不正なIPv6アドレスの検出 および削除の信頼性の向上 CS学科 後藤研究室 1G04R144-0 田代 賢治 1 研究の背景 • IPv6とは、アドレス空間が不足しつつあるIPv4 に替わって作られたプロトコルである – IPv4のアドレスは32bitのため、約42億通りのアドレ スしか設定できない – IPv6のアドレスは128bitのため、枯渇の心配がない • IPv6には、IPアドレスを自動的に生成する機能 や、1つのインターフェースに複数のIPアドレス を設定できる機能がある 2 研究の目的① • IPv6を用いた通信では、ホストに間違ったIP アドレスが設定されることがある (補足資料 参考) • 間違ったIPv6アドレスを自動的に削除する方 法が提案されているが、この方法にはいくつ かの問題点が指摘されている 3 既存の方法 • ホストが持つIPv6アドレスを送信元アド レスとして、任意のホストにメッセージを 送り、応答が返ってこなければ送信元ア ドレスが間違っている」とみなして削除 悪意のあるノードによる偽の応答、 ノード間の経路の障害などで正常 な判断ができなくなる恐れがある 4 間違ったアドレスを削除する手順(既存の方法) 送信先アドレス: 2001:200:0:8002:203:47ff:fea5:3085/64 通信要求 インターネット 通信応答 (送信先のIPアドレスが 間違っているため、応答が届かない) アドレス(正しい): 2001:200:125:1000:206:5bff:fe49:24cc/64 こちらを送信元 アドレス(削除対象): アドレスとする 2001:200:0:1000:206:5bff:fe49:24cc/64 応答が返らないため、間違ったアドレスとみなし、 削除する 5 研究の目的② • 今回の研究では、既存の方法において指摘 されている問題点の一部 (スライド4に記述し たもの) を解決し、通信における信頼性をより 高める方法を提案する 主に、正しい送信元アドレスを用いても応答が返 らない場合及び間違った送信元アドレスを用いて も不正に応答が返される場合に対する備え 6 提案した方法① • 複数のノードにメッセージを送る – 少数のノードとの通信経路等に異常が生じ ても正しい送信元アドレスが間違いと誤認 されない – 逆に、少数のノードから不正な応答が返さ れても間違った送信元アドレスが正しいと 誤認されない 7 間違ったアドレスを削除する手順(提案した方法) 不正なアドレスを削除する手順 送信元ノード (IPアドレスの チェックの対象とするノード) 通信応答 インターネット 通信要求 送信先ノード1 送信先ノード2 送信先ノード3 3つのノードのうち、2つ以上から 応答が返ってくれば、アドレスは正しいとみなす 8 提案した方法② • 多数のノードへの通信に異常が生じた場合 及び多数のノードから不正な応答を返された 場合、送信元アドレスが正しいか間違いか判 断できない 送信元ノード メッセージ 送信先ノード 応答 多数のノードへの通信に異常が生じた場合、 送信元アドレスが正しいか間違いか判断できない 9 提案した方法③ • 正しいと送信元アドレスを用いてメッセージを 送信し、返ってきた応答が少ない場合 • わざと間違った送信元アドレスを用いてメッ セージを送信し、返ってきた応答が多い場合 これらの場合、ホストのIPv6アドレスが正しい か間違いかを判断できないため、作業を中断 10 実証実験 • 送信先ノードを3つとし、以下の通りの状況を 作成 – ①通信、応答に異常なし – ②通信経路1つに異常あり – ③通信経路すべてに異常あり – ④1つのノードが不正な応答を返す – ⑤すべてのノードが不正な応答を返す • ①において、動作時間を既存の方法と比較 11 実験結果① • 状況①、②、④において、間違ったアドレスの み削除されることを確認 • 状況③、⑤において、IPアドレスが正しいか 間違いか判断できないとみなし、作業を中断 することを確認 • 提案した方法では、間違ったアドレスの削除 に既存の方法の約3倍の時間がかかることを 確認 12 実験結果② 間違ったIPアドレスの消去にかかった時間) 間違ったIPv6 アドレスの数 実行時間 実行時間 (既存の方法) (提案した方法) 0 0.003s 3.063s 1 1.018s 6.111s 2 2.028s 9.162s 3 3.034s 12.216s 4 4.043s 15.265s 5 5.056s 18.306s 13 まとめ • 本研究にて提案した方法により、以下のことを確認 – 既存の方法と同じように不正なIPアドレスを削除できる – さらに、通信経路や送信先ノードに異常がある場合もアド レスが正しいか間違いかを誤認されない – 間違ったIPアドレスを削除するのに、送信先ノードの数に ほぼ比例した時間がかかる 結論として、複数のノードにメッセージを送って応答 を確認することにより、所要時間は長くなるが信頼 性が高まることを確認 14 今後の課題 • 既存の方法に対して時間がかかる – メッセージのデータ量やタイムアウト時間及び送 信先ホストの数を状況に応じて調整することが望 ましい • ネットワークプレフィックスの変更への対応 – ノードが別のネットワークに移動するとIPアドレス が変更されるため、プログラムを再度実行し、正 しいIPアドレスの情報を更新することが必要 15 おわり ご清聴ありがとうございました。 16 補足資料 (2/2補足) 17 IPv6のアドレス • 128bitのアドレス空間を持ち、通常16進 数の32桁で表される – 上位64bitが、ルータから通知されるネットワーク プレフィックスであり、ノードが所属するネットワー クを識別する時に用いられる – 下位64bitが、各ノードのインターフェースを識別 するときに用いられるインターフェースIDである 18 間違ったIPv6アドレスとは? • 以下の理由により、誤ったネットワークプレ フィックスがホストに設定されることがある – ルータの設定ミスによる間違ったプレフィックスの 通知 – 悪意のあるユーザによる不正なプレフィックスの 送信 – ユーザーによる誤ったIPアドレスの設定 • プレフィックスが間違っているとホストに設定 されるIPv6アドレスも間違ったものになる 19 通信に使用するIPv6アドレスの選択 • 例えば、以下のような場合を想定する • 送信元ノードのアドレス – 2001:200:fee5:1000:206:5bff:fe49:24cc/64 – 2001:200:0:8000:206:5bff:fe49:24cc/64 • 送信先アドレス:2001:200:0:1002:203:47ff:fea5:3085/64 送信元のノードに複数のアドレスがある場合、送信先アドレ スに対し、頭から等しいビット列が長い方のアドレスを送信 元アドレスとして選択する (この場合、上のアドレスは上位 32bit が等しく、下のアドレ スは上位 48bit が等しいため、下のアドレスが選択される) 20
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