和歌を学ぼう 和歌の修辞法 和歌には、その世界を深めるためや、作者の心 情を豊かに表現するために、さまざまな技法が 用いられます。 今回は枕詞(まくらことば)・序詞(じょこと ば)・掛詞(かけことば)・縁語(えんご)に ついて学びましょう。 和歌にはこんな技法がある 枕詞 序詞 • 特定の語を導きます。 現代語訳します! 縁語 掛詞 • 特定の語を導き出します。 ある語を中心にして、関係の深い 語を用います。 • 同音異義により、一つの語に二重の意味を持 たせます。 現代語訳しま す! などなど・・・他にももっとあります。 枕詞 では、まずは枕詞から! • 三首の和歌を例に、どんな枕詞があるのか、 探してみよう。 • 枕詞にはどのような効果があるのか、さぐっ てみよう。 枕詞① 「光」の 枕詞 • 「ひさかたの」は「光」 を導く枕詞です。 ↓ 「ひさかたの」の部分 (枕詞)は現代語訳し ません! ( 古 今 集 → )→ → → → → → 桜 の 花 は 散 っ て い る の だ ろ う か 。 ど う し て 落 ち 着 い て 心 も な く し づ 心 な く 花 の 散 る ら む 日 の 光 の の ど か な 春 の 日 に 、 ひ さ か た の 光 の ど け き 春 の 日 に 枕詞② 「山」の 枕詞 「あしひきの」は 「山」を導く枕詞 です。 ↓ 「あしひきの」の部分 (枕詞)は現代語訳しま せん! ( 拾 遺 → 集 ) → → → → → → の長 だい ろ長 うい か夜 なを あ一 。人 ぼ っ ち で 寝 る 長 々 し 夜 を 一 人 か も 寝 む 尾山 の鳥 よの う尾 にの 、長 そく れ下 くが らっ いて い る あ し ひ き の 山 鳥 の 尾 の し だ り 尾 の 枕詞③ 「神」の → ( 拾 遺→ 集 ) → → → → → 枕詞 枕詞の特徴・・・何か見えてきた? • 「ちはやぶる」は 「神」を導く枕詞です。 ↓ 「ちはやぶる」の部分 (枕詞)は現代語訳しな いし、枕詞の音数は・・・ たいてい5 音! 染 め て( し逆 ま巻 うく と流 はれ 。を 、 紅 葉 で ) く れ な い 色 に か ら く れ な い に 水 く く る と は だ ね神 。様 の い う こ と も 聞 か な い ( 荒 く れ 者 の ) 竜 田 川 ち は や ぶ る 神 代 も き か ず 竜 田 川 枕詞④ • • • • • • • • • • • • • • • いくつ覚えられる?よく用いられる枕詞です。 あかねさす(茜さす) あさぢふの(浅茅生の) あしひきの(足引きの) あづさゆみ(梓弓) あらたまの(新玉の) あをによし(青丹良し) うつせみの(空蝉の) からごろも(唐衣) くさまくら(草枕) しろたへの(白妙の) たまのをの(玉の緒の) たらちねの(垂乳根の) ぬばたまの(烏玉の) ひさかたの(久方の) ももしきの(百敷の) • • • • • • • • • • • • • • • 日・光・紫・君 野・小野 峰・山 いる・引く・はる 年・月・日・春 奈良 命・人・世・身 着る・袖・裾・返す 旅 衣・袖・袂(たもと) 絶ゆ・長し・短し 母・親 黒・夜・闇 天・光・月・空・都 大宮 漢字をあてて考 えてみると、も ともと関連のあ る語句を導くよ うですね。 序詞 つぎに、序詞(じょことば)です。 • 現代語訳します。 • 枕詞のように音節数が決まっていないので、 わかりにくいのですが、探せますか? 序詞① 「ながながし」の → → 序詞 • 「あしひきの山鳥の 尾のしだり尾の」は 「ながながし」を導く 序詞です。 ↓ 「序詞」もがっちり現代語訳! ↓ 主題の邪魔にならないよう に「~ではないけれど」「~ のように」と訳す。 ( 拾 遺 → 集 ) く → → → ら い山 、 鳥 の 長 尾 々 の 長 長 し い く 長 夜 下 ない が あ夜 を っ 。を 一 て 一 い 人 人 る ぼ 尾 っ か の ち よ で も 寝 寝 う る に の む 、 だ そ ろ れ う → か あ し ひ き の 山 鳥 の 尾 の し だ り 尾 の 序詞② 「たつ」の → → 序詞 • 「白波が立つ」と 「竜田山」に関連 させていますね。 ↓ 「序詞」もがっちり現代語訳! ( 伊 勢 → 物 語 ) え て →い る の で し ょ う 。 → そ の 竜 田 山 を 夜 中 に あ な た は 一 人 で 越 夜 半 に や 君 が ひ と り こ ゆ ら む い が風 竜が 田吹 山く 、と 沖 の 白 波 が 「 立 つ 」 が 、 そ の 「 た つ 」 で は な 風 吹 け ば 沖 つ 白 波 た つ た 山 序詞③ 「いつみ」 の序詞 → → 「訳すのが難しい」?ではもう少し練習してみよう。 • 「泉川」と「いつ見 き」(「き」は過去の助動詞です よ)とを関連させてい ますね。 ↓ 「序詞」もがっちり現代語訳! ( 新 古 → 今 集 ) く → → ( 私 ては くあ るな した いを の) い だつ ろ見 うた かと 。い う の で こ ん な に 恋 し い つ 見 き と て か 恋 し か る ら む み 」 でみ はか なの い原 けか れら ど湧 、い て 、 そ こ を 分 け て 流 れ る 泉 川 、 そ の 「 い つ み か の 原 わ き て 流 る る い づ み 川 掛詞 つぎに、掛詞(かけことば)です。 • 現代語訳します。 • 一つの語に、二重の意味を持たせま す。 掛詞 • 同音異義により、一つの語に 二重の意味を持たせます。 ・・・・おやじギャグに共通するものが・・・? 不自然なひらがな表記は 注意してみよう。 現代語訳の際は、二つの意味の違い を二通りの漢字で表記します。 掛詞 いくつわかるかな?よく用いられる掛詞 • • • • • • • • ①あき ②あふ ③うき ④かる ⑤ながめ ⑥はる ⑦ふみ ⑧みをつくし • • • • • • • • ①秋・飽き ②逢ふ・逢坂(地名) ③憂き・浮き→世 ④枯る・離る ⑤眺め・長雨 ⑥張る・春 ⑦踏み・文 ⑧身を尽くし・澪標 掛詞① 「いく」が掛詞! 「ふみ」が掛 詞!! • 「いく」→ 「生野」 • 「行く」 • 「ふみ」→「踏み」 • 「文」 ↓ 「掛詞」の意味二つとも がっちり現代語訳! → ( 古 →今 →よ → → 著 。 聞 集 ) (ま 丹だ 後天 か橋 ら の立 を ) 手踏 紙ん もだ もこ らと っも たあ こり とま もせ あん りよ ま。 せま んた 、 ま だ ふ み も 見 ず 天 の 橋 立 で大 、江 山 を 越 え 生 野 を 通 っ て 行 く ( 丹 後 ま で の ) 道 が 遠 い の 大 江 山 い く 野 の 道 の 遠 け れ ば 掛詞② 「いなば」が掛 詞! 「まつ」が掛詞!! • 「いなば」→「因幡」 • 「往なば」 • 「往なば」は仮定の順接接続条件 ですよ。 • 「まつ」→「松」 • 「待つ」 ↓ 「掛詞」の意味二つとも がっちり現代語訳! ( 古 今帰 が と 集っ ) ( ) 聞あ → → → → いな たた とが し私松 たにの っら 言 木 て、 っ の こわ て 、 よた く そ うし れ の 。は て よ すそう ぐれに にを「 私( 私 を ) 待 つ 」 ま つ と し 聞 か ば い ま 帰 り 来 む のあ 山な にた 生と え別 てれ いて る因 幡 の 山 に 行 っ て し ま う け れ ど 、 因 幡 立 ち 別 れ い な ば の 山 の 峰 に お ふ る 掛詞③ 「ふる」が掛詞! 「ながめ」が掛詞! • 「ふる」→「降る」 • 「経る」 • • 「経る」はハ行下二段活用動詞「経 (ふ)」の連体形です。 「へ」「へ」「ふ」「ふる」「ふれ」「へよ」 • 「ながめ」→「長雨」 • 「眺め」 • ☆「眺む」・・物思いに沈む ↓ 「掛詞」の意味二つとも がっちり現代語訳! → → ( 古 今 集 ) → く こ の春 世の を長 過雨 ごが し続 てき い、 る私 うが ち物 に思 。い に 沈 み な が ら む な し わ が 身 世 に ふ る な が め せ し ま に こ桜 との だ花 。の 色 も 、 私 の 容 色 も す っ か り 色 あ せ て し ま っ た 花 の 色 は 移 り に け り な い た づ ら に 縁語 最後に、縁語(えんご)です。 • 掛詞と重複する場合もあります。 • ラストスパート! 縁語 • ある語を中心にして、関係の深い 語を用いて全体に広がりを持た せます。 ・・・・掛詞と重複する場合も多いです。 和歌の全体の意味とは 直接かかわりません。 ( 新 古 今 集 ) 縁語① 玉の緒(魂をつなぐ語 → → → → → =命 ) に関係する縁語として・・・ ながらへ 絶え 弱り ↓ どの語が中心になっているの か、まず探してみよう。 ( こ の 恋 を ) 忍 び 耐 え て い る 心 が 弱 く な る と 困 る か ら 。 忍 ぶ る こ と の 弱 り も ぞ す る が私 らの え命 てよ い、 る絶 とえ て し ま う の な ら ば 絶 え て し ま え 、 生 き な 玉 の 緒 よ 絶 え な ば 絶 え ね な が ら へ ば 和歌を学ぼう 終わりに ・・・どうでしたか?和歌の修辞技法 を知れば、和歌の世界がより美しく、 豊かに、味わい深くなります。
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