少子化対策を考える 大阪大学経済学部 本間正明研究室 大西恭輔 川崎雄介 熊代克久 中塚早保 八塚貴久子 1 第1章 現状認識 2 現状(合計特殊出生率) 合計特殊出生率 (1998) (1995) (1992) (1989) (1986) (1983) (1980) (1977) (1974) (1971) (1968) (1965) (1962) (1959) (1956) (1953) 4.00 3.50 3.00 2.50 2.00 1.50 1.00 0.50 0.00 (1950) • 1947年から60年代の 初めにかけて大幅に減 少 • 60年代初めから70年代 前半までは2.0前後の水 準を維持 • それ以降は継続的な減 少傾向 • 2002年における水準は 1.32 厚生労働省統計情報部 『人口動態統計』より作成 3 少子化による経済への影響 7,000 6,800 労働力人口の減少によ る経済成長率の低下 6,600 6,400 6,200 ( 万 人 6,000 1990 2001 2005 2010 2015 2020 2025 ) (労働力人口) 50.0 社会保障負担の増加に よって国民負担率が上昇 40.0 30.0 19 96 19 91 19 86 19 81 19 76 19 71 19 66 19 61 19 56 20.0 年度 (国民負担率) 4 国立社会保障・人口問題研究所「社会保障費」より作成 出生率低下の背景 子供の質の変化 女性の社会進出 出生率の低下 未婚率の増加 養育コストの増加 5 現状(諸外国の状況) • 先進諸国を中心とした合計特殊出生率の推移 2.20 2.10 2.00 1.90 1.80 1.70 1.60 1.50 1.40 フランス アメリカ スウェー デン 1980 1984 1988 1992 1996 2000 年次 6 諸外国の取り組み • 北欧型、米英型といった各国独自の少子化対策の 推進 北欧型⇒職業生活と家庭生活の両立支援をねらいと して、充実した育児休業を法律で保証する 米英型⇒政府は家庭や企業の問題に介入せず、自主 的な交渉や契約に任せる 7 育児サービス 就業との両立支援 子育てコスト 軽減 集団型保育所 児童園 託児所等 育児休業制度 (3年間 無給) アメリカ 公的保育 サービスは 非常に低い 育児休業制度 (年間3ヵ月) スウェーデン 保育所 余暇センター 幼稚園 家庭保育所等 育児休業制度 (1年半 児童手当制度 手厚い所得補償) フランス 家族除数制度 児童手当制度 等 児童扶養控除 制度 保育費用対象 控除制度 8 我が国の取り組み • 育児サービス・・・保育所 幼稚園 放課後児 童健全育成事業 • 就業との両立支援・・・出産休暇 育児休暇 • 子育てコスト軽減・・・児童扶養控除制度 児童手当制度 9 待機児童数と保育所利用児童数等の推移 平成13年 合計 平成14年 21,031 合計 平成15年 25,447 合計 26,383 東京都 4,982 東京都 5,056 東京都 5,208 大阪府 3,959 大阪府 3,552 大阪府 3,863 神奈川県 2,593 神奈川県 3,204 神奈川県 2,944 10 問題意識 これまで政府は少子化に対して施策を行ってき たが出生率低下に歯止めがかかっていない! 政策と実情に乖離があるのではないか? 11 第2章 分析 12 理論モデル Max: U U n, Z s.t.: Y PC n Pz Z これを解くと n nPc , PZ , Y Z Z Pc , PZ , Y n : 子供、 Z : 市場財の消費量、 Y : 家計所得、 PC : 子供の価格、 PZ : 市場財の価格 13 分析モデル Wmh Wfh ln TFR 0 1 ln 2 ln 3 ln Kyoiku 4 ln Hoiku Wfh Wfp • • • • • • TFR:合計特殊出生率 Wmh: 25~34歳の男性フルタイム賃金率(実質値) Wfh: 25~34歳の女性フルタイム賃金率(実質値) Wfp:女性パートタイム賃金率(実質値) Kyoiku:教育費(実質値) Hoiku:0から4歳の幼児1万人あたり保育所在所児数 (1997~2001年の都道府県データを用いて最小二乗法で推計) 14 分析結果 被説明変数: l n( TFR) 推定期間: 被説明変数( 1998-2001) 説明変数( 1997-2000) 定数項 f h) mh/W l n( W f p) f h/W l n( W l n( Kyoi ku) l n( Hoi ku) dummyT dummyO P-val ue t 統計量 係数 0.0003 3.6926 0.9320 0.0388 2.0816 0.2810 0.0000 -5.4983 -0.5755 0.0000 -5.0740 -0.1038 0.0000 4.4612 0.0617 0.0000 -8.0963 -0.2478 0.0000 7.4615 0.2185 自由度修正済み決定係数: 0. 6618 ln TFR 0.932 0.281ln Wmh (0.281 0.576) ln Wfh 0.576 ln Wfp 15 0.104 ln Kyoiku 0.062 Hoiku 0.248dummyT 0.219dummyO 考察 •女性フルタイム賃金率↑・・・出生率↓ ⇒機会費用が大きい •女性パートタイム賃金率↑・・・出生率↑ ⇒機会費用の減少 •保育所整備率↑・・・出生率↑ ⇒就業と育児の両立が可能 •男性フルタイム賃金率↑・・・出生率↑⇒所得効果 •教育費↑・・・出生率↓ ⇒直接費用の増加 16 第3章 政策提言 17 政策提言 • 雇用者が各自で労働時間を決定できる制度の 構築 出産育児期短時間労働制 • 保育サービスの拡充 待機児童の多い地域への重点的整備 18 参考文献 • • • • • • • • • • • • • 高山憲之・小川浩・吉田浩・有田富美子・金子能宏・小島克久「結婚・育児の経済コストと出 生力」人口問題研究;国立社会保障・人口問題研究所、2000;56(4):1-18 米谷信行「我が国の出生率低下の要因分析」フィナンシャル・レビュー;大蔵省財政金融研 究所、1995;(34):68-90 滋野由紀子 松浦克己 「日本の年齢階層別出産選択と既婚女子の就業行動--家計の属 性を考慮したクロスセクション分析」季刊社会保障研究;国立社会保障・人口問題研究所、 1995; 31(2):165-175 滋野由紀子 「出生率の推移と女子の社会進出」大阪大学経済学;大阪大学経済学部、 1996; 45(3/4):65-75 滋野由紀子 大日康史 「育児休業制度の女性の結婚と就業継続への影響」日本労働研 究雑誌;日本労働研究機構、1998;(459):39-49 駿河輝和 西本真弓 「育児支援策が出生行動に与える影響」季刊社会保障研究;国立社 会保障・人口問題研究所、2002; 37(4):371-379 森田陽子 金子能宏 「育児休業制度の普及と女性雇用者の勤続年数」日本労働研究雑 誌;日本労働研究機構、1998;(459):50-62 林宣嗣 「保育サービス事業の現状と課題」季刊社会保障研究;国立社会保障・人口問題 研究所、1996; 32(2):159-166 福田素生 「保育サービスの供給について--費用面からの検討を中心に」季刊社会保障研 究;国立社会保障・人口問題研究所、2000; 36(1):90-101 樋口美雄 「第9章 育児休業制度の実証分析」『現代家族と社会保障 結婚・出生・育児』 社会保障研究所編,1994;pp.181-204,東京大学出版会 阿藤誠 『現代人口学』日本評論社、2000 加藤久和 『人口経済学入門』日本評論社、2001 国立社会保障人口問題研究所ホームページ「第3章 高齢化・人口減少への挑戦」『平成 19 15年度経済財政白書』pp.169~255 御清聴ありがとうございました! 発表者一同 20
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