グルコースの変旋光

2002/10/4
グルコースの変旋光
生物機能工学基礎実験
2.ナイロン66の合成・糖の性質 から
木村 悟隆
[email protected]
DL表記
鏡
CHO
H
CHO
CH 2OH
HOCH 2
OH
CHO
H
H
OH
CHO
OH
CH 2OH
HO
H
CH 2OH
D–グ リ セ ル ア ル デ ヒ ド
L–グ リ セ ル ア ル デ ヒ ド
(R)–(+)– グ リ セ ル ア ル デ ヒ ド
(S)–(–)– グ リ セ ル ア ル デ ヒ ド
問. D, Lと右旋性,左旋性(偏光面を右回り,左回り
に回転させる性質)は関係あるか?
旋光度と立体配置

偏光面を右向きに回転する性質のあるもの
(右旋性)を(+),右向きに回転する性質のあ
るもの(左旋性)を(−)で表記する.又,D,
Lは,それぞれラテン語のdexter(右),
laevus(左)に由来する.一般の有機化合物
では,回転角の+-と立体構造のDLは対応しな
いため,D-グリセルアルデヒドを出発原料と
して合成される場合をD,L-グリセルアルデ
ヒドを出発原料として合成される場合をLと
呼ぶ.アミノ酸,糖については,ある付加的
な規則によりDLを決める.現在では,一般の
有機化合物の絶対配置の表記法としては,DL
表記ではなくRS表記が使われる.
糖のDL表記

鎖状構造で書いた時,カルボニル基から
もっとも離れた不斉炭素の絶対配置で示す.
CHO
H
C
O
H
H
HO
CH2 OH
OH
OH
H
CHO
H
OH
H
H
OH
OH
CH2 OH
CH2 OH
D-グルコース
D –グリセルアルデヒド
(R)–(+)–グリセルアルデヒド
旋光度計
ℓ

観測者
試料セル
偏光子
光源
比旋光度
検光子
試料温度
 D
20


l c
ℓ: セル長 (dm)
C :濃度 (g ml-1)
:旋光度 (deg)
測定波長(DはNaのD線,543.2 nm オレ
ンジ色)
グルコースの変旋光

グルコースは結晶ではα形,水に溶かす
と鎖状構造を経由してβ形が増加し,あ
る程度時間が経つと平衡に達する.α形
に比べてβ形の旋光度は小さいので,溶
解後,時間の経過と共に旋光度が小さ
くなる→変旋光.
グルコースの変旋光
H
C H2OH
H OH
HO
O
HO
H
H
OH
H
D -グ ル コ ー ス ( 0.024% )
H
C H2OH
HO
HO
H
H O
OH
H
H
OH
C H2OH
H O
HO
H
HO
H
-D-グ ル コ ピ ラ ノ ー ス
[]D =+18.7°
水溶液中ではβ形の方が安定
H
OH
H
OH
-D-グ ル コ ピ ラ ノ ー ス
[]D =+112.2°
結晶中ではα形
アセタールの生成

例)アルデヒドとアルコールの反応
H
R'
C O
H
H
+
+ ROH
R'
C OR
OH
ヘミアセタール
(不安定,単離出来ない)
H
R'
C OR + ROH
OH
H
H+
R'
C OR
+ H2 O
OR
アセタール
(酸で容易に開裂する)
ヘミアセタール生成の反応機構
H
H
R'
H
+
H
C O
R'
C OH
ROH
R'
C OH
O H
R
H
+
-H
R'
C OH
OR
実測の比旋光度

多量に存在するα−アノマーとβ−アノ
マーの濃度平均値
c
c
[ ]obs  [ ]  [ ]
c0
c0

c0:初期濃度(全グルコース濃度)
c:α−アノマー濃度
c:β−アノマー濃度
[]obs:観測される比旋光度
[]:α−アノマーの比旋光度
[]:β−アノマーの比旋光度
(2)
反応速度

温度,活性化エネルギーとの関係
温度が上昇すると,反応速度はどれだ
け上がるか,模式的に示しなさい.
温度と反応速度
エ
ネ
ル
ギ
ー
E
反応の進む方向
E / RT
k  Ae
k : 反応速度
ΔE: 活性化エネルギー
A : 定数
R : 気体定数

一次反応と反応速度(1)
k
不可逆反応 A→B の場合
d[A]t
 k[A]t
dt
問.上記の微分方程式を解け.t=0の時の
濃度を[A]0とする.
解答
1
d[A]  kdt
[A]
1
 [A] d[A]    kdt
ln[ A]  C  kt (Cは積分定数)
t=0の時,[A]=[A]0を代入するとC=-ln[A]0

[A]  [A]0 e
kt
例題

ある気体Aの熱分解反応を調べたところ表の
ような濃度変化が得られた.速度定数を求め
よ.([A]を反応時間に対して片対数プロット
した時の傾きから求まる.)
反応時間 /
0
2
4
6
8
分
[A] / mol dm-3
5.00 x 10-4
3.38 x 10-4
2.22 x 10-4
1.49x 10-4
1.02 x 10-4
解答

グラフの傾きより
反応速度定数
k=0.0033 s-1
y = 0.00049946 * e^(-0.003332x) R= 0.99991
2年実験 例題
0.001
0.0001
-100
0
100
200
300
reaction time / s
400
500
一次反応と反応速度(2)

可逆反応A
k
k-1
Bの場合
d[A]t
 k[A]t  k1[B]t
dt
平衡状態ではAの濃度は変化しないので
0  k[A]e  k1[B]e

k [B]e

k1 [A]e
[A]e, [B]e :平衡状態
における濃度
一次反応の平衡定数と反応速度

可逆反応 A
[B]e
K
[A]e
k1

k1
k
k-1
Bの場合
K : 平衡定数
[A]e, [B]e :平衡状態における濃度
この学生実験での解析手順

テキスト(10), (11)式を参照してくださ
い.