インターネット日食中継の評価 ー科学技術館での中継結果との比較ー 縣秀彦,尾久土正己,中山雅哉, 永井智哉,高橋典嗣 ライブ!エクリプス実行委員会 概要 2001年6月21日のインターネット日食中 継で行ったアンケート評価を報告する。 対象: インターネット中継の受信者 遠隔授業の受講者 評価項目: 受信ストリームの帯域による比較 送信元の映像品質による比較 受信映像のサイズによる比較 インターネット中継の概要 インターネット中継の概要 観測地からの映像 ジンバブエ: 8Mbps で映像、音声を搬送 ザンビア、マダカスカル: 64kbps WMT でエンコード ENOC (大手町KDDIビル) にて各地の映像を集約し、 インターネット中継用に(再度)エンコード 中継に用いたストリームの種別 RealMedia(Real8, RealG2), WindowsMedia, QuickTime 低帯域用: 56kbps、広帯域用: 256kbps 遠隔授業用は、別途エンコーダを用意 中継に用いたストリームの種別 科学技術館 広島 (マメdeがんす) WindowsMedia MPEG2/ATM 700kbps 16Mbps アンケートの集計数 Webページでの集計 日本語事前 1210名 事後簡易 1033名 事後詳細 415名 英語事前144名 214名 遠隔授業での集計 科学技術館 大人 36名 子ども 29名 広島 大人254名 子ども289名 Web ページでの集計 受信者に関する集計 受信者の年齢、性別分布 インターネット中継の視聴経験 中継ストリームの種別と接続方法 インターネット日食中継に関する集計 視聴時間とストレス 事前の Web 参照について 中継の評価と満足度 インターネット中継受信者の年齢分布 180 人 160 140 120 100 80 60 40 20 0 10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代~ インターネット中継受信者の性別分布 350 人 300 250 200 150 100 50 0 女 男 天文現象のインターネット視聴体験 300 人 250 200 150 100 50 0 初めて 1~2回 3回以上 受信ストリームの種別 250 人 200 150 100 50 0 Real Player 8 Windows Media Player 7 Quick Time Player 5 インターネットへの接続方法 120 人 100 80 60 40 20 0 ( モ デア ナ ム ロ )グ 使 用 6 4 K 相 当 I S D N 回 線 1 2 8 K 相 当 I S D N 回 線 A D S L ケ ー ブ ル T V 回 線 専 用 回 線 不 明 そ の 他 時 1 時 間 2 度 程 度 程 時 間 間 半 1 度 程 0 分 3 度 程 0 分 1 度 程 5 分 内 以 120 3 分 内 以 1 分 視聴時間 人 100 80 60 40 20 0 接続時のストレス 160 人 140 120 100 80 60 40 20 0 受 ス 信ト レ で きス な た く 多 切 少 断 あの は な っス たト か がレ っ ス た は 数 回 つ な 、 接 ぎ続 直 が し切 た れ て 頻 繁 つ なに 接 ぎ続 直 が し切 た れ て アンケートへの回答数 ストレスなく受信 ストレスあるが切断なし 数回切断あり 頻繁に繋ぎ直し 詳細アンケート 26.3% (109) 33.7% (140) 27.5% (114) 12.5% (52) 簡易アンケート 30.5% (314) 32.8% (338) 22.5% (232) 14.3% (147) 事前のWeb利用 事前にWebを見た人 事前に見ていない人 302人 113人 資料がWeb上にほしかった 3.1±1.3 3.5±1.3 Webが見やすくなかった 2.1±0.8 2.3±0.9 総合的に中継は良かった 4.2±1.1 4.2±1.1 インターネット中継評価と満足度 5 4 .6 8 4 .5 9 4 .1 9 4 3 .6 3 .6 3 .4 5 3 .1 8 3 2 .1 3 2 1 .7 7 1 .7 7 1 0 画 質 音 声 臨 場 感 疲 労 感 目 疲 れ 資 料 w e b 評 価 次 回 希 望 現 地 満 足 総 合 評 価 日食中継評価に関する因子分析結果 質問項目 第1因子 画質・音声 0.75 0.58 0.57 第2因子 疲労感 -0.08 -0.19 -0.06 第3因子 資料 -0.06 -0.08 -0.03 全身に疲労感を感じた 目が疲れた -0.22 -0.05 0.80 0.58 0.05 0.12 資料がWeb上にほしかった Webが見やすくなかった 固有値 0.03 -0.19 2.24 0.01 0.18 1.26 0.47 0.44 1.09 画像は鮮明だった 臨場感があった 音声は明瞭だった 中継評価と満足度の相関関係 因子 質問項目 第1因子 画像は鮮明だった 画質・音声 臨場感があった 音声は明瞭だった 日食インターネット中継の満足度に関する質問項目 次回の日食もインター 現地の人のほうが 総合的にみて今回の ネットで観たい 満足感が高いと思う 中継はよかった 0.203** 0.302** 0.144** 0.068 -0.006 0.032 0.423** 0.398** 0.285** 第2因子 疲労感 全身に疲労感を感じた 目が疲れた -0.268** -0.133** -0.096 -0.073 -0.296** -0.245** 第3因子 資料 資料がWeb上にほしかった Webが見やすくなかった 0.014 -0.176** 0.086 -0.023 -0.013 -0.196** 属性・接続環境と満足感の相関 質問項目 天体現象インターネット中継視聴経験の有無 使用した動画受信ソフトウエア ネットワーク接続環境(帯域の違い) 中継の視聴時間 中継の接続状況(接続ストレスの有無) 職業 性別 年齢 日食インターネット中継の満足度に関する質問項目 次回の日食もインター 現地の人のほうが 総合的にみて今回の ネットで観たい 満足感が高いと思う 中継はよかった 0.057 0.031 0.008 0.231** -0.129** -0.029 -0.008 -0.034 0.135** 0.08 0.123* 0.036 -0.002 0.294** -0.366** -0.008 0.006 0.053 -0.014 0.056 0.075 -0.048 0.018 0.039 遠隔授業について 科学技術館 KDDI 研究所の協力により、ENOC との間を 2.4GHz帯の無線LAN 装置で直接接続 サイエンス友の会会員を中心に 70名が参加 ザンビアとの遠隔授業、特別配信中継映像を 大型スクリーンに投影 広島 (マメdeがんすプロジェクト) 別稿にて紹介 ENOC と科学技術館の接続 1km 2.4GHz帯 無線LAN装置を利用 科学技術館での遠隔実験授業 時刻(日本時間) 21:00~ 21:10~ 21:25~ 21:35~ 21:50~ 21:57~ 22:00~ 22:20~ 22:25~ 22:40 内容 開始(アンケート記入等) 太陽系シミュレータによる日食の説明 2億分の1太陽系模型での説明 ザンビア(高橋典嗣)との遠隔授業1回目 ゲストコーナー 日食遠征経験者のお話 ジンバブエとの国際電話によるやりとり 皆既日食中継ライブ ザンビアとの遠隔授業2回目 事後アンケート記入 終了・解散 備考 皆既直前 広島の小学校も参加 本番では電話回線混雑で通じず ザンビア映像→-ジンバブエ映像 皆既直後 科学技術館のみ参加 科学技術館での日食中継のようす 映像品質の評価(興味深かった中継地点) ザンビア 0% 日本語 英語 科学技術館 大人 科学技術館 子ども 20% 40% ジンバブエ マダガスカル 60% 80% 100% 日食中継に満足したか? とても満足 0% 日本語 英語 科学技術館 大人 科学技術館 子ども 10% 20% 少し満足 30% 40% どちらとも 50% 少し不満 60% 70% とても不満 80% 90% 100% 天文への興味・関心(中継前) とても興味がある 0% 日本語 英語 科学技術館 大人 科学技術館 子ども 20% 少し興味がある どちらともいえない 40% 60% あまり興味ない 80% まったく興味ない 100% 日食中継視聴による天文興味の変化 とても増した 0% 日本語 英語 科学技術館 大人 科学技術館 子ども 10% 20% 少し増した 30% 40% 変化なし 50% 少し減った 60% 70% とても減った 80% 90% 100% 結論(1) インターネット日食中継評価への要因 (1)インターネットによる日食中継の評価因子として,「画質・音 声」,「疲労感」,「資料」の3つの因子が抽出された. (2)インターネット中継で,視聴者の満足度を高めるためには, 上記3つの因子のほか,接続ストレスを無くし,長時間の視聴 でも疲れないようにすることが必要であることが分かった.また, インターネット中継の視聴経験者ほど,満足度が高いことが分 かった.さらに,Webの印象度も中継の満足度に影響しており, 中継の事前に日食説明のWebページを見た人のほうがWebへ の印象度が高かった. 結論(2) 帯域の違いと満足度 (3)今回の中継では,帯域の違いと視聴の 満足度との間には相関がみられなかった. このことは中継内容が狭い帯域でも適して いたことのほか、クライアント側に適した帯 域での配信を選択させるシステムやスト リームサーバーの広域負荷分散システム がうまく機能し,どの帯域でも同レベルの 負荷で配信が行われたことが影響してい ると推察される. 結論(3) 映像品質・音声の評価 (4)今回,高品質の映像・音声も配信したが, 通常のインターネット環境(56kbpsまたは 256kbpsの帯域,通常のパソコンモニターで の視聴)の視聴者にとって,品質の違いが満 足度に影響を与えることはなかった.一方,同 映像を700kbpsの帯域で受信し,大型スク リーンで視聴した場合は満足度が高かった. 結論(4) 日食中継の教育利用 日食中継の教育利用として,インターネット 中継視聴者,遠隔実験授業参加者ともに, 日食中継を見た後,天文への興味・関心 が増加している点,および授業参加者の ほうがインターネット中継視聴者より満足 度が高いことより,日食中継が有用な学校 教材となりうることを追認することができた. まとめ 中継映像の帯域の違い(56kbpsと256kbps)と視 聴者の満足度との間に相関はなかった。 256kbpsまでのインターネット中継では,送信元 の映像品質の違いが視聴者の満足度に影響を 与えることはなかった。 700kbpsで配信され、巨大スクリーンに投影され た高品質映像は受講者の満足度に強く寄与して いる。 謝辞 “LIVE!ECLIPSE2001”日食中継は,多くの企業や団体,そして個人に多大な る支援を受けた.ここで,すべてのお名前を挙げることは出来ないが,深く感謝 する次第である.また,「ライブ!エクリプス」実行委員会は,総勢100名近い個 人ボランティアの集合体である.それぞれのご尽力に感謝の意を表したい.特 に,次の方々には調査を行う上で大変お世話になりました.感謝いたします. 和田英一さん,石川慶子さん(実行委員会) 馬場始三さん(倉敷芸術科学大学),森下貴裕さん(岡山県立大学) 浅里幸起さん(三菱電機), 渡辺健次さん(佐賀大学理工学部) 野中舞さん(㈱ネットマイル社), 山崎克之さん(KDDI研究所) 奥野光さんはじめ日本科学技術振興財団の皆様 科学技術館運営ボランティア「ちもんず」の皆様 前田香織さん(広島市立大学情報処理センター) 実験プロジェクト(マメdeがんすプロジェクト)の皆様 参考文献 縣秀彦,並木光男,相川成周,五島正光,山本泰士,中山雅哉(2001) 放送 型通信を用いたインターネット中継による市民向け天文講演会の実施例とそ の評価.日本教育工学雑誌,25(Suppl.):179-184 尾久土正己,板垣朝子,高橋典嗣,和田英一,森友和,相川成周,安田豊, 中山雅哉,森下貴裕,市川雄一,大原弘美,渡辺健次,近藤弘樹(2001) イ ンターネットを使った大規模な日食中継の実現とその教育への応用.教育シス テム情報学会, 前島治,福家直樹,渡邊泰之,廣瀬功一,中山雅哉,中川晋一(2000) 都市 部における2.4GHz帯無線LANの実験と評価.電子情報通信学会・通信ソサイ エティ大会予稿集,B-7-113 安田豊,中山雅哉(1999) 日蝕中継におけるWWW分散サーバ群の構築とそ の有効性.情報処理学会研究報告99DSM-14:19-24
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