慢性肝炎とは 慢性肝炎とは 6ヶ月以上、肝臓に炎症 が持続する病態をいう. 実際には 6ヶ月以上に わたる肝機能検査の異常 除外する病気 脂肪肝,肝硬変, 原発性胆汁性肝硬変, 原発性硬化性胆管炎など 日本には180万か ら200万人いる。 原因は 慢性肝炎のたどる道 どのような経過をたどるか 慢性肝炎自体で死亡することはない. 高血圧との対比 慢性肝炎は,長い経過で肝硬変へと進行することがある. 肝硬変に進まない例も多い。 肝硬変は,3大死因として, 肝不全,肝臓癌,消化管出血があるが, これらは治療によりコントロールが可能 ウイルス性慢性肝炎でもまれに肝臓癌がでることもある. 慢性肝炎では1年間に0.5%の発症 肝硬変では 1年間に6~8%の発症 慢性肝炎と高血圧の対比 慢性肝炎 高血圧 症状 日常生活 ほとんどない.軽い. ほとんどない.軽い. ほとんど支障ない. ほとんど支障ない. 経過 10年単位 10年単位 進展 肝硬変へと進むことがある. 動脈硬化が進むことがある. 終末像 肝癌が発症することがある. 心筋梗塞,脳卒中を起こす ことがある. 感染性 感染する. 感染しない. HBVとHCV • B型肝炎 – 乳幼児期に母親から感染 しキャリアとなる – 20-30代で慢性肝炎として 発症する – 時々肝炎の活動性が上が る(ウイルス量と相関) – 階段状に組織が悪くなる – 肝細胞癌は慢性肝炎でも 起こることがある • C型肝炎 – 昔の輸血や医療行為など により感染 – 徐々に徐々に進行する – 慢性肝炎を経て肝硬変に 至る – 肝細胞癌の起こる確立は 肝硬変になるに従って高く なる – ウイルス量とAST (GOT), ALT (GPT)値が相関しない いずれにせよ慢性肝炎から肝硬変・がんに至らない ようにしたい 肝炎ウイルスの感染予防のために 輸血はしない. 出血時血液付着物の処置は自分でやる. (廃棄,焼却,水洗,消毒) 分泌物(唾液,鼻水)の始末と手洗いの励行 日用品の専用:カミソリ,歯ブラシなど 乳幼児との接触は特に問題ない. (食べ物の口移しはしない) 予防接種(配偶者,子供,高危険の職場) 母子感染 • C型肝炎の10%程度の確立で母子感染が 起こる。 • C型肝炎は母乳栄養で感染する確立はほ とんどない。 • B型肝炎の母子感染は予防できるように なった。 慢性肝炎とその対策 食事 安静と運動 ・バランスの良いものを心掛ける. ・仕事,趣味などを余り犠牲にしない. 程度に安静をとる. ・過激な運動や強いストレスは避ける. ・普通の旅行などは問題ない. ・インターフェロン治療を試みる. 特に若い人,ウイルス量の 定期的な受診 少ない人 ・肝硬変合併症や肝癌の検査と 治療 治療のゴール 1.第一目標 ウイルス排除:治癒 2.第二目標 進行を遅らせる 3.第三目標 肝細胞癌の予防 C型肝炎の治療 日本におけるC型慢性肝炎の治療 • 肝庇護療法 – UDCA、SNMC、小柴胡湯 • • • • トランスアミナーゼ値を下げる =肝細胞傷害を極力減らす =線維化の蓄積を減らす =肝硬変への進行を遅らせる • 原因治療・発癌予防 – インターフェロン(リバビリン) ALT正常では線維化の進行は遅い ALT正常 ALT異常 症例数 53 101 線維化ステージ 0.9 1.8 線維化ステージの進行度 0.05 0.13 肝硬変までの期間 60 25 すでに肝硬変に進展した症例 2% 11% Mathurin P et al., Hepatology 1998; 27:868 慢性肝炎と従来のインターフェロン療法 インターフェロン治療は,C型肝炎を治癒させうる 現時点で唯一の治療法である. ウイルスをなくし,慢性肝炎もよくなる. ウイルスが完全になくならなくても,発癌が抑制 されるとの報告がある. 肝生検を行なう(必須ではない) 治療は,以下の2通りが基本 2週間の連日筋肉注射 + 6ヶ月間3回/週 または 6~8週間の連日静脈注射 治癒率に大差はない. 筋肉注射 日本のC型慢性肝炎治療: 従来のIFN 単独治療スケジュール α型:筋注・皮下注 β型:静注 天然型に比べリコンビナント タイプでは比較的高容量 インターフェロン治療後の肝発癌率 未治療群 無効群 再燃例 ウイルス消失群 インターフェロン治療に成功す れば肝発癌率が低下する C型慢性肝炎に対する IFN治療のもう一つの利点 昔は蓄積した線維は回復しないと いわれていたが... HCVの排除が成功すると 線維化の程度が軽くなることが判明した 従来の治療:自験例(n=583)におけるウイルス量・タイプと治療効果 1b 87.5 non-1b 90 Genotype distribution 自験例 80 31.5 68.5 70 60 Genotype 1b Non-1b (2a/2b) 50 Viral load(自験例) 40 42.9 7.8 57.8 34.4 40 <100 30 100-500 500 Š 12 20 11.1 10 0 <100 non-1b 0 100 Š500 KIU/ml 500 Š 1b 慢性肝炎とインターフェロン療法 副作用 初期 インフルエンザ様症状(発熱,悪寒,頭痛, (1週間以内) 関節痛,筋肉痛,倦怠感) 微熱,易疲労感,消化器症状(食欲不振, 吐き気)皮膚症状,精神症状(自殺企図), (1~8週間) 胸痛,心筋梗塞,不整脈,月経異常 中期 後期 脱毛(α),糖尿病, (2ヶ月以降) 免疫異常(自己免疫疾患の悪化), 甲状腺機能異常,間質性肺炎 その他 出血傾向,脳梗塞,脳出血,眼底出血, LDH高値,白血球・血小板の減少, 蛋白尿(β) IFN リバビリン併用療法 • Genotype Ib かつ高ウイルス量(100kcopies/mL以上) • IFN単独療法無効例 IFN :イントロンA 6MIU リバビリン :BW>60Kg 800mg, BW<60 kg 600mg IFN単独6か月治療の成績 1b 87.5 non-1b 90 80 RBV併用治療の効果 (自験例) 70 60 50 40 42.9 40 30 Combi 1b Combi non-1b 12 20 11.1 10 0 <100 0 100 Š500 100 non-1b 500 Š 1b 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 82.4 71.4 50 43.5 8.8 ≤100 100-500 Combi non-1b Combi 1b 500≤ インターフェロンαとリバビリン療 法と脳出血 • リバビリン販売開始後8ヶ月で2万4千人が使用され、4人 の脳出血があり、そのうち3人が死亡(いずれも高血圧と 糖尿病の合併者) – 8千人に1人/6ヶ月 – 25人/10万人/年 • 日本全国で約12万人が脳血管疾患により死亡 – – – – – 95人/10万人/年 (平均) 年齢別では 60人(55-59歳)、 95人(60-64歳)、 150人(65-70歳)、 280人(70-74歳) 国民衛生の動向より PEG-IFNとリバビリン併用療法 • 適応 – HCVタイプ1で高ウイルス(100kcopy/ml以上) • 投与方法 – – – – PEG-IFN 一回/週投与 リバビリン 経口 一年間継続 通常は開始時に2週間の PEG-IFNとリバビリン併用療法 • 効果 約50%の完全治癒(高ウイルス例で) • 副作用 – 貧血(リバビリンによるもの) – PEG-IFNによりIFNの副作用はやや軽い 1b高ウイルス量に対するIFN治療効果の変遷 排除率(%) 60 50 40 30 20 10 0 1992 2002 2003 2004 IFN単独6ヶ月 IFN+RBV6ヶ月 Pegasys単独1年 ペグイントロン+RBV1年 ? 年 インターフェロンの長期投与 累積肝細胞癌発生率 A: 6ヶ月間投与例(n=27) 1.0 B: 6ヶ月-2年投与例(n=20) 0.8 C: 2年間以上投与例(n=20) 0.6 0.4 0.2 0 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 (months) B型慢性肝炎の治療 • 抗ウイルス療法 – (ワクチン) – 体の免疫力を高め、ウイルスを減らす – ウイルス自体の増殖を止める • 肝庇護療法 – 強力ミノファーゲンC – ウルソ – 漢方薬 B型慢性肝炎の抗ウイルス療法 • 体の免疫力増強 – セロシオン(有機ゲルマニウム製剤) – インターフェロン – その他 • ウイルス自体の増殖を抑制 – インターフェロン – ゼフィックス(ラミブジン) – ヘプセラ(アデフォビア):ラミブジン耐性株 インターフェロン療法 • 若年のB型慢性肝炎に対する初回治療としては、 インターフェロンを薦める • 肝機能の数値が正常なキャリアの患者さんは治 療対象外 • 6ヶ月の治療がスタンダード • 治療効果は40から50%程度 B型に対するラミブジン • B型肝炎ウイルスの増殖を 抑制し、 肝機能の正常化 が高率に得られる。 • 線維化の改善? • 肝細胞の核の中にいるウイ ルスを殺すことはできない • 長期に服用しているうちに 賢いウイルスが変異して耐 性になる (YMDD変異) アデフォビル(ヘプセラ)の効果: 60 50 HBV DNAの陰性化 40 30 E抗原 の陰性化 20 ALTの正常化 10 0 placebo Adefovir 10 mg Adefovir 30 mg (Marcellin P et.al. N Eng J Med 2003 348 808-816) 日本ではラミブジン 耐性ウイルスにだけ 認められている Entecavir(エンテカビル) : 新しい抗ウイルス剤 Mean log10 change in HBV DNA levels by amplicor PCR Ratio of undetectable HBV DNA levels at 22 weeks 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 Lam 100mg Ent Ent 0.01mg 0. 1mg Amplicor PCR (Lai CL. et.al Gastroenterology 2002 123 1831-1838) Ent 0.5mg bDNA assay
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