Map 自治医大前

7.28事故とこれからのこと
水屋内木本店
内木 誠
はじめに
さる2003年7月28日夜、自治医大西出口前で起こった
交通事故について、二度と痛ましい悲劇がこの地で
繰り返されぬように今回の事故の背景を深く掘り下げ、
可能な限りの対策を施すために、関係各位の建設的
な議論のたたき台としてこのレポートを作成しました。
具体的には、早急に要望を集約し、当該道路の管理
者である県および県警に事故防止策を提出すること
を目的とします。
(注: これは8月7日に自治医大に提出した資料を元にしています)
自治医科大学
セ救
ン命
タ救
ー急
事故後、記録者(私)は、
このあたりで渋滞する
車をさばきながら被害
者を見ていた。
被
害
者
位
置
加
害
者
車
両
初期協力者の車
事故直後から終
わりまでいた
推
定
事
故
現
場
事故時、記録者(私)
は、ここにいて大き
な音を聞いた。
ハイヒールの片方
がこのあたりに落
ちていた
今回の事故時の状況
事故のあらまし(記録者の観点による)
さる7月28日の夜、突然の物音を聞き、家を飛び出しました。最初、その
音を聞いたときは、車とバイクの事故か、車が路側帯の構築物に衝突した
のかと思ったほど比較的大きなきつい音でした。事故現場から3・40メート
ルの距離です。見ると、路上に人だかりがしており、直ぐに人が跳ねられた
のだと分かりました。すでに四方の車の渋滞が始まっていました。まだ現場
ではなんの動きも無いようなので、自分の車を出して、停止している車の間
を縫うようにして現場に近づき、この車に乗せるようにと声をかけました。す
ると、被害者のそばにいた人が、「救急車を呼びました」と言いました。自分
の車が邪魔になると思い、車庫に戻して、事故現場に戻りました。見回すと、
自治医大からの出口が特に渋滞しているようなので、右折して出ようとする
車を左折して出るように誘導し始めました。車がすくたびに、路上に横たわ
る被害者に目をやり、救急車を待ちながら交通整理を続けました。被害者
のそばでは幾人かの人が取り巻くようにずっと寄り添っていました。
しばらくすると救急車が到着し、負傷者を収納して運んでいきました。居合
わせた人々も声を交し合って散会し、渋滞していた交通も平常に戻りました。
そこへ警察が到着し、現場検証を始めました。それを見て筆者も帰宅しまし
た。
自治医科大学
数年前にあった医療
従事者同士の人身事故
加
害
者
車
両
被 協力者の車
害
最初から最後まで付
者
き合ってくれた協力者
位
置
加害者はいきなり
ここに飛び込んで
来て助けを求めた
駅方向から走ってきた加害者
の車が、横断歩道を北上する
歩行者を右折時に跳ねた事故
過去の事故例
過去の事故のあらまし
ここで幾年か前の経験について取り上げてみます。今回の事故より遅い
時間の出来事でした。いきなりお店にひとりの女性が飛び込んできて、「助
けてください。人を跳ねてしまいました」と叫んでいます。すぐに外へ出ると、
道路の真ん中に止まっている車のかたわらに人が倒れていました。今回よ
り交通量は少なかったのですが、その場に止まってくれた車の運転者の方
と話して、その方に先に救急に連絡に行ってもらい、自分の車を出して被害
者を抱きかかえて助手席に乗せ、当時の救急外来に運びました。このとき
の事故は、跳ねた車がうまく被害者をボンネットの上に掬い上げ、停まった
車からゴロっと道路に落ちて気を失っていただけなので、結果は打撲と足の
指の骨折だけですんだということを後になって知りました。所属科は忘れま
したが、被害者も加害者もともに自治医大の医療関係者による事故でした。
きわめて軽微に終わった事故であったため、ほとんどの人に知られずに済
んでしまいましたが、まかり間違えば重大な事故に繋がりかねなかった事例
として、記憶を遡って振り返ってみました。。駅方向から来た夜勤勤務者の
車が右折時に横断歩道を北に向かって歩いている歩行者を跳ねた事故で
した。この地点における、もうひとつの危険なパターンとして取り上げること
が出来ます。
過去の事故のあらまし(続き)
もうひとつ、自治医大の前で起こった事故を取り上げて見ます。いつのこと
であったか忘れましたが、昼間、自治医大の正面の交差点の角で人身事故
が発生したことがあります。このときの被害者は年配の男性でした。この事
故のときは、機転の利く看護婦さんが病院からストレッチャーを引き出し、そ
れに乗せて走って運んだのを覚えています。 それ以外の詳しい状況はもは
や記憶が定かではありません。
事故の背景(その1)
ここで事故の起こった自治医大前に接する東西の大通りについて振り返って
みます。上の図をご覧ください。この道路は、県道笹原・二宮線と呼ばれ、主
要な県道のひとつです。名前のとおり笹原・二宮間の交通もありますが、主に、
薬師寺地区と小金井地区とを結ぶ幹線道路として長く使われて来ました。そこ
へ自治医大が出来ることによって、通勤・通院の交通が加わることになりまし
た。そして、新4号バイパスが整備されますと、このあたりが旧4号線と新4号
バイパスとが最も接近していることも背景に、二つの主要道路間の通路として
使われるようになりました。さらに、現在にいたりますと、ご承知のように自治
医大前の開発が近年急速に進むことによって、ひとつには住宅住民の生活道
路の一部として、また、同時に開発されてきた商業地域への近隣からの買い
物客の交通も加わることによって、飛躍的に交通量が増大してきました。
事故の背景(その2)
ここで自治医大の中に目を向けてみます。設立当初から20年間ほどは教職
員のほとんどは大学構内に住んでいました。学内には現在のプール脇の地下
にスーパーが委託をうけて営業しており、学内だけで最小限度の生活が維持
できるようになっていました。大学の周りは雑木林と畑、少数の人家が点在す
るだけでした。一番近い薬師寺地区も東へ約2キロ、小金井地区は南へ数キ
ロ、石橋地区は北へ数キロの位置にあり、鉄道は小金井駅と石橋駅が利用さ
れていました。現在以上に北門の利用度は高かったのです。
現在では多くの教職員が南側の住宅地に居住し、学内にいるだけでは日常
生活が成り立たなくなっており、西出口の利用度が格段に高まっています。
事故の背景(その3)
自治医大開設当初、
将来駅が出来ると
言われていたところ
付近の状況を大きく変えたのは、今からおよそ20年ほど前の自治医大駅の
開設です。今回の事故の遠因として一番大きな要因をなしています。この駅は
当初、自治医大のすぐ西に出来ると言われていました。
実際には、広域関東圏におけるサイエンスパークのひとつとして住宅都市整
備公団を事業主体として自治医大周辺地域が開発されることになりました。宅
地開発が注目されていますが、もともと研究開発型のニュータウンとして開発
が進められた「グリーンタウンしもつけ」の中心施設のひとつとして鉄道駅が設
置されました。このことによって、自治医大駅と自治医大を結ぶ、この地域で
最も重要な歩行者交通路と、同様にまたこの地域で最も重要な車両交通路が、
これ以来今回の事故現場となった地点においてクロスすることとなりました。
事故の背景(その4)
今回、今後の事故防止について警察の方と話し合った際、地元自治会の要
望が大事だと聞き、早速、自治会長さん宅を何件か尋ね回り、趣旨に賛同を
得ましたが、実際には、地元の人間はこの横断歩道は危険なことは分かって
いるので、めったなことでは利用しません。
この横断歩道の利用者のほとんどは今回の事件の犠牲者同様に自治医大
の関係者です。日常的には、駅を利用して通勤する教職員が主ですが、特筆
すべきは異なるパターンの横断歩道の利用者がいることです。
つい最近のことですと、夏休みを利用して看護学校の見学に来た、将来の看
護師を目指す高校生が大挙してこの横断歩道を往来していました。春には受
験生もいます。入学式や卒業式にはるばる来られたご父母の方もいます。研
修やセミナーなどで自治医大に来る方もいます。これらの方の多くは初めてこ
の地に来て、駅を降り自治医大を目指して歩いて来てこの交差点に行き着く
のです。
事故の背景(その5)
以前はあまり気が付かなかったのですが、最近、「強気な歩行者」と呼ぶべ
き歩行者が目に付くようになりました。
朝夕の交通量の多い際、なかなか車が途切れずにいる時、思い切って前に
出る歩行者がいます。車は止まるものという大前提に立って、車が止まる前に
一歩前に出て車を止めるのです。おおむね車は停止します。車が先に歩行者
の直前を通り過ぎていくこともあります。一瞬歩行者が足を止めた隙にすり抜
けるように通り過ぎる車もあります。大方の歩行者はこんな度胸のいい真似は
出来ませんし、普通ですと、道の中ほどにいても車の来るほうを振り向いて確
認するのですが、「強気な歩行者」は車が来ようと来るまいとまっすぐ前を向い
て横断歩道を渡ります。歩いて渡るのであって決して走って飛び出すのではな
いのです。こうした「強気な歩行者」は一人二人のことではありません。
自治医科大学
およそ40年前の設計
外来イン
外来アウト
細
道
職員イン
職員アウト
細
道
細
道
細
道
雑木林と畑
創立当初の自治医大前
自治医科大学
右折して
出る車の
危険度が
飛躍的に
高まった
直進す
る車も
ある
セ救
ン命
タ救
ー急
西出口を出る
車の大半は
左折して出る
さらに西出口を左折
して出る車のほとん
どが正面交差点で
右折する
現在の出口のパターン
①②
③
④
⑥
自治医大西出口前の交差路は、これを
十字路としてよりは、二つの性格の異な
る丁字路が向かい合っているのだと見
るのが妥当です。
性格が異なるというのは、一方の自治
医大側は閉鎖的な交通体系をとってい
ます。もう一方の反対側は開放的な交
通体系をとっています。閉鎖的な交通
体系においてひとつの通行パターンは
あらかじめ決定されていて、他のパター
ンに容易に置き換えることが出来ませ
⑤
ん。一方開放的な交通体系においては、
必ずしもそのルートを通らずとも別の
ルートを選択して目的地にたどり着くこ
とが可能です。
交差路の特徴(その1)
①②
現在、 ①と②の通行パターン
は他のルートに置き換えることが
出来ません 。 ③ と④について
は、地下道を経て鉄道線路の西
側と結ぶルートにあたるため、 ⑤
と⑥の通行パターンより優先する
と言うことが出来ます。
③
④
⑤
⑥
一方、横断歩道を起点に考える
と、 ① ③ ④の通行パターンは、
この横断歩道と交差しないため、
この横断歩道で事故を起こす可
能性はありません。
交差路の特徴(その2)
①②
③
④
⑥
この横断歩道と交差する② ⑤ ⑥
の通行パターンについて見ます。
②はいったん停止して動き出すとこ
ろで横断歩道と交差します。
直進する場合とはっきり区別される
⑤の左折の通行パターンでは、左
折のため減速するところで横断歩
道と交差します。駅のほうから来て
左右を確認して大通りに出る⑥の
パターンは、一気に加速するところ
で横断歩道と交差します。 ② ⑤ ⑥
⑤ の通行パターンでは、 ②と ⑤とで
は左折時の巻き込みの可能性は存
在しますが、 ⑥の通行パターンが
最も危険が高いと言えます。
交差路の特徴(その3)
セ救
ン命
タ救
ー急
自治医科大学
通過車両の運転傾向
どの車両
も加速し
て坂を
登ってく
る
結果論で言えば、西
出口前を通過する車
両のほうが東入口前
を通過する車両より
高速で通過して行く
この先は道が
細くなるので
減速する。
正面交差点を青
信号で通過した
車はさらに加速し
て直進する。
旧道から自治医
大前に来た車は
広い道路になっ
て加速する
走行パターン
自治医科大学
セ救
ン命
タ救
ー急
今回の事故現場
の直前の車線は
片側が3車線と
なっている
東西大通りの道
路の整備は、車
両中心、正面交
差点中心である
残りの1車線の
側を走行して来
た車両によって
事故が引き起こ
された
結果として通過
車両の直進性を
高めるライン取り
になっている
通行区分
一
方
通
行
路
二
車
線
自治医科大学
変則3車線
センター
ライン
のない
往復
車線
変則
3車線
二
車
線
自
治
医
大
駅
4車線
事故の直
前に現場
付近の道
路の舗装
が全面改
修された
一
部
三
車
線
に
近
い
二
車
線
2車線
4車線
周辺の道路
の整備状況
と比較しても
特段に整備
されている
2車線
この区間
は未整備
の2車線で
あるが将
来整備さ
れても2車
線の可能
性が高い
2車線
二
車
線
周辺道路
焦点
歩行者の観点からするなら、自治医大西出口前の交差点はこの近隣で並
ぶものがないほど重要な交差点です。運転者の観点からすると、とりわけこ
の地域の実情に疎い通過車両の運転者の観点からするならば、この自治
医大西出口前の交差点は交差点としてすら認識せずに通過してしまうであ
ろうほど比重の軽い交差点です。
現在、この自治医大前東西の大通りは、通行車両中心、正面交差点中心
の観点で整備がなされています。
今回の事故は、この地域で最も重要な歩行者ルートとこの地域で最も通
行利用の多い車両ルートとが交差する地点で起こった事故なのだということ
を誰もが正確に認識すべきです。
自治医大前東西の大通りは、歩行者・車両ともに自治医大への出入りの
不可欠な領域となっています。そこへ今回の事故の直前に舗装が全面的に
改修されました。車両にとってはよりスピードの出しやすい状況になり、今回
の事故の誘因のひとつになったと言えます。これまで以上に危険なこの状
態がこのまま放置され、有効な横断歩行者の保護がなされないならば、き
わめて近い将来に今回同様の事故の再発が容易に予測されます。あらた
な悲劇の再発を防ぐためにも、現地の状況に即した緻密で総合的な事故防
止対策が求められています。
自治医科大学
セ救
ン命
タ救
ー急
自治医大前
東西大通りの
速度規制
実速40km/hが
望ましいが、
難しければ
制限速度
40km/hとする。
要望その1
自治医科大学
横断者
を認識
しやす
い照明
が必要
セ救
ン命
タ救
ー急
歩行者用押し
ボタン信号の
設置
西出口前の交差
点は、車両通行と
歩行者とを切り離
して考えることが
望ましい
要望その2
自治医科大学
セ救
ン命
タ救
ー急
予告信号灯の設置
西側から地下道
を経て交差点に
接近して来る車両
のために予告信
号灯を設置する。
要望その3
自治医科大学
東から西への
直進車両の
通行車線を
変更する
再び
外側
の車
線を
直進
この区間は内側
の車線を直進
セ救
ン命
タ救
ー急
直進車両の
通行にストレ
スを与える
この区間は外側
の車線を直進
要望その4
自治医科大学
セ救
ン命
タ救
ー急
右折禁止
この区間に用事が
あって出る必要性は
まったくない
駅方向からの
右折を禁止して
横断歩行者の
保護を図る
地元の人間は、こ
のパターンの右折
は危険なのでめっ
たにしない
このパターンの
右折は他の
ルートで容易に
置き換えること
が出来る
要望その5
セ救
ン命
タ救
ー急
自治医科大学
正面出入り口の活用
職員の出勤時間と
退出時間は異なる
ので交差しない
西出口における左
折車両を削減する
ことによって、横断
歩行者への負荷を
軽減する
外来者の出入りは
日中が主である
要望その6
(これは自治医大への要望です)
自治医科大学
右折車は
安全に右
折できる
右折車用
感知センサー
の設置
セ救
ン命
タ救
ー急
左折車を大幅
に削減すること
が前提である
右折車が停止
線に来ると歩行
者用横断歩道を
青にする
要望その7
セ救
ン命
タ救
ー急
自治医科大学
登録車両
のみ IC
ゲートを
通ること
が出来る
学内通路の往復線化
一方通行を往復
線化することで
危機対応力を高
める
現在普及しつつあ
るICチップの採用
で職員などの登録
車両の出入管理は
容易である
出入を多元化
することで負荷
分散を図る
今、西出口が
通行不能に
なった場合、学 この付近は
内がパニックに 交差点にす
陥る恐れがあり ることが出
将来の望ましい出入路 来る
ます。
(これは自治医大への提案です)
結び
筆者は、自治医大がこの地に設立される前からこの土
地で成長し、自治医大の初期の学生とは同世代として
この地の変遷を見つめてきました。
今回の事故については、当事者の責任だけに帰すこ
との出来ないものが確かにあります。それを明らかに
し、適切な対策を施すことが今回の事故で犠牲になら
れた方への慰霊と鎮魂にかなうものであると信じます。
関係各位の、実現可能な献策を切に期待します。
2003年8月11日改稿