モロッコ王国の制度と法

モロッコ王国の制度と法
モロッコで仕事をしていると、いろんな疑問や問題の壁に阻まれ
ることがあります。問題の周辺を分析しても理解できないことが
意外なことに、法律の解釈により納得できるかもしれません。
モロッコ王国の法律の基本を知り、効果的な業務と楽しい生活
を送る事ができれば、このメモを作った人も嬉しいはずです。
尚、本プレゼンテーションは以下のURLからもダウンロードでき
ます。
url : http://www.geocities.jp/yasuhei_cielbleu/archive/archiv_index.html
文責:安城
1
制度の特長

日本やフランスは
– 個人の自由や権利が憲法により保障されています

モロッコ王国では
– 成文化された憲法よりも神の法(王の言葉)が優先
• 神の法は王を通じて勅令で成文化され官報により発布さ
れます

法の区分としては、
– 勅令、憲法、法律、条例(地方自治)などがあり
– 仕事でよく目にするのは、
• 政令、省令、通達でしょうか

制度は
– 国王と王室審議委員会、内閣、国会、司法(裁判
所)等が制度の要となります
2
立憲君主制 〔立憲・社会民主主義的君主
制〕

国王は神聖にして不可侵
– 不敬罪はもってのほか、
• LOUANGE A DIEU SEUL !
– Dahir(勅令)には上のような語句が最初に記されます
– その次にGrand Sceau de Sa Majeste 王の名が続きます
• これは国璽尚書(昔の大法官閣下)と訳すのか、、、ともかく法の
権限を持つ偉い人のことです

憲法も法律も神の法のもとにある
– 勅令は神の代弁のようなもの
• 神の言葉は文章の憲法よりも強いのです
– 国王は内閣、国会、司法を主宰
• 各々の長の任命権と一定手続きが必要なものの罷免権も憲法
により定められています
3
国民の権利は?

法の前で全てのモロッコ人は平等
– 憲法第一章第5条で定められています

イスラムは国の宗教ですが、
– 信仰の自由は憲法で保障されています。

男性と女性は政治的に平等
– 選挙権・被選挙権は平等ですが、伝統は別です

何が自由なのか
–
–
–
–
王国内の移動と居住は自由です
思想・表現・集会の自由もあります
団体の結成や組合・組織への参加も自由です
私有財産権と民間企業の自由も認められています
4
どんな法があるのか 1

勅令/ DAHIRS
– イスラム社会では伝統的なものでした。フランス語の
官報ではDAHIRSと表記されています
– 「LOUANGE A DIEU SEUL !」(唯一の神に称賛あれ!)
– 上のような文句で始まる国王の命令、指示、演説等で一般的
には後で官報にて公表されます
• 国会の審議等なしに国王が有する権利で、
• 行政、立法、司法権の全てに効力を持っています

憲法
– 1962年12月7日の国民投票にて採択
– 独立は1956年であるが、憲法制定には時間を要し現憲法は
ハッサン2世により作成されました
– 英文の全文を下記のウェブサイトからダウンロード可
• http://www.oefre.unibe.ch/law/icl/mo__indx.html
5
どんな法があるのか 2

法律/ LOI
– 立法機関である国会の議決によって制定されます
– 国会の両議院の内一方の議院が解散すると制定権限
も失効です
– 法律制定には時間がかかりそう
• 法律に準じた基底として内閣は政令を制定する事ができます

政令/ DECRET
– 首相の名で発布するもので、
– 各省庁の組織や役割もこの政令で決められます

省令・条例/ ARRETE
– 省令(ARRETE MINISTERIEL)は大臣名で、
– 地方条例(CHARTE COMMUNALE)は全国統一の法律
– 各市町村ごとに条例があるわけではなさそう(要確認)
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どんな法があるのか 3+α

その他
– CODEもLOI も同じ法律、
最近良く耳にするのがCODE DE FAMILLE(家族法)
– LOI と別個に CODE があるわけではないようです
– LOIの場合は番号が付されていますが、
– CODEの場合は交通法や家族法のように名称がついている
ことが多いので、
• ある事柄に関連した一連の法律をまとめているとか
• 法律の呼称と考えてよいのではないでしょうか

命令/ ORDENANCE
• いわゆる行政命令にあたると考えられます
– 国会からその権利を受けている者でしょうから
• 大臣か裁判長名で発布されるのかな?(要確認)

他の規則は
– 団体が規則等を設ける事は法に照らした上で可能でしょう
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制度はどのようになっているのか
制度の要は以下の4機構です
– 国王と王室審議委員会
• 国王の権限は最高です。
– 憲法を超えた神の代理と理解して良いでしょう
– 内閣
• 内閣総理大臣は国王により任命されます
– 各大臣も首相の提案に基づき国王が任命します
– 国会
• 2院制です
– CHAMBRE DE REPRESENTANS(衆議院/下院)
– CHAMBRE DE CONSEILLERS(参議院/上院)
– 司法(裁判所)
• 司法権は立法権、行政権から独立していますが、
– 判決は国王の名において下され、執行されます
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内閣

行政権を行使します
– 内閣総理大臣は法案の発議権を有します
昨年(2003年)の第7国会では審議法案44の内40が内閣による提
案
– 組閣後に国会での施政方針を発表しなければなりません
• 施政方針は政治、社会、文化、外交等の内容で構成され、
これらの国務実施のために:
• 政令の発布ができます
• 内閣総理大臣による行政命令という事も可能です
– この場合は首相、担当大臣の連盟署名となるようです

内閣は内閣総理大臣と大臣により構成されます
– 現在は合計31の省庁、大臣は32名
• 24の省(MINISTRE: 大臣)と1 国務大臣
• 7の担当省(MINISTRE DELEGUE: 担当大臣)
Abderrahmane YOUSSOUFI 内閣総理大臣の後、
– 現在はM. Driss Jettou内閣総理大臣です(2002年以降)
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国会(PARLEMENT)
– 法は国会の議決によって制定されます
2院制の内容は、
– CHAMBRE DE REPRESENTANS(衆議院/下院)
• 議席数325、任期5年、直接選挙により選出
– 2002年9月27日に実施されていますので、
• 次回は2007年の予定です
– CHAMBRE DE CONSEILLERS(参議院/上院)
• 議席数270、任期9年、間接選挙により選出
– 2000年9月15日、2003年
• 3分の一ずつ3年ごとに改選
• 地方選挙委員会:162、職業組合:81、労働者組合:27
定例国会は:
• 年2回、10月と4月
– 臨時国会は政令もしくは絶対多数議院の要求により開催
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その他の
 地方選挙
– 2003年9月に実施され
• 地方分権化が始まりつつあります、、が、、
現状は未だ地方のレベルでも良く理解されてなく
周知を進めている現状のようです(2003年12月現
在)
• 地方憲章(Charte communale:市町村条例基本
法)が基本になっています
• 2002年11月21日発布
– 2002年10月のダヒールを受けて法律として法化
〔全文(仏文)ありますのでコピー可能です〕
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最後に
確かに制度としては国王に多くの権利が集中しています
–しかしこの制度の中で一定の安定とバランスが保たれてきたということは評価す
べき事と思われます。
–このことを公務員自身の業務を懸命にやらない、または効果的な提案をしないこ
との責任転嫁にしてはいけないはずです。各自の使命を明確に把握して住民
サービスにあたるべきです。
–そのような同僚との対話をするように務めています
現状は、、
–まだまだコントロールの必要な社会状況があり、単純に民主化=個人の自由保
障と声を大にするのは早計とも考えられます。
–自由と民主主義と法による制度の持続的安定には、ある一定の社会的成熟が
伴わないと不可能とも言えそうです。
•西アフリカの真珠とかニューヨークと言われた象牙海岸共和国にて、1999年のクーデ
ターから混沌とした2001年に至る動きを体験しながら、このことに強い関心を抱いてい
ます。
•混沌としたゼロに戻ったところから蘇るには犠牲が多すぎます。
ゆるやかな変化が持続的なのではないでしょうか、
–そのためにできることは何か、、と考えると ストレスが軽減するかもしれません
文責:安城
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