音のユニバーサルデザイン ユニバーサルデザイン (Universal Design) 文化・言語・国籍の違い、老若男女といった 差異、障害・能力の如何を問わずに利用す ることができる施設・製品・情報のデザイン ノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス (1941-1998)が1985年に提唱 できるだけ多くの人が利用可能なデザイン ユニバーサル・デザイン インクルーシブ・デザイン デザイン・フォー・オール アクセシブル・デザイン バリアフリー・デザイン 音のユニバーサルデザイン 高齢者に配慮:聴力の低下(特に,高い周波数) 高齢者が日常生活で どのように音を活用しているのか 高齢者の歩行の行動観察およびインタビュー 歩行時に気にかけていたのは 自動車の音 •比較的静かな自宅近く:車が近づくことを音に よって知り,振り向いて目で確認 •都市部の道路周辺:車が近づいたことに気づ かないことも •歩行路:静かな車の通りが少ない裏道を選ぶ 高齢者は,慣れた環境だと健常者と変わらない 行動 ←不慣れな環境だとうまく対応できない。 なじみのない状況下 音情報も,良好な状態で提供しないと,適切に 利用できない。 補聴器などを装用している 聴覚障害者も高齢者と同様の状況 静かな環境下だと捉えられる音でも,周りの 騒音がうるさいと捉えきれなくなる。 視覚障害者のためのサイン音 音環境の問題 音に頼って生活している 音響式信号機 誘導鈴 視覚障害者が日常生活で利用する音 • 視覚障害者が自らの体験をつづってくれた • 個人の体験ではあるが,具体的で参考になる 高橋玲子 音環境で配慮すべき点 • 駅の構内放送(重要な手がかり)などに対して 番線ごとに異なるチャイムをつける 他の音(別のアナウンス等)でかき消さない 冗長にならず手短に(簡潔さが重要) • 音環境全般の問題として 過剰な反射音を抑える、騒音を抑える →多様な音が利用できる音環境 静穏性と安全性の両立 視覚障害者が日常生活で利用する音 • 交わる道路の自動車の音(交差点で): 自動車が動き始めたら渡っていい • 人の足音:行く手の階段も察知できる 「パタパタ」→「パタンパタン」 • 小銭の音:自動券売機の場所 • 扉の開閉音「バタンバタン」:自動改札 モーター音「ブーン」も • パチンコ屋さんの音 • 店のテーマソング 音の利用に関する 視覚障害者に対する実態調査 回答者:福岡(47),札幌(34),東京(24) の視覚障害者 105名 年齢:26歳から80歳 男性49名,女性56名 普段街を歩くとき 沿道の店や街頭の音( B GM,呼込み等) は 場所を把握するための目印になる 9 0 .3 % 周囲の人々の足音や話し声を注意深く聞き ながら歩いている 8 1 .6 % 杖の音で自分の周りに何があるかをイメージ しながら歩いている 7 0 . 9 % 音を利用している 視覚障害者移動支援施設の利用率 音響式信号機 8 9 .3 % 駅の誘導鈴 75 . 7% 警告ブロック 7 7. 7 % 誘導ブロック 7 5 .7 % 点字案内 6 0 .2 % 触知案内盤 1 6 .5 % 音に頼っている 駅や車両内での案内放送やサイン音の利用率 駅やバス停での案内放送 8 9 . 3% 電車・バス車内の案内放送 9 6 . 1% 駅の発車サイン音 8 4 .5 % 列車やバスのドア開閉ブザー 7 8 . 6% 公共交通機関では音に頼る 「聞き取れずに困ることがある」 駅やバス停での案内放送 4 6 .6% 電車・バス車内の案内放送 5 3. 4% 音がうまく利用できない状況も 旅客施設における音による移動支援方策 ガイドライン2002.12←交通バリアフリー法 • 改札口(音響案内)「ピン・ポーン」 • エスカレーター(音声案内)「{行き 先}{上下方向}エスカレータです」 • トイレ(音声案内)「向かって右が男子 トイレ、左が女子トイレです」 • ホーム上の階段(音響案内)「鳥の鳴き 声を模した音響」 • 地下鉄の地上出入り口(音響案内)「ピ ン・ポーン」 個別の音案内 視覚障害者のためのサイン音整備の 有効性に関する検証実験 -福岡市地下鉄唐人町駅にて- バリアフリー法によって進められている 音案内設置の有効性を検証 (社会実験) 音響信号/アナウンス 音響信号+アナウンス タイマー/センサー メーカー8社 視覚障害者(28名) 支援団体 歩行指導員 福岡市交通局等が協力 2003年7月 視覚障害者の報告 • 音が分かった○ • 音が役にたった○ 歩行指導員の観察 • 音がとれていた○ • 方向は正しかった • 目的地に到達できた 音響案内は有効 ○ 効果が音量と対応 (安全のためには)→×静穏 聞き取り調査 音による誘導装置の有効性を評価する回答 ただし,要求事項や意見も • • • • • メッセージのあり方:シンプルに 音響信号のあり方:明確な区別 残響の影響:過剰な残響は避ける スピーカの設置:定位しやすいように 携帯装置の使い勝手 ユーザビリ ティの問題 赤外線を検知して端末機から音 声案内を流す装置 端末機を持参し、スイッチを押し 続けなければならない。 片手は,白杖, 盲導犬でふさ がっている。 さらに,もう一 方の手もふさ がってしまう。 視覚障害者への音響情報が騒 音となることも ○誘導鈴や音響式信号機,音声案内は,多くの 視覚障害者に有効な情報として活用されている。 ×誘導鈴や音響式信号機などを利用する当事 者以外の人々にとっては,不快な騒音源となる。 →誘導鈴周辺で働き,勤務時間中その音に曝さ れている人へのインタビュー調査 誘導鈴周辺で働き,勤務時間中その音に曝され ている人へのインタビュー調査 回答者75人中47人の回答者が,誘導鈴に対する 不快感を抱いていた。 音量が大きすぎる。 ピンとポンの時間間隔が長過ぎる。 音質が悪い。 →音質改善により不快感軽減の可能性 (静穏性と安全性の両立) 誘導鈴を不快でなくするための工夫 -時間特性,周波数特性- pleasant→ ←unpleasant 7 6 奇数次倍音のみ 5 4 すべての倍音 3 2 1 0 -5 -10 -15 -20 スペクトルのエンベロープ (dB/octave) 誘導鈴のスペクトル構造と快さの関係 不快な 快い ピン ポン duration ms ピンとポンの時間が1秒か1.5秒のとき,最も快く 誘導鈴を不快でなくするための工夫 -時間特性,周波数特性- ピンとポンの長さ: 1~1.5秒 立ち上がり時間: 3~10ミリ秒 減衰特性: -25 dB/s. スペクトル構成:奇数次倍音のみ スペクトルの傾き: -5dB/oct. 方向定位,耐ノイズ性は, 通常の誘導鈴と同等 視覚障害者のためのサイン音に 必要とされる音量 誘導鈴や音響式信号の音量に関しては,ガイド ラインはあるが,定量的な基準は定められておら ずこれに関する知見もない。 静穏性と安全性の両立には,音量の基準が必要 環境音下において自分が 望む音量に調整 環境音 Env.1 LAeq: 73.2dB 6車線道路,交通量多 Env.2 LAeq: 67.8dB 2車線道路,住宅地内 Env.3 LAeq: 65.9dB 2車線道路,繁華街 家電量販店の該当宣伝(音 楽と女性アナウンス)や通行 者の喧騒 被調整音 サイン音 擬音式音響信号「ピヨピヨ」 誘導鈴「ピンポーン」 最適聴取レベル:環境騒音に対するレベル差 Env.1 73.2dB Env.3 65.9dB 音響信号 +14dB +21dB 誘導鈴 +12dB +17dB • 誘導鈴に望まれる音量に対して,音響信号 に望まれる音量の方が大きい • Env.3(BGM等を含む)では,Env.1(交通騒音 が主)より高いレベルが必要 店舗のBGM等が含まれるかどう か(周波数特性に違い?) 音楽成分がサイン音を妨害 する 「静か過ぎて気付かずに HV車,電気自動危険」と視覚障害者らか 車に付加する音にら指摘されていたハイブ リッド車について、国土 必要な音量 交通省は、疑似エンジン 音などを出す「車両接近 通報装置」の搭載を義務 付けると発表。装置の機 能などのガイドラインを 示し、義務化される前に も積極的に搭載するよう、 関係団体を通じて各メー カーに要請(2010.1.29)。 環境音刺激 Env.1 Env.2 Env.3 Env.4 繁華街の2車線道路 住宅地の2車線道路 交通量の多い6車線道路 車両通行可能な商店街 65.9 dB 67.8 dB 73.2 dB 60.4 dB 最適レベル 検知レベル 静かな環境で最適な音量では,環境騒音レベルが +10dB程度の環境では聴き取ることができない 恐れ 静穏性を保ったら 「エンジン音」なら聞こえなくても許される 「接近報知音」なら許されないかも (言い訳に使われる) ドライバーも「聞こえる」ものと勘違いしか ねない 運用には注意が必要 望ましいサウンドスケープ • ハイファイなサウンドスケープ 環境の中の様々な音がクリアに聞こえる • ローファイなサウンドスケープ ある特定の音が支配的 その音にかき消され、各音が聞こえない 静穏性と安全性の両立 (R.マリー・シェーファー) 望ましいサウンドスケープ • ハイファイなサウンドスケープ 環境の中の様々な音がクリアに聞こえる • ローファイなサウンドスケープ ある特定の音が支配的 その音にかき消され、各音が聞こえない 環境の中の様々な音を手がかりに生活して いる視覚障害者にとっては、ハイファイな サウンドスケープが望まれる。 望ましいサウンドスケープ • ハイファイなサウンドスケープ 環境の中の様々な音がクリアに聞こえる どう実現していくか? →静穏性と安全性の両立 環境の中の様々な音を手がかりに生活して いる視覚障害者にとっては、ハイファイな サウンドスケープが望まれる。
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