中学部の生徒に対して、 平仮名の拗音単語を読むことが できるための支援 1 ~コンピューター教材を使った 慶應義塾大学との共同研究事例~ 徳島県立板野支援学校 田 真理子 慶應義塾大学文学部社会学研究科 幹真 慶應義塾大学文学部教授 淳一 教諭 竹 大森 山本 2 慶應義塾大学との共同研究とは ・・ 慶應大学の山本研究室の大森幹真氏が開発し たコンピューター教材KLAP(Keio Literacy Acquisition Program)を使った共同研究。 KLAPとは,「文字の読みと絵の理解」から「 長い 文の読みと理解」までを段階的につなげて, 包括的に支援を行うためのコンピュータ教材 。 KLAPの学習支援カリキュラム 長い文の 読みと理解 短い文の 読みと理解 単語の 読みと理解 文字の読みと絵 の理解 漢字の 読みと理解 KLAPの学習支援カリキュラム ぼくは、ないているかえる を、つかまえる かえるが ゲコゲコなく。 かえる か・え・る 蛙・鳴く 指導目標 5 【長期目標】 ・「は,を」などの助詞や1年生程 度の漢字を使った2語文を書くこと ができる。 【短期目標】(2.3学期) ・3文字の平仮名の拗音単語12種類 を正しく読むことができる。 •現状のABC分析(Befor) 6 「しゃつ」の文字 「しやつ」 教師の修正あり 「ちがう。しゃつ」(-) •KLAPを使ったABC分析(After) アニメーション +メロディ (↑) 「しゃつ」の絵 +「しゃつ」の文字 +「しゃつ」音声モデル 「しやつ」 「しゃつ」 教師のほめ言葉 (↑) 方法 【対象者】 Kさん(特別支援学校中学部2年 女子) 知的障害、 絵画語い発達検査(PVT): 5歳10 ヶ月(H24. 12月) 【指導場面】 国語の授業(週2回) 【指導期間】 H24.11月 ~ H25.1月 【般化場面】 日常生活 【教材】 コンピューター教材,ICレコーダー 手続き 8 《ベースライン》 1.4種類の『絵』『単語』『文字』を1 セットとして 全3セットのテストを実施する。 2.一番正答率の高いセットから始める。 2~3回ベースラインを取り,正答率が 上昇しないようであればトレーニングを開 始する。 手続き ・以下の手順で始める。 9 1.(トレーニング)コンピューターの画面上で単語 や文字の音声に合わせて,模倣を繰り返し練習する ように促す。練習の際は,音節に合わせて肩をタッ ピングする。 2.(テスト)トレーニング後①で行った絵の命名, 文字,単語の読みを行う。単語の読みが2回連続 100%正答であれば,次のセットに取り組む。 3.次のセットを始める前に必ずベースラインを取る。 正答率が上昇しないようであればトレーニングを開始 する。 達成基準 10 達成基準 正反応率100%が2回連続で達成として, 次のセットに取り組む。 ● 記録方法 set 1 絵刺激 文字刺激 単語刺激 11 見本刺激 シャツ きょく おちゃ ちょう きょ く ちょ う しゃ つ お ちゃ しゃつ きょく おちゃ ちょう 11月12日 11月13日 11月19日 音声反応 11月27日 11月27日 1月21日 7 記録方法 12 「絵」「単語」「文字」のそれ ぞれの正答率を記録する。 正答数 刺激数 正答率(%) ×100 = 13 結果 14 3つのセットともトレーニング後は正答率があがり, すぐ達成した。 トレーニング後は、知らなかった単語と絵が等価関 係になり,答えることができるようになった。 時間が空くと、拗音の文字が清音(例えば「りょ」 が「りよ」)読みになるが,単語は正しく読めてい る。 セット2の単語読みは,フォローアップでも維持で 15 (『絵』『文字』『単語』の刺激等価性の) アセスメントにより,何ができて,何ができ ていないのか明確になる。 生徒の実態にあった教材で楽しんで取り組む ことができたり,自学習ができるので,複数 指導も可能である。 考察 16 「絵」「文字」「音声」の刺激がセットで出てくる ので,理解が進むと思われる。 セットの内容については,日常よく使われる単語を 精選する必要がある。 アドバイスを受けることで,ベースラインの取り方 や,訓練に入るタイミングが良く分かった。 大学とのコラボレーションは,最初の準備が大変 であったが,校内のシステムが整えば,メリットは 大きいと思われる。 今後の課題 17 拗音単語を正しく読むことができるように なったかどうか,パソコン以外の学習場面で も検証する必要がある。 今後,校内でKLAPをどのように使用していく のか 検討する必要がある。
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