森林吸収源対策等に係る地方単独事業 事例集 平成28年1月 林野庁 ≪目 次≫ (1)森林所有者に関するデータベースの整備 (2)地域一体となった施業集約化の推進 (3)地域林業の担い手確保・育成 ・・・ 1 ・・・ 2 ・・・ 4 (4)都道府県が整備・運営する林業大学校等における研修実施 ・・・ 5 (5)林業の担い手確保のための条件整備 (6)公有林化を通じた地域森林の管理・経営の促進 ・・・ 6 ・・・ 7 (1)森林所有者に関するデータベースの整備 事業の内容 【取組の視点】 ○ 市町村による森林行政事務の効率化を図るとともに、林業事業体 等による森林施業の集約化を推進するため、森林管理・整備の基盤 となる森林所有者等に関するデータベースを構築する。 取組例 ○ 福井県では、森林簿と登記簿データ等を突合し、森林簿の森林所 有者情報を更新するための森林GISシステムの改修を、業者への委 託により実施 (①関係) ○ 福島県では、登記簿や登記図データを森林GISで使用できる形 式に変換し、森林簿及び森林計画図データと結合させ、森林簿及 び森林計画図のデータ修正や森林所有者情報の更新を実施。また、 修正・更新したデータを、市町村に提供し、森林整備等の実施を 加速化(①②関係) ○ 岡山県真庭市では、市が持つ 地籍情報などの所有者情報や 森林資源情報、施業情報などの データベースを一元的に管理し (③関係)、森林クラウドによる 森林組合との情報共有を実施 【考えられる事業の例】 ○ 都道府県や市町村が行う以下の取組 ① 林地台帳のベースとなる5条森林に係る登記情報の抽出【都道府県】 ② 地図(林地の地番図)の作成【都道府県】 ③ 地図(林地の地番図)精度向上のための空中写真等基礎資料の 収集・購入【都道府県】 ④ 市町村がもつ森林の土地所有者届出、森林経営計画情報等の データを収集・整理・入力し、林地台帳のデータベースを作成 【市町村】 森林林業クラウド • • • • 地籍・所有者情報 (登記簿情報) 森林簿・森林計画図 空中写真等のセンシング データ(樹種・樹高等) 林道・保安林台帳 情報共有・利用 ⑤ ダイレクトメールによる森林所有者情報の確認【市町村】 ⑥ 市町村に既に導入されている森林GISに林地台帳と地図を管理する 機能を追加するためのシステムの改修【市町村】 ⑦ 林地台帳と地図(PDF等)を管理するデータシステムの構築(森林GIS 導入予定のない場合)【市町村】 ⑧ 林地台帳情報と森林資源情報を連携するためのシステムの設計 【都道府県】 ※ 市町村への森林GISの導入は事業の対象外 (森林GISの導入は市町村森林所有者情報整備事業により支援) 市役所 ネットワーク 森林組合 ○ 国土調査が進んでいない地域において、空中写真や国土地理院よ り取得した航空レーザー計測データ等を活用し、微地形や林相など境 界等の把握に資するデータを収集・分析し、地図の精度を向上 (⑤関係) ○ 森林クラウドシステムの導入により、市町村が整備する林地台帳情 報と都道府県が整備する森林資源情報(森林簿)を共有 (⑧関係) 1 (2)地域一体となった施業集約化の推進 事業の内容 【取組の視点】 ○ 小規模に分かれている複数の所有者の森林をとりまとめて、間伐等の森林施業を一体的、計画的に実施する施業集約化を促進するこ とが必要。 ○ このため、所有者・境界の明確化や、森林整備に必要となる所有者の合意形成活動を推進。 【考えられる事業の例】 都道府県・市町村による、森林組合等が行う以下の取組等への助成や直接実施 ① 森林情報の収集活動 ・ 登記簿等による、所有者情報の収集 ・ 現地踏査による、境界の状況等の確認 ② 森林調査 ・ 施業予定森林で行う、伐採木の樹高、胸高直径等の調査、路網の線形調査その他の施業量又は施業方法の決定に係る調査 ③ 合意形成活動 ・ 各地区で集約化を進めるための組織づくりや専門員・協力員(森林施業プランナー等)の設置 ・ 都市部に出て行った所有者に対するふるさと森林相談会の開催 ・ 所有者へのダイレクトメールや情報誌の作成・送付、説明会の開催 ・ 所有者に働きかけを行うための施業提案書や森林カルテの作成 ・ 所有者への戸別訪問 ・ 所有者への現地案内 ④ 境界の確認や測量 ・ 所有者の現地立ち会い ・ GPS等を活用した境界の測量 ・ 境界測量情報の整理・保存 ・ 3D画像での境界確認作業に活用するソフト・機器の購入 2 (2)地域一体となった施業集約化の推進 取組例 取組例 【共有林を活用した施業集約化】 【集落単位で進める施業集約化】 • 愛知県豊田市では大字(集落)単位の「地域森づくり会議」を 設置して、間伐予定面積5~50ha程度の「森づくり団地」を設 定する「団地化推進プロジェクト」を展開。 • 有限会社藤原造林(山梨県甲斐市)は、北杜市の林務担当課を通 じて、共有林代表者から共有林の管理について相談があったこと をきっかけに、周辺の森林とあわせて森林経営計画を作成 • 集落説明会を行い、団地化の必要性や所有者メリット等を説 明し、会議設置を促す。(集落説明会は、地域と共同で森づ くりを進め、信頼関係を構築するための重要な「仕掛け」) • 森林経営計画の作成に当たっては、共有林所有者に対する説明会を 開催。森林づくりの方針や施業内容、実際に施業した森林を案内する など、理解を深めるようにしている。 〇〇地域森づくり会議 調査 提案 施業 B団地 支援 合意形成 C団地 A団地 豊田市 • 会議・団地づくり支援 • 団地計画の認定 • 補助等の支援 施業委託 森林組合 連携 • 森林のカルテ・プラン • 森林施業の実施 • 補助金申請 • 豊田市が法務局から公図等を取得。空中写真、土地課税情報等 を補完的に活用し、効率よく所有者リストや境界確認に必要な 資料を作成。 • 団地代表者が連絡調整役となり、 境界確認・森林調査を実施。その 結果報告をかねて地元説明会(施 業提案会)を開催し、「森づくり 団地計画書」をまとめている。 • 計画面積:50.1ha • うち共有林14.4ha(共有林、自治会、神社林) • アカマツ主体 • 施業の状況:作業道750m、間伐3.12ha、 アカマツ伐採3.91ha 取組例 【3D画像を活用した境界確認】 • 秋田県雄勝広域森林組合では、地域事情に詳しい森林組合職員に より登記簿・森林簿・地形・林相界等に基づき、所有者と境界を 推定し、GIS地図データとして整理。 • このGIS地図データに基づき、過去の空中写真の3D画像に境 界を表示し、所有者が境界を確認。 3D画像による境界の確認 確認後、オルソ写真に 修正した境界線等を書込み 3 (3)地域林業の担い手確保・育成 事業の内容 【取組の視点】 ○ 地域林業の担い手確保・育成については、「緑の雇用」事業の取 組などで一定の成果を上げているが、今後、中長期的な人口減少が 予測される中、更なる人材の確保・育成を図るためには林業の担い 手のすそ野を広げることが必要。 取組例 ○ 北海道では、これから林業に就業する者を対象とした作業の基 礎的な知識や技能を習得するための研修や、高性能林業機械の活 用により現地の作業条件に応じた伐採作業システムを自ら設計し、 実行できる技術者を養成するための研修、低コスト化につながる 効率的な施業に誘導・実践し地域の森林を一体的に管理できる知 識や技能を習得するための研修を実施。 ○ このため、「緑の雇用」事業による新規就業者確保・育成の取組 に加え、林業従事者(例えば、転職者、再就職者、中高年者等)、 自伐林家など副業的に林業に取り組む者、女性など幅広い担い手を 対象として、キャリアアップを図りつつ長期的かつ安定的に林業に ○ 高知県では、小規模林業や副業型林家を育成・支援するため、 取り組むために必要な技術や安全作業を修得するために必要となる、 小規模林業推進協議会を設立し、会員に対して林業機械のレンタ 各地域の実情に応じた研修等を実施する経費を支援。 ルや、研修受講者に対しての安全防具の支援、搬出間伐や作業道 開設などの支援を実施。 【考えられる事業の例】 ① 都道府県の研修機関等が独自に実施する林業就業者等への研修(現 場技能者、森林施業プランナー、オペレーター等) ② 都道府県や市町村が行う、自伐林家や女性などを新たな担い手として 育成するための林業就業に必要な技能・技術を習得するための研修 ③ 都道府県や市町村による、林業関係団体や林業事業体等が行う以下 の取組等への助成 ・ 「緑の雇用」研修修了後の追加育成等(情報交換の場の提供やフォ ローアップ研修等) ・ 林業就業者の安定した雇用環境を整備するための専門家による経営 者等への指導 ・ 林業事業体が実施する新規就業者の募集活動、研修フィールド確保 等 ○ 熊本県では、林業に関心のある女性を対象として、女性林業担 い手研修会を開催し、チェーンソーの取扱いや伐採等の実技研修 を実施。 ○ 静岡県では、生産性の向上等の経営改革に意欲のある事業体を対 象に、公募で選定した林業事業体に対して、生産計画の作成から生産 システムの構築、作業道の開設、木材生産(伐採、搬出)、販売の実践 や、組織改革などの内部統制を指導する講師の派遣等による支援を 実施。 4 (4)都道府県が整備・運営する林業大学校等における研修実施 事業の内容 【取組の視点】 ○ 「緑の雇用」事業などで新規林業就業者の確保・育成において一 定の成果を上げているが、今後、中長期的な人口減少が予測される 中、若い林業技術者の確保・育成が急務となっている中、林業への 就業前の人材の教育・研修を目的とした林業大学校等を新たに整 備・運営する動きが各地でみられるところ。 取組例 ○ ○ このため、都道府県が整備・運営する林業大学校や県の研修機関 などにおける研修実施に必要な各種経費を支援。 【考えられる事業の例】 ① 林業への就業前の人材に対して都道府県が整備・運営する林業大学 校等における研修 京都府では、林業経営の基盤強化や府民の主体的な参画による 森林の利用・保全に関する活動等の推進を図るため、平成24年に 京都府立林業大学校を開校。高校新卒者等を対象に2年間で林業 の知識・技術習得を目指す「森林・林業科」を設置。このほか、 新規就業者や林業事業体職員等を対象とした研修も実施。 ○ 秋田県では、若手林業技術者を育成するため、平成27年から秋 田林業大学校を開設。森林・林業・木材産業の基礎や経営に関す る知識のほか、路網開設や林業機械の操作など現場実践技術まで、 幅広い研修を開始。 ○ 兵庫県では、木材生産や森林整備等の実践的な技能とともに、 持続可能な地域林業の経営のための高度な技術・知識を身につけ、 林業振興等に指導的役割を果たす者を養成するため、ひょうご林 業大学校(仮称)を平成29年4月開校に向け準備中。 5 (5)林業の担い手確保のための条件整備 事業の内容 【取組の視点】 ○ 今後、中長期的な人口減少が予測される中、他業種との労働力確 保における競合等も想定されるところ。 ○ このため、林業就業者が林業に取り組むために必要な技術等を習 得する研修とあわせて、地域において長期的に林業に安心して取り 組むための条件整備を実施するための経費を支援。 【考えられる事業の例】 ① 都道府県や市町村による、林業事業体等が負担する以下の経費等へ の助成 ・ 林業従事者に係る労災・雇用・健康保険、厚生年金掛金、林業退職金 共済等掛金の事業主負担分 ・ 森林施業に必要な各種資格取得経費 ・ 振動障害特殊健康診断、蜂アレルギー検査等受診経費 ・ 安全靴やチェーンソー防護服など、新規就業者の安全を確保するため の装備等を導入するための経費や、衛星電話など緊急連絡体制整備の ための経費 ② 都道府県や市町村が実施する、林業就業者の定住促進のための特別 な助成 ・ 都市部からの移住により林業に就業する者の定住を促進するための 住宅手当等 ・ 新規林業就業者が新たに地域で生活を始めるための情報提供や 副収入対策など、新規林業就業者が定着するための条件整備に係る 経費 取組例 ○ 北海道では、林業で年間140日以上就労した従事者に対し、事業 主と従事者が1年間積み立てた掛金に、就労日数に応じた道と市 町村の助成金を加算した奨励金を支給する事業を実施。 ○ 宮崎県では、事業主が負担する社会保険や林業退職金共済掛金、 労災保険掛金の一部助成や、林家や一人親方の労災保険等掛金の 一部助成を実施。 ○ 山形県では、特殊健康診断の受診経費や蜂アレルギー健康診断 の受診経費の助成、エピペン購入経費の助成を実施。 ○ 北海道では、安全衛生確保装備の導入、休憩施設の導入、機 具・装備等の開発・改良等の経費に対して助成を実施。 ○ 鳥取県では、衛星携帯電話等通信機器の購入に要する経費に対 して助成を実施。 ○ 熊本県では、認定事業体への新規就業者のうち、就業に伴い新 たに住居の確保が必要となった場合、一定期間、その住宅確保に 要する経費を助成。 6 (6)公有林化を通じた地域森林の管理・経営の促進 事業の内容 【取組の視点】 ○ 経営意欲を失った森林所有者の森林が増加している中、地域の森林の 適切な森林整備・保全の確保や施業集約化の促進による林業活動の活性 化に資するよう、地域活性化事業債(既存措置)の活用による公有林化を 推進するとともに、地域の森林組合、事業体による公有林の管理・経営 を促進する。 【考えられる事業の例】 ① 都道府県・市町村による、所有者から寄付や譲渡の申し出があった森 林を公有林化するために行う境界の確認や測量 ○ 都道府県や市町村が行う経営意欲を失った森林所有者の森林等の公有 林化(地域活性化事業債(要件等は従来通り)の活用)(注) 取組例 【公有林化と森林組合との経営信託を通じた地域森林の管理・ 経営の促進】 • 経営意欲を失った森林所有者の森林について、境界の確認等 を行いつつ、公有林化を図る。 • 取得した公有林について、適切な森林整備・保全や地域の森 林施業の集約化に資するよう、地域の森林組合や事業体など に対し、経営委託・信託、所有権移転等を行い永続的な森林 の管理・経営を促進。 経営委託 経営信託 所有権移転 等 森林所有者 市町村 • 所有林の寄付や譲渡 • 境界の確認や測量等 • 公有林化 (注)地域活性化事業債は今回の調査の対象ではありません。 森林組合 事業体等 • 森林の管理・経営 • 施業集約化 • 島根県雲南市では、飯石森林組合及び大原森林組合に対して、 周辺民有林と一体的に、市有林の経営信託を実施。市有林を核 に、一体で管理できる団地を形成し、持続可能な森林づくりを 推進。 7
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