モナドロジーの情報論的解釈 内井惣七 モナドは非物質的オートマトン 『モナドロジー』(1714) • (1)モナドは真の実体 • (2)部分を持たず単純で心的活動 • (3)内部状態すなわち知覚は、欲求により状態 が変わる(内的原理により) • (4)物質世界はモナドの活動から生み出される 現象 • (5)実体は目的論的法則に、現象は因果律に 情報論的解釈の先行研究 中込照明(物理学者)、 1998年 モナド群の組織化と相互作用(情報伝達) ただし、相互作用のおおもと は神にさかのぼる 実体レベル こ う 見 え る 現象レベル 因果律にしたがった現象の生起 予定調和は何を意味するか • 自説に辻褄を合わせるための形而上学 • 的要請か? 情報論的解釈により、システムデザイ ナーとしての神にとっては合理的な要 請であることがわかる。目的論と因果 律の調和にも無理がない。 物理論文(1695)での力の定義 • 原初的力 • 派生的力 能動的/受動的 能動的(衝突などでの作用に関 わる)/受動的(慣性や抵抗などに関わ る) • 原初的力は実体レベル、派生的とされ る物理的力は現象レベル。どう関係づ ける? モナドロジーでの能動・受動 • モナドは判明な知覚を持つ限りにおい • て能動的、混雑した知覚を持つ限りに おいて受動的 デ・フォルダーへの書簡(1704)では、 「原初的な力」が、モナドにおけるあ る知覚から別の知覚へと移り変わる傾 向性と同一視される。 「力」は知覚的、情報論的 • 実体レベルでは、力が情報論的概念で • • 定義されていると解釈できる。 知覚の変化、系列 → モナドの内部 状態の遷移(情報論的) では、この(原初的)力と、物理現象 レベルでの(派生的)力とはどう関係 づけられる? モナドから現象へ • 後期ライプニッツにおいて、物理的対 • 象を含め、自然現象はすべてモナドの 活動から生まれた現象だと見なされる。 では、モナドの知覚(情報的)活動と、 自然法則に従う現象との関係はどのよ うに解明されるうるか? → ここに 「コーディング」が入るのでチューリ ングマシンと対比! チューリングマシンの「計 算」 • チューリングマシンが自然数の関数を • • 「計算する」とは? テープ上の記号列は何を表す? → 二値記号で自然数をコーディングする プログラムはコーディングと連動し、 テープ上の記号列を変えていく(知覚 の変化と類比的) チューリングマシン 有限オートマトン 二値の記号列 テープヘッド 無限のテープ . . . 01110 . . . . . . 011110 . . . [数2を表す] [数3を表す] ・・するための プログラム コーディングにより記号列に意味を与え、はじめて 「計算」と見なしうる。プログラムの遂行は目的論 的! この計算を物理的に実現するには? → ハード ウェアを作り、因果系列でプログラムを実現 神=システムデザイナー • • • (1)モナドの活動の出力が何を表すかを決める コーディングの設定 (2)モナドの活動のプログラム(このプログラム にしたがって、モナドの世界は完璧に運行しなけ ればならない)目的論的法則 モナド群の活動がこのモナドやあのモナドにどう 見えるかが出力に相当。この「見え方」、すなわ ち現象のなかで、われわれにとっての空間と時 間、あるいは通常の因果性や自然法則が成り立 つ。 テキスト解釈から裏をとる • Robert Merrihew Adams, Leibniz: Determinist, Theist, Idealist, Oxford, 1994, ch. 13. 原初的力と派生的力 • モナドロジーではふれられないが、実 • 体レベルの原初的な力とは、モナドの 状態遷移(知覚の変化)の傾向性のこ と。 派生的力(原初的な力が変容した、あ るいは制限されたもの)については、 実体レベルと現象レベルの二つにまた がることが難点。→ 解決策は? 実体の活動が現象を生み出す • • 実体と現象との対応関係(ライプニッツの基 本的スタンス)に着目し、モナドの活動が状 態遷移と、現象を生み出す(出力)という二 側面を持つことに注意すればよい。 物理現象で力が一つの対象から別の対象へ伝 達されるように見えるが、モナドレベルの状 態遷移はすべて内的原理による。しかし、他 のモナドの状態が内的状態に反映されるよう プログラムされている!(予定調和) 現象による表現=コーディング • かくして、物理現象レベルの派生的力 は、実体レベルの派生的力を「表現」 しているが、見かけの表現とそれが表 す実体レベルの事態を混同してはなら ない。→ この区別は、コーディング によって達成できる! モナド群の組織化と相互作用(情報伝達) ただし、相互作用のおおもと は神にさかのぼる 実体の状態遷移 出力=現象 因果律にしたがった現象の生起
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