カワモズクニュース№26

カワモズクニュース№26
25.11.25
〔ミョウテンジカワモズク〕
11月11日に観察に行くと、池の中はシルト状の泥が投入
されたようになっていました。触ると舞い上がり沈下するので、
手で擦っただけでは排除できません。
藻類にとってシルト状の泥は、着床する石を覆ってしまう
ので生息域を奪われる事になります。カワモズクにとっても
同様です。困った事態になりました、絶滅させてしまうかもし
れない。
シルト状の泥が覆った池。触ると舞い上がりな
かなか排除できません。
17日に時間を取って掃除をする事にしました。枡を開ける
と中に泥がたまっていました。バケツ1杯ほど掬い出し、ふと
手に何か触るものがあるので引っ張ると、先ず枕ほどの木
の根の塊、そしてズルズルと長い木の根の束が出てきまし
た。木の根の束は5メートルほどありました(左写真)。樹木が
美味しい湧き水を求めて根を伸ばして来たのでしょう。
その後は、舞い上がった泥をともかく掃きだし、掃きだし、
2時間ほどで大分水が澄んで来ました。1週間ほど泥で覆わ
れていたのでアオミドロはブラシをかけないのにこの通り、
すっかり消失していました。ではカワモズクも消失してしまっ
たのだろうか・・。
池周囲の石にマット状にあったカワモズクのシャントランシ
ア体はほとんどなくなっていました。でもわずかポツポツと点
状にある黒い斑点、カワモズクのシャントランシア体であるこ
とを祈って採取して来ました。
左に上げてあるのが木に根の束。5メートルほど
ありました。水もやっと澄んで来ました。
(シャントランシア体からの発生)
石に付いた黒い斑点をメスでつついて剥ぎ取ります。1~2
㎜程度の黒い粒、見た目では分かりません。
顕微鏡で見ると、始めの4,5粒は糸状体のみで単胞子も付い
ていませんでした。カワモズクの確認は無理かなと思いながら
最後の粒を顕微鏡に掛けて見ました。すると、シャントランシア
体の中に発生の状態が幾つか確認できました。生きのびてい
たようです。
今回、池は大きな撹乱を経験しました。もしかしたら新たな展
開があるかも知れません。見守っていきたいと思います。
シャントランシア体の中にカワモ
ズク発生の瞬間(矢印)がありまし
た。(100倍)
糸状体の途中で減数分裂を起
こしています。ここから輪生枝を持
つカワモズクの藻体が育っていき
ます。(400倍)
(糸状緑藻類)
池が緑色のどろどろしたものに覆われると一寸
近寄りたくなくなりますね。でも良く見るととてもき
れいな姿をしています。
阿寒湖のマリモもシオグサの仲間です。
アオミドロ
シオグサ
「根」はないのですが
しっかり石に付いて
います。
サヤミドロ
白子湧水とカワモズク(その4)
〔大坂ふれあいの森〕
この坂が元の川越街道です。
街道傍らに水路があったと聞いて
います。そこからしみ出した湧水
がこの窪地に流れを作っています。
2011年夏頃、湧水の流れが多
くなりました。そして11月、流れの
石にカワモズクが発生しました。
2011.11 水深は5㎜
から1cmほど、石が黒く
なり、カワモズクが発生
しました。
チャイロカワモズクが水
路一面覆うほど繁殖し
ました。(2012.8)
チャイロカワモズクの
造果器は小さいです。
当初発生したカワモズクの配偶体
採取して顕微鏡で見ると雌雄同株、造果器も
大きく側枝に精子嚢を持ち、ミョウテンジカワモ
ズクではないかと思われました。
継続して観察していると5月頃からどうも様子
がおかしくなりました。藻体は増え、どんどん大
きくなってきましたが、多くが雄株で、いつの間
にか雌雄異株になっていました。
原口先生が来て下さり、このカワモズクはチャ
イロカワモズクと同定されました。そして秋には
消失しました。 季節によってカワモズクは住み
分けるのか、その後も注意深く観察を続けました
が、カワモズクは発生していません。
糸状のシャントランシア体が出てくることがある
のですが、成長できず消失を繰り返しています。
季節で住み分けがあるとしたら面白いと思いま
す。
白子・大坂湧水林保全の会 須貝郁子