政府系ファンド

06F1624 清水譲
はじめに
 1 政府系ファンドとは何か?
 2 コモディティを財源とした政府系ファンド
 3 外貨預金を財源とした政府系ファンド
 4 年金資金を財源とした政府系ファンド
 5 財政剰余金を財源とした政府系ファンド
 まとめ
 参考資料


近年、「政府系ファンド」に注目が集まってい
ます。昨年、私は「投資ファンド」について発
表をしました。その時は「政府系ファンド」につ
いては触れなかったので、今回調べてみたい
と思い簡単ではありますが、調べてみました。

まずファンドの全体像を見てみると、全て、投資
家から資金を集め、その集めた資金を何らかの
事業もしくは資産に投資し、投資先から得られる
収益(配当など)や他者への売却もしくは上場な
どによる利益を得て、その利益を最終的には投
資家に還元している点で共通している。言い換
えれば、ファンドは金融仲介機能をはたしている
と言える。
その中で政府系ファンドにはほかのファンドとは
大きく異なる点がある。それは、一般の投資家か
ら資金を集めることがないという点である。
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


政府系ファンドは、国富ファンド、ソブリン・ウエルス・ファンド
(SWF:Sovereign Wealth Fund)などとも呼ばれ、一般的には政
府が関与している何らかの資産運用組織や基金を意味する。
ここでの「政府」とは、国家、もしくは地方公共団体などを指す。日
本で政府系ファンドと言った場合には、中央省庁(財務省など)や
中央銀行である日銀、または都道府県などの地方自治体が設立し
た資産運用組織が当てはまる。
政府系ファンドを設立している国は、ほぼ例外なく経常収支と貿易
収支も安定して黒字になっている。
政府系ファンドの運用実態については、国家機密であることが多く、
運用ポートフォリオなどの開示はほとんど行われていない。一方で、
その運用規模は非常に巨大なため、世界のマーケットで大きな影
響を及ぼす存在になっている。
現在、「政府系ファンドとは何か」という明確な
定義は確立していない。
 広い意味でとらえれば、外貨準備高や公的年
金基金も含まれることになる。また、そもそも
「ファンド」ではなく、国営企業などが政府系
ファンド的な側面を持っているため、一概に政
府系ファンドを定義することは難しい。


政府系ファンドの特徴(モルガンスタンレーによる)
①公的であること
②外貨通貨へ高い資金配分をしていること
・外貨による収入を財源として、そのまま外貨建ての資産に投資している
ことが多いということである。
③明確な債務がない
・具体的に言えば、余剰資金を財源としているため将来、その資金を取り
崩す必要がなく、また借入金もないため将来の返済もない。(年金基金
は例外)
④リスク許容度が高いこと
・リスクに対して許容できる程度が高い、つまり積極的にリスクを取りに行く
こともありうるということもありうる。これは通常の投資戦略とは異なった観
点からもリターンをとらえる傾向があるから。
⑤長期投資であること
・政府系ファンドは長期的な視点に立ってリターンを獲得する投資戦略を
とることが多い。
財源
具体例
地域、国
コモディティ(資源)
資源輸出収入
生産物分与協定
資源輸出企業からの税収
中東地域 ノルウェー
ロシア など
外貨準備
外貨準備高の一部
中国など
年金資金
年金加入者の支払い
オーストラリア
アイルランド など
財政余剰金
国有企業の売却収益
財政黒字
シンガポール
ドバイ など
形態
概要
具体例
ファンド(基金) 政府が出資するファンド
政府が出資した投資ファンド
政府組織が関与する年金基金
国有企業
政府が出資する企業
政府が出資して設立した公企業
私企業との共同出資による第三セクター
政府当局
省庁
中央銀行
会計組織体
政府における投資目的の省庁
国家における中央銀行
金融当局における特別会計
ポートフォリオ分散系
• 従来のほとんどのファンドはこの投資戦略
• 国際的に広く分散された多数の銘柄に対して投資を行い、安定的な利回りを追
求
企業買収系
• 近年、非常に注目を集めている
• 政府系ファンドが存在する国家全体から見れば、実は分散投資になっているとも考
えられる
• 自国内で育っていない産業に属する企業に対して投資を行うことで、自国産業の
育成に繋げ、国家全体の産業構造を分散化させるという投資戦略
→投資リターンだけでなく、産業が育成されれば、同時に税収の拡大が拡大できる


コモディティとは、石油・石炭・天然ガスなどのエ
ネルギー資源、農産物や非金属などの一時産品
であり、限りある実物資産のこと。
21世紀はコモディティの時代とも呼ばれている。

投資目的

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
①国家収入の安定化
資源国は資源から得られる収入に依存しているため、その価格変動による影
響が大きい。そのため長期的な運営を行うのが難しい。そこで価格変動が相
関しない株式などをポートファリオに組み入れて、安定化を図っている。
②次世代に向けたリターンの先送り
資源は有限であるため永遠に産出されるわけではない。そのため長期的なス
タンスから、資源の売却益でインカム・ゲインを永続的に得られる資産に投資
を行う。つまり、資源から得られるキャピタル・ゲインを、ほかの資産からのイン
カム・ゲインに変換する。
③国内産業育成とインフラ開発
これが最も重要な課題であり、投資目的である。資源国は国内産業が成長し
にくい構造になっているのでインフラ整備が発展途上である。そのために資
源から得られる莫大な収入を、海外企業を買収するなどして、その企業が持
つノウハウなどを手にいれ自国産業の発展に活用する。
投資戦略


分散型の投資
企業買収などを行う産業誘致型の投資
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アブダビ投資庁


1976年設立。運用資産総額8750億ドル。アブダビ投資庁は、アブダ
ビ首長国において設立され、すでに30年以上の歴史を持つ老舗の
政府系ファンドである。その財源は原油関連収入であり、投資対象も
幅広く、政府系ファンドの中では比較的安定的な利回りを追求する政
府系ファンドであると言われている。
ムバダラ開発公社

2002年設立。運用資産総額170億ドル。ムバダラ開発公社はアブダ
ビ首長国において設立された企業形態の政府系ファンドであり、アブ
ダビ投資庁と同じく、原油関連収入を財源とする。アブダビ投資庁と
の大きな違いは、その投資スタンスであり、非常に積極的な投資を展
開している。
その目的も国内産業の育成であり、アブダビ首長国において育成し
たいと考えている業種・企業に対して買収・合併を勧めているとされて
いる。具体的には、自動車産業及び航空産業への投資が多く、イタリ
アのフェラーリなどにも投資を行っている。

外貨準備金系ファンドはサブプライムローン問題時にUBSや
モルガン・スタンレーなどの欧米の投資銀行に出資して注目
を集めている。それだけではなく、日本の商業ビルやホテル
へ投資をしているファンドも存在する。
シンガポール政府投資公社(GIC)の主要な対日不動産投資
投資先
投資年
概要
汐留シティセンター
1999年
三井不動産と共に1,382億円で土地を落札
川崎テックセンター
2001年
約150億円で購入
マンション7棟
2001年
約150億円で購入
品川シーサイド2棟
2004年
約425億円で鹿島建設から購入
福岡ホークスタウン
2007年
約1,000億円で米系ファンドから購入
ウェスティン東京
2008年
約770億円で米系投資銀行から購入

外貨準備とは、通貨当局(日本であれば財務省)が為
替介入に使用する資金であるほか、経済危機などに
おいて海外に対する外貨建の借金の返済などが困難
になった場合に使用する準備資産である。その内訳
は大きく分けて、(1)外貨資産(預金、証券等)、(2)
IMFリザーブオプション*、(3)SDR*、(4)金となって
いる。
*IMFリザーブポジション・・・IMF加盟国がその出資金に応じて, IMFか
らほぼ無条件で借りることのできる相当額。
*SDR・・・Special Drawing Rights(特別引出権)は,金や外貨を補充
する国際流動性として,1969年にIMFによって創設された準備資産。各
国の出資割当額に比例してSDRが配分され,その国の国際収支が悪化
した場合等にSDRと引き換えに他国から外貨を入手することができるほ
か,取引や決済にも直接使用できる。

経常収支と貿易収支の黒字による国内への外貨
流入を自国経済に対する深刻な脅威ととらえ、
積極的な為替介入を行っているという共通点が
ある。
*為替介入…正式には外国為替平衡と言う。急激な為替変
動緩和や目標としている為替水準との隔離を是正し、政府の
経済政策と合致する安定した市場環境を実現するために、
政府が通貨の売買を行うこと。一般的には、政府が市場のト
レンドと反対の売買行動を取ることで達成しようとする。政府
の売買の原資は、借入で調達することが多い。

①不安定な投資期間
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②流動性を重視したポートフォリオ


外貨準備をどの通貨で保有するか自体が、その国の貿易関係や決
済通貨の比率などから通貨政策上固定されているから。
④ミドルレベルでの投資利回り

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外貨準部自体の安定性が低いため
③通貨分散投資への制約


前提となる経常黒字を生み出す経済環境が持続可能であるかという
課題があるため、運用機関の目安を見極めるのが非常に難しい。
多くの場合、外貨準備の元手が政府の借入であるため、この借入に
対して必要な支払利息を上回る水準での運用実績が必須になる。
⑤国策投資の必要性

政府ファンド特有の行動として、政府や自国経済にとって望ましい投
資活動を行うことが期待されてしまう。

シンガポール政府投資公社

1981年設立。2008年、 モルガン・スタンレーによ
ると運用資産総額は3,300億ドルである。具体的
な運用内容は公表されていないが、ポートフォリ
オは、40~50%を株式、30~40%を債権、10%
を不動産、5~10%をベンキャー投資と現金に振
り分けているらしい。また2007年に中国が政府系
ファンドを設立した際に、参考にしたといわれてい
る。

公的年金基金のように、将来に対する社会保障
を機能させるために設立されたファンド。
→運用目的は将来の国民の年金給付用の資金を確保
するということ。



一般的にはソブリン・ペンション・ファンド(SPF)と
呼ばれる。
SPFに関しては、政府系ファンドの中でも高い水
準で情報公開を実施しているファンドが多い。
SPFが本格的に設立されたのは、第二次世界大
戦後の復興期からであり、その歴史は各種ファン
ドの中でも比較的長い方である。

ソーシャル・セキュリティ・リザーブ・ファンド(SSRF)



社会保障制度の中に組み込まれたファンド。(例:日本の
国民年金の給付財源)
国民が将来老齢になった際に、一定水準以上の安定的
な生活を送ることを保証するために設立されたファンド
ソブリン・ペンション・リザーブ・ファンド(SPRF)



社会保障制度自体から独立して管理・運用されている。
設立は政府であるが、管理・運用については、政府が直
接行ったり独立した組織に任せたりと様々。
財源は政府の経常黒字からであり、国民から直接保険料
のような形で徴収することはない。

社会的責任が非常に大きいため、従来から保守的な
投資戦略をとってきた。一般的に国内資産で運用を行
い、主に債券投資を行ってきた。
しかし
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現状の制度では社会の成熟化・少子高齢化のスピー
ドに対応することができず、将来的に必要な資金が不
足すると想定された。
そのため最近の傾向として

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①債権投資の減少と株式投資の増加
②オルタナティブ投資への取り組みの開始
③海外の資産クラスへの投資の増加

オーストラリア将来資金

2006年設立。運用資産は約500億ドル。設立目
的は2020年頃までの公務員の退職金の財源とし
て位置づけられている。運用方針が特徴的であり、
海外株式への投資比率が13%と比較的高いこと
から、SPFの中ではより積極的な運用を目指して
いる新しいタイプのファンドである。また資産の
60%は現金で保有したままである。

他の財源と比較して極めて数が少ない。


例:シンガポール、ドバイ首長国、マレーシアなど
国家としての財政黒字や、国営企業の民営化
による収入を源泉としている。

ドバイ・インターナショナル・キャピタル
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

2004年設立。運用資産総額250億ドル。一見すると
コモディティを財源とした政府系ファンドに思うかもし
れないが、実際はドバイ首長国は資源国ではない。
そこで金融や物流などの産業立国を目指している国
である。
そのため財源は、金融センターなどの経済特区や民
間企業から得られる税収などを源泉としている。投資
に関しては借入金を活用してレバレッジ投資を行って
いると言われている。
その結果として、投資資金には将来債務(借入金の
返済義務)が存在し、他の一般的な政府系ファンドと
は異なり、短期的な投資になってしまうと考えられる。

今回「政府系ファンド」について調べてみて、21
世紀に入って急激に存在感を表すようになって
きており、世界経済の中においても重要なプレイ
ヤーであることがわかりました。
また日本においては、細かく定義した場合、政府
系ファンドと呼ばれるものは、現在存在しません。
しかし、日本の外貨準備は中国に次いで、約
100兆円もの規模を保有しているので、今後設立
に向けて議論が進んで行くかもしれないと思いま
した。

政府系ファンド入門


著:谷山智彦・福田隆之・古賀千尋
国家ファンド

著:前田匡史