身体拘束について(講義)

平成27年度 埼玉県障害者虐待防止・権利擁護研修
身体拘束の廃止と
支援の質の向上に向けて
1. 身体拘束の廃止に向けて
(1)基本的考え方
障害者虐待防止法では「正当な理由なく障害者の身体を
拘束すること」は身体的虐待に該当する行為。
やむを得ず身体拘束をする場合であっても、その必要
性を慎重に判断するとともに、その範囲は最小限にしなけ
ればならない。
判断に当たっては適切な手続きを踏むとともに、身体拘
束の解消に向けての道筋を明確にして、職員全体で取り組
む必要がある。
2. 身体拘束に対する考え方
(2)身体拘束とは
身体拘束の具体的な内容としては、以下のような行為が該
当すると考えられる。
①車いすやベッドなどに縛り付ける。
②手指の機能を制限するために、ミトン型の手袋を付ける。
③行動を制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
④支援者が自分の体で利用者を押さえつけて行動を制限する。
⑤行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
⑥自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。
やむを得ない場合の「身体拘束」について
自傷行為、他害行為、パニックなどの行動障害に対し
て、障害者(児)自身、周囲の者等の保護のため、緊急
やむを得ず障害者(児)に強制力を加える行為は認めら
れる場合があるが、その個々の利用者への適応の範囲・
内容については、施設内のガイドライン等を作成して共
通認識に基づいて対応を図ること。
(平成17年10月20日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
支援の工夫のみでは十分に対応できないような、一時
的事態に限定される。
安易に緊急やむを得ないものとして身体拘束を行わな
いように、慎重に判断することが求められる。
ア やむを得ず身体拘束を行う3要件
①切迫性
身体拘束を行うことにより本人の日常生活等に与える悪影
響を勘案し、それでもなお身体拘束を行うことが必要な程度
まで利用者本人等の生命又は身体が危険にさらされる可能性
が高いことを確認することが必要。
②非代替性
身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がな
いことが要件。利用者本人の状態像等に応じて最も制限の少
ない方法を選択することが必要。
③一時性
身体拘束その他の行動制限が、必要とされる最も短い拘束
時間を想定することが必要。
全てに当てはまっても、その判断は組織的にかつ慎重に行うこと。
イ やむを得ず身体拘束を行うときの手続き
①組織による決定と個別支援計画への記載
・組織として慎重に検討・決定する必要。
・個別支援計画に身体拘束の様態及び時間、緊急やむを
得ない理由を記載。
・個々人のニーズに応じた個別の支援を検討する事が重要。
・日常的な支援が記載されている書式に盛り込んであること
も重要。
②本人・家族への十分な説明
・利用者本人や家族に十分に説明をし、了解を得ることが
必要。
③必要な事項の記録
・身体拘束を行った場合、その様態及び時間、その際の
利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由など
必要な事項を記録。
仕事を振り返ってみて、こんな場面はどうでしょう?
・手足の車いすベルト
・車いすのテーブル
・手の届かない場所にカギがある部屋
・つなぎのパジャマ
・不必要なベッド柵
などなど・・・
介護する側の「しょうがない」「そのように教わったか
ら」「昔からそうだった」「家族からの依頼」など、理由
はともかく、私達が「?」と思わずに日常化することこそ
が更に深刻な虐待事案の第一歩となる危険がある。
適切な支援への取り組み
利用者の障害特性や個別ニーズを把握する為には、
アセスメントが重要。
a.好きなこと苦手なことの把握
b.得意なこと・強みと弱み
c.コミュニケーションレベル
d.ひとつひとつの場面や状況をどのように理解しているか?
e.「何が」わからないのか?
f.どのような刺激に敏感または鈍感か
g.健康上の課題、合併する障害
真のニーズに基づいた支援
大切な事は「問題行動」に焦点を絞った支援だけでなく、
利用者の強み・長所など、ポジティブな面を探り出し、そこ
から真のニーズを発見し、支援を進めることが大切。
この資料は、厚生労働省社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課 地域移
行・障害児支援室より平成24年10月1日付に事務連絡がありました 「障害者福祉施
設・事業所における障害者虐待の防止と対応の手引き」(施設・事業所従事者
向けマニュアル)を引用し作成しております。
ご清聴ありがとうございました