
PH
皮膚表面温度[℃]
PH
間欠暖房 帰宅後
FH
経過時間[t]
マネキン:上がっている!
34
AC
32
30
28
FH
26
被験者を退室させて
代わりに模擬人体を
入室させた
PH
24
36
皮膚表面温度[℃]
FH
皮膚表面温度[℃]
皮膚表面温度[℃]
被験者
36
34
32
30
28
26
24
間欠暖房 起床後
皮膚表面温度[℃]
連続暖房時
下腿
被験者:下がっている!
2h
2:00
34
32
30
AC
28
FH
PH
26
24
0h
0:00
1h
1:00
2h
2:00
3h
3:00
経過時間[t]
2時間以上経っても
上がり続けている!!
マネキンは人体と異なり、機械的(体温一定の設定)で
人体の生理的反応までは再現できない!!
図11 被験者とサーマルマネキンの下腿部皮膚温度の経時変化
4h
4:00
まとめ
室内環境と人体の温熱感覚の観点
ACの利点:室内温度の立ち上がりが早く、
すぐに暖をとることに適する
欠点:連続暖房時に足元が暖まらないことが分かる
:気流を身体で感じて不快になる要素を含む
PHとFHの利点:連続暖房時に上下温度分布が少ない
欠点:間欠暖房時には暖房開始時の温度上昇が遅い
まとめ
エネルギー消費の観点
COP ※と直接空気を暖められる効果
ACが最も効率的である!!
※ ヒートポンプ方式で消費電力以上に熱を投入できる
まとめ
以上の結果から・・・
連続暖房運転
間欠暖房運転
FHとPHが適する!
ACが適する!
連続暖房時と間欠暖房時では評価が違い、運
転モードを考慮した使用者の判断が大切!
※用途:室全体を暖めるのか、
部分的に暖めるかでも変わってくる!!!