協働・連携による景観まちづくりについて ~地域と大学連携の意義と展望~

事業の振り返りと
地域大学連携の意義について
2014年3月9日
於 三和荘
成美大学 滋野浩毅
はじめに 本日の内容
 「京の景観パートナーシップ事業」について
 これまでの地域・大学連携事業
 地域での学びを大学での学びにどのように
活かしたか
 地域と大学連携の意義
 謝辞
自己紹介
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1969年生まれ。京都橘大学大学院文化政策学研究科
博士後期課程単位取得退学。博士(文化政策学)。
現在成美大学経営情報学部准教授。他、一般社団法
人京都府北部地域・大学連携機構コーディネーター、N
PO法人四条京町家副理事長、NPO法人きょうとNPO
センター理事、NPO法人北近畿みらい顧問 等。
専門:地域政策学、文化政策学、まちづくり論 他。
著書に『京都の地域力再生と協働の実践』 『京都・観光
文化への招待』『入門都市政策』(いずれも共著)等。
京の景観パートナーシップ事業について
地域における「景観」
 「地域の良さを再発見し、地域への愛着や誇りを育て、
個性を生かしたまちづくりを進めていく手がかり」
 地域における「資産」であり「価値」
 「景観資産」
 「景観パートナーシップ」
景観プラットフォーム
景観資産登録地区・活動団体
一般府民
情報共有
大学・企業
意見交換
学識経験者
資金援助
行政機関
人材提供
プラットフォームの中では
解決できない課題
京の景観パートナーシップ
景観資産登録地区・活動団体(大原地区)
資金・人材
協
定
支援団体(成美大学)
社会貢献の場
大原うぶやの里活性化推進協議会と
成美大学との地域大学連携の経緯
平成23年度
 京都府景観資産と「京の景観パートナーシップ事業」に
ついての説明と打診
 現地見学と初顔合わせ(平成24年2月16日)
大原うぶやの里活性化推進協議会と
成美大学との地域大学連携の経緯
平成24年度
 大原うぶやの里活性化推進協議会と学生との初顔合わ
せ(4/24)
 大原神社例大祭への学生参加(5/3)
 御田植祭への学生参加(5/27)
 「大原質志連携会議」への参加
 「大原うぶやの里活性化推進協議会」と協定締結(10/1)
 収穫祭への学生参加(10/28)
 大原八景のまち歩き(11/8)
 紅葉里親プロジェクト(12/9)
 現地報告会(「里山交流会」において。2/15)
大原うぶやの里活性化推進協議会と
成美大学との地域大学連携
平成25年度
 大原神社例大祭(うぶやの里フェスタin三和)への学生
参加(4/29、5/2、5/3)
 御田植祭への学生参加(5/26)
 「大原質志連携会議」への参加
 「ダーチャバス002号」への学生参加(9/8)
 収穫祭への学生参加(10/27)
 大原神社しめ縄づくりへの学生参加(12/8)
地域での学びを大学での学びにどのように
活かしたのか
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地域に入る⇒観察、気になったことをメモする。わからな
いことはどんどん聞く。写真もどんどん撮る(もちろんプラ
イバシー等には配慮)。
帰宅後、記録をまとめる(フィールドノーツ:調査日誌)
調査明け最初の授業で発見や課題等、それぞれが感じ
たことや考えたことを出し合う(グループワーク)
添削されたフィールドノーツを修正する⇒保存する。
⇒3回生時:「学生ゼミナール大会」で研究成果発表
⇒4回生時:卒業論文等にまとめて提出
学生が見た地域(学生ゼミナール大会時)
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地元の若者はあまり見かけられない
⇒少子高齢化が進んでいる(高齢化率46.58%に加えて地区
内中学生1名、小学生0名(H24年1月))、人手が足りない(過
疎地域)。
若者がいないため、若者のニーズ(欲求)に答えられない。
⇒若者が出て行くだけで、帰ってこない。
お店がない⇒何を買うにしても、自家用車は必須。
大原八景という名所が生かせていない。
特産品の知名度が無い。⇒よりPR活動が必要である。
地域側の受け止め方(平成24年度終了時)
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地域のPRにもつながっていると思う。
(協定を結んでいる)大原の集落のイメージについて率
直に聞きたい
「子どもの声が聞こえない」ということを、学生からの感
想を聞いて改めて気付いた
(70代の方)子どもの世代には「いつまでもここにいたら
あかん。ここに帰ってきても仕事なんてないぞ」と言って
いたことを思い出した
今年度はお祭りやイベントへの参加に留まったが、今後
は企画段階からかかわってほしい
府北部は特に高齢化と若年層の流出が課題
0歳~14歳
実数(人) 割合(%)
15歳~64歳
実数
(人)
割合(%)
65歳以上
実数
(人)
割合(%) 総人口(人)
88,669
35,504
79,652
35,836
30,890
14,006
59,038
20,690
34.8
19,948
8,180
7,013
29.9
49.0
1,028
42.7
23,454
2,410
92,399
8,347
939
33,625
65.0
19,080
20.8
189,609
72,907
舞 鶴 市
12,505
14.1
52,945
59.7
23,181
26.2
福知山市
11,283
14.2
47,112
59.4
20,912
26.4
綾 部 市
4,495
12.6
19,396
54.2
11,884
33.2
京丹後市
8,042
13.6
32,718
55.4
18,263
30.9
宮 津 市
2,285
11.5
10,713
53.7
6,938
与謝野町
3,314
14.1
13,103
55.9
伊 根 町
200
8.3
1,182
(参考)亀岡
市
13,018
14.2
59,738
(参考)宇治
市
(参考)京都
市
計
27,127
14.4
120,688
世帯数
(戸)
63.9
40,917
21.7
1,474,015 681,581
171,090 11.9
42,124 13.6%
935,200 65.1
177,169 57.3%
330,047 23.0
89,219 28.9%
309,007
地域と大学連携の意義
京都府における大学という「資源」
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府内におよそ50の大学・短大が立地
学生数(京都市に限って言えば人口の約1割が大学生)
研究者・インフラ
知の拠点として(COC:Center of Community)
特に地方においてはソーシャル・キャピタル(社会関係
資本)としての大学の存在
京都府における大学という「資源」



平成22年度「大学⇔地域連携アクションプラン」を策定
背景に大学が果たすべき役割としての「地域貢献」が謳
われたこと
地域と大学双方のニーズ把握と、win-winの関係構築が
課題
大学の今日的役割としての「地域貢献」
研究、教育と「地域貢献」
 なぜ、大学が「地域貢献」をする必要があるのか
教育基本法(平成18年12月)
(大学)
第7条大学は、学術の中心として、高い教養と専門的
能力を培うとともに、深く真理を探求して新たな知見を創
造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社
会の発展に寄与するものとする。
2 大学については、自主性、自律性、その他の大学に
おける教育及び研究の特性が尊重されなければならな
い。

大学の教育機能、研究機能、社会貢献機能
「我が国の高等教育の将来像」
(平成17年1月28日中央教育審議会答申より)
 ○大学は教育と研究を本来的な使命としているが、同時に、大学
に期待される役割も変化しつつあり、現在においては、大学の社会
貢献(地域社会・経済社会・国際社会等、広い意味での社会全体
の発展への寄与)の重要性が強調されるようになってきている。当
然のことながら、教育や研究それ自体が長期的観点からの社会貢
献であるが、近年では、国際協力、公開講座や産学官連携等を通
じた、より直接的な貢献も求められるようになっており、こうした社
会貢献の役割を、言わば大学の「第三の使命」としてとらえていく
べき時代となっているものと考えられる。
 ○このような新しい時代にふさわしい大学の位置付け・役割を踏ま
えれば、各大学が教育や研究等のどのような使命・役割に重点を
置く場合であっても、教育・研究機能の拡張(extension)としての大
学開放の一層の推進等の生涯学習機能や地域社会・経済社会と
の連携も常に視野に入れていくことが重要である。

大学はなぜ地域活性化の主要なエンジンになれなかったのか
“教育・研究の対象としての地域”、からの脱却
これまでの地域・大学連携
①大学の使命は研究・教育
新たな事業型地域大学連携
①大学の使命は研究・教育・地域貢献
地域貢献は本来業務ではない
本来業務としての恒常的・組織的体制の整備
②大学の資源の部分的活用
②機関としての大学の資源の総合的活用
個別教員、学部レベルでの対応
地域貢献を目的とした、大学資源の組織的活用
③研究教育目的の一方向的連携
ニーズとのミスマッチ、大学や教員
の事情の優先
③地域のニーズを起点とする連携
双方向的事業の企画と実施、責任体制の明確化
④個別大学の地域連携
活用可能な資源の偏り、大学間整
困難
❹大学の連合体の総合力を背景とする連携
大学群総体の資源の活用、ワンストップ型コンサル、
大学・地域連携コンソーシアム確立へ
⑤不安定な財源
競争的資金への依存、学部・教員
の研究費からの臨時的補てん
❺安定財源の確保
自治体の地域・大学連携基本政策の確立、
文科省の基盤的補助金への算入
⑥地域政策レベルの対応
グローバル化は所与の条件
⑥国際機関との共同プロジェクトの展開
OECDのLEED(人口減少時代における産業振
興・
雇用政策)との共同プロジェクト
出所:富野暉一郎「人口減少時代における事業型地域・大学連携による京都府版地域再生総合戦略構想」2013年。
地域と大学連携の方法や制度
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協定締結
プラットフォーム
フィールドワーク
インターンシップ
PBL(Project Based Learning=課題解決型学習)
キャップストーン(総仕上げの総合的経験プログラム)
ギャップイヤー(高校→大学、大学→社会人の間)
→地域と大学とが連携することによって「地域課題の解
決」と「大学教育改革」を目指す。
成美大学における地域との取組について
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
京の景観パートナーシップ事業(福知山市三和町大原地
区、大江町毛原地区)
協定締結による地域と大学との連携
「田舎力甲子園」
「成美市民大学」
ニューツーリズム研究所(SINT)
「京都府北部地域・大学連携機構」の発足と実践
大学間連携共同教育推進事業

「大学間連携共同教育推進事業」は、国公私立の設置
形態を超え、地域や分野に応じて大学間が相互に連携
し、社会の要請に応える共同の教育・質保証システムの
構築を行う取組の中から、優れた取組を選定し、重点的
な財政支援を行うことにより、教育の質の保証と向上、
強みを活かした機能別分化を推進することを目的として
います。

(参考:文部科学省ホームページ
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/renkei/index.htm)
大学間連携共同教育推進事業
京都での取組
(1)地域資格制度による組織的な大学地域連携の構築と
教育の現代化(代表校:龍谷大学 参加校:府立大、京
産大、橘大、成美大、同志社大、佛大、文教大、龍大)
→地域と大学連携
(2)産学公連携によるグローカル人材の育成と地域資格
制度の開発(代表校:京都産業大学 参加校:府立大、
文教大 、佛大、龍大、京産大)
→京都の経済界と大学連携

地域と大学連携の意義と展望、そして課題
地域にとって学生を受け入れることが持つ意味・意義
 価値観の交流:地元の良さ、改善点の気付き
→「ヨソモノ・ワカモノ・バカモノ」
 交流による元気や生きがいづくり:若者のエネルギ
ー吸収、「ええ格好をする」
 地元PRにつながる
参考:宮原好きネット岩本剛氏2013年3月12日講演録より作成。
地域と大学連携の意義と展望、そして課題
今後の課題
大学側に求められること
 単なる「調査・研究対象」として地域をみるのではなく
、地域の課題に「寄り添う」
 地域主体の一員としての自覚
 地域連携も「業績」として評価する(学内評価ばかり
でなく地域からの評価も)
地域と大学連携の意義と展望、そして課題
地域側に求められること
 学生を単なる「労働力」としてみないこと
 個々の教員やゼミ生を頼るのではなく、「チーム対チ
ーム」の関係による連携
 学生に過度に期待しないこと
地域と大学連携の意義と展望、そして課題
今後の展望
大学・学生
 人との交流や現場での経験や学びによる成長→現
場の教育力
 学生が地域の広報媒体に
 地域との交流や経験による愛着→卒業後訪れてく
れる、仕事として、あるいは居住先としての選択肢に
も?
地域と大学連携の意義と展望、そして課題
今後の展望
地域
 異なる視点や価値観との交流による地域変革
 大学・学生との継続的な交流によって、その背後に
あるネットワークの活用
 受け入れ体制の整備→卒業後訪れてくれる、仕事と
して、あるいは居住先としての選択肢にも?(例:普
段人の住んでいない空き家の活用等)
 信頼関係の構築
地域と大学連携は新たなステージへ
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個別教員・ゼミ単位の地域参加から、組織レベルで
の連携へ
背景に大学の新たな役割としての「地域貢献」
「京都府北部地域・大学連携機構」の発足、大学教
育における地域連携(PBL、キャップストーン、ギャッ
プイヤー等)
自治体等も連携推進を支援→学生は将来の「地域
人材」であり「納税者」でもある
地域再生においては、多様な主体による協働・連携
が不可欠である
ご清聴ありがとうございました。
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