原子力事故と安全 - 若狭湾エネルギー研究センター

(財)若狭湾エネルギー研究センター殿
原子力プラント安全コース
原子力事故と安全
説明者手持ち用& 通訳参考用
2015年 月
(株)原子力安全システム研究所
1
はじめに
■ 原子力施設の安全を維持向上させるためには
過去の経験から学んだ教訓を理解することが重要である。
■ 安全を向上するには、明確な意思を持って努力を続けなければならない。
■ このテキストでは、原子燃料設計の開発と過去の重大事故から得られた
教訓について紹介する。
2
略 語
A/B
Auxiliary Building
RCP
Reactor Coolant Pump
AFWP
Auxiliary Feed Water Pump
RCS
Reactor Coolant System
ANL
Argonne National Laboratory
RWST
Refueling Water Storage Tank
BORAX
Boiling reactor Experiments
SG
Steam Generator
BWR
Boiling water reactor
SI
Safety Injection
CST
Condensate Storage Tank
SL-1
Stationary Low-Power Reactor
Number One
C/V
(Reactor) Containment Vessel
SPERT
Special Power Excursion Test
EBWR
Experimental Boiling Water Reactor
T/B
Turbine building
ECCS
Emergency Core Cooling System
TG
Turbine and Generator
INSAG
International Nuclear Safety Group
TMI
Three Mile Island
FWP
Main Feed Water Pump
WANO
World Association of Nuclear
Operators
NSRR
Nuclear Safety Research Reactor
PORV
pilot-operated relief valve
3
内 容
1.
2.
3.
4.
5.
原子力安全に対する基本姿勢
スリーマイル島原子力発電所2号機の事故
チェルノブイリ原子力発電所事故
東海村原子燃料加工施設の臨界事故
原子力安全向上の着眼点の推移
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原子力安全に対する基本姿勢
■ 原子力安全に対する設計上の基本姿勢
「危険から距離を置く消極的安全の発想ではなく、危険の本質
を理解した上で、これを設計へ反映するという積極的対応」
参照文献:近藤駿介(前原子力委員会委員長), “原子炉の安全性”,(1990)
5
原子力安全に対する基本姿勢
■ 具体的なアプローチ(危険を理解する例)
✔
✔
✔
✔
BORAX 計画(1952 ~1958 ANL)
SL-1 事故(1961)
SPERT計画(1963 ~1970)
NSRR 計画(1975~)
6
原子力安全に対する基本姿勢
✔BORAX 計画(1952 ~ 1958 ANL )
BWR成立性の確認のための実験とEBWR(実験用BWR)計画の
ための予備実験
主目的
✔沸騰状態での原子炉制御の可能性検証
✔第1期の最後では、原子炉暴走 (出力急昇)による原子炉の破
壊の可能性検証を実施
結果
✔ BWRが安定することが実験的に証明され、EBWR計画に発展
7
原子力安全に対する基本姿勢
✔BORAX 計画(1952 ~ 1958 ANL )
アプローチ
ステップ毎の実験で検証
BORAX-Ⅰ
- BORAX-Ⅰ(1952 ~1953)
・1MWt,1MPa
板状燃料(90wt%U-Al)
・反応度投入実験(蒸気増
加による負の反応度帰還
確認)
・暴走による原子炉破壊
の可能性確実験
- BORAX-Ⅲ(1954 ~1955)
・12MWt,2.2MPa (炉容器はⅡのまま炉心大型化)
・タービン発電機設置.(3500kWe)
自然循環直接サイクル型BWR初号機
・原子炉不安定性の圧力依存性
・放射性物質のタービン系への移動量データ収集
・軽水の放射線分解データ収集
- BORAX-Ⅳ(1956 ~1958)
- BORAX-Ⅱ(1954 ~1955)
・4.6MWt,0.1MPa &20MWt
・6MWt,2.2MPa (炉容器・炉心大
・Ⅲの炉心換装:棒状燃料(90wt% UO2 )
型化)
8
・破損状態模擬燃料装荷(燃料破損の水質や
・運転経験蓄積
タービン系への影響確認)
原子力安全に対する基本姿勢
✔ SL-1 事故(1961:米国)
事象
✔米海軍の極地基地向け熱・電力供給用実験炉SL-1 での、試
験要員一人が誤って※制御棒1本を引抜いたことによる、原子
炉暴走破壊事故。
✔すべての試験要員3名が爆発で死亡
[ ※ 意図的か否かは不明]
考えられる原因
✔原子炉のコンフィギュレーション上の欠陥
(すなわち、1本の制御棒引き抜きだけで臨界になる)
✔手順書のエラー
(例えば、引き抜き速度とパラメータチェックの慣行)
9
原子力安全に対する基本姿勢
✔ SL-1 事故(1961:米国)
教訓
設計の基本的原則の確立:
制御棒1本を全引き抜きにしても臨界にならないよう、
十分な反応度停止余裕を確保すること。
“制御棒1本固着状態での反応度停止余裕”
(Reactivity Shutdown Margin at one rod stuck)
10
原子力安全に対する基本姿勢
✔ SPERT 計画(1963 ~ 1970:米国)
前記2つの事象をもとに計画された、出力急昇事象に関する実験計
画
主目的
✔原子炉暴走時の挙動と破壊エネルギーの正体の確認
成果
✔破壊エネルギーは燃料の破損に伴なって発生する(すなわち“核
爆発”ではない)ことを確認。
✔暴走が生じても原子炉が健全な状態に保たれる条件の範囲が存
在し、その範囲は原子炉の設計によって比較的広く取れることが確
認された。
✔大型コンピュータによる解析的な挙動評価の基礎確立。
11
原子力安全に対する基本姿勢
✔ SPERT 計画(1963 ~ 1970:米国)
成果(続き)
自己制御性
(固有の安全性)
出力上昇を抑制する原子炉固有の性質
すなわち、負の[燃料・減速材]温度反応度係数
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原子力安全に対する基本姿勢
✔NSRR 計画(1975~:日本)
日本原子力研究開発機構(JAEA:旧日本原子力研究所)の研究
炉NSRR(Nuclear Safety Research Reactor)での、実質的に は
SPERT計画を引き継いだ実験研究計画
[主目的]
・反応度投入事故での破壊エネルギー発生メカニズムの確認
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原子力安全に対する基本姿勢
✔NSRR 計画(1975~:日本)
成果(第1期分)
✔原子炉の破壊は、急激な出力の上昇によって燃料が損傷し、高
エネルギーの燃料物質が一挙に冷却材中に放出されることで生じ
た蒸気爆発に関連する圧力波(衝撃波)によってもたらされる。
✔原子炉の破壊は、出力急昇の程度を抑制し、燃料エンタルピー
を制限することで、未然に防止できる。
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スリーマイル島原子力発電所の事故
非常用炉心冷却
システム[ECCS] ポンプ
(待機)
通常運転時のTMI-3 PWR システ
ム概要
原子炉格納容器
タービン建屋
原子炉容器
[RV]
加圧器[Pz}
蒸気流
蒸気発生器
[SG]
発電機
タービン
燃料取替用水タ
ンク
主給水ポンプ
[MFWP]
G
復水器
排気筒
廃液貯蔵タンク
サンプとポ
ンプ
原子炉冷却材ポンプ
[RCP]
復水貯蔵タンク
[CST}
補助建屋
補助給水ポンプ [AFWP]
(待機)
✔ 通常運転時、原子炉の熱は、タービン発電機の電気出力とバランスされている。
✔ 緊急運転時、原子炉トリップ後の残留熱は、ECCSポンプおよび補助給水ポンプの運転によって除去
される。
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スリーマイル島原子力発電所の事故
浄化系の漏えいにより放射性ガスが環境
に放出された。
格納容器隔離機能でカバーされていない
(設計不良)
④
⑤
運転員はECCS流量を
絞った。
固着開と流出
PORV
TMI-2 事故の概要
約2時間後弁閉止
蒸気流
Pz
水位計エラー
①
SG
タービン自動トリップ
RV
×
RWST
G
Turbine
大気への抄出
MFWP
②
Stack
液体廃液貯蔵シ
ステム
計器用空気故障によりト
リップ
×
原子炉自動トリップ
水の移送
①
RCP
③
サンプ
・実際の水位は減少していたが, 圧力低下に伴う
ボイド(気泡)のため水位指示系は高めに表示さ
れた。 (設計不良)
・水位上昇による加圧器満水を懸念
(行動劣化).
Condenser
運転員は8分後に弁閉止
弁が閉まっていた
CST
AFWP 原子炉トリップに続いて起動
PORVが固着開、PORV位置指示系が閉を表示
(すなわち、操作信号にだけ反応)
(設計不良、および/または運転員の理解不良)
・出口弁閉止のため水が供給されなかった。運転
員は流量を直ちに確認しなかった。(行動劣化)
・前回の保守作業後に運転員は確認を怠った。
(不十分な作業管理)
SGによる残留熱除去
RCS保有水からの流失
機能喪失
ECCSによる熱除去機能喪失
(modified Graphical Flip-chart of Nuclear & Energy Related Topics 2011)
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冷却機能不全による燃料溶解開始
スリーマイル島原子力発電所の事故
説明
✔ 1977年3月28日に97%出力運転中、設計通り主給水ポンプトリップに続いてター
ビンが自動でトリップした。 →①
✔ 原子炉冷却材システム(RCS)の温度/圧力が上昇し、加圧器逃し弁(PORV)が
開放し、原子炉が自動でトリップした。→②
✔ 蒸気発生器(SG)へ水補給するために補助給水ポンプ(AFWP)が起動したが、
AFWP出口弁が閉止していたために冷却水は供給されなかった。 →③
そして、SGによる残留熱除去機能が喪失した。流量は運転員によって直ちに確認さ
れなかった。
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スリーマイル島原子力発電所の事故
説明(続き)
✔ 圧力低下に伴い自動閉止するPORVは固着開したので、RCS保有水内の冷却材
が流出し、圧力低下が続いた。PORVの位置指示計は閉止していた。(すなわち、実
際の位置指示信号ではなく、操作信号にのみ対応する) → ④
✔ 安全注入(SI)信号によって非常用炉心冷却システム(ECCS)が動作したが、運
転員が誤ってECCS流量を絞ったためにECCSによる残留熱除去機能が喪失した。
運転員は、加圧器(Pz)の誤った水位指示計によってRCS保有水の状態の確認に失
敗した。実際の水位は低下していたが、圧力低下(飽和温度と沸騰)によるボイド(気
泡)のために水位指示計は高めに表示されていた。 → ⑤
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スリーマイル島原子力発電所の事故
説明(続き)
✔ “B-loop”の原子炉冷却材ポンプ(B-RCP) は、事故発生1時間10分後に停止、ARCPは一時間40分後に停止された。RCS内の多量の蒸気によって、RCPの振動が
起こったので、運転員はポンプを停止した。
✔ 運転員が事故発生2時間20分後にPORVの前弁を閉止し、冷却材流出は止まっ
たが、原子炉炉心の2/3が露出し、損傷を受けつつあった。
✔ 事故発生3時間20分後経って、運転員はECCSの短時間運転を行い、原子炉炉
心は水で覆われたが、炉心はその時点で大きく損傷していた。
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スリーマイル島原子力発電所の事故
説明(続き)
✔ 多量の蒸気と金属-水反応*でRCS中に発生した水素のため、原子炉炉心の冷
却を制御するのが困難であった。このため、16時間後に格納容器内の水素の一部を
排出、運転員は1台のRCP運転に成功し、事故は収束に向かった。
制御下になるまで16時間を要した。
「安全性の向上」と「人的要因への配慮」の必要性を再認識
特記:「金属-水反応」;燃料被覆材のジルコニウムと水が高温で反応し水素が発生する。さらに、この反応は発熱反応であり、
場合によっては局所的に崩壊熱を超える多量の熱が発生する可能性が有る。燃料が再冠水によるジルコニウム-水反応で崩壊
したとの考察もある。
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スリーマイル島原子力発電所の事故
■ 直接原因
✔ 残留熱除去機能喪失
ECCSの流れとSG冷却水の喪失
✔ RCS保有水喪失
PORV開固着で長期間冷却材が流出、この状態はLOCAと類似
■ 間接要因
✔ 設計不良
制御室配置、計器用空気の容量、格納容器隔離弁
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スリーマイル島原子力発電所の事故
■ 可能性ある根本原因
✔ 運転判断不良
- 監視技能と知識不足によるシステム状態の確認失敗
- 経験と訓練不足
✔ 技能不足と習慣
✔ 作業管理
- 前回補修作業後のAFWP出口弁の位置確認不良.
- 安全信号をバイパスし、簡単にECCSポンプを停止する慣習
✔ 運転
- 運転手順書遵守の失敗、事故前に起こっていたPORVからの漏えいを放置
➣ “安全向上”の再認識と“人的要因の検討”
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スリーマイル島原子力発電所の事故
原子力安全委員会の活動
・「我が国の安全確保対策に反映させるべき事項」全52項目を昭和54年9月に公表、
基準・審査、設計、運転管理、防災および安全研究の分野をカバーした。
・昭和55年6月、審査・設計及び運転管理に関する事項に関する審査の基本的考え
方を決定 代表的な事項は以下の通り。
代表的な事項
・安全審査関連:
・安全上重要な系統および機器は安全保護系の信号により確実に自動作動す
るよう設計されていること。また、手動操作を要求されているものは、ヒューマン
クレジットを考慮し、確実に作動すること確認する。
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スリーマイル島原子力発電所の事故
代表的な事項(続き)
・設計関連:
・小破断事象時の安全性の向上を図ること
(PWR:外乱の重畳による異常規模の拡大の可能性を考慮)
・事故時1次冷却材の状態監視方式の充実(サブクール状態、事
故時の水位)
・制御室における事故時監視計器の設計方針確立と中央制御盤
等のレイアウトの人間工学的観点からの検討
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スリーマイル島原子力発電所の事故
代表的な事項(続き)
・運転管理関連:
・安全確保上重要な系統の保修時の点検頻度の明確化
・手動弁の管理方式の改善(例:鍵管理、作業時に制御室で系統図上に表示)
・運転員の長期養成計画(資質向上、人材の確保、直員連携強化、運転責任
者[当直長]資格制度導入)
・運転員の誤操作防止対策(一つの計器に頼らず総合的に判断するための確
認対象計器の明確化)
・その他の日常的な改善(事例検討[収集から実務反映]促進、シミュレータ訓
練
での多重外乱事象の学習)
・プラントの管理体制の充実(特に緊急時における運転責任者への技術的支援)
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スリーマイル島原子力発電所の事故
日本における中央制御盤の歴史-PWRの例-
✔標準型(アナログ式:1970’~)
・監視用CRTの導入(1980’~)
←基本設計は当時の米国PWR
のものと同じ。
✔改良型(部分的ディジタル式:
1990’~)
・監視及び操作部をディジタル化
・警報抑制システム採用(→ 次ス
ライド)
←TMI事故の教訓反映の代表例
の一つ。
✔新型(全ディジタル式:2000’~)
・安全保護系を含む全システム
ディジタル化
・VDU (Visual Display Units)を
用いたソフト
コントロール方式採用
・コミュニケーションの円滑化のた
めの
26
大型表示盤の採用
写真出典:上段及び中段: (株)NTCホームページ,下段: 三菱電機(株)ホームページ
スリーマイル島原子力発電所の事故
日本における中央制御盤の歴史(続き)
✔警報抑制システム
“因果関係が明らかな警報を抑制”
・重要警報の見逃しを防止
・赤色警報数の低減
✔新型盤評価結果
(出典:三菱重工技報Vol.35. №4.(1998.7))
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チェルノブイリ発電所の事故
-概要(1986年4月)黒鉛減速軽水冷却型(RBMK)炉の設計上の特徴
制御棒の駆動速度が遅い
・低出力(約20%以下)での固有の安全性(自己制御性)が喪失する特性がある。
・「当該範囲の出力レベル禁止」という運用でだけ対応している。
・設計上での積極的対策がない。
(原子力エネルギー図面集2010掲載図に加筆)
28
チェルノブイリ発電所の事故
-概要(1986年4月)-
29
(原子力エネルギー図面集2010掲載図に加筆)
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チェルノブイリ発電所の事故
-教訓安全文化の確立
[事故の要因]
●設計段階各層での安全への配慮不足
・自己制御性の欠如を容認(低出力での固有の安全性不足)
・事故防止策が不十分(例えば、フェールセイフ設計)
・事故影響緩和系が不十分(特に格納容器隔離機能がない)
●運転管理者、すなわち、運転員、発電所管理者および規制管理者の安全管
理認識の欠如
[評価]
・いずれの分野でも、軽水炉への直接的反映事項は無かった。しかし、
・正しい操作の励行、規則遵守の雰囲気醸成やプラント管理の在り方等、
いわゆる「安全文化」の重要性を再確認
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チェルノブイリ発電所の事故
-教訓アクシデントマネジメントの実施
国際原子力安全諮問委員会が示す安全目標(炉心損傷確率10-4/炉年[既存炉]、10
-5/炉年[新設炉] )に対応した、設計基準事象を超える過酷事故への対策。
⇒「事業者が自主的に行う措置」として通産省(当時)[以降、経産省→原子力規制
庁]より要請(1992年7月)
フェーズⅠ:手順の確立、必要資材及び体制の整備、及び要員の訓練。
[例] 手順書整備:従来の「事象ベース」の手順書+「兆候ベース」(又は
「安全機能ベース」)
⇒ 各社の整備結果報告を原子力・安全保安院が精査し公表(2002年10月)
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チェルノブイリ発電所の事故
-教訓✔ “事象ベース” 手順書
設計で想定した事象に関する安全停止に必要な運転ガイダンスを提供す
る手順書
- 冷却材喪失事故 (LOCA)
- 蒸気発生器細管漏えい (SGTL)
- 主蒸気管破断(MSLB), 他
✔ “兆候ベース” (または“安全機能ベース”) 手順書
脅かされた安全機能を回復するための手順書
- 原子炉の未臨界維持
- RCS 保有水の維持
- 残留熱除去機能の維持, 他
✔ 要員訓練
- 起因事象の判断、監視に必要な計器、対策の展開および発電所
スタッフとの連絡を含む“安全機能ベース” の訓練
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チェルノブイリ発電所の事故
-教訓アクシデントマネジメントの実施(続き)
フェーズⅡ:想定される格納容器の損傷モードに対し、その格納容器の
健全性を維持しながら放射性物質の環境への放出を抑制する
ための設備追加(既存設備の有効利用も含む)
⇒ 個別プラント確率論的安全評価(PSA)に基づく検討結果の評価報告公表
(2004年10月)
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チェルノブイリ発電所の事故
-教訓■アクシデントマネジメントの実施(続き)
導入状況の一例
消火システムを用いたスプレイリングヘッダへの代替水供給配管・・・・しかし、当時、
全交流電源喪失の想定はなかった。
原子炉格納容器 [CV]
スプレイ水による放射
性物質の除去.
電動消火ポンプ
スプレイリングヘッダ
追加配管設置
消火用水貯蔵タンク
空気冷却器
格納容器スプレイポンプ
Core damage
冷却水
燃料取り替え用水タンク
[RWST]
原子炉格納容器への水張と空気冷却器によ
る崩壊熱除去
35
東海村燃料加工施設の臨界事故
-概要(1999年9月)-
36
参照:“ウラン加工工場臨界事故調査委員会報告”、原子力安全員会調査委員会、1999.12.24
東海村燃料加工施設の臨界事故
-概要(1999年9月)概要
1999年9月30日、濃縮ウラン溶液を均一化する作業において、作業者が沈殿槽に臨界量以
上のウラン溶液を注入したことにより、臨界事故が発生。これは、違法な社内マ二ュアルに
従った行為であった。臨界状態は約20時間継続し、作業者2名が亡くなる結果となった。
住民などへの影響
臨界状態の間、周辺に放射線が放出され続けるとともに、微量の放射性ガス物質も大気中
に放出され、従業員、防災業務関係者、周辺住民など319人(うち周辺住民130人)が一般人の
年間実効線量限度である1ミリシーベルトを超える放射線を浴びたと推定されている。
37
東海村燃料加工施設の臨界事故
-概要(1999年9月)違反作業工程
・「常陽」の燃料用として、濃縮度18.8%、ウラン濃度380グラム・ウラン/リットル
(gU/l)以下の硝酸ウラニル溶液を転換施設において約160リットル(約60キログラ
ム)製造する計画であった。製造では、1作業単位(以下、”バッチ”という)分の
2.4kgU(溶液量約6.5リットル)毎に溶解を行い、輸送の単位である6~7バッチ分の
約40リットルの硝酸ウラニルを均一化することになっていた。この作業は、特別操作
員と呼ばれる5人の作業員のうち3人が割り当てられた。
・本来であれば、ウラン粉末を溶解塔で硝酸を加えて溶解すべきところ、10lのステ
ンレス鋼製の容器(いわゆるバケツ)でウラン粉末を溶解した後、硝酸ウラニル貯塔
(以下、貯塔という。)において濃度を均一にするという社内で作成した手順をも無視
して、5l入りのステンレス鋼製のビーカー(以下、ステンレス容器(5l)という。)及び漏
斗を用いて、1バッチ(2.4KgU)以下で制限して管理すべき沈殿槽に4バッチ(約
9.6KgU)の硝酸ウラニル溶液を注入し、更に3バッチ(約7.2Kg)の硝酸ウラニル溶
液を注入した。
38
東海村燃料加工施設の臨界事故
-概要(1999年9月)臨界
臨界量を超えるウラン溶液を注入した結果、沈殿槽内で溶液が臨界に達した。最初に瞬
間的に大量核分裂反応が起こり、その後、臨界停止に向けた作業が終わるまで約20時
間にわたり緩やかな核分裂状態が継続した。臨界の継続を助長していた沈殿槽外側の
ジャケットを流れる冷却水(いわゆる減速材および反射材)を抜き取ったことで臨界は停止
した。その後、臨界の停止を確実にするめにほう酸水が注入された
39
東海村燃料加工施設の臨界事故
-概要(1999年9月)ウラン転換施設
鉄骨造軽量ブロック張り平屋建て
延べ面積 約260m2
(敷地面積 約45.000m2)
避難
地方時自体である東海村が住民避難を要請し、茨
城県が屋内退避を勧告した
40
4. 東海村燃料加工施設の臨界事故(2/2)
-教訓(1)安全文化の定着
・臨界事象に対する的確な危機意識
・事業者の工程管理・作業管理における安全確保の徹底
・関係者各人の責任自覚と倫理の確立
(2)原子力安全規制の見直し
・加工事業の定期検査義務づけ
・保安規定順守状況の検査制度導入
・安全規制体制の再構築
(3)原子力防災体制の整備
・危機管理の専門的能力をもつ要員の確保
・危機管理下での適正な情報管理体制の整備
・原子力災害対策特別措置法の制定と実践的有効性の維持
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(原子力安全委員会ウラン加工工場臨界事故調査委員会報告[1999.12]要約)
まとめ
■ 安全のための種
✔ 個別事項
✔ 反応度停止余裕、臨界管理、余熱管理、システム設計、計器の特性、認定された手順
と要求、多様な物質の特性、などの知識の維持
✔ 作業管理プロセス、驚異的な事象の操作、問題確認、効果的なコミュニケーションなど
のスキルの向上
✔ 役割と責任、学習の継続、効果的なコミュニケーション、疑問視する態度などの規範の
向上
✔ 組織的な事項
✔ 安全に対する経営層のコミットメント
✔ 理想的な作業環境の確立
✔ 解決に向けた良い経路の確立
■ 安全のための道具
✔ 訓練、演習プログラム
✔ 認証プログラム
✔ 是正措置プログラム
✔ 最適なリソース配置
✔ ピアレビュー
42
御静聴有難うございました。
Q&A
43