2002 GRB meeting 活動銀河ジェットにおける粒子加速: ブラックホールからホットスポットまで 片岡 淳 (東工大・理・物理) <contents> - introduction (予備知識) - sub-pc スケールジェット - 中心ブラックホール - kpc スケールジェット (ホットスポット) - ジェットのエネルギー輸送 活動銀河核(AGN) の特徴 - 約 10 % の銀河に明るい中心核 (活動銀河核:AGN) 明るさ 母銀河 中心核 NGC 4151 半径 - 速い時間変動: 1000秒程度のものまで (太陽系程度) - 強い放射 : 銀河全体の星より、100倍以上明るい 中心核に巨大ブラックホール 相対論的 outflow :ジェット 3C46 (1.7GHz) - AGNの約10% に存在 (radio-loud) ローブ コア ノット 10 kpc ~ 1 Mpc ホットスポット - ジェットを横から見る 電波銀河 - ノットの多くは、 超光速運動 - ジェットの終点 ホットスポット 電波ローブ 超光速運動 t1 = d/c P r q d t2 = r/v + (d - r cosq)/c P’ v t1 bapp= vapp/c = 1 -bbsinq cosq t2 観測から bappが求まれば、Γと q に制限 2 bapp 2 1/2 tanq < Γ > ( bapp + 1) bapp2 - 1 観測的には 5 < G < 20 (光速の 99 % 程度) tgg からの制限からも G > 5 が必要 CGRO EGRETの「発見」 EGRET sky map of AGNs CGRO (1991-2000) TeV detection - 0.1-10 GeV のガンマ線を放出する AGN : 66天体 - わずかの例外を除き、すべて「ブレーザー」 TeV までの粒子加速 - >1012 eV でも 6 天体 ブレーザーの特異性 4C38.41 コア ジェット 観測者 G ~ 10 1ミリ秒角 - ジェットはあるが、短い(電波でも殆ど点源) ジェットが観測者の視線方向を向く - 活動銀河の中で、1%を占めるにすぎない (~ 200天体) 相対論的ビーミング d = {G (1-b cosq)}-1 ビーミング因子を定義すると便利 ブレーザーではq ~ 1/G ゆえ d ~G~10 1/G 観測者 (1) 振動数のシフト (2) 時間の収縮 nobs ~ njet d tobs ~ tjet /d, (3) 立体角の圧縮 Wobs ~ Wjet /d 2 放射輝度 ∝ n t -1W -1 Lobs ~ d4 Ljet ~ 10 4 Ljet ブレーザー天体の放射 49 QHB 1000 HBL γ線の卓越度 LBL 100 10 1 0.1 12 Fossati et al. 1997 Fossati et al. 1997: Kubo et al. 1998 14 16 log (nLE) 18 Ghisellini et al. 1998 - 二山のピーク構造 (電波~光学/X: X~ガンマ線) 同じ電子による、シンクロトロン放射/逆コンプトン放射 - 明るいものほどピーク位置が低い Jet 内部の物理量– HBLの場合 “知りたい”物理量 - 放射領域のサイズ: R - 磁場の強さ : B - ビーミング因子 : d - 加速電子の分布 (最高エネルギー gmaxmc2 個数密度; ベキ) gmax Mrk 501 ? シンクロトロン放射 何かの 逆コンプトン 放射領域サイズの見積もり (ASCA long-look) 光度曲線 パワースペクトル 1 day Mrk421 Mrk501 PKS2155-304 Kataoka et al. 2001 Tanihata et al. 2001 1 day - “毎日”起こるフレア : tvar ~ 105 [s] - PSDのベキが steep ( t < tvar) R ~ ctvard~ 1016 [cm] “種光子”の源 (HBL) Lsync = 4 pR2 c d4 Usync ~ 1044 [erg/s] Usync ~ 4×10-4 ( 10 2 ) [erg/cm3] d これは、他の“種”となり得る光子より密度がずっと高い e.g., UCMB~ 4×10-13 [erg/cm3] Uext < 10-5 [erg/cm3] HBL のガンマ線は、シンクロトロン光子の叩き上げで出る (Synchrotron self-Compton: SSC) LSSC Usync Lsync = UB B ~ 0.1 [G] nsync = 1.2×106 B d gmax 2 ~ 1018 [Hz] gmax = 105-6 種光子の源 (QHB の場合) Kubo 1997 ERC シンクロトロン SSC - SSC だけでは全く足りない - Usync ~10 –2 [erg/cm3] < Uext ~10-1 [erg/cm3] External Radiation Compton (ERC)が卓越 電子の最大加速エネルギー 磁場が強いので(B~0.1G)、冷却と加速の釣り合いで決まる tcool(g) = 3me c 4 (UB + Usync + UBLR ) sT g ∝ g -1 tacc(g) ∝ gn (n > 0 の定数) gmax ∝ (UB + Usync+ UERC) –1/(n+1) “暗い”ブレーザー : gmax = 10 5-6 “明るい”ブレーザー : gmax = 10 2-3 暗い天体のジェットほど、ピュアな加速環境を提供 ブレーザー放射のモデル化 近年の観測から分かったこと - 放射は R~1016 cm の領域で生じる。conical ジェット(q~1/G) を仮定すると、B.H から 1017-18 cm の距離 (sub-pc)に相当 - 多くの電波銀河でジェットが遥か遠方まで伸びていることを 考慮すると、sub-pc で散逸するエネルギーは、ごく僅か - sub-pc ジェットでは磁場が強く、放射と冷却の釣り合いで 電子の振る舞い(時間発展)が決まる 新しい時間発展モデルの構築へ Step (1) : 内部衝撃波 D0 ~ Rg d ~ D0 B.H. shock G1 R ~ 100 D0 ~ 1016 [cm] G2 Gm - ブラックホール近傍 (~ Rg) から、速度分散をもつシェル放出 - 衝突前後で、エネルギーと運動量が保存 - 衝突で生じた内部エネルギー 電子のランダム運動 フレアの生成 Tanihata 2002 - Gm = 10, sG = 0.005, D0 = 3×1013 [cm] - ブロッブが主に衝突する距離は D ~ 103-4 D0 = 1017-20 [cm] - 最も近傍でぶつかったものが、1日スケールのフレアに フレアの数 1日スケール のフレア 内部エネルギー フレアの時間スケール (ksec) log D (cm) Step (2) : 時間発展 SSC モデル escape: tesc B=0.1G R=1016cm … Kataoka 2000 Gm Jet axis 観測者 放射領域 (tcool ) 加速領域 (tacc ) 電子の時間発展を逐次的に解く Ne(g, t) N (g, t) = [(gsync + gSSC) Ne(g, t)] + Q(g, t ) - e tes g t c シンクロトロン SSC 加速領域 からの注入 escape シミュレーションの一例: Mrk 501 - ジェットパラメータ B ~ 0.1 [G], d= 10 R ~ 1016 [cm] gmax ~ 3×105 フレア時 gmax ~ 6×106 - 変動は、 gmax に対応する X線とTeVガンマ線で最大 - X線とガンマ線の相関を、 完全に再現 PKS2155-304の時間発展 Kataoka et al. 2000 ここまでのまとめ - sub-pc スケールジェットの放射機構については、ほぼ 完璧に理解できた (…と勝手に自負してる ) - ジェットのもっと根元、あるいは先端についても、最近 理解が急速に進んでいる 目標: 「ジェットを“丸ごと”理解する」 ジェットをもつ活動銀河の中心ブラックホール kpcジェット、ホットスポットの放射機構 AGNブラックホール質量の見積もり ブラックホールの基本的な物理量: 質量と降着率 - 降着率の指標: - 質量の指標: AGNの「明るさ」 ??? 質量の見積もり – (i) : 簡単かつ明解な方法 AGNの明るさと、変動の時間スケールを測る LAGN M tvar 9 ) < M < 10 ( 4 ) 44 10 [erg/s] 10 [s] 106 ( エディントン光度 シュワルツシルド 半径 3C273 の例 - 最初に見つかったクェーサー天体 ( z= 0.16 ) - ブレーザーにもかかわらず、降着円盤の放射も見える 6×108 M < M < 3×1010 M synchrotron Big Blue Bump 不定性が大きい SSC or ERC Kataoka et al. 2002 質量の見積もり – (ii) 時間変動のスケーリング則 (e.g. Hayashida et al. 1998) t2 t1 Stellar-mass B.H. 活動銀河 B.H. M1 : M2 = t1 : t2 を仮定する たとえば Cyg X-1 では t1 ~ 1 ms 活動銀河では t2 ~ 10 4 s M2 = 108 M - 大前提の“仮定”の検証が困難 - ビーミングしてると成り立たない 質量の見積もり – (iii) : M – s 相関法 Gebhardt et al. 2000 バルジ輝度 vs 質量 速度分散 vs 質量 - ブラックホール質量と、母銀河の星の速度分散に相関 MBH = (1.5 ± 0.2)×108 (s/200)4.70.5 M - ブレーザーを含め、あらゆるAGNに適用可能 ブレーザーのブラックホール質量 電波銀河 Falomo et al. 2002 NGC 5831 ブレーザー Mrk 501 108 109 - 電波銀河もブレーザーも、質量は同程度 (108-9 M ) - セイファートより、だいぶ大きめ (その割に暗い?) ex. Mrk 421 … (3.2 ± 1.5)×108 M Mrk 501 … (8.5 ± 3.2)×108 M Large スケールジェットからのX線放射 - z= 0.1 の AGN … 1” = 2 kpc Chandra では分解可能 (18 天体) PKS0637-752 PKS1127-145 Cen A pictor A 3C273 3C303 のホットスポット - z = 0.14 の電波銀河(BLRG)。 2001年3月、15 ksec 観測 - ホットスポットの サイズが測られている (2.3’’×3.1’’ ~ 8 kpc) - ジェットの終点ゆえ、ビーミングしていない Kataoka & Edwards 2003 電波 X線 (chandra) 45 kpc diffuse halo? bgd QSO Hot Spot ノット ホットスポットからの非熱的放射 - X線と電波は、滑らかにつながらない 別の放射機構 Usync ~ 8×10 -14 [erg/cm3] < UCMB X線はCMB の叩き上げで出る chandra UCMB LX Lradio = UB 1.5 < B < 6.7 mG シンクロトロンのピークは 1014-16 Hz にあるので 電子の加速エネルギー gmax が求まる ホットスポット内での加速 - 電波銀河のホットスポットは、磁場が弱く (B ~10 mG) 領域サイズが大きい (R > 1 kpc) - sub-pc ジェットに比べ、放射冷却が殆ど効かない 電波銀河(hot spot) ブレーザー Log gmax (sub-pc) 3C303 - ブレーザーを超える 加速器 - 10-100 TeV までの 加速が可能 Log B [G] 電子の放射冷却時間 3me c tcool(g) ~ 4 U CMB sT g = 7.5×1019 gmax-1 [sec] Log 冷却時間(秒) 電子の走行可能距離 3C303 d ~ ctcool ~ 10-70 kpc ホットスポットの内部 (R< 10 kpc)で十分 拡散可能 Log 放射領域サイズ (pc) ジェットの“運ぶ”エネルギー - Black Hole: 108-9 M Ledd = 1046-47 [erg/s] しかし、クェーサーを除いては意外に暗い ( Lrad << Ledd) - Sub-pc スケール Lkin = pR2c GBLK2 Ue = 1042-45 [erg/s] - ホットスポット Lkin = pR2c Ue = 1046-48 [erg/s] Ledd ~ Lkin(@hot spot) >> Lkin (@sub-pc) エネルギーが sub-pc, hot spot で保存しない? 熱的粒子から非熱的粒子へ - ブラックホール近傍からは、Ledd と同程度 のエネルギーがジェットとして噴出す E熱的 電子の個数 1 - sub-pcでは、内部衝撃波で解放される エネルギーは全体の1% 以下 10-2 - ホットスポット では、外部衝撃波 で 輸送エネルギーの大部分が解放 10-4 10-6 10-8 1 10 102 104 103 電子のローレンツ因子 105 106 結論 - ブレーザー天体の放射は、sub-pc 領域で生ずる。 (108-9 M のブラックホールでは 103-4 Rg に相当) - sub-pc スケールの放射は、時間変動の仕方を含め SSC/ERCモデルで良く説明される。 - 電波銀河の大規模ジェット・ホットスポットは効率の良い 粒子の加速源である。 ジェットによって輸送された大部分 の粒子は、ここで初めて放射を行う。
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