東北地区大学図書館協議会 平成20年度合同研修会 基調講演 図書館員のスキルアップを図るた めに - 司書の専門性から図書館員の SDとFD を考える - 年6月26日(金) 平成21 本日の主な内容 1.はじめに 2.司書の資格と専門職制の脆弱性 3.司書の専門性と大学の図書館員に必 要 なスキル 4.専門性を高めるために 5.ま と め 1.はじめに ◆ 大学図書館を取り巻く環境が激変 1. 18歳人口の減少 ①大学における財政の緊縮 ②業務のアウトソーシングの推進 2.第三者評価による大学改革の促進 ①学生による授業評価 ②FD・SDへの取り組み ◆ 大学図書館を取り巻く環境が激変 3.カリキュラム改定や情報リテラシー教育の 進展 ①蔵書構成の再点検、図書選定に変化 ②図書館利用指導充実の要求 4.情報通信技術の発展、資料のデジタル化 ①電子ジャーナルの普及 ②期間リポジトリーの開設・コンテンツ構築 ◆ 大学図書館を取り巻く環境が激変 5.資料(情報)利用行動の変化 ①図書館利用者数の減少 ②館内のICT環境整備の必要性 ③図書館員のICTスキル向上の必要性 6.学生の学力低下問題 ①従来とは異なった学習の場の提供 ②学習支援センターやラーニングコモンズ 等の欲求の高まり ◆ 大学図書館には課題が山積 今日、教育のユニーバーサル化や研究の高 度化への対応など、大学が取り組まなければ ならない課題が増大。 大学図書館は、学術・研究に必要な情報資 源の確保や提供の面から支えるとともに、急 速な資料(情報)のデジタル化への対応等、 新たな任務や役割を遂行しなくてはならない 2.司書の資格と専門職制の脆弱性 ◆司書の資格 図書館法第5条に規定 大学の司書課程を修了するか司書講習で 必要な単位(20単位)を修得し、大学(短大 を含む)を卒業したもの 1.司書の雇用・人事での問題点 ①必ずしも司書の資格を有した者を正規 職 員に採用する人事制度が確立していな い ②派遣社員でまかなったり指定管理者制 度 を利用し業務を委託している ③原則として退職まで司書としてのみ勤 2.司書養成の問題点 ①司書講習20単位で誰でも取れる資格 ②図書館法制定以来統一的なカリキュラ ムが 作成されていない。現在の大学図書館 の状 況に対応できる人材の育成が必要 ◆ アメリカの例 ①アメリカ合衆国図書館協会 (ALA) に よっ て認定されている専門大学院の課程を 修了しなければ、司書資格は得れない ②大学図書館勤務の司書の場合は、教員 に 準ずる教育研究専門職としての立場が 確 ◆ 日本での新たな試みの動き 日本図書館情報学会 「図書館員(情報専門職)の養成に向け た図書館情報学教育体制の再構築に関する 総合的研究 LIPER(Library and Information Professions and Education Renewal) 」 プロジェクトが設定 大学における司書・司書教諭教育の現状を把握 することを目的に、司書資格・司書教諭資格を 開設している日本の全大学を対象にアンケート 国立大学図書館協会 「人材委員会」を2004年度から設置し、 職員の採用、養成、能力開発、処遇等のあ り方について検討 日本医学図書館協会 「ヘルスサイエンス情報専門員」の資格認 定制度が整備され、2004度より認定を 開始 3.司書の専門性と大学の図書館員 に必要なスキル ◆ 司書(図書館員)の専門性とは何か ①利用者が求める資料(情報)の情報源を提 供 すること ②必要な情報を入手するための手助けを行う こと ③上記のサービス提供するために資料(情報) を 収集し、体系的に分類・整理し、保存・管 中核となる知識・技術領域 ①既存サービス 二次資料・参考図書、 資料目録法・オンライン目録システム 参考調査サービス、情報検索技術 図書館・文献利用教育、閲覧・貸出サービス ②図書と図書館 古典籍、資料保存、メディアの歴史、障害者サー ビス 図書館建築、図書館史、書誌学 注: LIPER大学図書館調査の大学図書館員に必要な知識・技術より引用 中核となる知識・技術領域 ③新しいサービス ネットワーク情報資源、逐次刊行物 電子ジャーナル 官庁刊行物・特許資料 その他の非図書資料および利用機器 ドキュメントデリバリーサービス 図書館業務システムの運用、管理 中核となる知識・技術領域 ④資料組織化 メタデータ、分類法・件名法 索引法、抄録法 二次資料/DB作成 ⑤コレクション形成 分野別専門資料、資料選択 コレクション構築と評価 主題専門知識 実現環境の知識・技術領域 ①図書館の基準やネットワーク 知的財産権・著作権、 図書館ネットワーク・図書館協力、 利用者のプライバシー、 図書館関係法規・基準 ②情報・出版流通 知的自由・検閲、外国大学図書館事情、 出版流通/学術情報流通、 高等教育事情 汎用的・移転可能な知識・技術領域 ①コミュニケーション カスタマケア、広報活動 ウェブコンテンツの構築・管理 プレゼンテーション技術 文書・企画書の作成、会話・接遇 研究調査法、利用教育などにおける教授 法 ②情報技術 データベース等の運用・管理 ネットワークの運用・管理 プログラミング ③経営管理 経営理論・手法 大学行財政 予算管理・会計 ④外国語(英語、英語以外) ◆ 大学におけるFDとSD ファカルティ・ディベロプメント (FD: Faculty Development) 文科省のFDの定義 「教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織 組織的な取り組みの総称」 事務職員の場合は スタッフ・ディベロップメント(SD:Staff Development) ◆ 司書(図書館員)の専門性を考えると ①大学図書に求められている高度な学術・研究 に 対応したサービスを行うためにはやはり専門 的 知識や技術が必要 ②単に一般事務職員としてのスキルだけでは不 十分 ③図書館職員に必要なスキルを司書の“専門性” と 言うことができるのではないか 5. ま と め ◆図書館員のスキルアップを図るには 1.図書館員は、教員ではないが、利用指導 や情報リテラシー教育に深く携わってい る 2.担当する図書館員は、スキルアップの必 要性 を痛感している 3.スキルアップを必要とする図書館員に研 修の 5. ま と め 4.必要な研修には、業務を休んででも参 加で きる体制作りが必要 5.一般事務職としてのSDだけではなく、 教員 対象のFDにも参加できる機会や体制を 6.図書館員の専門性を高めるため(スキ ルアッ プ)には “SD+FD” で取り組もう! 引用・参考文献一覧 文部科学省科学研究費補助金研究成果報告書『情報専門職の養成に向けた図書 館 情報学教育体制の再構築に関する総合的研究』 2006年 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jslis/liper/report06/report.htm 逸村裕,小山憲司,齋藤泰則,鈴木正紀,高橋昇,戸田愼一,永田治樹著 「「司書資格」と大学図書館員に必要な知識・技術-LIPER大学図書館班報告 」 『日本図書館情報学会,三田図書館・情報学会合同研究大会発表要綱 2005 』, 慶應義塾大学,2005-10-22/23,p.69-72. 小山憲司,鈴木正紀,永田治樹,逸村裕,齋藤泰則,高橋昇,戸田愼一著 「大学図書館における情報専門職に関する調査: LIPER大学調査班質問紙調 査」, 『2005年度日本図書館情報学会春季研究集会発表要綱』, 専修大学,2005- 05-18, p.35-38. 永田治樹,戸田愼一,逸村裕,小山憲司,齋藤泰則,鈴木正紀,高橋昇著 「大学図書館における情報専門職に関する調査: LIPER大学調査班中間報告 」
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